連載

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【39LIVE】 第6回~SM倶楽部DX~
TEXT & PHOTO:桂伸也


東日本大震災の発生から一年。「一年経った」ということで、改めて当時のことを思い返し、自分自身の人生を見つめ直したという人も多いのではないでしょうか。

人と人、心と心をつなぐ「絆」を深めるために、BEEASTにできることは何か……そう考え続け、たどり着いた答えの一つとして、「ロックと生きる…ライフスタイル応援マガジン」を掲げるBEEASTは、ミュージシャンと音楽ファンの絆を深める「39LIVE(サンキューライヴ)」を定期開催します。BEEASTを支えてくださる読者の皆様、ミュージシャンの皆様への「Thank you」を込めて、事前抽選による30名限定のプレミアムライブ!

第6回目の開催となる今回は、スーパー・ドラマー酒井愁率いるSM倶楽部に彼の朋友でありベーシストの山本征史が加わった拡大版、SM倶楽部DXが登場!

国内のロック・セッション界では知らないものはいない程の絶対的な実力とネームバリューを誇るドラマー、酒井愁。その彼が「Jazzを学びたい」と、ピアニストMarcyとともに結成したSM倶楽部。ロック・ミュージシャンがプレイするJazzという図式は、Jazz趣向者からすると難色を示す人もいるかもしれませんが、新たな音の楽しみ方を模索する上では新鮮な空気を味わえるチャンスと見ることもできます。通常はピアノとドラムという異色のデュオ構成ですが、この日はグルーヴ・マスターとして名高いベーシスト山本征史が加わることでパワーアップ!まさしくデラックスなピアノ・トリオ構成でこの日のライブを盛り上げます。この日集まった観衆も、その表情からはスタート前からワクワクした様子が窺えました。
 
◆メンバーリスト:
酒井愁(以下、:Drums)、Marcy(Piano)、山本征史(以下、山本:Bass & Vocal)


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場内に響き渡る拍手の中、淡々と登場した3人。サングラスの奥にあるの目は何を見つめるのか?そこにMarcy山本、そして観衆の視線が集まります。特別な準備をしているわけでもない、しかし高まる緊張のなか、ステージはスタートしました。ダイナミクスたっぷりのドラムイントロから「悪戯」「監粛」と、まずはSM倶楽部のオリジナル・ナンバーでオープン。ピアノから流れるメロディは、何か憂いを込めた様な切なさが感じられるものの、涼しげな顔で強烈なビートを叩き出すのプレイから、ユニークなサウンドが生まれてきます。
 
ちょうどJohn Coltraneの「Mr.PC」を思わせるようなリズム・グルーヴは、オープニングで観衆の気持ちを高揚させるのにピッタリ。の横で、出方をはかるようにじっと彼の顔を見つめるMarcy、そしてサウンドの舵取り役となる山本。わが道を行くといった感じの豪快なプレイ・スタイルを見せると、その動きにじっと追従するMarcy山本のドラムがこのトリオの土台となり、2人の化学反応によってその世界観を広げていくのが、このSM倶楽部というサウンド・クリエイター集団の形ともいえるでしょう。
 
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名刺代わりの2曲をプレイし終えて、まずはMarcyがご挨拶。「こんにちは、SM倶楽部です!」拍手の応答により歓迎の返答を観衆より受け取った彼ら。「今日は一杯食べて、飲んで、素敵な音楽で楽しんでください」Jazzクラブでのライブのような、穏やかな挨拶。ロックらしからぬおしゃれな雰囲気でライブは進むのかと思いきや、Marcyに会話を振ると事態は一転!Jazzの経歴としてはより上のMarcyというポイントを突いて、Marcyをイジり倒す!それを「しょうがねえなあ…」という苦笑いの表情で見守る山本のSな部分がMarcyのMな部分を突く爆笑トークで、会場を和やかな雰囲気に包みます!
 
みな笑いに笑った後は、再びプレイへ。Jazzのスタンダードとしてはあまりにも有名な「枯葉」から「C Jam Blues」、そして「Fly Me To The Moon」。このセクションではJazzらしさを意識したプレイとも見えましたが、基本的なノリやフレージングなど、Jazz以外のバックグラウンドが強い彼らだけに単なるスタンダードのプレイとは異なる面白さ、うまみが音の中に微妙に反映され、SM倶楽部DX独自のカラーを打ち出していきます。
 
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曲が終わるとを起点とした爆笑トークへ。何かと話にMarcyを絡めたがる。その様はまさしく相手を痛めつけているようでもあり、逆に愛してやまない気持ちを現わしているようにも見えました。元々がデュオという形態でスタートしたSM倶楽部、単に音を作ろうという具体的な目的だけでなく、相手を知ろうという深い関係が存在する中で、Marcyになじっているような言葉をかけているように見えても、実は強い信頼関係が二人には存在していることが感じられます。その証拠にが何かを話すたびに観衆は大きな笑いを挙げ続ける!
 
続いてのナンバーは、オリジナル曲の「優縛」よりスタンダード・ナンバーの「私のお気に入り(My Favorite Thing)」。先ほどのスタンダード・ナンバーから、バンドとしてのスタイルを一歩押し進めたような格好の構成。「優縛」はゆったりとした8ビート気味の6/8ナンバーですが、よく聴くと先ほどのスタンダード・プレイとは逆に通常のロックやファンクよりも、Jazzっぽいスィング感を感じさせます。「私のお気に入り(My Favorite Thing)」は、Jazzでも様々なアレンジでプレイされる曲ですが、ここでは怒涛の勢いを持つ16ビートと、Marcyの本領発揮ともいえる強力なピアノ・プレイで観衆を圧倒!
 
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MCに入ると、とにかくMarcyをイジる。それを笑いながら、あるときはテレながら受け止めるMarcy。そして二人のちょうどパイプ役として存在する山本。まるでプレイをしているときのような一体感が、MCの時にも現れるという絶妙さ。誰かが出した音で反応していくというピアノ・トリオでのプレイで必要な部分を、メンバー間の深いつながりで見せていく、そういった図式が他愛も無い会話の中で見られるのもSM倶楽部DXの魅力の一つ。
 
ステージも後半に入り、ブルース・フレーバーたっぷりの山本の叙情的な歌を聴かせる「サンクチュアリ」から、「責虐」と、オリジナル曲でさらに彼ら自身のJazz世界を見せていくSM倶楽部DX。ここで一つの遊び心を見せた彼らは、「マリオ」へ。ゲーム『Super Mario Bros.』のBGMをピアノ・トリオ形式で表現してしまうという、冗談と芸術の紙一重的なきわどいパフォーマンスを見せます。プレイではもうパーフェクトといえそうな完成度を誇るその様には、思わず拍手喝采も必至!!
 
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MCでは彼らの自虐的ネタを連発し観衆を笑いの渦に巻き込みましたが、最後に語った夢は大きく「いつかはZeppツアーへ!」。当初デュオという形態をとっていた彼らは、山本を加えたその名のとおりデラックスな布陣がすっかり形となっています。実際この3人でツアーも行われる予定もあり、今後の活躍にこう互期待!とMCを締めました。
 
いよいよステージも大詰め、オリジナルの「飼淫」で、ベースと一体になったように情感たっぷりの歌を聴かせる山本。更にラテン調のナンバーから、「Cry Me A River」へ。ここでも彼は歌を歌いましたが、原曲のイメージが「昔男にフラれた女が、フッた男の失恋のさまを見て、恨み節を語る」という、ちょっとコワい内容の曲なのですが、山本はまた違ったイメージをメロディと詞に込め歌います。このような曲のセレクトの仕方、構成も彼らならではの面白さ。最後はスタンダード・ナンバーでも有名な「星に願いを(When you Wish upon a Star)」。このラスト・ナンバーではSM倶楽部らしさというよりも、Jazzのセッションのようにプレイヤーとして一人一人がプレイを楽しみ、その楽しさは観衆全般にも伝わったように見えました。
 
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は「予定調和なアンコールなんて嫌だ」と語りながらも、アンコールに応え更なるプレイへ。山本の情感たっぷりなボーカルが映えるバラード「スパイラル」に続けて、本当のラストに3人ともに音に身を任せるようなプレイを見せる「拘束」へ。激情を表すような激しさとせつなさを讃えたその曲は静かに展開し、SM倶楽部DXが作り出したユニークで創造的な世界に終止符を打ちました。ライブ中に大きな歓声を挙げるでもなかった観衆は、この時とばかりに割れんばかりの拍手で彼らのプレイを讃えました。
 
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ステージ後は楽屋から出てこようともしなかった。そのツンデレな雰囲気は、逆に音楽に対する頑固なまでの探究心の表れと見ることもできるでしょう。トリオという少人数構成だからこそにのしかかる各パートの受け持ち範囲、しかも基本はピアノとドラムだけというシンプルな構成だけに、ドラムというリズム楽器にも歌心が要求されます。ロック畑でその信念を貫いてきたのドラムは、Jazzドラマーとはまた違ったユニークな歌心をドラムから聴かせてくれました。その音を注意深くうかがいながら、ハーモニーを形成するMarcy山本。大きな支えを作るのドラムのもとで、そのユニークなMCとともに彼らは楽しい空間を演出してくれました。
 
常に新しいサウンドを追及するのもロックの醍醐味とはいいつつも、なかなか他のサウンドに目をむけ、新しい世界を開くということは難しいもの。例えばJazzという音楽はロック・ファンやミュージシャンからすると「敷居が高い」というイメージもあるかもしれませんが、そこに敢えて飛び込み、彼ららしさを織り交ぜたユニークなサウンドを聴かせてくれるSM倶楽部DX。そこには何かジャンルに拘ると見失ってしまうような楽しさがいっぱい。躍動するリズムに合わせて大声を張り上げるロックの熱いライブはもちろんメインストリームですが、新しい音の楽しみ方を味合う意味で一度その音に触れてみては如何でしょうか?お薦めのアーティストです!

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ご応募方法は“BEEASTファンクラブ”の方にお届けする「週刊ビースト瓦版(無料メルマガ)」にて記載いたします。
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◆セットリスト
M01.悪戯
M02.監粛
M03.枯葉(Autum Leaves)
M04.C Jam Blues
M05.Fly Me to the Moon
M06.優縛
M07.私のお気に入り(My Favorite Thing)
M08.サンクチュアリ
M09.責虐
M10.マリオ
M11.飼淫
M12.ラテン
M13.Cry Me a River
M14.星に願いを(When you Wish upon a Star)
-encore-
E01.スパイラル
E02.拘束

◆公式サイト
オフィシャルサイト
http://snakepit.jp/sm/

 
酒井愁 オフィシャルサイト
http://snakepit.jp/
 
Marcy オフィシャルブログ
http://blog.goo.ne.jp/marcy_key/
 
山本征史 オフィシャルサイト
http://www.blackcatbone.info/

 
◆インフォメーション
【SM倶楽部 DX】
2013.1.19(土)
東京四谷メビウス
http://www.mebius-yotsuya.jp/
 
詳細はSM倶楽部 公式サイト

さて、今回の第6回39LIVEでは、合計6,500円を東日本大震災の復興支援として、沿岸部の被災者の命の見守り支援を行う岩手県看護短大の鈴木るり子先生、岩手医科大学の秋冨慎司先生の活動を支援するために寄付することができました。

震災発生から一年を経過した被災地で人手もお金も不足する中、両先生方は岩手県内で災害時救援情報共有のiシステムの構築に尽力しています。秋冨先生はこのほど、岩手県内の関係者で被災地の人たちが復興への足がかりを作れる環境整備のための社団法人「東日本絆コーディネーションセンター(http://www.ekcc.or.jp/index.html)」を立ち上げ、副理事に就任。行政と連携しながら、被災者支援に入る医師や介護福祉士、栄養士などが各々持つ能力を集約し、支援を必要とする人の情報を瞬時に共有することで、少人数・低予算で効率的な支援ができるネットワークを構築しようとしています。

行政や大組織に依存せず、有志が集まって本当に有意義な被災者支援に努める姿勢は、まさにロック!そんな鈴木先生、秋冨先生の活動をBEEASTは支援していきたいと考えています。
そして、ミュージシャンと音楽ファンをつなぐ39LIVE。このライブを通じて、音楽によって人と人とをつなぎ、絆を深めることができればと思います。