演奏

lead_asiankunfugene

TEXT:菅野美咲


TOKYO FM初のアジアライブプロジェクト「LIVE 直送from 東京電台」が台湾のLegacy TAIPEIから始動した。このプロジェクトは香港、中国、シンガポール、韓国といったアジア各国の企業とタイアップをしながら、日本の良質な音楽を届ける、といういわば、アジアへの挑戦かつ音楽シーンの啓蒙的なプロジェクトである。その第1段として先陣をきったのはASIAN KUNG-FU GENERATION。トップバッターにふさわしい「日本代表」なロックを台湾に響かせてくれた。
 
現地時間19:30開場、オーディエンスは入口で係員から手にスタンプを押してもらうと同時にステージめがけて猛ダッシュ。少しでも近くでアジカンの音を感じたい、そんな気持ちは台湾でも変わらない。オーディエンスの中には現地のファンのみならず、がっしりとした欧米系のグループもちらほら。その中の1人は背中に大きく日本の戦国武将がプリントされたTシャツを着用し、自慢げに仲間に披露していた。そんなジャパニーズ・カルチャーの真髄で、プロジェクトの本質である「日本の良質な音楽」の時間は始まった。
 
ASIAN KUNG-FU GENERATION メンバー:
山田貴洋(Bass & Vocal)、後藤正文(Vocal & Guitar)、喜多建介(Guitar & Vocal)、伊地知潔(Drums)

客入れのBGMが止まるとただならぬ歓声で空間が覆い尽くされる。そしてSEでそれはさらに大きくなり、メンバーが登場するとフロアは歓喜のオールハンズアップ。そのままの状態からクラップユアハンズといわんばかりのごきげんなチューン、「迷子犬と雨のビート」が台湾に降った。雨模様の週末を憂鬱にさせない、それどころか思わずスキップしてしまうようなメロディに1200人の愉楽と興奮が凝縮される。
 
 

伊地知潔のドラムに合わせて1200人がハンドクラップを共にし、お決まりのコーラスを共有した「アンダースタンド」はまるで共通言語のようで、どこまでも気高く、いつまでも心地よい。そして山田貴洋が重く掻き立てるようなイントロを鳴らせば、序盤とは思えない熱量でオーディエンスは沸点へ向かう。「遥か彼方」だ。
 
MCになるとフロアのあちこちから「ゴッチー!」という声があがり、それに応えるように後藤正文は見事な北京語であいさつをする。「thank you, ありがとう、謝謝」と述べたこの「ありがとう」だけがおそらくこの日のMCで発した唯一の日本語で、他はどの場面であっても現地語か英語でのみフロアとコミュニケーションをし、アウェイ感ゼロな頼もしさを見せてくれた。
 
 

MC後のチャットモンチー橋本絵莉子との共同楽曲、「All right part 2」では歌詞がとぶというハプニング。しかし「オールライト、オールライト」とポジティヴな歌詞を心地よく響かせるこの楽曲でやってしまうあたり、なんだか確信犯。続く「N2」で深海のように未知で未開なフロンティアを開拓すれば、喜多建介山田貴洋が互いのサウンドをキャッチボールし、ライト、レフトと照明を巻き込んで呼応しあう。その共鳴の先に創造されたのは「ブルートレイン」。発車の準備はできていた。そのまま「AとZ」「新世紀のラブソング」を丁寧に歌いあげると、後藤正文は3.11東日本大震災の際に台湾の人々が支援してくれたことに対して、オールイングリッシュで感謝を述べた。音楽性だけでなく、こういった性格も台湾で受け入れられる要因なのだろう。
 
そしてそれは続く「それでは、また明日」にリンクし、核心ついたメッセージでオーディエンスの心を震わす。「アフターダーク」「未来の破片」と出し惜しみのない選曲に続いて後藤正文が静かに「リライト」と宣言すれば、フロアは窒息寸前のエールで歓迎する。まるで「曲を終わらせないで!」というオーディエンスの願いに応えるように4人のソロがかけあいながら加速し、本来3分46秒のロックは5分43秒の国境なきロックへ進化を遂げる。そして熱量そのままに「ループ&ループ」「君という花」と畳み掛け、「マーチングバンド」で本編を締めくくった。
 
 

だが、台湾の夜はもう少し続く。「アンコール!アンコール!」というかけ声はいつの間にか「AKG」コールへと変わっていた。その敬愛に応えるアンコールは「踵で愛を打ち鳴らせ」。そして「ソラニン」の最初の1音が鳴った瞬間にフロアは受け止めきれないエネルギーを一斉に放ち、一生分の興奮を「ソラニン」に詰め込んだ。そしてその最後の1音を吸い込むと同時に吐き出された「アジカーン!」の声と「AKG、大好きです」という片言(かたこと)の日本語。その時間に対し後藤正文は「謝謝、再見(ありがとう、またね)」と約束し、「転がる岩、君に朝が降る」をLegacy TAIPEIに刻んでいった。
 
メンバーは惜しみない拍手を受けながらステージを後にする。しかしフロアのライトが点灯し、BGMが流れ出してもアジカンを求めるハンドクラップは止まない。そんな中、熱を帯びた「ファンタスティック!」という声がした。その興奮を辿った先にいたのは、戦国武将Tシャツの彼だ。嗚呼、日本にアジカンがいてよかった。
 

◆セットリスト
M01. 迷子犬と雨のビート
M02. Re: Re:
M03. アンダースタンド
M04. 君の街まで
M05. 遥か彼方
M06. All right part 2
M07. N2
M08. ブルートレイン
M09. AとZ
M10. 新世紀のラブソング
M11. それでは、また明日
M12. アフターダーク
M13. 未来の破片
M14. リライト
M15. ループ&ループ
M16. 君という花
M17. マーチングバンド
-encore-
en1. 踵で愛を打ち鳴らせ
en2. ソラニン
en3. 転がる岩、君に朝が降る
 



 
◆ASIAN KUNG-FU GENERATION 公式サイト
http://www.asiankung-fu.com/
 
◆インフォメーション
「弱虫のロック論 -平山雄一
第二音楽評論集リリース・パーティ-」

・2013年02月27日(水)【東京】Zepp Tokyo
出演:奥田民生 / ASIAN KUNG-FU GENERATION

 
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【特集】Editor’s Note…PASSION ロックにできること ~アジアを一つに~
http://www.beeast69.com/feature/26569


 
 
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