演奏

TEXT:まりな


日本のロックの先頭に立つバンドASIAN KUNG-FU GENERATIONが2015年5月、2年8カ月ぶりにリリースした待望のニューアルバム『Wonder Future』は全曲アメリカ、ロサンゼルスにあるフーファイターズのプライベートスタジオ「Studio 606」にてレコーディングされ、一曲目の一音から全てのロックファンを興奮させる作品となっている。アンプから出る楽器の音がダイレクトに感じられ、ロックファンのみならず、きっと初めてバンドというものに触れた人でさえ「これがロックか!」と何か新しい扉を開ける、そんな一枚だ。
 
7月5日の埼玉公演を皮切りに始まった「Tour 2015 Wonder Future」はステージセットを一級建築士の光嶋裕介が担当。光嶋は独創的な建築物を設計し、去年には「幻想都市風景」のドローイング作品展を行ったことで知られる、今注目を集める新進気鋭の建築家だ。
 
そんな新しい試みがされる今回のツアーは全国を回った後、11月からはラテンアメリカツアーとして4カ国をめぐることも発表され、演出含め大規模なツアーになると思われる。まだまだ旅の途中ではあるので曲順や演出の細かい描写は避けつつ、7月18日の横浜アリーナ公演の模様をレポートしたい。
 
ASIAN KUNG-FU GENERATION メンバー:
山田貴洋(Bass & Vocal)、後藤正文(Vocal & Guitar)、喜多建介(Guitar & Vocal)、伊地知潔(Drums)、
下村亮介(Keyboard & Guitar/※サポート)

 

 
開場して中に入るとステージには巨大な真っ白なパネル、というより巨大な箱のような立方体がいくつも乱立していた。そのそれぞれの箱の上にマイク、キーボード、ドラムなどの楽器がセットされている。観客はその異質な空間に思わずカメラを向けようとするが、撮影は禁止とのアナウンスの声に手を下げる。ただし今日のライブはアンコールのみ撮影が可能になっている。あの真っ白な箱がどんなステージを演出するのか、期待に胸を膨らませてそのときを待つ。
 
と、暗転した後、白いシャツに黒いパンツというシンプルな衣装のメンバーが登場すると大きな手拍子が始まり、ライブがスタートした。
 


曲に入ると突如ステージ中に模様が次々に浮かび上がり、巨大なプロジェクションマッピングの映像に会場中は大きなどよめきが起きる。光嶋の作品、幻想都市風景のドローイングを基にした映像は遠くから見ると「幾何学模様」だったり「粒子の集合体」にも見える。しかしその模様一つ一つが味のある家や建物であったりして、メンバーがその幻想的な街の中で演奏しているかのように映し出されていた。
 
「こんばんは、アジアンカンフージェネレーションです。」後藤の声に上がる歓声。曲間に客席からメンバーの名前を呼ぶ声が飛びかうが、男性の声が多いように感じる。もちろん女性ファンも多いが、完全に音楽で勝負しているバンドなだけあり、同性からの人気も高い。個人的な主観だが学生の頃、軽音楽部の人たちはバンドを始めたきっかけとしてアジカンの名を挙げることが多かったイメージがある。純粋な音楽ファンが憧れるバンドであることはずっと変わっていない。
 
 

低音が心臓に響く、ラウドな音と勢いの良い演奏、そして目が離せない大規模なセットに会場中が大興奮のまま、MCも少なめに駆け抜けるようにライブが進行していく。「Wonder Future」に収録されている曲を中軸に従来からの人気ナンバーも披露。
 
中でもアジカンでNo.1といっていいほど広く知られている人気曲「リライト」が始まると客席の盛り上がりは一気に爆発的になった。観客は腕を挙げ、サビでは一緒になって叫ぶように歌う。間奏の昇り竜のようなギターソロ、耳に残るフレーズを繰り返すベースソロの後、だんだんと音量が上がっていき、音の渦となる。観客の大合唱と手拍子、それをあおるような演奏は圧巻だ。
 
 

ライブも中盤に差し掛かかり、キーボードの下村亮介the chef cooks me)がギターに持ちかえると「Eternal Sunshine/永遠の陽光」が始まり、ステージはオレンジ色に染まった。
 
映画『エターナルサンシャイン』の監督、Michel Gondryのつくるミュージックビデオは視覚からも曲を感覚的に取り入れることの出来る映像だが、この日のライブのセットも曲に合わせて映像の世界観があり、ギターリフに合わせて光が動き回ったりと曲をより感覚的にするものだった。一曲、一曲まるでMVを観ているかのようでもある。
 


ギターの喜多がリードボーカルをとる曲もはさみつつ、回転して動き回る石垣の上でメンバーが演奏するなど、もはやアトラクションばりの迫力ある映像と演奏が披露されていき、本編最後の曲がおわるとメンバーが退場。
 
しかし間髪入れずすぐにアンコールの手拍子が始まる。と、ここで観客が手に持つiPhoneのライトをつけてペンライトのように振り出した。その数はだんだんと増えていき、会場内はまるでプラネタリウムのような光景に包まれる。ステージにメンバーが再登場するといっせいにカメラがステージに向けられシャッター音が四方から聞こえてきた。
 
「懐かしい曲を含む・・・あと何曲か演奏して帰ります」と言って演奏が始まると、客席は大いに盛り上がり腕を振り上げて跳ねる!後藤の声もどこまでも届きそうなほど会場中に響き渡り、それに呼応するようにメンバーの演奏も激しくなっていく。いつまでもこの音の渦と熱狂の中にいたい、そんなふうに思わせる空間だった。
 
そのあとのMCでは来年で結成20周年ということで、結成時のときの話も交えつつメンバー紹介。伊地知の料理本の宣伝などがあり、「買わないほうが良い。(料理本だったら)僕のソロのCDのほうが・・・」と後藤が軽口を言い、観客からはあたたかい笑いが起こる。
 
初期からの大人気ナンバーになると観客の盛り上がりは最高潮になり、サビでは足元が大きくゆれ、後藤の声に続いて大きい掛け声が起こった。
 
そして最後は、映画のエンドロールのような映像とともに、今日で一番と言っていいほど感情的な歌と演奏で占めた。”Wonder Future”の文字と幻想都市風景の映像の前で、メンバーが肩を組んで並びお辞儀をし、大きな拍手とともに約2時間半のライブは幕を閉じた。
 


 
「ワンダーフューチャー 霧の先にどんな未来が待っていたって もう漕ぎ出してしまったんだな」
 
ステージ上の真っ白いセットはキャンパスとなって様々な模様を映し出した。これは今回のアルバムのジャケットが真っ白だったことにも通じる。「未来はわからない。何も見えない。でもそれは何にでもなりえると言うことだ」そんなことを『Wonder Future』のライブでリスナーに体現してみせてくれたように思えるのだ。
 
今後も全国を回り、10月には東京国際フォーラムホールAで2 DAYSのステージも行われる。プロジェクションマッピングの迫力のある映像は写真や文章では100パーセント伝わらないので、是非その目で観て、そしてアジカンの曲を視覚からも体感してほしい。
 

◆ASIAN KUNG-FU GENERATION
 公式サイト

http://www.asiankung-fu.com/
 
 
◆リリース情報
ニューアルバム『Wonder Future』
・2015年05月27日(水)発売
<収録曲>
M01. Easter / 復活祭
M02. Little Lennon / 小さなレノン
M03. Winner and Loser / 勝者と敗者
M04. Caterpillar / 芋虫
M05. Eternal Sunshine / 永遠の陽光
M06. Planet of the Apes / 猿の惑星
M07. Standard / スタンダード
M08. Wonder Future / ワンダーフューチャー
M09. Prisoner in a Flame / 額の中の囚人
M10. Signal on the Street / 街頭のシグナル
M11. Opera Glasses / オペラグラス

◆ライブ情報
ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour2015「Wonder Future」

・2015年07月05日(日)【埼 玉】戸田市文化会館
・2015年07月08日(水)【群 馬】ベイシア文化ホール
・2015年07月11日(土)【栃 木】宇都宮市文化会館
・2015年07月18日(土)【神奈川】横浜アリーナ
・2015年07月22日(水)【北海道】旭川市民文化会館
・2015年07月24日(金)【北海道】札幌市民ホール
・2015年07月28日(火)【愛 媛】松山市民会館・大ホール
・2015年07月29日(水)【香 川】サンポートホール高松・大ホール
・2015年08月24日(月)【神奈川】鎌倉芸術館大ホール
・2015年08月25日(火)【神奈川】鎌倉芸術館大ホール
・2015年08月29日(土)【石 川】本多の森ホール
・2015年08月30日(日)【新 潟】新潟県民会館
・2015年09月02日(水)【埼 玉】大宮ソニックシティ 大ホール
・2015年09月05日(土)【静 岡】アクトシティ浜松
・2015年09月06日(日)【静 岡】富士市文化会館(ロゼシアター)
・2015年09月11日(金)【岩 手】大船渡リアスホール
・2015年09月13日(日)【福 島】いわきアリオス
・2015年09月18日(金)【鹿児島】鹿児島市民文化ホール第一
・2015年09月20日(日)【福 岡】福岡サンパレス ホテル&ホール
・2015年09月22日(火)【広 島】上野学園ホール
・2015年09月23日(水)【岡 山】倉敷市民会館
・2015年09月25日(金)【兵 庫】神戸国際会館 こくさいホール
・2015年10月02日(金)【岐 阜】長良川国際会議場
・2015年10月04日(日)【愛 知】名古屋国際会議場センチュリーホール
・2015年10月09日(金)【大 阪】オリックス劇場
・2015年10月10日(土)【大 阪】オリックス劇場
・2015年10月12日(月)【宮 城】仙台サンプラザホール
・2015年10月15日(木)【東 京】東京国際フォーラム ホールA
・2015年10月16日(金)【東 京】東京国際フォーラム ホールA
・2015年10月24日(土)【沖 縄】沖縄市民会館大ホール

 
◆ツアー特設サイト
http://www.akglive.com/wonderfuture/

 
◆関連記事
【コラム】三原勇希 十一時間目:10年目の、ASIAN KUNG-FU GENERATION
http://www.beeast69.com/column/mihara/75046
【レポート】LIVE直送 from 東京電台vol.1 ASIAN KUNG-FU GENERATION
http://www.beeast69.com/report/53109


 
 
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