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【NEWS】Marty Friedmanが映画『Not Dead Yet』を語るインタビュー

2014年11月06日

先日、BEEASTのニュースでも告知を行った、映画『ジェイソン・ベッカー Not Dead Yet ~不死身の天才ギタリスト~』の日本公開が間近に迫っている今日、映画の中心人物であるJason Beckerと若き日より親交のあるギタリストで、劇中にも登場しているMarty Friedmanが、彼と映画について語ってくれた。 


 
marty—Cacophonyの時代は、MartyさんとJasonさんにとって、どんな時代だったのでしょう?
 
Marty:そうですね…あのころ僕はどちらかというと「お兄ちゃん」という感じでした(笑)。二人ともそれぞれ別の長所、短所があって、僕は音楽的センスがかなり変態的な方(笑)。冒険的で、音楽をかなりユニークなところに発展させることができたんですよ。Jasonはテクニック的にすごく器用な感じ。僕も結構器用な方でしたけど、彼はそれに輪をかけて信じられないくらい器用。でも、音楽的にはウブな方だったと思う。
 
だから彼は僕からいろんな冒険的な音楽的のコンセプトに影響を受けていたみたいでした。僕は彼のおかげで、テクニカルな面でメチャメチャにレベルが上がりましたし。そして僕らはおそらく他の人との組み合わせではできないことが、できていたと思います。
 
—最強の組み合わせだった様子がうかがえますね。Jasonさんとお付き合いする中で、Martyさん自身は音楽以外の面からどのようなものを得られたのでしょうか?
 
Marty:彼は本当にきれいな形で、彼が抱えている病気の壁を乗り越えている。そのこと自体は大きく僕に影響しましたね。彼はとってもプラス思考。ずっとメールなんかで連絡を取り合っているけど、その中には一切「大変だな」「もう僕もダメだな」なんて言葉がないんです。まったく自分のことを「可哀そう」だなんて思っていないし、周りにもそう思ってほしくない、だから自分自身も全然鬱にならないし、僕らは完全に病気になる前と同じようなやり取り。お互いを侮辱したり、下品なジョークを言い合ったりとか。だから本当に彼はスゲエなって思いました。
 
—Martyさんは映画の中で、「自分が成功していったことを話しづらかったけど、彼は話しても全然それをねたむようなことを一度も言わなかった」とおっしゃっていましたね。そこにはお二人の友情の深さを感じました。
 
Marty:そうですね。僕らは家族みたいなものだけど、厳密には家族とは違う別の深さがあるし、お互いにうまくいってほしいと本当に思っている。もちろん、普通にそれなりの嫉妬なんかもあるけど、どちらかといえば少ないんですよ、僕らの中では。
 
—Jasonさんと今のような出会い方をしなかったら、Martyさんの人生はどんなものだったと思いますか?
 
Marty:どうでしょうかね…まあ多分お互いに会えなかったとしても、現状と似た結果にはなっていたんじゃないかな?と思います。僕ら二人の共通点は、「とにかく音楽が最優先」であること。何より音楽で、彼は病気になったときに、医者から余命あと少しと言われても、「ツアーはできるかな?」「次のアルバムは完成できるか?」って。僕もいろいろやっているけど、本業は音楽で、その他の諸々のことも間接的には音楽にかかわることをやっていますし。音楽しか関係ない。だから会わなくても、それは変わらないんじゃないかな。
 
ただ、パーソナルな面から見ると、今ほどいい人じゃなかったかもしれませんね。多分もっとエゴイストで、人間的にイカれている奴になったかもしれない(笑)
 


 
marty—Jasonさん自身のことをおうかがいできればと思います。映画で描かれているJasonさんって、とってもチャーミングに感じました、女心をつかむ心得があるというか(笑)。Jasonさんの素顔って、どのような感じなのでしょうか?
 
Marty:彼は僕と同じように、女の人にアピールするのが第一なんですよ、あ、前の話で言った「音楽が第一!」っていう話は忘れてね(笑)。まあ男はみんなそうだよね(笑)。でも、それはやっぱり大事ですよね。人間ですから。
 
—劇中にもガールフレンドが何人か登場されていますし…
 
Marty:そう!いつもいっぱいガールフレンドがいるんですよ、あいつ!(笑)。普通の元気な人よりたくさん女の子に囲まれている。それって、Jasonの魔法だと思うんですよね。
 
—なるほど。人間として本当に魅力的な雰囲気が感じられますね。来日された映像も劇中にはありましたが、何か二人での日本の思い出はありますか?
 
Marty:二人とも音楽はハードでメタルで、ダークなところもあるけど、実はキャラとして意外とKAWAII系が好き(笑)。だからその当時日本に来たら、ヌイグルミとかシールとか、完全に「ギャル」みたいな(笑)。ミッキーマウスとかミニーマウスとか、BURGER KINGのオマケの時計をつけたり。アメリカでそういうのは恥ずかしいからしないけど、日本だと大丈夫、っていう感じだったから、僕もJasonもそんなKAWAII文化をすごく気に入っていたんですよ、本当に恥知らずというか(笑)
 
—そうでしたか。でもとても素直な本質も見えてきますね。Jasonさんの周辺ではいろんなチャリティコンサートが行われたり、チャリティアルバムがリリースされたりしていますが、今回もそのいろんな有名なミュージシャンがたくさん映画の中で出演されていますよね。そんなミュージシャン仲間に、Jasonさんが今もすごく慕われているのは、どんな理由があるからだと思いますか?
 
Marty:まず病気はさておいて、こんな素敵なミュージシャンは世の中本当に少ない。彼は現代のBachBeethovenみたいな存在だと思うんです。病気なのに(彼自身の夢を)実現しているって本当にすごい。とにかくその音楽に尊敬する人も多いけど、病気の彼を見て「僕だったらどうしていただろう?」と考えると、さらに彼のことを応援したくなるんですよ。だからビッグネームのミュージシャンですらJasonのことをとても尊敬してる人も多いんです。
 
—Steve Vaiさんが劇中でおっしゃっていましたが、「ああいう病気になっても、音楽を捨てなかった、音楽をやり続けているっていうことがまさに人の真実であり、音楽の求めるモノの姿だ」ということをおっしゃっていましたが、そういうことも皆さんは共感を得られているということでしょうか?
 
Marty:そうですね、共感できると思います。多分SteveJoe Satrianiも、僕もだと思うんですけど、音楽が命なんですよ。音楽のために生きている。そういう人間は、どういう状態になっても音楽を続けたいにちがいない。むしろ音楽がないと何もない。彼は音楽を追究しているおかげで、命が3年といわれたのに、25年も生き続けている。つまりその追究がなければ、彼の生きる理由も無くなってしまい、すぐダメになるでしょう。
 
だからみんな、人生のために自分の音楽をやっている。だからそれは共感できるかもしれない。「もし僕だったら同じことをやっているかもしれない」「でも、僕じゃなくって良かった」「だけど、Jasonみたいないい人がこんなことになるなんて、ホントに大変で信じられない、人生ズルいじゃん!?」って。そんなふうに思っちゃうんです。 


 
marty—たとえばCacophonyのように、またJasonさんとやっていこうと思っていること、やってみたいことはありますか?
 
Marty:すでにやっているんだけど、僕の最新のアルバム『INFERNO』で、一曲共作したんですよ。映画の中で彼がお父さんとメロディをいじっているシーンがあるんだけど、それを僕はそれを見て気になったので、彼に「あのメロディって、どこかで使っている?」って聞いたら「まだ使っていないんだよ」って言ったんです。だからあれを利用して新しい曲をコラボしよう、って提案したら、彼が喜んでくれて。
 
合わせてさらに他の音楽のアイデアも送ってもらいました。それで僕は自分のアイデアを足してアレンジ。そういう意味では完全にCacophonyみたいな形。もちろんギターを全部弾いているのは僕なんだけど、完全に25年成長したCacophonyが聴けるという機会を実現しました。
 
—なるほど。それを今後さらに活発化していこうという動きもあるのでしょうか?
 
Marty:いやもう、それは喜んでという気持ちです!今回の作業は、実はそれほど大変じゃなかったんですよ。やり方は前のCacophonyの時代と変わらず、ソングライティングをして、その曲作りを合わせて、僕がアレンジして、どういうふうに演奏するかを決める。それは前と同じでしたから。このアルバムの中の曲で「Horrors」という曲がそれなんですが、できたときにこれを彼に聴かせるときはすごくワクワクしました!途中経過でも聴かせてあげたかったんだけどね。
 
でもすごく気に入ってもらえてとても安心しましたし、嬉しかった。とても貴重なことですよ、彼のアイデアで今でも音楽が作れるなんて。しかも彼は、今作っている音楽も発展しているしちゃんと成長している。つまり今の彼の頭の中や脳ミソは僕らと同じ。体の制限があるだけで、頭の中は完全に普通なんです。
 
—曲を作られているとき、その「Horrors」に込めた思いみたいなものってありましたか?
 
Marty:そうですね…僕は何をやっても完璧主義者なんですが、なぜか完璧よりさらにワンランク上を探していたんですね。これは本当にみんなが期待しているし、下手をするわけにもいかない、MartyJasonの二人の組み合わせで「前の方が良かった」とか言われたくなかったし(笑)。でもそれって大事なことですよね?だって、25年経ってやるんだったら、前の方が良いって言われたら、やる意味がないじゃないですか。
 
だから本当にビックリさせるように、満足させるように、「スゲーじゃん!?」って言われるように、すごく頑張りました。いつも頑張っているけど、これはやっぱり「ほかの人の名前」とか、「ほかの人の命」を賭けていたから。「僕の命」を賭けるのはいつものことだけど、二人の命を賭けたから、責任が倍です。
 
—それは素晴らしいお仕事を成し遂げられましたね。本当にコラボという意味では何年ぶりだったのでしょうか?
 
Marty:バンドの頃は89年だったから、本当に25年ぶり。まあちょっとしたことはいろいろやってあげたことはあったけど、ちゃんとしたコラボはね。本当に長かったですね。やるんだったらちゃんとこういうやり方じゃないとね。
 
—そのやり取りというところで、たとえば相手が病気だというのを忘れて、ライバル心みたいな感情も出たのでしょうか?
 
Marty:いや、ライバル心はないですね。でも、彼が病気だっていうことはすぐ忘れちゃっていました。彼とのやり取りの中で、病気の話は出てこない。むしろお互いを侮辱したり、悪口を言い合ったり。「あのフレーズ、下手くそじゃん!?」「チューニング悪いよ!」とかね(笑)。このアルバムではいろんな人たちとコラボしていたけど、まったくその連中と同じようなやり取りをしていました。 


 
marty—Martyさんご自身がこの映画を見られたときに、どのようなことを感じられましたでしょうか?Jasonさん自身を生活の中で目にしていて、そこから映画での視点というとまた見え方が少し変わるポイントがあるかと思ったのですが。
 
Marty:彼に対しての見え方が変わったところは、何もないです。実はそれってとてもありがたいこと。監督がとてもきれいにこの話を編集して、正直なストーリーにしてくれました。その中には全然作り話はないし。僕がこの映画を見て「こんなことがあったんだ!知らなかった!」なんて話は一切ないです。
 
—作品を見られる前に、不安な気持ちもあったのでしょうか?
 
Marty:そうですね、正直、心配で不安でした。「病気に関して具体的な話を詰め込み過ぎていないか」「彼は可哀そうみたいなスタンスになっていないか」とか、具体的に話がダサくなるとか。悲し過ぎて鬱になるような話とか、そんな話になっていないかってね。だから映画を見たときには本当に安心しました。ドキュメントとしてきれいにまとめられたので、非常にありがたい。というのは、たとえばこういった話って、なかなか人の会話の中だけでは説明しきれないことですよね。だからこの映画は短くても、幸せなこと、悲しいことも全部入れて、とても正しくまとめられています。
 
—ではMartyさんが普段Jasonさんと接している中で受けた影響や感動が、映画でそのまま共有できるということですね。
 
Marty:そうです。もちろん彼とずっとBest Friendでいる経緯は、映画では短いから全部入っているわけではないけど、彼のキャラがかなりわかるかもしれないし、彼の現状がわかるので、とても勉強になる、かつ「エンタテインメント」としても、悲しくない。前向きでハッピーな作品ですから、笑い心もあり、映画館を出たあとで悲しくなるわけがないと思います。
 
—映画出演のオファーを受けたときに、いろんな心配があったと思いますが、その決心を決めたときの気持ちとはどのようなものだったのでしょうか?
 
Marty:監督とたくさんのディスカッションを行って、彼の意思が本当に心からちゃんとしているということを感じたんです。やりたい理由が本物。だから、それを理解した上で「何でも協力するよ」と申し出たんです。とにかくいつもJasonのことについてはなんでも協力する姿勢でいますから。ただ映画って本当にうまくいかないと、下手をするとカッコ悪いんですよね。だから監督の気持ちを理解して、絶対同じチームに入ろうと決心しました。
 
—(Jesse Vile)監督とお話をされた中で、印象的なことはありましたか?
 
Marty:そうですね、「彼は偉いな」って思いました。映画ってそんなにお金が戻ってくるみたいな保証がないからとてもリスクが高い。それを監督は全て自分のリスクにしてまで制作を進めました。ある意味賭け事みたいなものですよね。でも、彼との話には深い思いが感じられたので、僕はとてもありがたいと思いました。Jasonの話をみんなに紹介したい、何よりそう思っていましたし。彼は自分の壁を全て乗り越えた、その話をとても高いクオリティの映画として完成できたから、いろんな賞ももらっている。
 
また、このJasonのお話をしっかり世に伝えないと(彼が)可哀そうだと思っていましたし。儲かる話ではないし、センセーショナルなストーリーでもない、グロくて怖い話でもない。この話の心をみんなに伝えたかったですね。
 
—劇中では病気になって、夢が打ち砕かれ、すごく悲しくなるシーンから、友達がいっぱい集まって来て、最後にまた家族に囲まれて誕生日を祝っているというところでスッと明るい話になって、見ている人がとても救われた気分になって、最後にMartyさんがもう一度現れて、すごく家族愛や友情というものを感じたんですね、ミュージシャンのドキュメンタリーだけど。だからきっと一般の人が見ても、感動できるんだと思いましたね。
 
Marty:そう、その通り。だからむしろ、一般の人にこの話を届けてほしいと思うんです。ミュージシャンの人は大体、特にギタリストは彼の話は割と知っているんです、もちろんこの映画で語っているほど深くは知らないけど。でも彼の話は音楽に興味のある人だけでなく、一般の人にも知ってもらいたい。だからこそ映画になる必要があったんです。そう監督は思っていた。ギタリストはみんなJasonのことを知っている。でもヒット曲を出したことはないから、一般のミュージックファンや音楽に興味のない人はまったく彼を知らない。だからこの話を説明しなければいけないんです。
 
—最後にこのメディアを見ている方たちに、メッセージをいただければと思います。
 
Marty:この映画は、まず「悲しい映画」じゃないです。音楽ドキュメンタリーのつまらなそうな映画でもない。これはみんないろんな面で共感できる話。音楽もたっぷり入っているし、楽しい映画。でも泣くかもしれない、笑うかもしれない。新しく、素晴らしいミュージシャンを発見するかもしれない。でもつまらない医学的なデータや音楽の技術的な話はないです。完全に人間の話で、かつ最高にエンタテインメントとして良い映画ですから。それがいえるのは嬉しい。あと、イケメンのギタリストも出ているし(笑)。
 
みんなとても良いものをもらえると思います。自分の人生の中で、どんなふうにこの映画を利用して、自分の夢を実現に近づけるために、どんなふうにインスパイアされるでしょうか?この映画を見たら、自分の目的に向かって一直線に行けるようになると思います。人にはそれぞれ生きていく上で、壁があるじゃないですか?Jasonほど大きな壁は少ないかもしれない。彼はその壁も乗り越える。この映画を見たら、「自分の壁はそれほど大きなものではないんじゃないか?もう少し頑張ったら、何とかなるのでは?」と思ってくれればいい。そういうふうに見てほしいです。
 


 
marty◆映画情報
 
『ジェイソン・ベッカー Not Dead Yet
~不死身の天才ギタリスト~』

2014年11月8日 新宿シネマカリテ 他 全国公開
 
監督&プロデュース:Jesse Vile
上映時間:87分
配給:アートスタby k&ag / マウンテンゲートプロダクション
協力:メダリオンメディア
宣伝協力:Heavy Metal Wrestling
後援:一般社団法人日本ALS協会
 
オフィシャルサイト
http://notdeadyet.jp/
公式ツイッター
https://twitter.com/NotDeadYetJp

 


 
◆11/8(土)新宿シネマカリテ 初日舞台挨拶の詳細のお知らせ
 
【会場】新宿シネマカリテ 03-3352-5645
【日時】11月8日(土) 21:00の回、上映開始前
【登壇者(予定)】Jesse Vile監督、Marty Friedman
【司会】増田勇一
※登壇者は予告なく変更する場合がございます。予めご了承下さい。
チケットに関しては以下サイトをご参照ください。
http://qualite.musashino-k.jp/index.php


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