演奏

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TEXT:桂伸也 PHOTO:N-yukano


昨年、BEEAST企画のイベント『39LIVE』にも出演、第一線で活躍するミュージシャンの中でも異色の存在感を見せつけているユニークなジャズロックグループ、SM倶楽部DX。その発端はドラマーの酒井愁と、ピアニストのMarcyによるデュオのSM倶楽部だったが、サポートしてと旧知の仲である山本征史がサポートベーシストとして合流、現在ではSM倶楽部DXとして3人のコンビネーションもしっかりと出来上がり、その完成度を高めている。
 
今回は、そんな彼らのステージの模様をお送りしよう。今年2月から3月にかけて行われたSM倶楽部DXのツアー。東京で行われたこの日は、山本の誕生日にも近いタイミングであり、さらにスペシャルゲストとして、夜叉成田一家での活動で知られるヴォーカリスト成田伸治がゲストとして参加、通常は彼らにつながりの見いだせないJazzというカテゴライズでのステージを見られる非常に貴重な機会となった。
 
◆メンバーリスト:
酒井愁(以下、:Drums)、Marcy(Piano)、山本征史(以下、山本:Bass & Vocal)
◆ゲストメンバー:
成田伸治(以下、成田:Vocal)

第一部
 

 

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「ようこそ!」山本の挨拶でステージは始まった。紳士的な彼の挨拶からプレイ開始を進めるその姿は、また彼らの、普段とは違う表情をのぞかせた。オープニングナンバーは、「モードの迷宮」。タンゴのリズムにのせ、妖しい山本のヴォーカルが大人なリラックスした雰囲気を作り出す。「Marcy!」コーラスを終えた山本のコールで、Marcyのピアノソロが続き、歌のメロディを最後のサビにつなげる為のお膳立てを作り上げていく。
 
続いてスピードのある「飼淫」へ。モダンジャズを想像させるリズミカルなスタートから、徐々に複雑な展開を見せた。のドラムは厳密にはJazzらしいなめらかさよりも、どちらかというとロック的なアクセントの強いビート感があるが、ロックを根底に持つこの面子の中ではそのリズムが程よいグルーヴとなり、3人の音をより厚みのあるサウンドとした。昔からロック、Jazz双方の要素を取り入れようとするミュージシャンに、相容れないそれぞれの様式は、大きなジレンマとして付きまとっている。しかしこの一幕は、彼らがそれでも敢えて正面からその壁にブチあたろうとする潔さすらの表れとも見えた。
 
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山本がバラード「FAKE」を朗々と歌ったあとは、この日の目玉の一つである成田がステージに登場。この日ステージに参加できた礼と、山本の誕生日へのお祝いを告げ、4人によるセッションが始まった。1曲目は意表をついた「銀座の恋の物語」。いうまでもないほどに有名な歌謡ナンバーであるが、山本成田のデュエットが見事に曲にマッチし、先ほどまでの緊張感一辺倒な空気を一変させた。その雰囲気は厳密には「Jazzではない」と思われるかもしれないが、続いた「カスバの女」とともに、ゆったりと食事と酒、そして音楽を楽しむ場として、上質の空間を作り上げた。
 
そして第一部、成田が歌った最後のナンバーは、「Cry Me A River」。この曲は、『39LIVE 第6回~SM倶楽部DX~』山本の歌によりプレイされた曲だが、成田ならではのJazzの歌い方を実践した貴重な一幕がそこに現れた。ブルージーで、かつ澄(す)んだような力強い成田の歌は、切ない感じを表す曲中のAメロの雰囲気にピッタリとハマり、曲の叙情感を目一杯に盛り上げた。正統派のJazzの歌い方にも当然、様式的な美しさは存在するが、ロック一筋を貫いてきたこの男の声は、敢えて飾らない自分の歌をここで披露した。
 
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そして第一部も大詰め、再び3人の演奏に戻りセットのラストセクションに移った。Jazzスタンダード風のコード進行をベースとした「監粛」で、またSM倶楽部DXらしいJazzを聴かせる。そこには典型的なJazzトリオのような、常に相手の出方を見張るような緊張した空気はは無いものの、3人が同じ方向を向き結束を強めたサウンドが観衆の感性をくすぐる。
 
そしてラストは激しいラテンリズムのナンバー「指姦」。ここでがドラムでここぞとばかりに本領発揮、一糸乱れぬ見事なソロを決めると、観衆は拍手喝さい。さらにMarcyのピアノは、山本のベースと合わさりさらにゴージャスなハーモニーを作り出し、エンディングに向けて会場全員の気持ちをさらに引き上げた。かくして第一部のステージは終わりを迎えた。
 
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第ニ部
 

 
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第二部は、穏やかなボサノバナンバー「責虐」で幕を上げた。ゆったりとしたリズムから生み出される爽快な空気が会場を包む。そして続く「悪戯」では、John Coltraneの名曲「Mr.PC」ばりの緊張感あふれる「SM倶楽部DXのJazz」を聴かせてゆく。疾走感抜群のそのリズムは、やはりの本分を生かすには絶好のナンバー。それを表すかのように超絶ソロを、何事もなかったように彼のキャラクターでもあるツンデレな表情でビシッと決めた。痛快なSM倶楽部DXの醍醐味が存分に堪能できた瞬間だ。
 
そして曲は山本作の「弥生桜」へ。ブルージーな歌心をたっぷりと込めた、先ほどのJazzとはまた違ったグルーヴィーな空気を会場に蔓延させる。Marcyのピアノも、ここぞとばかりに本領発揮。主旋律の歌を崩さず、かつ曲に彩(いろど)りを与えるという役割をしっかり果たした。彼のピアノは前に出るタイプではないが、SM倶楽部DXのなかでも一番Jazzらしい部分を担っており、相手の出方を探るような彼の配慮は、このトリオになくてはならない存在となっている。また、Jazzに近いナンバーと、また違った自己の表現にこだわった山本のナンバーで構成されたSM倶楽部DXのセットのバランスはまさしく彼らならではといえる。それほどまでに3人でのプレイがしっくりと固まったようにも見えた。
 
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そして4曲目にプレイされた山本自身の作によるソウルフルな「サンクチュアリ」では、途中で成田が参入。この入り方も実にドラマチックだ。さらに続いた曲は成田山本が一緒に活動を進めていた夜叉の曲「影武者」。ヘヴィメタルバンド夜叉の曲と思えないほどに、アコースティックなサウンドと絶妙なマッチングを見せた。そしてそこから見える荘厳さは、夜叉というバンドの曲の奥深さすら感じさせた。
 
そして、前半に続き成田が披露したJazzスタンダードナンバーは、Louis Armstrongの「What A Wonderful World」。そのスケール豊かな空気感と、優しさを合わせて感じられる歌心は、成田がヘヴィメタル、ロックというカテゴリに留まらない器の大きさを持ったシンガーであることを示した。またそれを支えるSM倶楽部DXの面々の、息の合ったバックアップが彼の歌をさらに盛り上げた。この4人、彼らだからこそ作り上げることのできた世界観が、そこにあった。
 
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いよいよこの日のステージもクライマックス。再びSM倶楽部DXの3人により、最後のナンバー「拘束」を披露。疾走感のある4ビートが、躍動感を会場の観衆に打ち込まれていく。ここでもドラマーの腕の見せ所とばかりにの本領が発揮され、彼のドラムがMarcy山本のプレイをさらにあおる。MCでは「トリオってかっこ悪くね?」と冗談を飛ばしていたが、それが完全否定できるほどの粋なプレイで、エンディングでは盛大な拍手喝さいを浴び、彼らはステージを降りた。
 
アンコールに押され再びステージに登場した4人。山本は自身の誕生日に合わせ、この日のステージが行えたことに大きな感謝を告げながら、アンコールとして彼のナンバー「スパイラル」を山本成田のデュエットにて披露。クールな空気の中に響く彼らのソウルフルなメロディ。「手と手を合わせ…」という歌詞の中で、実際に手を合わせる二人。曲はラストに近づくに従い大きな盛り上がりを見せた。山本のベースソロフレーズに、Marcyが追従、Jazzらしいインタープレイがそこに現れた。こうして上質な音楽空間を作り上げたSM倶楽部DXのステージは、幕を閉じた。
 
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◆公式サイト
オフィシャルサイト
http://snakepit.jp/sm/
酒井愁 オフィシャルサイト
http://snakepit.jp/
Marcy オフィシャルブログ
http://blog.goo.ne.jp/marcy_key/
山本征史 オフィシャルサイト
http://www.blackcatbone.info/
成田伸治 オフィシャルブログ
http://blog.goo.ne.jp/yasha_narita

◆セットリスト
第一部
M01. モードの迷宮
M02. 飼淫
M03. 優縛
M04. FAKE
M05. 銀座の恋の物語(Cover)
M06. カスバの女(Cover)
M07. Cry Me A River(Jazz Standard)
M08. 監粛
M08. 指姦
第二部
M01. 責虐
M02. 悪戯
M03. 弥生桜
M04. サンクチュアリ
M05. 影武者
M06. What A Wonderful World(Jazz Standard)
M07. 拘束
-encore-
E01. スパイラル

SM倶楽部DXのステージはイマジネーションの幅も広く、彼らだからこそできるユニークなものだといえる。楽器隊のプレイはもちろん、時には自身の歌を歌い、さらにプレイの幅を広げる。ゲストで登場した成田の歌がこれほどまでにJazzのスタンダードにきっちり溶け込むと、だれが想像しただろうか?それだけにこの日、この面子でステージが行われたことはある意味必然だったといえるかもしれない。
 
また、もともとハードロック、へヴィメタルでその名をとどろかせた山本だが、サポートとして参加したSM倶楽部DXに、今では欠かせないくらいの存在感を改めて示した。Marcyとのプレイにますますの磨きがかかり、クライマックスには思いの丈の強さだけでインタープレイが自然に表れた部分からも、また新たな一面を彼らが見い出せたのではないだろうか。
 
その根底にロックという基盤があるSM倶楽部DXの面々としては、なかなかその活動に力を入れることも難しいかもしれないが、彼らのステージが今後も続けられることを切に願わずにはいられない。SM倶楽部DXという活動の中で、ロックだけでは知り得ることのできなかった新しい世界や考えが、彼ら自身だけでなく、彼らのステージを見る観衆にも伝わる、そんな魅力がこの構成には見られるからだ。
 

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