特集

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TEXT:長澤智典 PHOTO:ossie

2018年9月10日、第2回吉祥寺トークセッション「バンドで食うって何?」が開催された。このトークセッションは、同じ会場の吉祥寺クレッシェンドで、2018年5月28日に第1回が開催されている。第1回目に行ったのは、「インディーズバンドシーンの活性化」を目的としたトークセッション。集客向上からバンドの運営自体の効率化まで、ロックバンドのありとあらゆる項目を語り尽くす」という、バンド活動のあり方を根本から問いただす内容で討論が交わされた。そのときの模様は、BEEAST誌上(http://www.beeast69.com/feature/173025)に記録してあるので、興味のある方はご覧になっていただきたい。
 
そして第1回で予想以上の動員を記録し、内容も盛り上がったことから、その当時から「2回目を開催しよう」という話が持ち上がっていた。その第2回は、同じ会場の吉祥寺クレッシェンドで開催となった。今回もMCで登壇したのは、このイベント主催者であるY.O.U.e:cho)・JUNCiel Noctunre 他)・大西(Black-listed Records)の3人。同じく、司会をCocoOmelas/MaKORN)が担当。さらにゲストとして、BLASDEADのドラマーであり、イベンター「NIGHTMARE PROMOTION」の社長でもある、“やのっちぇ”こと矢野貴資が登壇。第2回吉祥寺トークセッションのテーマは、ズバリ「バンド活動のマネタイズその1:ライヴ動員を増やすには?」。先に触れておくと、「その1」ということは、「その2」もあると捉えて間違いないだろう。

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吉祥寺トークセッション
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2回目となるとひやかしの方はいないだろう、よっぽど本気でこの問題に取り組みたい熱量のある方ばかりだと思っています。

この日も二部構成で実施。まずはY.O.U.、JUN、大西の3人のトークセッションからスタート。いきなり「2回目となるとひやかしの方はいないだろう、よっぽど本気でこの問題に取り組みたい熱量のある方ばかりだと思っています」とY.O.U.が挨拶変わりに、シニカルな発言をぶっ放した。どれだけ辛口なトークが飛び出すかがこのイベントの楽しさだけに、今宵、どんな激辛トークを味わえるかが、いきなり楽しみになってきた。
 
出演陣が最初に語りだしたのが、「第一部はまったくのフリートーク、別名、雑談で進める」「でも、テーマに沿って語っていく」宣言。おいおいおい、いきなり腰の入ったストレートなパンチをぶち噛ましてきたじゃないか。さらにここで、ゲストとしてBLASDEADのドラマーでありイベンターとしても活動中の矢野貴資ことやのっちぇも登壇。さぁ、ここから本格的なゴングを打ち鳴らせ!!

バンドマンにとってのお客さんとは…。

今回のテーマである「バンドの動員を増やす」こと。「初ライブをやるバンドも、日本武道館や東京ドームをやるバンドも立場は一緒」とのトークに共感。ここで、登壇者たちが、「バンドマンにとってのお客さんとは…」という切り口で語りだした。「我々バンドマンにとってのお客さんは、普段からライブハウスに来慣れている人たち。そういう人たちをターゲットにした活動。もう一つが、普段ライブハウスに来る習慣のない人をライブハウスに来てもらうための集客アプローチの2通りがある」とY.O.U.が説明。その発言へ追随するように、やのっちぇが「BLASDEADはライブハウスに来てくれてるお客さんたちに対してを中心にアプローチしつつ、ここ1-2年は、それ以外の人たち。つまり、ライブハウスに足を運ぶ習慣のない人たちや、頻繁にライブに行けない地方の人たちへのアプローチの二本柱で考えている」と語りだした。
 
JUNは経験談として、「過去にやっていたバンドの音楽が英詞によるエクストリーム系だったため、ライブハウス界隈に来慣れている人たちをメインに。それこそBURRN!の読者や、YouTubeを通しメタルの情報を欲している海外全般向け人たちのために発信をしていた。SNSでの発信に対してはリアクションも多いけど、実際に足を運ばせるまではとてもしんどかった」とトーク。その言葉へ重なるように、メタル系レーベルBlack-listed Recordsのオーナーの大西が「メタル系媒体へのアプローチを中心に、ヘヴィメタルのマーケットの中にいる人たちの中で何%取れるかが狙い。J-POPやJ-ROCK系好きの人たちのところも攻めたいが、一緒にアプローチをしてしまうと両方ともどっちつかずになり、結果、どちらにもリーチできなくなるので、そこのバランスを心がけながら宣伝していた」と、自身の経験を語ってくれた。

「バンド側からしたら深刻なノルマ(金額)事情」ついて。

この日の会場である吉祥寺クレッシェンドについて、Y.O.U.が「吉祥寺クレッシェンドは、箱にお客さんがついてることが強み」と語れば、同時に「よく箱に出ている顔なじみのバンドが3-4バンド出るとライブは盛り上がるが、お客さんの入れ代わりはさほどないところがデメリット。しかも見に来るお客さんたちは特定のバンドのみならず、複数のバンドを応援している。だからバンドが主催のイベントになると、その主催バンドに気づかい、チケット購入の目的もそのバンドになるので、共演するバンド側にとってはチケットの捌けが弱くなる」とも語っていた。なるほど、それもバンド側からしたら、深刻なノルマ(金額)事情になるわけだ。
 
ノルマについてだが、「バンドがライブハウスに出演するのにノルマという条件がある。ライブに出演することで黒字化していきたいときに、主催者一人勝ちの状況はどうなんだ。主催者に華を添える存在になってゆくことへモヤモヤする想いがある」という意見も出れば、やのっちぇは「一番頑張っているバンドにお客さんがついていくのは、当たり前にある風潮。主催バンドが「一番動員してないといけない」と頑張る空気を出してゆくことで、お客さんたちも主催うんぬんではなく、「このバンドは頑張ってるな」と認識してゆく。その結果、それが認知度や動員にも繋がっているんじゃないか」と、イベンターサイドとしての意見を述べてくれた。
 
その話の流れから、「平日まで地方のライブハウスに足を運ぶことも、バンドが頑張っているという印象を与える強いイメージ戦略」という言葉も飛びだせば、Y.O.U.は「同じライブハウスに毎月数回出ることで、このバンドはめっちゃ頑張ってると見える手法を取っていた」と経験談を語っていた。”頑張っている姿を見せる宣伝活動”について、やのっちぇは「ライブをたくさん入れてるバンド、身銭を切ってでも、平日だろうと、このバンドで頑張っていくというという姿勢の発信は、じつはお客さん側もしっかり見てる」とも語っていた。その言葉を肯定しつつも、JUNは「それは90年代の話であって、今はSNSなどでのアプローチが主流になっているんじゃないか」と進言。「みずからもフライヤーを配ったりというアナログなやり方を実践してきたが、今はSNSを通し直接情報を送り込む時代。そういう時代に合わせたやり方をやっていくことが大切」と、同じよう経験談として説明していた。

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SNSだろうが細かく廻るツアーだろうと、あなた方にこのバンドを知ってほしいという想いをどれたけ伝えられるか。

「数多くライブをやることも大事だし、地方にライブにいくことで各地のファンたちとの繋がりを途切れさせないことも宣伝ではないか」という大西の発言に対し、「SNSで発信して、それをどれだけリアルに繋げられるかが今の時代。昔は点を線にするために直接動くことが大事だったが、今は出会ったお客さんとの点を、SNSを通して線にしていける。一度味わった楽しい記憶をSNSを通して繋いでいくことも可能」とY.O.U.が言葉を述べていた。その発言に、今の時代の中ではSNS を通したプロモーションが当たり前に実践されていることを再認識させられた。
 
その発言を踏まえたうえで、「SNSを通してファンの人たちとの繋がりをしっかり管理していけるのであれば、リリースなどのお土産がある時期、もしくは半年なり一年のスパンが開いたとしても、ファンたちとの関係が途絶えることはない」(Y.O.U.)、「昔のように各地を細かく何度も廻り続けるローラー作戦をしなくとも、今はネットを通して効率良くできる時代」(やのっちぇ)という、先の言葉を肯定する意見を登壇者たちが重ねてゆく。「それがSNSだろうが細かく廻るツアーだろうと、あなた方にこのバンドを知ってほしいという想いをどれたけ伝えられるか、その精神的な部分こそが大事」と語るやのっちぇの言葉にも重みを感じた次第だ。

昔はライブを数多くやるなど、ライブスケジュールをたくさん入れることが頑張っているという見え方だった。でも今は、バンドの経験値とお客さんの受け取り方は一緒とは限らない。

「昔のバンドは、数多くツアーをやるほどに成長していた」という発言に受け、JUNが「昔は地方へツアーを行くときは、いつもホームにしているライブハウスの箱の人に、電話やメールで、うちでお世話しているこのバンドが、今度ツアーで行きたいので~と、その箱がお付き合いのある地方のライブハウスの方へ一本一筆連絡を入れてもらい、それでツアー組んだり。ライブツアーをライブハウスの方に組んでもらうことが一般的だった」と昔のやり方を説明。そのうえで、「昔はライブを数多くやるなど、ライブスケジュールをたくさん入れることが頑張っているという見え方だった。でも今は、バンドの経験値とお客さんの受け取り方は一緒とは限らない。今はネットで友好的にファンや興味を持った人たちとコミュニケーションを取ることで、リリースやライブの告知も含め、すべての活動を補完できる。だからこそ、どういう風に補完するかが大事になっていく」と熱弁。
 
やのっちぇの「地方にライブを行っても集客に繋がるか?」の質問に対して、Y.O.U.が「そもそも地方はライブハウスに行く人も少なければ、足を運んでも数人しか人がいないことも多いように、それは集客のためというよりも、バンドとしていかに成長するか、その修行として行っていた」と、JUNも「求められる以前に、バンド側が全国ツアーをやりたいからという意識を掲げ、地方に足を運んでいた」と経験談を語っていた。「1本のライブアプローチを通して返ってくるメリットを考えたら、いろんな地方へ行くよりも、東京で知名度をあげるためにアプローチし続けたほうが、逆に、地方にも名前が浸透していく」という発言も登場。また、東京でライブを行おうと、お客さん自身が「今は目当てのバンドだけを見て帰る傾向も強いから、知らないバンドをどう見せるかが課題」という意見も。ここから話題は、より一歩踏み込んだところで、SNSのことについてへ。

この組み合わせは今日しか味わえないと期待を煽ることこそが大切。

「たとえばライブに足を運んでもらおうと思った場合、今の時代は一ヶ月前や一週間前、当日にアプローチしてもお客さんは来てくれない。3カ月前頃からネットでアプローチしていかないと、その日のライブへ興味を持たせてゆくことは難しいし、きついこと。当日にアピールしたところで、お客さんはあらかじめ予定を建てて行動してゆくから、よほどのことがない限り、いきなり「今日ワンマンに行こう」とはならない」とJUNが語りだした。
 
その発言を踏まえたうえで、Y.O.U.が「SNSを通して新規獲得向けのアプローチをどうするか。そこで「こういうバンドなんだ」と興味を持たせ、そのうえで「どういうバンドなんだろう」と興味を持った人たちが、そのバンドのことを調べる動きに持っていくことが大切」と発言。イベンターでもあるやのっちぇは、「自分で主催をするときには、自分のバンドのことをアプローチするよりも、いくつかのバンドの魅力をアピールし、この組み合わせは今日しか味わえないと期待を煽ることこそが大切」と語っていた。「目当てのバンドだけを見ればいいや」ではつまらない。他にもいいバンドがいるかを見てもらう打ち出しを主催者側が行い、実際に足を運んだ人たちに見てもらってこそ、初めてお互いWINWINになれる」というやのっちぇの言葉に対して、「それはアンテナを張ってる人たち向け。それよりも、初めてメタルに目覚めた人が、どんなバンドがいるかをネットを通して探したときに、MVなどバンドのことを具体的に知れるアプローチがないと、一見さんは興味さえ持ってくれない。そういうアプローチが今のバンドは足りてないと」とY.O.U.が熱く語る姿も印象的だった。

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同志、ブラザーをいかに作り、増やしてゆくかが大事。

やのっちぇは「2011年以降に嬢メタルが台頭。そこで話題がコアなメタルファン以外のところへも浸透したことで、ライブハウスでも新顔を観る機会が増えた。つまり、そういう入り口となる扉のような現象やバンドの存在こそが大事なこと。俺らのようなディープな音楽性をやっているバンドは、扉の中へ入ってきた人たちへ、そこにしかない姿勢を提示し、より深く興味を持ってもらうことこそが大事になっていく。それこそ俺らBLASDEADで言えば、“自分たちは正統派のパワーメタルだけを徹底してやる”と決め、オーセンティックなパワーメタルにも興味を持った人たちのもとへ“そこのシーンにはBLASDEADがいる”という評判を立ててゆくことが大事だし、そうしたことでコアな人たちが増やしている」と体験談を語っていた。
 
そのうえで、「僕らはメタルに興味を持つための扉にはなれません。その変わり、メタルに興味を示した人たちを、より奥のシーンに引き込めれば、そうすることが自分たちの使命」「同志、ブラザーをいかに作り、増やしてゆくかが大事」と語ったやのっちぇ、その発言に、彼なりの強い使命感を感じさせられた。「上を目指すことだけではなく、音楽が好きで聞きに来てくれる一人一人を大事にしていくことが大切。そういう仲間が増えればバンドのモチベーションや動員にも自然と反映していく。それが、結果的にバンドが良いスパイラルに入っていくきっかけになる」と語るやのっちぇ、熱いね!

バンドたまごっち説。

バンドにとって、ノルマ問題をいかにクリアーしてゆくかは長く活動を続けてゆくうえでは、死活問題として欠かせない議題。「ノルマさえ賄えるようになれれば、余裕の出た利益をバンドのための宣伝費にもかけられるように、いろいろ出来ることは増えていく。そこがバンド活動をしていくうえでのポイントになる」と発言した大西の言葉に、「活動を維持する最低限をクリアーしていかないとバンドはじり貧になって死んでいく」とY.O.U.も納得した言葉を返していた。バンドがファンを増やし長く活動していくために育ってゆくことを、「バンドたまごっち説」とも言うらしい。

暗い地下にある、おっさんが多く集まっている場所に、果たして普通の女性が一人で足を運ぶのか?

「ライブハウスは、ライトユーザーが足を運ぶには難題の多い場所。暗い地下にある、おっさんが多く集まっている場所に、果たして普通の女性が一人で足を運ぶのかと考えたら、とてもハードルは高い。だからこそ、ライブハウスがもっと気軽に足を運べる環境を備えた場所でないと」「女性が来やすい場所であることが大事」「世間の人たちへライブハウスに良い印象を持たせるイメージ戦略も重要」という意見が飛び交う中、以下のような興味深い?発言も出ていた。
 
「たとえ女性が2-3人でライブハウスに初めて足を運ぶところまで持っていけたとしても、そこの空間へ野獣が放たれてる状態では、結局、女性は居心地が悪くて次がなくなるのでは?それこそ、僕らが女性客ばかりのヴィジュアル系バンドのライブにポツンと一人で見に行っても居づらさを覚えるのと一緒でさ」(Y.O.U.)、「真面目な一般人にライブハウスは、やはりきつい環境」(JUN)、そこは今後も語り合い、どう改善してゆくか議論の価値はありそうだ。

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すべてがマイナスからのスタート。やれることをみんなでやったら大きなうねりを作れるんじゃないか。

「ライブハウスは、万人に対して居心地が良い場所にならなければいけない。そういう環境を作るためには、どう現状を変えてゆくべきなのか」というJUNの提案に対し、「数万人規模で行われるフェスティバルは、音楽に興味がない人もあの場を体験しに行くからこそ、あれだけ大きな動員にも繋がれば、そこが音楽へ興味を示す入り口にもなっている。ならば我々も音楽とプラスした形を提示できれば、それが万人の体験の場になり、その音楽をもう一度味わいたい人たちが、ライブハウスへ行くようになるのではないか」とやのっちぇが語っていたのも納得だ。
 
そこから広がった、「肉フェスやラーメンフェスのように、何かのフェスとコラボすることが効果的じゃないか」という意見。「初めての場所へ足を運ぶ場合、女性は男性と違って、心細さもあって、その事柄に興味ない友達を巻き込んで一緒に行くことも多い。そういった面でも、女のお客さんは今後のファンになり得るいろんなお客さんを連れてきてくれるから広がりを作りやすい。男の人たちも、ぜひ友達をつれてきて欲しい」という言葉。
 
「シーンを大きくするのは我々だけではなく、お客さんの力も大切。お客さんと演者、その垣根を超え、このシーン自体を一緒に大きくしていきたい」「それを吉祥寺クレッシェンドから大きなウネリとして作りあげたい」「外の人が興味を持ってくれるのであれば、野外フェスなどもやってみるメリットはある」など、いろんな言葉が飛び交っていた。そのうえで、第一部を締めくくる言葉として、Y.O.U.が「デメリットを気にせず、メリットを求めてやっていくのがバンドマン。すべてがマイナスからのスタート。やれることをみんなでやったら大きなうねりを作れるんじゃないか」と熱く語り、トークの流れを二部へ繋げていった。

バンドマンはサブスキルを持っていなきゃ駄目。

第二部は、お客さんも参加してのトークセッションへ。口火を切ったのが、司会のCocoさん。「お客さんには何が出来るのか?」「バンドとお客さんが一緒になって盛り上げるにはどうすれば良いのか?」と提案。「絶対倶楽部がファンを部員と呼んですけど、そう呼ばれると、俺もやんなきゃとなるのがいい」とY.O.U.が言えば、「絶対倶楽部が個々のキャラクターをファンたちへアプローチし強く浸透させたことで、ファンたちを“だから俺らは、このバンドを応援しなきゃ”という気にさせていた。そういう応援意識を持たせることも大切」とやのっちぇが語りだした。
 
ここで、やのっちぇが、バンドへ向けての戦略アプローチについて熱くトーク。それが、「バンド内で目標を作りましょう。それが、吉祥寺クレッシェンドでワンマンでも東京ドームでも、場所は何処でもいい。とにかくバンドとして共通認識を持つことが大事」「やりたいこととやれることでは意味が違うからこそ、自分たちのバンドを俯瞰して捉える力を持つこと」「やりたいこととやれることの両軸がわかったうえで、足りないものを補いながらも目標へ向かって進んでゆく」「求める精度が高まれば、バンドのスキルも支持も上がっていく」ということ。その発言をフォローするように、Y.O.U.が「バンドマンはサブスキルを持っていなきゃ駄目」と語れば、やのっちぇから「俺らは好きなことをやってるんだと言ってる時点でクズ。そんな奴らは軒並み死ねばいいと思ってる」という爆弾発言が登場。うん、その通りだ。

事務所にバンドが雇われるのではなく、バンド側がノウハウを持っているブレーンを雇って活動していけばいい。

Y.O.U.の言ったサブスキルの話についてが、ここから発展。「運営側としての視点で、バンドを俯瞰して捉えられるメンバーも必要」「それが出来るバンドと出来ないバンドに、明らかに動員としての差が出る」という話が飛び出せば、「芸術面と運営面、両方の話が出来るバンドほど、しっかりワンマンを定期的にやっていける環境を作っている」「楽曲制作と運営を分担。お互いに干渉はしないけど、互いにアイデアを出し合い意見を交わすことで、バンドは長く続けてゆく」というJUNの経験談を元にした発言も飛び出していた。
 
さらに、「運営と芸術面を両立出来るバンドはそうそういない。ならば、バンドの運営を任せるビジネスパートナーをバンドに迎え入れるのも大切なこと」「みんなバンド脳しかないから、昔は事務所へ頼り、そこに所属しようとしていたけど。今は、事務所側もビジネスが難しいから安易にバンドを抱えたりしない。ならば、事務所にバンドが雇われるのではなく、バンド側がノウハウを持っているブレーンを雇って活動していけばいい」という発言も。今の時代なら、バンド側が優秀なプロを迎え運営してゆくことが大事なのは大賛成だ。むしろ、海外のバンドは、みんなそのスタイルで活動をしていますからね。
 
「バンド内で出来ないことが生まれたら、それを辞めたりあきらめるのではなく、その案件をアウトソーシング出来る人と一緒にやることが大事。そのためにも、お金を払ってでもプロを雇うことが大切。ノウハウと人脈を持っている人をどう抱え込むか。雑誌の広告へ10万円出すなら、人脈のあるパブリシストを10万円で雇ったほうが良い。ただし、成果が出るか出ないかの保証はない。だったら、成果が出たらという成功報酬でも良いのでは」「自分たちにはないプロのノウハウを持っている人を抱え込むのも、これからは大事になってゆくこと」「集客が10人にも満たないバンドで雇っても成果は出にくいけど、吉祥寺クレッシェンドでワンマンが出来る規模のバンドなら、プレーンを抱え込むのは大事になっていく」「スポンサードしてくれる人たちを抱える込むのも、これから大事になるかも知れない」「300人入るなら、スポンサードしてメリットがある。商業ラインは300人を越せるか。そこまで持っていけるバンドならビジネスとしての価値が出る」など、活発な意見が飛び交っていた。

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イベントをやるときに、飲食店や居酒屋を冠にする変わりに、チケットの半券を持っていったら割引してくれるというのはどうか。

それらの発言を受け、お客さんたちからも「お店がスポンサードが入るのは格闘技の世界ではよくあること。バンドやイベントのスポンサードは楽器屋だけではなく地元企業でも出来る」「イベントをやるときに、飲食店や居酒屋を冠にする変わりに、チケットの半券を持っていったら割引してくれるというのはどうか」など地域密着型の意見も飛び交っていた。お客さんからの意見を受け、「協賛を募るのもあり」「だけど、バンドのイメージを持って一般企業へのアプローチがどれだけ出来るのか」「映画館の入ってるビルは、半券を使ってビル内のお店で食事の割引を受けられるサービスがある。それを町に広げ、このお店にはこのバンドやライブハウスと提携コラボしていますとやるのはどうか」「ラーメン屋のTシャツを着ていくとサービスがあるというコラボレートをやっていたバンドがいた」など、アイデアがどんどん発展。
 
登壇者たちの会話を聞いていたお客さんたちの間からも、「飲食店とのコラボは、後でファンたちも飲食打ち上げで使うから安くしてもらえるなら使いたい」という声が多々上がっていた。さらにお店側とのコラボレートのアイデアとして、「転換の時間にお店の宣言動画や店員さんの生CMをやって、割り引いてもらうのもいい」「転換の合間に音声で宣伝を流すのもどうか」と、登壇者たちとお客さんがたちどうしでも活発の意見の交わしあいが生まれていた。

バンドマンが、他のバンドのライブを観に行かずに自分たちのライブにきてくれと言うのはどうなのか。

この日のお客さんには、現役バンドマンの方もちらほら居たこともあり、自分の経験談として「バンドマン自身が、他のバンドのライブを観に行かずに自分たちのライブにきてくれと言うのはどうなのか。自分もお客さんとしてライブハウスでのライブを経験していかないと、お客さんの想いを客観的に受け止められないし、考えられないのではないかと思い、やっている」という発言をしてくれた。
 
その言葉を受け、登壇者たちからも「ライブハウスで勝負している以上、自分たちが同じフィールドの中、どういう連中と同じ肩を並べ勝負しているのか、そこにどういうお客さんがいるかを観るのは大切なこと」「ライブハウスに行くのは敵情視察、同じシーンで活動しているバンドたちの状況のリサーチこそが大事なわけで、それをやらずにただただ自分たちが楽しかったでは、世間の感覚とどんどん擦れてしまう」「そこを客観的に捉えられれば、もうちょっとバンド側も変わっていく」「自分が好きなものしか聞かないし、他のシーンのことを知らないからリンク出来ない」「ロック系の箱とは違うお芝居や同人などの場へ行って観ることが必要」と熱く語っていた。他にも、動員を獲得する手段として「お客さんが仲間を規定人数以上呼んだらキャッシュバックしてあげるのも一つの方法」「複数人割をやればいい」「ペアチケット制で安くやることも出来る」「ラウドパークのようにTシャツ付きのイベントチケットにして、プラスアルファのお得感を出す」など、会場を巻き込んでいろんな意見が熱く飛び交っていた。

お客さんがどういう気持ちでライブハウスに来ているのか、バンドマンもそれをもっと考えて欲しい。

最後にお客さんから飛び出した、「お客さんがどういう気持ちでライブハウスに来ているのか、バンドマンもそれをもっと考えて欲しい」という言葉が一番強烈なカウンターとなって登壇者たちの耳に飛び込んでいった。他にも、「ライブハウスがもっと居心地のよい場所だと思えればリピーターも増えていく」「見知らぬお客さんどうしを仲良くさせてくれるバンドがいると、ここにくれば誰かに会えるという楽しみにもなっていける」という意見も納得でした。
 
お客さんたちも含めた熱いディスカッションを繰り広げられた第2回目の吉祥寺トークセッション。最後の最後に登壇者たちは、「300人を指標に頑張ろう。SNSに1万人はフォローがいるとビジネスとして見る人たちが出てくる」という話で締めくくっていった。この日、後半の大きな議題となっていた「ライブハウスに気軽に来れるにはどうするか」。その辺が次のテーマでも深く絡んできそうだ。ぜひ、次のトークセッションへ参加しながら楽しんでいただけたら幸いだ。

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【特集】第1回 吉祥寺トークセッション「バンドで食うって何?」
http://www.beeast69.com/feature/173025