演奏

TEXT:鈴木亮介

3ピースガールズバンド・きみとバンドがワンマンライブ『Road to Budokan 第一章 きみとバンド初のホール公演 ~浅草公会堂~』を2023年3月18日(土)に東京・浅草公会堂にて開催した。
 
きみとバンドは2020年に結成された3人組ガールズバンド。日向坂46への楽曲提供などで知られる古城康行を音楽プロデューサーに招き、2020年から2021年にかけて47都道府県ツアーを敢行。着実にファンを増やし、2022年8月にはZepp Hanedaでのワンマンライブをソールドアウトさせるなど、注目を集めている。
 
「Road to Budokan 第一章」と銘打って、2か月前に開催が発表された浅草公会堂でのワンマンライブ。この大ステージを、ネクストブレイク必至のガールズバンドはどのように彩るのか。
 
きみとバンド メンバー:
大野真依(Drums)、清原梨央(Guitar & Vocal)、森田理紗子(Vocal & Guitar)、早希(Bass/※サポート)
 

午後4時半、開演。和ロックテイストのSEに乗って、清原梨央大野真依森田理紗子がせり上がりから登場。観客は大きな手拍子で迎え入れる。森田理紗子は腕を組み、清原梨央はキュートなポーズを決め、中央に立つ大野真依が両者を支える大黒柱という感じだ。


定位置につき、大野真依のバスドラが響く。アップテンポな看板曲「きみとバンド」からライブはスタート。フロントの2人がとにかく楽しそう。全身で楽しさを表現し、観客もそれに手拍子で応える。続く2曲目は森田理紗子がエレアコに持ち替えてポップな「スタートライン」。ステージを縦横に動き回る清原梨央と、マイクに正対し定位置から歌を届け続ける森田理紗子。タイプの違うボーカリスト2人のコントラストも面白い。3曲目「はなればなれ」ではエレキの疾走感がたまらない。ベースや同期のストリングスも心地よく追走する。


最初のMCでは「一緒に素敵な時間を過ごしていきましょう」と清原梨央が呼びかけると、続く森田理紗子が音楽への思いを語る。「私には音楽しかない、その思いが強いがゆえに、見えているものが少なかったのかな…」 シンガーソングライターとして、長く一人で音楽活動を続けてきた森田理紗子の視野を広げ、いっそう大きなステージに連れ出してくれたのがきみとバンドだったのだ。「音楽ってこんなに楽しくて、自由で、正解がない。――きみとバンド、”きみのみんな”(=ファンの愛称)が教えてくれました」「私みたいに夢を追いかけて、頑張るがゆえに視野が狭くなってしまっている…そんな人たちに、きみとバンドのボーカルとして色んなことに挑戦して、こんな形があるんだなっていうことを見せたいし、いつか武道館に立って、同じ夢を志す人の希望になれたら…」
 
MCでいっそう”思い”のボルテージを上げていくきみとバンド。続く4曲目はきみとバンドにとって「原点となった曲」だという「amulet」。丁寧に丁寧に、歌い上げる。メンバー内では音楽歴の長い森田理紗子にとっても、2022年のZepp Hanedaや今回の浅草公会堂は滅多に立つことのない大舞台だろうが、曲ごとに人格を変えるように幅広い表現で大舞台に臨む。5曲目「rosemary」は高校生の放課後のイメージ、かと思えば続く6曲目「きみとふたり」はブルーのおしゃれな照明が似合うアダルティな歌声で魅せる。


続くMCでは清原梨央が「バンドを始めて3年目だが、未だにバンドマンとしての(自身の)存在意義に悩むときがある」と明かす。「まだまだ誇れるものは多くないけど、誰かに必要とされる限りステージに立ち続けたい」…声を詰まらせそうになりながら、最後は笑顔で観客に決意表明する。「きみとバンドは私がやっと見つけた居場所。ここで輝き、誰かの光になれるように、私らしく歌い続けていきます」
 
7曲目「オレンジ色の世界」はバンド屈指のロックナンバー。清原梨央はポニーテールを揺らし、右足を軸に、左足を屈めて全身でギターを掻き鳴らす。これぞガールズロック然としたスタイルだ。革ジャンにレスポールがロックアイコンなら、ガールズロッカーの王道はミニスカート、ポニーテールにストラトキャスターといったところか。


8曲目「スローモーション」は打って変わって4つ打ちのダンスナンバー。清原梨央はリズミカルに跳ねながらも客席後方や2階席にまで目くばせし、フロア全体を掌握する。一人ひとりに視線を送りながらも全体をグッと引っ張っていくステージ掌握力はさすが元メジャーアイドルだ。インタビューでの「なんでもやっちゃうのがきみとバンド」との発言の意図が、ライブを見ることで実感できる。9曲目キュート&ポップな「レリビ☆」ではフロアの一体感が一層高まる。大野真依のハイハットが歌うように明るく刻まれる。
 
続くMCでは大野真依からニューアルバム『kimiban』のリリースが改めて発表される。「これが今のきみとバンドです、と言えるのが嬉しい」とのことで、10曲目は新譜から「さよならリフレイン」。森田理紗子が鍵盤を弾きながら、のびやかに歌い上げる。大野真依の骨太なドラムも心地よい。アウトロではたっぷりとギター、ベース、ドラム、シンセサイザーを聴かせる。アウトロをこれだけ長く、静かに聴かせることができるのだから、きみとバンドはガールズロックが好きな音楽ファンに恵まれているのだろう。客席から長い長い、熱い拍手が起きる。


11曲目「シャボン玉」は森田理紗子の伸び伸びとしたボーカルに、清原梨央の泣きのギターソロが沁みる。12曲目「歌にのせて」は大野真依のバスドラが心地よい。森田理紗子のエレアコとの、シンプルな音色で魅せる。楽器初心者として始動したきみとバンド、その進化・深化を堪能していると、清原梨央の底抜けに明るい掛け声「きみが好き!」がフォグランプとなって客席を照らす。13曲目「きみが好き」はワクワク感のあふれる楽曲。そして14曲目は8分の6拍子の「蝉しぐれ」。森田理紗子のボーカルが突き抜ける。間奏の清原梨央のギターソロがとにかくかっこいい。パワフルな楽曲が浅草公会堂の広い空間を幸福色に染めていく。


終盤を予期させる、4回目のMCでは大野真依がその胸の内を語る。「中学生の頃に芸能界を目指して…その頃は何がしたいとかこれがやりたいという気持ちがなくて。何でも受け入れて柔軟に対応できてるとファンの方には言ってもらえるけど、私はそれが逆に、自分が空っぽで、嫌だなって思うこともあった」 …ライブの告知やSNSで当たり前のように日本武道館と言えることが、「目指せるところにいるんだな」と思えると同時に、自身のモチベーションにもなっていたという。
 
「応援してきてくれたファンの皆さんや家族のためにと言うと、すごく恩着せがましくていやなんですけど、空っぽだった私にとって、みんなを日本武道館に連れていくという明確な目標が私の全ての原動力になっています。だから私は、みんなとの約束を守るなら何だってするし、絶対にファンのみんなとメンバーと、このチームで日本武道館に立ちたいと思っています」


しみじみと、じんわりと、熱い思いが込み上げてくるが、感傷に浸っている場合じゃない!とばかりに強いギターとドラムが静寂を切り裂く!15曲目「あの場所へ」。森田理紗子はギターを置いてボーカルに専念。きみとバンド屈指のハードなロックナンバーに、観客も拳を挙げて応える。16曲目「恋のモンスター」では一転、大きな手拍子に応えてステージのメンバー皆で飛び跳ねる。勢いそのままに17曲目「∞YAKEN」は思わず笑みがこぼれるアップテンポナンバー。最後は切なさ2:前向きさ8くらいのこの時期ぴったりな「春風問答」。ステージには桜吹雪が舞い、森田理紗子清原梨央のツインボーカル競演で笑顔の大団円。


アンコールでは1年ぶりの全国ツアーを発表すると、清原梨央がハンドマイクを持って、観客も俄然ラッパーと化して、愛媛県東温市の魅力を伝えるご当地PR曲「東温ラブストーリー」を楽しく披露。清原梨央にダル絡みされて戸惑う森田理紗子を、観客も笑顔で見守る。そして最後は優しさにあふれた「rebirth」で幕を閉じた。
 
「演出や衣装も凝らせていただき 来てくれたみんなの心に残るライブになってくれたら嬉しい」(大野真依)、「武道館を目指して、これからもみんなと共にいきたい」(清原梨央)、「ホールであんなにかっこいい登場をして(自分で言う)みんなの前で歌うことが出来て。本当に幸せ」(森田理紗子)…三者三様に感想をツイートしたメンバー。余韻に浸る間もなく?翌朝には森田理紗子の地元・福井県のイベントに出演するなど、精力的にライブ活動を続けている。きみとバンドの日本武道館への道のり、Road to BUDOKANは今、始まったばかりだ。


※本記事の写真はオフィシャルフォトを掲載しています。
 

◆セットリスト
M01. きみとバンド
M02. スタートライン
M03. はなればなれ
M04. amulet
M05. rosemary
M06. きみとふたり
M07. オレンジ色の世界
M08. スローモーション
M09. レリビ☆
M10. さよならリフレイン
M11. シャボン玉
M12. 歌にのせて
M13. きみが好き
M14. 蝉しぐれ
M15. あの場所へ
M16. 恋のモンスター
M17. ∞YAKEN
M18. 春風問答
-encore-
M19. 東温ラブストーリー
E02. rebirth
◆きみとバンド 各種リンク先
https://linktr.ee/kimitoband
 
◆インフォメーション
ニューアルバム『kimiban』発売中
https://photoevent.shop/items/64019b7bd77a6f48c6ce86a3
 

◆関連記事
【特集】rock girly parfait 森田理紗子(きみとバンド)
http://www.beeast69.com/feature/186775
【特集】rock girly parfait 清原梨央(きみとバンド)
http://www.beeast69.com/feature/186567
 

 


 
 
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