演奏

TEXT:鈴木亮介

女性シンガーソングライターは数多けれど、その中でも「アコギ」「圧倒的な声量」「元気の出る楽曲」と三拍子そろった直球勝負の王道派・Rihwaのライブを今回はお届けしたい。
 
札幌出身の女性シンガーソングライター、Rihwa。中学卒業後にカナダに留学し、滞在中に音楽に目覚め本格的に活動開始すると、パワフルな歌声と持ち前の前向きなキャラクターでめきめきと頭角を現し、2012年にはSUMMER SONICなど数々の大型フェスイベントに出演。そして同年7月にシングル「CHANGE」でメジャーデビューを果たす。今年2月発売の両A面3rdシングルの「GOOD LOVE with Michelle Branch」ではMichelle Branchとのコラボレーションが話題に。6月には篠原涼子、三浦春馬出演のドラマ「ラスト・シンデレラ」の挿入歌「Last Love」をリリースし、着うたデイリーランキングで連日1位を獲得。名実ともに今急上昇中のシンガーソングライターだ。
 
そんな彼女の北は札幌、南は福岡までを巡る全国ツアー「Rihwa “Grrrr!!!” Live Tour 2013」が開催された。本誌ではツアーファイナルとなる東京公演の模様をレポートしよう。猛獣のうめき声を表す「Grrrr!!!」という表題の通り、Rihwaの野心満ち溢れるライブが展開された。

静かなBGMが場内の空気を穏やかに支配する、渋谷CLUB QUATTRO。ツアータイトルとはむしろ正反対な穏やかさは、嵐の前の静けさか。
 
Photoフロアがびっしりと埋まった午後7時、いよいよ開演だ。Rihwa(Vocal & Guitar)を筆頭に、ギター、ベース、ドラム、キーボードのバンドメンバーが入場!この5人が音を出した瞬間、空気が変わった。全員手拍子、Rihwaの笑顔に導かれて、パッとフロアに無数のヒマワリが咲く。メジャーデビューシングル「CHANGE」から、今宵のライブはスタート!
 
心地良いアコギのフレーズに、エレキとキーボードが彩りベース&ドラムが土台をしっかりつくることで、ゴージャスな演奏が冒頭から展開。MCでRihwaは「『ガルルルル!!!』というタイトルは猛獣の威嚇する時の鳴き声。リファ、やる気あるぜ!みたいな時はふざけてこの言葉を使っていて…」と表題の理由を語る。セットリストも攻めな感じになっている、ということだが、その話し振りからは「気合い入りまくってる!」みたいな重さはなく、とてもフレンドリーな人柄が伝わってくる。
 
「夢を追いかけることは悪いことなんかじゃない。くだらない夢なんて一つもないんだ!という思いを込めた曲。夢を持っている人に届けたい」と前置きし、3曲目は「Don’t be afraid!」音のスパーク感に、突き抜けるボーカル。壮大なスケールを感じさせながらも、無理して大きくしている感じでない伸びやかさが、前向きな詩と絶妙に絡み合って、勇気をもらえる。フロアからも自然体な、大きすぎずも小さくもない、温かな手拍子が鳴り止まない。続いても力強いアップテンポナンバー、4曲目「It’s you!」でガッツポーズしたかと思えば、5曲目「ギルティ」では一転大人ムード。エレキギターの歪みに合わせてエモーショナルに歌い上げる。
 
Photoメジャーデビューしてからの1年間は本当に濃厚な時間だった、と振り返るRihwa。一つの曲の制作にかける時間が長くなったとのことで、その理由を「今まで以上にこだわりが増えた。自分よりキャリアの長いプロの方と一緒に制作することも増えて、自分の曲に込めた思いをちゃんと伝えることを意識した。これは私の書いた曲、と100%自信を持って届けたいから」と語る。そしてこう続ける。「届けるためには受け取ってもらえる人の存在が必要…忙しい中足を運んで会いに来てくれる皆さんのおかげでこの場所に立てています!いつも支えてくれて本当にありがとうございます!」
 
そんな感謝の思いから、3rdシングル「モンスターのかくれんぼ」、2ndシングル「約束」など熱い思いの詰まった楽曲が続く。気の置けないライブ、というのだろうか。「楽しむ、それだけやってくれれば、何にも問題ないから!自分が気持ち良い方に体を動かせばいいから」そうRihwaが話す通り、初心者でも自らの心が赴くままに、肩肘張らずに自然と入り込める、とても楽しいライブが展開されていく。
 
「歌うって楽しい!」聴くだけでなく、私もRihwaと一緒に歌いたい!と思わせてくれるような、爽快な楽曲たち。「後ろのみんなも盛り上がっていくよ!」全編英語詞の「whatever」でRihwaはアコースティックギターを置き、ハンドマイクでパワフルに歌い上げると、フロアのボルテージは最高潮に!それに促されるようにバックバンドの躍動感も増していく。
 
その熱狂冷めぬまま、「新曲持ってきました!」と「I WON’T BE BACK」を披露。デビュー以来数々のフェスで連戦連勝してきたRihwaの本領発揮!とばかりに突き抜けるボーカルは、ここCLUB QUATTROを一瞬で真夏の空の下、巨大なスタジアムに観客をいざなってくれるようだ。
 
Photo今夏も「ROCK IN JAPAN FES. 2013」(盛況のうちに終了)、「音霊 OTODAMA SEA STUDIO 2013」、「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2013」など数々のフェス出演が決定しているRihwa。どの曲もそうだが特にこの新曲「I WON’T BE BACK」はフェス会場の大きなステージで聴きたい、ビッグスケールな一曲だ。
 
再びアコギを手に、怒涛の終盤ラストスパート。「Tell me what you want」では引き続きRihwaの突き抜ける、爽快感溢れるボーカルを堪能しつつ、中盤のギターソロや合間に散りばめられる綺麗なピアノがまたRihwaの楽曲の魅力を引き立てる。女の子のキラキラな世界観は、同性ならず男性にも共感得ること多々、演奏が終わるとこの日一番の歓声が上がる!
 
「手拍子お願いします!」再びアコギのカントリーサウンドを奏で、14曲目「可愛いおねがい」。1曲前のゴージャス感あふれる「Tell me what you want」とは対照的に、アコギと手拍子を引き立たせるシンプルな音作りながら、スケール感は全く劣らない。Rihwaの持つ情熱と、彼女の血肉となっているであろうカナダで吸収しまくった音楽の根幹が、そうさせるのだろう。
 
最後は人気ドラマ「ラスト・シンデレラ」の挿入歌となり、Rihwaの魅力を毎週全国に届けた「Last Love」。「最後まで貫く愛の歌。長いスパンで考えてみた時に、自分は一体どんな恋愛をしていたいかな?どんな女性になりたいかな?っていうのを自分なりに考えて、思いを込めました」と、Rihwaは曲へ込めた思いを語る。高音の歌声がシンデレラのガラスの靴のように、きらめく。ちょっぴり切なさもあるサウンドも手伝って、目が潤む。Rihwaの魅力がとことん詰まった、15曲におよぶ素敵なライブがいったん、幕を閉じる。
 


 
Photoアンコールで再登場したRihwa、本編と同様に一瞬たりとも笑顔を欠かすことがない。「自分の中であっという間だった。ライブのことばかり考えていて、心がすごく元気だった」と振り返る。そして「夏に向けて爽やかな曲を書いてきた」と、またも新曲「TO: Summer」で集まった皆を喜ばせる。誰に促されるともなく自然と起こる手拍子。本当に、温かい空間だ。
 
そして、名残惜しくも本当に最後の曲。アンコール2曲目は、昨年の初ワンマンライブの際に一人弾き語りで披露した「bird」を、バンドバージョンで披露!単純に音飾が増えたということ以上に、デビュー当時から追い続けるファンにとっては彼女の成長を確認できる、貴重な瞬間となったのではないか。最後はマイクを使わず、自らの肉声で、声を詰まらせつつファンへの感謝を語った。この日初めて笑顔が崩れた瞬間。でも、その分集まったファン全員が満開の笑顔と拍手で、彼女を次のステージへ送りだした。
 
15歳で単身カナダに留学した際、送り出してくれた両親の愛情に思いをはせて作ったという、「bird」。「ここに集まった一人ひとりが力強く、自由に羽ばたいていけるように…そんな思いを込めて」そう語るRihwa自身、さらに大きなステージへこれからも羽ばたき続けるだろう。もっともっと大きなステージで観たい。そう思えた、今宵のライブであった。
 

◆セットリスト
M01. CHANGE
M02. Right Now
M03. Don’t be afraid !
M04. It’s you !
M05. ギルティ
M06. モンスターのかくれんぼ
M07. 好きなのに
M08. なぞれ
M09. 約束
M10. 愛×愛=80’s
M11. whatever
M12. I WON’T BE BACK
M13. Tell me what you want
M14. 可愛いおねがい
M15. Last Love
-encore-
M16. TO: summer
M17. bird
◆Rihwa 公式サイト
http://www.rihwa.net/
 
◆インフォメーション
・2013年8月13日(火)【汐 留】日テレプラザ ゼロスタ広場
ZIP!夏フェス
http://www.ntv.co.jp/shiohaku/
・2013年8月24日(土)【逗 子】OTODAMA SEA STUDIO
音霊 OTODAMA SEA STUDIO 2013 -音と波の夕涼み 2013-
http://www.otodama-beach.com/
・2013年8月31日(土)【山中湖】交流プラザ きらら
SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2013
http://www.sweetloveshower.com/

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