演奏

TEXT:鈴木亮介 PHOTO:鈴木亮介、荻原ひかり

「音楽のまち、○○」というフレーズをよく耳にする。音楽を通じた地域振興を目指す自治体は全国にあるが、その実態はロック、パンクなどの「ライブ」よりも管楽器や歌唱などの「コンサート」による町興しが多いという印象を受ける。その中で今回、「ライブ」で町興しを進める東京・立川市に注目した。

立川は三多摩の中でも八王子、町田と並ぶ一中心市街地を形成しており、様々な商業施設やオフィスが集まっている。立川駅前には広大な米軍基地跡地に建設された国営昭和記念公園や、オフィスビル群の「ファーレ立川」が広がる。平成12年に多摩都市モノレールが全通し、立川駅前の再開発が進んだことで、交通の要衝としてますますの発展を遂げている。ライブハウスも、BABELやHeart Beatといった味のあるハコが立川を拠点にしている。
 
そんな立川の街を一言で表現すると、良くも悪くも「カラフル」ということになろう。東西にJR中央線、南北に多摩都市モノレール、斜めに南武線と青梅線…という路線図を見ても分かるように、多くの人が行き交うこの街は、様々な文化が集まりにぎやかである半面、一つのものがじっくり留まり熟成しにくいように思える。「基地の街・福生」「ライブハウスの街・吉祥寺」「サブカルチャーの街・高円寺、阿佐ヶ谷、中野」…といった近隣の都市と比較してみても、「立川のカラー」を一言で形容するのは難しい。
 
そんな立川がこのほど、街一帯を音楽で染めようという催し「立川いったい音楽まつり」を開催した。初夏の2日間にわたって行われたイベントの模様をレポートしつつ、イベントの仕掛け人、そして出演したミュージシャンに話を聞いた。
 

第1回 立川いったい音楽まつり 開催概要
 
「立川いったい音楽まつり」は、市内に数カ所のステージ設営をして一斉ライブを実施し、だれもが気軽に音楽に触れ、立川に愛着をもっていただくこと、そしてまちに活気を与えるイベントを目指します。かつて「まちなかライブ」として駅周辺で実施してきたイベントを復活、立川のまちづくりに寄与する催しとして立川の街中へと発展させていくものです。
 
日時:2012年5月19日(土)・20日(日)
場所:立川市内
大型商業施設店頭・レストラン・喫茶店、まちかどスペース・商店街空き地・ライブハウス・その他
出演:一般募集。書類審査あり。 入場料:無料

 
本誌では2日目の20日に取材を実施。昼前に立川駅に到着し、北口に出ると、そこにはいつもの街の光景が広がっていた。せわしく行き交う多くの人々の表情はいつもと変わらないが、一歩街の中に踏み込んでみると、そこかしこから音楽が聴こえてきた。

 

 
 


立川北口は高島屋、伊勢丹といったデパートが駅前に立地しており、今回はそうしたデパートの入口に野外ステージが設けられた。伊勢丹2階入口前のステージでは、ロックバンドからポップス、フォーク、ハワイアンまで10組のミュージシャンが演奏。中には中学生バンドの姿もあった。PAを務めるのは東京工科大学の学生だ。学生ボランティアの協力もこうした町興しイベントを進めていく上で欠かせない。

 

 
 


高島屋の1階でも同様に、キーボードの弾き語りから吹奏楽、ラテン系まで様々なミュージシャンが代わる代わる演奏を披露していた。日曜ということもあり、親子連れが立ち止まって演奏を聴いている姿が目立った。子どもたちにとって、こうして偶然訪れた街角で、様々な世代の様々なジャンルの音楽に触れることは貴重な体験と言えよう。今回の催しは、2006年に設立された市民団体・立川まちおんに加え、公益財団法人立川市地域文化振興財団、立川青年会議所、さらに地元のケーブルテレビであるマイ・テレビ株式会社の計4団体により主催され、立川市とエフエムラジオ立川株式会社が後援している。開催の経緯などを、立川市地域文化振興財団の担当者に聞いた。
 

立川市地域文化振興財団 瀬順弘・地域文化振興係長
 
元々立川はストリートミュージシャンが非常に多い街だったのですが、近年は規制が厳しくなったことで路上に立つ人が減ってきました。そこで、路上ミュージシャンの演奏を市民の方々に理解してもらうために市民団体の「まちおん」が立ち上げられました。ミュージシャンが活躍できる場を提供しようということで、私たちと一緒にこれまでホールライブや大人バンドフェスティバルをやってきましたが、ホールだと出演数の制限があります。そこで、路上開催することでたくさんの人に出てもらおうと、今回の音楽まつりを企画しました。今回はボランティアスタッフ約30名や東京工科大の皆さん、さらには出演者の皆さんにも出番以外の所で音響を手伝ってもらうなど、皆で一緒に作り上げ開催することが出来ました。来年以降の開催は決まっていませんが、市民の皆さんにストリートミュージシャンの文化を理解し、楽しんでもらえればと思います。

 
確かに公空間でのパフォーマンスは規制により禁止されており、路上で行うほぼすべてのアーティストが 法規制をかいくぐって演奏しているのが実態だ。瀬係長によると、今回の「立川いったい音楽まつり」の開催趣旨の一つは、「路上ライブという文化を守り、継承することで、街の活性化につなげたい」ということで、ミュージシャンに発表の場を作ることで周辺商業施設にも活気を与えたいという。確かに、全国に目を向けると、例えば仙台市の定禅寺商店街で始まった「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」は、街角をステージにライブイベントを開催して、多くの市民の支持を得て今や全国的に仙台の初秋の風物詩として認められようになっている。

 

 
 


立川いったい音楽まつりでは路上ステージのほかにも、新星堂ロックインの店内でのジャズギターライブや、駅ビル、グランデュオ正面入口、さらにはアレアレア2のラーメンスクエア内でもライブが開催され、その模様は南口駅前の大型モニターで生中継された。南北に広い立川の街で「街全体が一色に盛り上がっている!」という状況を演出するのは決して容易ではない。かつて南口のハッピータウンしばさき商店街では大々的にサンバカーニバルを開催していたが、そうした商店街単位での動きが多い立川の街で「いったい」となって催しをすること自体が大きな一歩であり、来年以降のさらなる盛り上がりを期待したいところである。

 

 
 


そして今回の目玉であるストリートパフォーム。高島屋の裏、パレスホテル側の路上スペースでは、パフォーマンス&ジャム集団aladdin9のパフォーマンスが披露され、小学生男子からベビーカーを引いた女性、老夫婦まで様々な世代の人が足を止めて見入っていた。出演者たちは今回の「いったい音楽まつり」の取り組みをどう見ているのか。終演後まだ息の切れている中、主宰する2名に話を聞いた。
 

aladdin9 L(Drums/左) & ゆうま(Dance/右)
 
僕らは1年半くらい前に出会い、aladdin9を結成しました。僕ら2人に加えて来れる人が集まって即席セッション、という形で、ストリートやライブハウスで活動しています。メンバーは19歳~20歳が多いですが中には30代もいます。普段は新宿、渋谷、吉祥寺などで活動することが多いのですが、偶然立川で路上ライブをやった時に、「まちおん」の方に誘われて昭和記念公園のイベントに出演し、立川とのつながりが強くなりました。今回の「立川いったい音楽まつり」も「まちおん」の方の紹介で出演しました。今までにない大人数でセッションをし、大人数のお客さんとともに皆でノれるステージを作るのが今後の目標です!

 
 


aladdin9は約20分のステージの中で、とても一言では形容できないクールなパフォーマンスを披露した。外見もスタイルも異なる十数名の個性的なメンバーが、ソロパートで思い思いに奏でたり踊ったりと自分の色を出しつつ、しかしてんでバラバラということはなく、各々が各々のための照明となって相手を照らし、互いの持ち味を最大限引き立てていた。息の合った演奏と踊りは、立ち止まって彼らを見つめる客側にも伝播した。徐々に肩を揺らしてリズムを取る人、笑顔でケータイカメラのシャッターを切る人…その楽しみ方も十人十色だ。

 

 
 


今回の「立川いったい音楽まつり」に前後する形で、立川市は新文化振興計画を4月より計画し6月に策定。その中で、「多様な文化芸術活動が身近に感じられるまち」を到達目標に掲げている。多種多様なものが何かと区分され棲み分けされてしまう現代において、立川のようなジャンクでカラフルな街こそが、新しい音楽を生み、文化発信の拠点となるのかもしれない。ジャンルを超えて素晴らしい音楽が一つの場所でクロスし、想像以上の調和を生むのだ。
 

 
◆立川まちおん ホームページ
http://www.tachikawa-machion.com/
 
◆aladdin9 公式サイト
http://www5.hp-ez.com/hp/aladdin9/
 


 
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