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TEXT:鈴木亮介 PHOTO:ossie

PhotoSPARKS GO GOたちばな哲也(Drums)と八熊慎一(Bass & Vocal)の50歳を祝うバースデーライブが2016年11月18日、28日に開催された。本誌ではこの2本のライブを大盛りレポ!特集として写真とテキストたっぷりでお届けする。
 
記事前編の『たちばな哲也 50歳記念 “Half Of Century”~STRANGE CIRCUS 3~』のレポートに引き続き、記事後編では2016年11月28日(月)に東京・新代田 FEVERにて開催された『やくましんいち 50歳記念 “Half Of Century”~Hitori Live 2016(ゲスト多数あり)~』の模様を掲載する。
 
八熊慎一が一人弾き語りスタイルでステージに立ち、そこに秋葉正志ABEDON奥田民生木内健斎藤有太桜井秀俊菅原龍平といったゲストプレイヤーが一人ずつ入れ代わり立ち代わり登場する形でステージは展開した。いわば、”ヤックの書斎に旧友が酒と楽器を片手にふらり立ち寄る”というスタイルだ。バースデーパーティらしい粋な空間を、ステージもフロアも一体となって酔いしれる…そんなライブが終始展開された。
 
SPARKS GO GO メンバー:
八熊慎一(Bass & Vocal)、橘あつや(Guitar)、たちばな哲也(Drums)

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冒頭、「Mr. Lonely」(Bobby Vinton)がしんみりと流れる中、スキットル片手に八熊慎一がひとり登場。アコギを手にすると「哀しきSummer」をひとり弾き語り。「飲まなきゃやってらんねーぜ」とかっこよく呟くも、スキットルのキャップが閉まらないというアクシデントに、客席からは笑いが起こる。その後も「Save me」、「Blue Boy」をシンプルに温かみのあるアコギサウンドに乗せて歌い上げ、アットホームな拍手を生む。
 
「50代だぜ!…40代は気にしなかったけど。いや、”40代が終わる”って感じで、来たよ」としみじみ語る八熊慎一。ここからは橘兄弟以外のゲストを若い順に呼ぶということで、まず登場したのは秋葉正志ザ・ビートモーターズ)だ。鼻の下に付け髭をして現れた秋葉正志の姿に、客席がどよめく。付け髭を八熊慎一にも渡すと、アリスの名曲「冬の稲妻」を2人で披露。2人の綺麗なハーモニーに、八熊慎一の机上のカップから立ち込める湯気がムードを高める。続く「恋をしましょう」では、それまで座ってギターを弾いていた秋葉正志はスタンディングで、ブルースハープも織り交ぜて演奏。終盤「Happy birthday to you」をハープで演奏するというサプライズも。”ヤックを慕う、最年少の後輩”と”気のいいアニキ”による、終始和やかなステージが繰り広げられた。

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続いて登場するのは木内健。まずはザ・スパイダースの「なんとなくなんとなく」から演奏スタート。リバーブのかかった夢見ごちなギターが八熊慎一の芯の太いボーカルを引き立たせる。そんなテクニシャン・木内健だが、楽屋で嗜むアルコールがかなり回ってきたのか、MCでは「民生さんにはいじめられるし、阿部さんは師匠だし、仕方ないから…」と、八熊慎一をいじる。
 
客席を何度も何度も爆笑させつつも、冒頭八熊慎一が手にしたスキットルは実は木内健からのプレゼントだったことを明かすなど、先輩思いの一面も。「こうしておじさんに助けられて生きてます」とはにかみつつ、後半は一転、シリアスなギターサウンドで「昼に逢いましょう」をしっとりと演奏。軽快なMCとのギャップに、客席の女性陣はギュッと心をつかまれたようだ。

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3組目のゲストは菅原龍平。「待っている間、飲み過ぎないようにするのが大変でした」と冗談交じりに話すが、確かに時間の経過とともにステージと楽屋とを仕切る真っ黒の扉が、徐々に薄くなってきているように感じる。とは言えそこは、内輪ノリの中打ちとは一線を画すプロのステージ。かつて、15年ほど前だったか、「SMAPプライベートクリスマスパーティ」がテレビで放送されたことがあったが、あれに近い感覚と言おうか。つくりものじゃないのに、ものづくりのプロが楽器を手にするからこそ、観る側も一体となって楽しめるのだ。
 
登場するなり、ステージ頭上の装飾を見て「小学校6年生のパーティーみたい」と話した菅原龍平。爽快なギターサウンドに、「かまくらのなまくらー」、「シャドー」とゆったりとしたテンポの楽曲を続けて演奏。特に夕陽が沈むかの如く情感あふれる「シャドー」では、菅原龍平のハスキーさを帯びたボーカルが加わり、グッとくる。

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続く4組目のゲスト、このあたりから八熊慎一と同世代のミュージシャンになっていく。「楽屋の雰囲気がすごいことになってます」と、まるでこちらに避難してきたかのようにステージに現れたのは八熊慎一の2歳下、桜井秀俊真心ブラザーズ)だ。「うっかりいい曲を書いてしまったんです」と、自身が作詞・作曲しSPARKS GO GOに提供した「サンライズBABY」(2007年リリース『Good Fellas』収録)を披露。MCに趣味のサーフィンの話など挟みつつ、「世界の果てまで」を続けて演奏。サビのコーラスの高揚感がたまらない。
桜井秀俊がステージを降りると、鍵盤がセッティングされる。5組目に登場したのはこちらも八熊慎一の2歳下、斎藤有太だ。「50代になった!っていうより40代が終わった!って凹む方が大きい」と八熊慎一から誕生日の感想を引き出す。最近までお酒が飲めなかったという八熊慎一にテキーラの味を教えたのが、他ならぬ斎藤有太なのだという。そんな心通じる2人だからか、滅多に見ることのできないベース&ピアノという異色の取り合わせなのでもフルバンドに負けないグルーブで魅せる。ピックアップしたのは「生きる」、「ランタナ」の2曲。どちらも八熊慎一が手がけたソウルフルな楽曲。ピアノの音飾が加わることで、アダルトさを増すばかりでなく、歌詞の説得力、心に響くパワーというのだろうか、それがいっそう増したように感じた。

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6組目は同い年のABEDONだ。今年7月に故郷・山形で50歳の生誕祭『ユニコーン ABEDON50祭「サクランボー/祝いのアベドン」』を開催した際にはABEX GO GOとして、またABEDON and THE RINGSIDEの一員として八熊慎一は掛け持ち出演しており、今宵はその”お祝い返し”だ。50本のバラの花束を持って現れたABEDON。登場はかっこよくキメたものの、マイクを握るといつもと少し様子が…やはり楽屋で待機中にかなりお酒が進んだようだ。が、鍵盤に指を置くや否や、その目は耳は職人になる。「有太くんの音でしょ?向こうはちゃんとしてるの」と冗談をこぼしながらセッティング完了。
 
演奏はいつの間にか始まっていた。「DRY FRUITS」。企画イベント『JUNK! JUNK! JUNK!』でABEDONSPARKS GO GOで何度も披露しているこの曲。若いころの瑞々しさを失ってしまった”乾き”、それでももう一度自身の”果実=価値”を取り戻そうと水を欲しがる”渇き”、この2つのドライが表現された、八熊慎一にしか表現できない至宝の一曲だ。こじつけのようだが、50歳という節目に立つ職人の心を表現しているようにも感じる。ABEDONのキーボードはそんなドライをその音一つで絵画的に、視覚的に表現する。続いてABEDONがメインボーカルをとり、爽やかな「夏の大将」を演奏。こちらはじめじめとしていない、サラッと心地よいドライが体感できる曲だ。この2人にしかできない世界、もっともっと堪能したかった。

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本編ラスト、7組目のゲストは一足早く50歳を迎えた奥田民生だ。ABEDONがワイングラスを手にしていたのとは対照的に、奥田民生のギターの傍らにはサッポロ黒ラベルの缶。そして奥田民生本人はテキーラの入ったガラス製の銃を手に登場し、水鉄砲を打つ少年のような笑顔で八熊慎一のショットグラスにテキーラを注ぎ足す。まさにショットガンだ。
 
ユニコーンのメンバーは5人とも50歳を記念した生誕祭を開催しているが、その全てに出演している八熊慎一、「おれがどれだけユニコーンを祝ったことか」と、けだるそうな(ふりをする)奥田民生を制して、演奏スタート。まずはTHE BAND HAS NO NAMEの名曲、カッティングが心地よい「Mistake」。音色がシンプルだからこそ、改めてこの曲の持つフレーズの秀逸さが際立つ。サビのコーラスの「チュッチュッチュッ…」は一人でやるものじゃない、と愚痴る奥田民生。いつも以上に軽快なトークに、客席の笑いは絶えない。
 
弾き語りという性質上ゆったりとしたムードが続いたが、その空気を変えようと、奥田民生が客席を煽り、最後は疾走感がたまらない名曲「Something Wild」!大きな歓声に挙手にと、客席を弾かせ弾ませて、本編終了。

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「誕生日!誕生日!」と自然発生したアンコールの声に応えて、まずは八熊慎一がひとり再登場。謝辞を述べると、そこに橘あつやたちばな哲也も加わり、アコースティックセットでのSPARKS GO GOを5曲披露。10日前に50歳生誕祭を終えたばかりのたちばな哲也が「まだ余韻、というより疲労が残ってる」とぼやくと、「全員50代。熟年バンド!」と感慨深げな八熊慎一、さらに51歳の橘あつやも「初老だよ」と加える。

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選ばれた5曲は「Easy Ride」、「熱風」、「50cc Rider」、「Sookie Sookie」、「SAD JUNGLE」。エンジンをブンブン吹かせて回転数を上げていく、ボルテージの高まりはアコースティックスタイルでも不変だ。観客も拳を挙げて彼らの生誕半世紀、そしてバンドの四半世紀(と1年)の歴史を祝う。
 
ダブルアンコールでは八熊慎一がひとりステージに上がり、「そんなに変わっていかない、ぼちぼちやっていきます」と次のステージへの思いを語り、「TODAY」を弾き語りった。

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熟年、熟練、円熟。ダイナミックなロックバンド、SPARKS GO GOには似合わない言葉かもしれない。が、今宵のアコースティックスタイルのバースデーライブでは、節目のその日に一歩立ち止まって、ゆっくり振り返って、また次のステージに向けてギアを入れて整えていく…そういう貴重な瞬間が垣間見えたし、何より1曲1曲の持つ秀逸さ、輝き、渋みをじっくり堪能できたように思う。

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◆セットリスト
M01. 哀しきSummer
M02. Save me
M03. Blue Boy
M04. 冬の稲妻 w/秋葉正志
M05. 恋をしましょう w/秋葉正志
M06. なんとなくなんとなく w/木内健
M07. 昼に逢いましょう w/木内健
M08. かまくらのなまくらー w/菅原龍平
M09. シャドー w/菅原龍平
M10. サンライズBABY w/桜井秀俊
M11. 世界の果てまで w/桜井秀俊
M12. 生きる w/斎藤有太
M13. ランタナ w/斎藤有太
M14. DRY FRUITS w/ABEDON
M15. 夏の大将 w/ABEDON
M16. Mistake w/奥田民生
M17. Something Wild w/奥田民生
-encore ~SPARKS GO GO(Acoustic Set)~-
E01. Easy Ride
E02. 熱風
E03. 50cc Rider
E04. Sookie Sookie
E05. SAD JUNGLE
-double encore-
E06. TODAY
◆SPARKS GO GO 公式サイト
http://sparksgogo.jp/
 
◆インフォメーション
NEW ALBUM『SWERVE DRIVER』
・2015年09月02日(水)発売 SLRL-10027/¥2,963+税
LIVE ALBUM『Quarter Of Century Bootleg』
・2015年07月29日(水)発売 SLRL-10025-26/¥2,963+税

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