連載

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TEXT:鈴木亮介

Photo新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます!大学ではどんなサークルに入ろうかなぁと考えている人も多いことでしょう。「大学では思いきってバンドに挑戦してみたい!」「今までは知らなかったジャンルに挑戦してみたい」という新入生の皆さんのサークル選びを、BEEASTでは応援していきたいと思います。

そこで今回ご紹介するのは、「HELL YEAH!! WASEDA」という学生団体です。早稲田大学など複数校から集まる学生が中心となって2011年に立ちあげた団体で、そのコンセプトは「メタルの浸透」。学生の音楽シーンでは比較的マイノリティと言われがちなメタルの良さをもっと多くの人に知ってもらおうと奮闘。大学間の垣根を越えて、従来は希薄だった他大学のメタルサークルとの交流を促すべく、メタルサークルが一堂に会するフェスイベントを主催。さらに、国内メタルシーンの今後を占うべく、プロミュージシャンやレーベル関係者も巻き込んだ「メタルサミット」を開催しています。

事前にいただいたプレゼン資料には「テニサーの時代は終わりだ」との文言が…。華やかなキャンパスライフと対極にあった副編・スズキとしてはこの資料のこの一言だけで俄然”仲間意識”のようなものが(勝手に)芽生えてきました!彼らはいったいどのような経緯で「HELL YEAH!! WASEDA」を立ち上げたのか。その狙いは?そして、なぜメタルなのか?そんな疑問をぶつけるべく、新歓(=新入生歓迎)準備で忙しい彼らのもとを訪ね、早稲田大学文化構想学部・新4年生の宮久保仁貴代表に話を聞きました。

◆HELL YEAH!! WASEDA プロフィール
ヘヴィミュージック愛好者の交流の場をつくり、シーンへの貢献を目指す集まりとして2011年冬に結成。ひろげよう”めたるのわ” をモットーに、サミットや合同ライブの企画など、大学・サークルの垣根を超えたクロスオーバー・メタル普及活動を展開している。2012年4月25日に早大、慶大、明大、立大を含めた大学メタルサークル合同ライブHELL YEAH!! FEST vol.1を開催。同年6月、8月には早稲田本キャンパスにて第一回・第二回関東圏大学メタルサミットを実施。9月3日には中央・立教・東工・早稲田・慶應の8サークルにスペシャルゲストSerenity In Murderを加えてHELL YEAH!! FEST vol.2を主催。さらに、今年4月28日(日)に過去最大規模でHELL YEAH!! FEST vol.3を開催すべく奮闘中。
— まずは「HELL YEAH!! WASEDA」設立の経緯から教えてください。

Photo宮久保:大学のメタルサークルが個々では演奏をしているけど他のサークルとの交流がほとんどなく、「一人でメタルやってる」というか…国内のメタルシーンにも言えることだと思うのですが、メタルを聴かない人へのアピールをしていなくて、このままではメタルが時代とともに閉塞していくのではないか、と危機感を持ちました。そこで他大の学生を集めて、”今のメタル”を体感してもらうことで、日本のメタルはヤバいんじゃないか、という危機感を多くの人に持ってもらいたいという思いで設立しました。

— メンバーはどのくらいいるのですか?

宮久保:中核で動いているのが5、6名ほどで、フェス当日のスタッフを含めると20名弱います。中心メンバーは4年生、5年生が多く、男女比は半々か若干男子メンバーが多い感じです。

— 皆さん早稲田大の学生ですか?

宮久保:いえ、早大生以外にも複数の大学から集まって活動しています。フライヤーなどのデザインは武蔵野美術大学の学生が担当してくれています。

— 宮久保代表ご自身、メタルはいつ頃、どのようなきっかけで好きになったのですか?

Photo宮久保:中学の頃に家にあったMETALLICAのCDを聴いたのがきっかけで「メタルってすごいなぁと思うようになりました。METALLICAは両親がたまたま買っただけで特に好きだったわけではないようですが、僕はすっかりハマってしまって、そこからスラッシュメタルやメロスピあたりから開拓していき、大学入学と同時にハードロックやプログレも好きになりました。

— 演奏もするのですか?

宮久保:はい。僕自身もバンドを組んでいますが、メタルに関しては大学に入学してからサークルの先輩がやっているのを聴いて「こういうバンドがいたんだ」とインディー・シーンも知って、当事者意識が生まれました。

— 「当事者意識」というのはどういうことですか?

宮久保:今メタルは、専門誌を見ると洋楽至上主義というか、国内のメタルシーンがまったく取り上げられていない。まるで国内にメタルバンドなんて存在しないかのような論調さえ見られますよね。だから、メタルをやっている僕ら当事者が発信していかなければと考えています。サークルの生のライブを見ることで「こんなかっこいいバンドがいたんだ」と知ってほしいし、これまでメタルに関心がなかった層やメタルを知らなかった層を取り込んでいければと思っています。

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— なるほど。では次に活動について伺います。まず「HELL YEAH!! WASEDA」設立後はフェスを開催したわけですね。

宮久保:はい。2012年4月に大学メタルサークル合同ライブHELL YEAH!! FEST vol.1を開催しました。

— 初回の手ごたえはいかがでしたか?

宮久保:出演バンドを集めるのには正直苦戦しました。また、ビラ配布による告知も遅れてしまったのですが、TwitterをはじめとしたSNS上での反応がとても良く、メタルサークルには所属していないけどメタルが好きだという早大生や、他大学の学生も反応してくれて、たくさん見に来てくれました。バンドも含めて総動員が70名ほどです。

— お客さんの反応が結構良かったのですね。

Photo宮久保:そうですね。こういうライブは今までなかったようなので、中でも慶應大、立教大のサークルと交友が深まり、第2回にも出演してもらうことになりました。

— そこからどのような展開を考えていったのですか?

宮久保:やはりお客さんの反響も思っていた以上に大きかったので、フェスのvol.2を9月に開催しようと決めました。ただその間に何ヶ月かタイムラグが生じてしまうので、他大のサークルを交えてイベントをやったら面白いんじゃないかなと思い、「メタルサミット」なるイベントを5月に開催しました。当時まだ自分たちには発信できる媒体がなかったので、Twitterで告知したところ、前述のフェスで仲良くなった慶應、立教のサークルの方が明治、青学、首都大などのサークルを紹介してくれたり、私たちも知らなかったサークルがどっと押しかけてくれたりして、たくさんのサークルの人が集まりました。これまで「メタルが一緒になる」という場がなかったためか、集まった人たちの非常に強い情熱を感じ、ここからvol.2の軌跡につながりました。

— 「サミット」の内容について教えてください。

宮久保:今なぜメタルを推すのかという所から始まり、今の日本のメタルシーンがだんだんやせ細ってしまったり、サークル内だけの盛り上がりで終わってしまっていないか、という所を議論しました。その中でHELL YEAH!! FESTをやる意義も話しました。メタルサミットは8月にも開催するのですが、川崎市宮前区の宮前重金属発掘計画プロジェクトの主催者の方と、メタルレーベル関係者をお招きして今後のメタルシーンはどうなるのか、CDは売れるのか…といったことを伺いました。啓蒙活動というか、メタルシーンの現状を知ってもらい、当事者意識を持ってもらいたいという思いがあります。

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— 参加者はメタルサークルの学生が中心ですか?

宮久保:もちろんメタルをやっている学生が多いですが、その他にもTwitter等で見て面白そうだからと参加してくれた学生もたくさんいました。また、宮前重金属発掘計画の方々に私たちの宣伝もしていただいたおかげで、学生に限らず世代を越えて多くのメタルファンや音楽関係者が参加してくださいました。メタルサミットは今後も規模を拡大して開催していきたいと考えています。

— そして、フェス第2弾を昨秋に開催するわけですね。第1弾と比べて変化したことはありますか?

宮久保:予想外の成功でした(笑)それほど大々的に宣伝したわけではないのですが、メタルサミットのような地道な活動や口コミのお蔭で、総動員が150名以上でした。参加サークルも8団体と、第1回に比べて倍増しました。出演しなかった他大のメタルサークルもどんなバンドが出るんだろうと興味を持って会場に足を運んでくれました。

— ゲストバンドも招いたのですよね。

宮久保:はい。今まで知らなかったけど「日本にもこんなかっこいいバンドがいるんだ」と知ってもらい応援したくなるバンド、ライブハウスに行こう!CDを買おう!と思ってもらえるバンドということで、Serenity In Murderにゲストバンドとして出演していただきました。Serenity In Murderの皆さんにも終演後に話を聞いたら「今までにない盛り上がりだった」と言って頂けたのでとても嬉しかったですね。

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— 改めて伺いますが、なぜメタルなのですか?

宮久保:メタルはポテンシャルがあるからだと私は思います。他のジャンルの音楽に比べてリスナーは少ないかもしれませんが、海外と比べて日本はメタル大国というか、人口比のリスナーの割合で言うと実は多いし、メタルを聴く人達は自分がメタル好きであることに誇りを持っている人が多いですよね。ちょっとでもメタルに触れたら深い知識がなくても「自分はメタル好きなんだぞ」と帰属意識を強く持てるので、その意味でポテンシャルの高さを感じます。ただ一方では、自分自身がメタルをやっていても、国内のメタルシーンの「先細り」を感じます。このままではメタルは衰退してしまう、何とかしなければ、という思いがあります。

— 立ち上げから1年が経過しました。これまでの活動を踏まえて「HELL YEAH!! WASEDA」はどのような目標を考えていますか?

宮久保:大学生の力、若者の力で日本の音楽シーンならびにメタルシーンに風穴を開けたいと思います。今度、4月28日(日)にHELL YEAH FEST vol.3を開催しますが、実力のあるメタルバンドをゲストに招き、大学生のメタルサークルのバンドと融合することで、大学生にもシーンの熱さ、かっこよさを知ってもらえたらと思います。また、今後の目標として大規模なメタルサミットを再び開催したいと思っています。学生とレーベルの人とを結ぶことで、双方に当事者意識を持ってもらいたいです。

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— フェスは今後も続けていく予定ですか?

宮久保:そうですね。vol.4開催の際は国内有数の巨大ライブハウスで開催し、音楽業界の人にも学生のシーンがどうなっているのか、今の日本のメタルがどうなっているのか、という所を見てもらいたいです。また、メジャーシーンで活躍しているようなバンドも招き、”メタルの甲子園”のような認知度の高いイベントにしていきたいと思います。そして、HELL YEAH FESTはメタルのフェスなのですが、今後の展開としてはラウドロックというか、メタルにとどまらずメロコアなど重い音楽全体を取り込みたいとも考えています。

— さらに規模を拡大していくわけですね。

宮久保:これまでの2回はどちらかというとメタル好きの人を中心に考えていましたが、今回は外にも目を向けています。ビラの配布やSNSでの呼びかけを通して、メタルをそもそも知らないという学生にも興味を持ってもらい、HELL YEAH FESTに足を運んでもらえればと思います。また、関東の大学にとどまらず、全国の大学のメタルサークルにも同じ当事者意識、危機感を持ってほしいと考えました。今回、Twitterなどを通じて関西、中部方面の大学にもフェスの存在を知ってもらおうと呼びかけ、その中で名城大学、同志社大学、立命館大学、京都大学の22~23サークルにご協力いただき、「HELL YEAH!! WASEDA」のビラを配ってもらいました。

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— その他に、「こうしていきたい」という構想があれば、教えてください。

宮久保:他ジャンルの人にも「共感」を持ってもらえたらなと思っています。4月28日のHELL YEAH FEST vol.3では、カラオケの鉄人や、ライブハウス、すた丼など、スポンサーとしてジャンルを問わず共感してくださる方が増えました。カラオケの鉄人では今回のライブを録音し、その音源をカラオケで配信してくださるそうです。また、4/28来場者へすた丼からの特典を予定しています。「メタルを聴いていると得するよ!」とPRできます(笑)ジャンルを問わず、応援してくださる方々と何かコラボレーションができればと思っています。

Photo取材当日は「HELL YEAH!! WASEDA」の中核メンバーが揃っていたので全員にメタルにハマったきっかけを聴いたのですが、親や兄弟親戚の影響で好きになったという人も多い一方、自分で探して好きになったという人もいました。例えば渉外担当の俵藤桃子さんの場合は「TSUTAYAで気持ち悪いジャケットのCDを見つけてどんな音楽か聴いてみる…」ということにハマっていてMarilyn Mansonに出会ったそうです。前代表の井上雅也さんの場合は、テレビの音楽番組やヒットチャートなどでみんなが好んでいる音楽にどこかなじめなくて、何か違うものはないかと調べて洋楽に行き着き、その中でもメタルのかっこよさに魅了され、どんどんハマっていったということでした。

確かに「メジャーな音楽にはちょっと抵抗がある」という人は案外多く、そうした人がメタルと出会うきっかけさえあれば、メタル人口はもっともっと増えるのではないでしょうか。「メタル業界が非常に内向きになっていて、潜在するメタルファンを獲得できていない。だからこそ、僕たち学生が立ち上がることで、メタルに出会ったことのない人とメタル業界とをつなぐ橋渡し役になりたい」と語ってくれた宮久保代表。その熱意が次々と回りの大人たちを巻き込み、4月28日開催のHELL YEAH FEST vol.3では特別協賛に「カラオケの鉄人」、協賛に「伝説のすた丼屋」などの企業が続々とついています。

「メタルって本当に楽しいの?盛り上がるの?」まだ半信半疑だという人は、是非4月28日のHELL YEAH FEST vol.3へ足を運ぶことをお勧めします!まずはヘヴィメタルのシーンを自ら体感してほしいということで、学生証持参で大学生はチケット料金が無料になるとのこと!かく言うわれわれBEEASTも、学生のメタルシーンはどのようなものなのか、この目で確かめるべく、当日再び取材に入りたいと思います!

◆HELL YEAH!! WASEDA 公式Facebookページ
http://www.facebook.com/pages/Hell-Yeah-Waseda/391356364255029
 
hellfes1◆Hell Yeah Fest Vol.3
【日付】2013年04月28日(日)
【会場】高田馬場club PHASE
http://www.club-phase.com/
 
【出演】SWS/Heaven/KSS/い軽音/LM/ネキウェン/オバオ/DOM/HeatWave/音企/理科大ロッ研/東工大ロッ研/
Special Guest:
Hone Your Sense(MetalBattleJapan2012優勝、WackenOpenAir2012出演)
A Ghost of Flare(garimpeiro records所属、1st Album「鼓動」リリース)
【時間】
OPEN / START 未定
【料金】
学生:無料(要学生証)
一般:1500円(+1D)
 
◆イベント特設サイト
http://2013.metal-shinkan.com/

 
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【連載】レーベル資料館 Case Of “SPIRITUAL BEAST”
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