特集

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※データトラブルにより記事の公開が遅れた事をお詫びいたします。(編集部)

TEXT:長澤智典 PHOTO:ossie

インディーズバンドシーンの活性化」「バンドで食うって何?」とテーマを掲げ、トークセッション(討論)を続けてきた「吉祥寺トークセッション」。レギュラーパネラーは、このイベント主催者であるY.O.U.(e:cho)JUN(Ciel Noctunre 他)・大西(Black-listed Records) の3人。さらに今回も、やのっちぇ(a.k.a.~/BLASDEAD/NIGHTMARF~)が登壇。この日は、JUNが司会を担当する形でトークは進められた。
 
このトークセッション、毎回掲げたテーマについての結論を導き出すものではない。毎回の討論の中、一つの答えを導いては、さらに論議を重ね、また新たな結論を見いだしたり、新たな疑問を提示してゆくスタイルを取っている。パネラーたちはもちろん、会場に足を運んだ人たちも、その会話の中から生まれた考え方をどう自分なりに受け止め、みずからの意識や行動へ反映させてゆくか。そこがポイントになっている。イベントは、毎回二部制で実施。第一部はパネラーたちの討論を中心に。第二部は、会場に足を運んだ観客たちも交えて行われる。
 
2018年11月26日、「第3回吉祥寺トークセッション」が、お馴染み吉祥寺クレッシェンドで行われた。今回のテーマは、「バンドが如何に音源(CD/配信/ストリーミング)販売で稼ぐか?」。その日の模様を、これからお伝えしよう。

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インディーズを軸に据えたレーベル活動の場合、ストリーミングよりもCDを通して売り上げを立てたほうが実入りが良い。

今回のテーマである「音源販売」は、Black-listed Recordsのレーべルオーナーでもある大西氏の得意分野。まずは、大西氏が「音源販売」の現状についてレーベルオーナーの視点で語りだした。大西氏が運営しているBlack-listed Recordsは、メタル系ファンが好むアーティストたちを中心にしたレーベル。今年(2019年)15周年を迎える老舗レーベルでもある。大西氏自身、配信やストリーミングを利用しない、いわゆるCDにこだわりを持っているリスナーであり、レーベル自体もCDの販売を軸に据えている。理由は、CDの印税こそ利益率が大きいことから。ストリーミングも回数次第では金銭にはなるが、なかなか難しい現状も把握している。まして、インディーズを軸に据えたレーベル活動の場合、ストリーミングよりもCDを通して売り上げを立てたほうが実入りが良いのも事実。同時に、そこが未来を見据えたときの問題点にもなっているのが今であると、大西氏は語りだした。

メディアが無いからしょうがないではない、メディアが無いなら作ってしまえ。

CDを購入するのは、ある程度金銭に余裕のある、いわゆる中高年たち。CDという商品自体は、今でもユーザーとマッチングはけっして悪くはないアイテムだ。ただし、ある程度偏った層とのマッチングなら適しているのが現状であり、それが10年後や20年後になると、CD離れしている若手ユーザー層が音楽シーンを支える中心層にもなるように、今のようなCDの売上に頼っていたのではバンドやレーベルが存続していけるのかはわからないのも事実。
 
「レーベルとしての現状は、CD販売の機軸を変わらずしっかり作りつつ、いつ、配信などへシフトしてゆくか。その流れをどう作るのかが大切なことになるのではないか」という考えを、大西氏は述べていた。2004年にレーベルを設立した時点では、メタルレーベルはメジャー/インディーズともにほぼ無きに等しい状態。大西氏自身、過去にはメジャーで洋楽メタルレーベルを担当。メジャーの方法論をインディーズにも反映してゆく意図を持って、現在のBlack-listed Recordsを始めている。
 
メタルシーンには圧倒的に男性ファンが多かったこともあり、設立当初から、Black-listed Recordsは女性ヴォーカルを中心に据えたメタルバンド系の作品を中心にリリース。その流れから、大西氏の趣味や好みかはさておき、女性ヴォーカルのメタルバンドがレーベル内に増えだした経緯も教えてくれた。女性ヴォーカルバンドはあっても女性メタルバンドは一つも出していなかったという余談話も、意外性のある言葉だった。
 
当初からメタルシーンをどう盛り上げ、利益を得るかを大西氏は考えていた。むしろ、そこを重点に置いてPR活動を続けてきた。その努力もあり、ここ数年で次第にメタルシーンも。中でもガールズメタルバンドを通し、メタルファンを超えたところで、他のジャンルの人たちの興味関心も引き、次第に客層も広がれば、それが今のメタルシーンにも反映されていることも伝えてくれた。
 
大西氏は、以前にメタルファンジン「NOIR」も制作。当時は、メタルバンドを紹介するメディアがなかったこともあり、「NOIR」を通してメタルシーンの好きなユーザーたちへプロモーションを行えば、そこからバンドの認知度を上げ、シーンの活性化も担ってきた。その実績もあるように、メタル専門誌の役割がいかに重要だったかを、みずからの経験を通して感じてきたことも語っていた。
 
『NOIR』での手応えや、プロモーションメディアの重要性を強く認識した大西氏は、今でも続けているネットを介したラジオ番組…いわゆる、ネットラジオ番組の設立も行えば、同じような動きを示しているネットラジオ番組もプロモーションの場として積極的に利用。共存共栄の形を取りながら、その存在を大切に育んでいる。大西氏の語った「メディアが無いからしょうがないではない、メディアが無いなら作ってしまえ」という考え方や発想の展開が、結果的に、今へ繋がる土壌を形作る要因の一つにもなってきたことも、大西氏は経験談として語っていた。

この(メタル)シーン自体でCDの売上が減っている実感はさほどない。

巷では「CDが売れない」と騒いでいるが、大西氏の運営するBlack-listed RecordsのCDの売上は設立当初からさほど変化はない。年間のリリース枚数によっての売上の増減はあるとはいえ、平均すれば、毎年立てる売上の平均値は変わってないそうだ。「この(メタル)シーン自体でCDの売上が減っている実感はさほどない」のが、大西氏の率直な感想。
 
「CDの売上が下がる危機感はあるけど、下がった実感はない」という言葉は、メタルシーンだからこその特性。このシーンの音楽(売上)を支えてくれるユーザーが一定層途切れずにい続けていれば、熱心なファンたちにこのシーンが支えられているのもメタルシーンの強みになっているところ。大西氏も、「ニッチなジャンルだからこそ熱心なファンたちに支えられ、ある程度の利益を上げ続けられているのが、このシーンの強み」と答えてくれた。
 
Black-listed Recordsは、約15年間の活動の中、リリース枚数も100枚を越した。そのカタログ的な強みもあり、新譜はもちろん、旧譜もコンスタントに動き続けている。その事実も、熱心なファンたちに、このシーンが支えられていることを示している証拠。大西氏も、「Black-listed Recordsは、多くのカタログとなる作品を持っているところも強み」と語ったように、レーベルにとって作品が動き続けることこそ、レーベルを長く継続させてゆくうえでの大きな力になっている。
 
カタログの強みについて、大西氏は「以前、ゼロコーポレーションというレーベルが、毎月10枚程度をリリースしていました。今、分析すると、ある程度の枚数をリリースすることによってレーベルの知名度を上げる役割を担っていたのと、カタログを増やすことで新譜と旧譜の売上を平均化出来れば、それをまわすことでレーベル自体の運営を安定して支えていた。それを、このレーベルの動きから学びました」とも語っていた。
 
今回の議題である「配信」や「ストリーミング」について、大西氏は「CDがアーティストへの還元率が現状では一番多いように、それを何よりも大切にしている」と語れば、「CDは1枚売れるごと、バンドに数百円は還元していける」という懐事情を暴露。「配信になると、アルバム1枚の還元率は300円ちょっと。それがストリーミングになると、1曲聞いてもバンドへの還元率は0.16円。アルバム1枚でも1.6円。その数字を見るだけでも、CD1枚で数百円の印税が入ってくるからこそ、ストリーミングでは300回聞かせてアルバム1枚分の利益を求めるよりも、レーベルの運営やバンドへの支援のうえでもCDのリリースを推していきたい」という、レーベル側としての現状を、先に説明してくれた。大西氏の話を踏まえつつ、ここからは、登壇者とお客さんも交えたトークセッションへ。

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これからは配信やストリーミングが中心になるよう、そこへ移行していくのが当たり前になっていく。いや、すでにそうなっている。

「ざっくりまとめるとBlack-listed RecordsはCDが売れている」(Y.O.U.)という現状を踏まえつつ、ここから、お客さんも加えたトークセッションがスタート。話は、先程の大西氏の話とは真反対の「そろそろCDは限界じゃないか」(Y.O.U.)、「売上には懐疑的」(JUN)という言葉から始まった。
 
先陣を切って、Y.O.U.が「戦略的にこれから先、配信やストリーミングは必須。自分のバンドでも、今後ストリーミングを開始しようと計画中」と語りだした。そのうえでY.O.U.は、2つの配信サービス会社の名前を上げ、そのシステムを説明しながら、バンドとしての戦略の立て方を述べ始めた。
 
「ストリーミングのプラットフォームをどうするか。バンドが個人で配信するに最適だなと感じている一つが、TuneCore Japan。ここは、年間決まった額のお金を払えば配信が出来るシステム。年間の支払はけっこうな金額だが、売上の全部が戻ってくるように、そこは嬉しいシステム。ただし、カタログ的に置いといたとしても、楽曲がある程度まわり続けないと、毎年一定額を払い続けるとなったら、最初は良くても次第に赤字になっていく可能性も高い。もう一つが、Frekul(フリクル)。こちら年額はかからない変わりに、還元率は60%になる。つまり、売上に勢いを得られる時期はTuneCore Japanを使い、カタログ的な戦略はFrekulを使うなど、使う側が上手くプラットフォームを選べば、有効的に活用していけるのではないか」
 
Y.O.U.は、「これからは配信やストリーミングが中心になるように、そこへ移行していくのが当たり前になっていく。いや、すでにそうなっている」と語っていた。実際、この日会場へ足を運んでいた若手ユーザーたちも、「音楽は配信やストリーミングで聞いて、CDは買わない」という人たちばかり。そう、すでに若い人たちは理由がない限りCDを買わなくなっている。

レーベルは年にある程度の枚数を出せるから、CDで維持できるけど。バンドが年に数枚をコンスタントに出し続けるのは難しい。

「想像以上に早いペースでCDは終わっている」と語るY.O.U.。その言葉を受け、大西氏も「J-POPのシーンでは、その通りだと思う」と納得しながらも、「でも、メタルシーンに限って言えば、今でもCDユーザーが絶えずにいるからこそ、CDで売上を維持出来ているのも事実。ただ、どこのタイミングでソフトランディングしていくかも大事なこと」と語っていた。
 
レーベルオーナーの視点で大西氏が語るのに対して、この日のY.O.U.は、バンドという視点で終始語り続けていた。たとえば、こんな話も。「レーベルは年にある程度の枚数を出せるからCDで維持できるけど、バンドが年に数枚をコンスタントに出し続けるのは難しい話。アルバムだって、出せて1年に1枚。もしくは2年に1枚。そのペースではCDの売上だけでバンドは食べていけない」。
 
そう語ったY.O.U.に対して、大西氏は、「2年に1枚のペースでも、そのアルバムが2万枚以上売れればバンドは食べていける」と冷静に分析。同時に、「今やメジャーですら万単位にCDの売上が届かないのに、インディーズバンドがCDの売上だけで食べていくのは非常に厳しい。となると、バンドなりの処世術を考えねばならない。そのうえで配信やストリーミングを考えてゆく時代にきているのもわかる」と、さらに冷静に分析していた。
 
その言葉を受け、Y.O.U.が「CDの購入者よりストリーミングで聞く人の数が逆転すればやっていける」という発言も。「ストリーミングの強みは何度もリピートして聞くごとに利益が生まれること。そこで音源を聞く人たちを増やしたほうがバンドの利益率は良いのでは」と提案。これからの時代は、そこが推奨されてゆく時代にもなりそうだ。

今やすでに家にCDを聞く環境がないのだから、CDを購入する意味がない。

メタルシーンには顕著に言えることだが、40代や50代のメインターゲット層はCDを好んで手に取るように、いまだCDに愛着があり、配信やストリーミングには抵抗感を覚えている人たちも多い。別のとらえ方をするなら、CDを買い慣れていることが大きいという会話へトークセッションは以降。会話の中にも出ていたが、今の若い人たちは、家にCDプレイヤーが無いどころか、パソコンにドライブさえも付いていないので、CDを聞こうにも聞けないのが現状。今やすでに家にCDを聞く環境がないのだから、CDを購入する意味がない。時代の変遷とはそういうもの。何時までも過去の栄光にとらわれるのではなく、今の現実をシビアに見つめないと大変なことへ陥ってしまう。
 
大西氏が語っていたが、今や大手CDショップへプロモーションでサンプルCDを手渡しても、CDショップなのに事務所にCDプレイヤーがないので聞けず、データで音源を求める時代になっているそうだ。JUNも、「2004年の時点でショップは全国各地に何百店とあったが、10年後には1/3の数に激減。今も振り続けていれば、現存するCDショップも、売れるものしか扱ってないお店になっている」と現状を説明してくれた。以前はCDショップのバイヤーの胸先三寸で仕入れる商品も選べていたが、今や、本社で仕入れは一括管理。CDショップ自体の個性がなくなっている現状も、この日の会話の中に登場していた。

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選択肢を間違うと死に体になってしまうのが現状。適切な戦略さえ打ち出せば、今でもお金になる。

ここからさらに、トークセッションは深みを増してゆく。「確かにメタルシーンは、30代以上、40-50代の人たちが中心だからこそCDが売れているが、本当にそこだけにアピールするのが得策なのか。若い人たちにアピールするうえで、CDだけで音源を届けるスタイルでは、今や勝負にもならない。だからこそ、配信やストリーミングというのが大切になっている」という話が飛び出した。
 
「CDは売れなくとも、音楽自体が売れなくなったのでも、支持されなくなったわけでもない。CDを買わない層にCDをアピールしても売れないように、選択肢を間違うと死に体になってしまうのが現状。適切な戦略さえ打ち出せば、今でもお金になる」と、Y.O.U.JUNが語っていた。さらにやのっちぇが、こんな発言を重ねてきた。
 
「CDは音楽を聞くだけのフォーマットではない。物販を活性化するうえで、CDがお土産として役割も担っているのが現状。今やCDもグッズの一つ」と語っていた。お客さんからも、「物販を通してバンドに関連したお土産を手にする場合、その一つとしてCDという選択肢もあれば、バンド側との接客体験のお土産として、CDやチェキを手にすることもあるように、今やユーザー側も、CDを、ライブの物販時にメンバーと接したときのお土産アイテムの一つとして捉えている節もある」という声が上がっていた。「配信では、購入の体験は得られない。ライブを観たあとの追体験のグッズの一つとして、今はCDの役割もあるんじゃないか」という言葉こそ、今の観客たちの素直な想い。
 
Y.O.U.の語った、「ライブハウスを活動の主戦場にしていくのであれば、物販の場にCDがあってもいいのではないか」という発言。「映画『ボヘミアン・ラプソディ』の影響で、映画を見終わったあとに、みんな感動のあまり映画館でパンフレットやCDなどを購入すれば、映画のヒットの影響から、クイーンのCDが軒並み売れている。いわゆるストリーミングではなく、CDとして感動の追体験をしている」現象が生まれていることも、やのっちぇが語っていた。そのうえで、「CDが売れるのは、日本という特殊な環境だから」という声や、「CDを購入している中心層は、若い人たちではなくクイーンを聞いて育ってきた世代ではないのか」と、シビアに分析する会話も飛び交っていた。

バンドマンとしては、自分たちの音楽を聞いてもらえるのであれば、その手段は何でもいいのが究極の答え。

今の10代や20代は、CDに対するこだわりがない。だからこそ、「ストリーミングで満足するならそれでいい。さらに楽しみたい人たちのためにCDやグッズなどがあればいい」とJUNが語れば、Y.O.U.も「ライブハウス会場の物販商品としてCDが存在するのが理由でも有りじゃないか」と語りだす。その発言を受けてやのっちぇから飛び出した、「バンドマンとしては、自分たちの音楽を聞いてもらえるのであれば、その手段は何でもいいのが究極の答え」という言葉。まさに、その通りだと思う。
 
「CDの中身の有り方も、今や多種多様になっている。それこそ、コミケやM3など、絞られた趣向性を持つコアな人たちながらも、凄まじい動員力を持つ場では、音源や写真、イラストなど様々なデータを取り込んだデータCDがけっこう売れている」現状をJUNが語りだした。「データCDのように、その中には音源のみならず、イラストなどいろんなものを詰め込んでいる。形としてはCDではあるが、いわゆるデータとして複数ものが混在している盤もじつは売れている」とJUNが。「今は音楽だけにフォーカスする必要はない。有名な絵師さんと絡み、コラボすることでの相乗効果を通して互いの知名度を上げてゆく手法も、今は効果的な時代。そこを上手く取り入れているメタル系のレーベルも存在している」ことをY.O.U.が教えてくれた。ただし、この手のジャンルとのコラボレートは、生半可に手を出すと火傷をするように、本気でファンでないと手を出すのは危険な聖域。「互いのベストマッチを探すのも大切なこと」という会話も繰り広げられていた。

買う側は、欲しければフォーマットにはこだわっていない。

この日は、バンド活動を行っているお客さん側からも「アグリゲーターとしてFrekulとTuneCore Japanを選ぶのは正解。TuneCore Japanで1年間展開をして元を取ったうえで、その後はFrekulでだらだら展開していくのも手」という発言が出れば、「配信サイトは立ち上がっては潰れてを繰り返しているが、それでも今はストリーミングの時代なのも事実。メジャーではCDも配信も終わっているが、インディーズの、しかもメタルというシーンに限って言えばダウンロードやストリーミングはまだまだ整備も成されていない。逆に言うなら、世間の目にも止まらないのが現状」というシビアな言葉も上がっていた。「それがCDでも、配信やダウンロードでも、そう。それを売るためのタイアップなど、とにかく人の目に付くことをやらないと駄目」という辛辣な発言は、まさに正論だ。
 
「きっかけをどう作るかがプロモーション。自分たちをユーザーに選んでもらうためにはどうするか」「どうやってひっかかるかのプロモーションのやり方も大切なこと」「選択する側からすれば配信は情報量が少ないので、目に止まりづらい」「目に留まる販売方法を考えれるのなら配信中心でもいいが、ことメタルに特化するなら、配信だけでやっていくのは厳しい」など、お客残さんたちも含め、いろんな意見が飛び交いだした。
 
そんな中、若手の女性客から「メモリースティックは売れるという話もあるが、本当に売れているのか。あるいは、売れていたのか?」の質問が飛んできた。そのことに詳しいお客さんから、「M3やコミケなど特定の場ではめっちゃ売れていた。今も売れているけど本数の違いはある」と発言が返ってきた。Y.O.U.からも「テクノ系だと、今でもメモリースティックは売れている」という言葉も出ていた。この答えに一つの結論を付けたのが、以下の発言。「買う側は、欲しければフォーマットにはこだわっていない」。その答えもまた、正論だ。

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若い世代にだってメタルが刺さらないわけではない。そういう人たちを振り起こす作業もやっていかないと、このシーンがじり貧になっていく。

「打ち込み系やDJ系のシーンにはメモリースティックで販売している人たちもいれば、メモリースティックだと若い子たちもCDよりも手に取りやすくて聞きやすいのが現状」「我々が活動しているシーシのメイン層はCDユーザーが多ければ、演っている側もCDへこだわりを持っている人たちが多い。でも、10-20代の層もファンとして取り込みたいのなら、アイテムはCDでなくていい。メタルシーンの人たちのように、限られた(閉ざされた)文化の中ではCDは今も有用だが、もうCDは必要とされていないジャンルだって存在している。そういう人たちもこちらのシーンに取り込みたいのなら、CD以外の媒体も使って広げていく必要がある」
 
「今までのファンベースにした戦略と、新しい層に向けた戦略など、今は複数立ての戦略でやっていかないと難しいのが現状」「今までの方法論だけではなく、新しいチャンネルを増やしていくことを考えていかねばならない」「その世代に向けた発信の仕方を考え、アプローチしていくのが必要なこと。そのうえで、そのシーンの中でいかに目立つようにどうリーチするかを考えていくことが、今はバンドにとって必要」など、この日は様々な意見が、ステージ上はもちろん、客席からも次々飛び交っていた。
 
「若い世代にだってメタルが刺さらないわけではない。そういう人たちを振り起こす作業もやっていかないと、このシーンがじり貧になっていく」「バンドとして自助努力が必要」「手の届くファンたちにどうやって音楽を聞いているのかをリサーチしたうえで、求めたい層の人たちにどう刺さるかを考えることが大事」「自分たちが欲しているユーザーがどこにいて、そのためにどう刺さることをやっていくのか、それをバンド側がマーケティングしていくことが大事」「ライブ会場ではアンケートを書いている余裕がないので、どうしてもおざなりになる」「Webだったらアンケートを書きやすい」「QRコードを並べ、それを宣伝に変えているバンドたちもいれば、若い人たちはQRコードを巧みに利用している」「世界的に今はiPhoneがQRコードを読み込むことを提唱している。そこにのっかれば、今後はAndroidの人たちも、いずれはやらざるを得なくなるのではないか」など、お客さんたちを中心に様々な意見が飛び交う、今回のトークセッション。

今はCDを買うことは、若い人にはリスキーなこと。なのに「CDを買え」とせまるのは、若手に聞いてもらうことを放棄しているのと同じこと。

「今は、QRコードで読み込んだほうがすべてにおいて有利だし便利。QRコードをフライヤーから読み取ってもらい、それで興味を持ってもらうようにするのも手」「フライヤーのサイズも大きいと手荷物になる。だからと言って名詞サイズでは小さすぎように、多少の情報量を入れ込んだサイズのフライヤーも必要なこと。それを読んで興味を持っていただいたうえで、QRコードを読み込んで、より深くバンドのことへ踏み込んでもらうことも必要じゃないか」「若い人たちは、そのほうがスムーズだ」など、 お客さんたちも交え語りあう場が活況としていた、この日。
 
「CDでもダウンロードでも配信でも、とにかく触れる選択肢を増やせばいいだけのことで、なんで、「何々だけ」にこだわるのかが、逆に不思議」「CDは忠誠心を示すアイテム。配信は、そこへ踏み込むための入口」など、ユーザーたちの考え方は、この日のトークセッションでもとても参考になっていた。その会話の中にも出ていたが、「仕掛ける側が「わからない、面倒だ」と言った時点で、もう時代に乗り遅れた存在になっている」事実も伝えておきたい。
 
「BASEなど、自分の用意したサイトでダウンロードするのも一つの手」「今はCDを買うことは、若い人にはリスキーなこと。なのに「CDを買え」とせまるのは、若手に聞いてもらうことを放棄しているのと同じこと」「とにかく聞いてもらう術を増やすこと。好きになった、そのうえでCDも買ってもらうのが、今の正論」。それらの言葉もまた、正論と言えようか。

若いバンドマンにはない、おじさんたちの愛する音楽に対する忠誠心が楽しくて恰好いい、だからおじさんが好きです!!

お客さんの中には、なかなか面白い本音をぶつけてくる人も。・・・というバンドのとある20代のメンバーの子は、「普段の自分は、情報はtwitterとYouTubeがあれば十分。QRコードを使うことでギリギリ。ただし、バンドをやる側としての考え方としては、音楽を敷居の高い芸術としてとらえたいから、配信だけで届けるのは違う。もっと忠誠心を持って音楽をやりたいからこそ、音楽へ忠誠を尽くした人たちが手にしてくれるCDこそを推薦している」と熱く語っていた。
 
また、出版業界の方が、「CD盤と違い、出版は新刊が売れても過去のカタログは売れない」とシビアな現状も伝えてくれた。そのうえで、「「栄養と料理」の新刊にマーティフリードマンが出て、食の話をしている」と宣伝もしていった。その方は、「大事なのは営業活動。CDショップも書店もなくなっている。じゃあ、どこで売るのか。まずは、みんなに知ってもらわなければいけない。そのためにも、若い人の取り入れ方を探している」と、現状での悩みも打ち明けてくれた。
 
「CDの本来の目的はもう終わっている。本当に好きな音楽が配信でしか手に入らなければ配信で聞く。たまたま聞く選択肢がCDしかないからCDが売れるように、そのアイテムのみなら、それがCDでも配信でもストリーミングでも、売れるものは売れる。用はツールの一つとしてどう捉えるかが大事なこと。そのうえで、いかに知らしめるかが大切なこと」という言葉も、とても重みを持っていた。
 
「ライブハウスのユーザーはこじらせファン。そういう人たちが売上の4-6割を作り、その中の2-3割がインフルエンサーとしての役割を担っているのなら、その人たちが長く支持してくれる施策を考えていくべきではないか」という言葉も、この日のトークセッションをしめくくるに相応しい言葉にも思えたが。最後にバンドマンの女性が言った言葉こそ、やはり、この日のトークの題材の一番の答えではないか。それが…。
 
「若いバンドマンにはない、おじさんたちの愛する音楽に対する忠誠心が楽しくて恰好いい、だからおじさんが好きです!!」。その言葉に数多くの年上/中年ロッカーたちは元気をもらい、その想いに応えようと、日々奮闘していく。やはり、若い女性の「好き」という言葉こそ、最高の言動力……んっ??でも、この日のトークセッションのテーマか、そこは??

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NEXT!!
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2019年4月16日(火)@吉祥寺クレッシェンド

◆関連記事
【特集】第1回 吉祥寺トークセッション「バンドで食うって何?」
http://www.beeast69.com/feature/173025
【特集】第2回 吉祥寺トークセッション「バンドで食うって何?」
http://www.beeast69.com/feature/175423
 
 
 


 
 
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