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TEXT:栗林啓 PHOTO:吾妻仁果
HEAD PHONES PRESIDENT 15th Anniversary Live
2015.11.28 @新宿ReNY ![]() 11月18日にはアニバーサリーアルバムとなる『alteration』をリリースし、間髪入れずに今回のアニバーサリーライブの開催となったが、ゲストアーティストとして、HPPと親交の深い、MUM、Angers、exist†trace、AGGRESSIVE DOGS a.k.a.UZI-ONEが出演し、記念すべきライブに華を添えていた。また、会場のモニターには彼らの15周年を祝うゆかりのある人たちからのメッセージが流され、一層お祝いムードを盛り上げていた。そんな温かい空気が漂う会場であったが、いざライブが始まればそこは闘技場のごとく熱いバトルが繰り広げられ、各バンドの魂がぶつかり合うとても熱狂的なステージが展開された。まさに見逃せない充実したステージとなったその熱いライブの模様をぜひご覧いただこう。
この記念すべきイベントのスタートを飾ったのは、新進気鋭のロックバンドMUMだ。何のSEも無い中、静かにステージに現れた4人。Pikoのアカペラによるメロディが、彼らのステージの幕開けを告げた。アバンギャルドな雰囲気を持ち合わせたPikoとKaiのルックスとは裏腹に、ファンキーでソウルなテイストすら感じさせる、ノリの良いサウンドが彼らの持ち味である。J.J.のドラムがグルーブ感豊かにリズムを刻む中、Kaiは大胆なアプローチのギターリフを織り込む。絵の具を使った特殊なヴィジュアルエフェクトも相まって、MUMならではの不思議な世界観を構築していた。
そしてそんな空間の狭間で、自然なメロディを紡いでいくPikoのボーカル。決して奇をてらうようなことをするわけではない。しかしその歌が、彼らの作り出す空間の中で泳ぎ回ると、まるで聴くものがPikoを通して、異空間に訪れたような不思議な感覚を想起させる。この日の観衆も、ステージの中央に立つPikoを通して、その彼らの作り出した不思議なサウンド空間をたっぷりと味わっているようにも見えた。「Thank you people! I love you!」Pikoのメッセージとともに、4人はステージを去った。心地良い浮遊感を感じながら、観衆はさらに盛り上がっていくであろうイベントへの期待を高めていた。 ◆セットリスト
M01. Synchronicity Prays M02. Libera Carta M03. Resistance M04. Borderline M05. Sing M06. Mahabharata br>
MUMに続き登場したのは、女性ボーカリストsamiを中心とするシンフォニックメタルバンドのAnger。Angersがこの日の主催者であるHPPと、そのボーカリストAnzaを敬愛し、強いつながりを持っていることは、HPP主催のイベントに彼らが度々登場していることからも明らかである。出だしから彼らならではの重量感抜群のメタルサウンドに乗せて、美しいハーモニーとメロディが会場を包み込んでいた。
takaとtaroが織り成すどっしりしたリズムの上で、sinとYASUのギターは荒々しさを持ちながら、一方で繊細さを感じさせる美しいハーモニーを形成。ステージにいるのは5人だが、音の厚みはそれ以上の存在感を見せているようにも思えた。幻想的な物語の一場面を思わせるようなステージの上で、可憐なメロディを辿るように歌うsami。中世の貴婦人のような出で立ちの反面、動と静を程よく表現するそのパフォーマンスには、物語の主人公を演じているような雰囲気すら感じられた。
◆Angers
sami (Vocal) sin (Guitar) YASU (Guitar) taka (Bass) taro (Drums) ◆公式サイト http://angers-official.jp/ ◆セットリスト
M01. only the end M02. time M03. Invasion M04. blind××× M05. 夜宴 br>
独特なスタイルで抜群のアピールを行った2バンド。会場の熱気は上がる一方だ。そして熱き“男前な“女性5人組のexist†traceが登場した。猶人とMallyのリズム隊の安定感に、緊張感と荒々しさを作り上げる乙魅のギターが重なる。馴染みやすいポップでキャッチーな雰囲気と、ロックならではの旨味を兼ね備えたサウンドがたまらない。
そしてフロントに立つ、ジョウとmikoという二人のボーカリストは、バンドの魅力を十二分に引き出していた。時に二人で物語を演じるように絡み合い、そしてまた別の時には美しくも力強いハーモニーを構成する。さらにはジョウの声で、人間の内面をクローズアップしたような生々しい世界観を作り上げる。ステージを所狭しと動き回るパフォーマンス、その様はまさに舞台劇のようだ。しかし彼女たちの魅力はこれだけではない。幾多のライブ活動で磨き上げたどこにもない唯一無二のスタイル、それこそが彼女らの強み。同じく唯一無二のスタイルを築き上げるバンド、HPPへの敬意を払いながら、彼女たちは声を振り絞り、全身全霊の演奏で観客を盛り上げていた。
◆exist†trace
ジョウ (Vocal) miko (Guitar & Vocal) 乙魅 (Guitar) 猶人 (Bass) Mally (Drums) ◆公式サイト http://www.exist-trace.com/ ◆セットリスト
M01. ダイアモンド M02. THIS IS NOW M03. アンティークドール M04. TRUE M05. RAZE M06. VOICE br>
各バンドの転換時には、増田勇一、DJ狂犬によるDJとポールダンサーたちによるパフォーマンスが繰り広げられた。ポールダンサーたちがステージ中央で妖艶なダンスを繰り広げる様子は、ロックバンドのライブではなかなか見られない光景ではないだろうか。妖艶でありながらも鍛えられて引き締まった肉体によるアクロバティックなパフォーマンスは、観客たちを釘付けにしていた。
◆DJ
増田勇一 DJ狂犬 br>
◆Pole Dance
rabbi shiworu br>
そして本日の主役を迎える最高の雰囲気を作り上げるべく現れたのは、AGGRESSIVE DOGS a.k.a.UZI-ONE。ステージには2体の甲冑のオブジェが置かれている。ストリートファッションを身にまとい、飄々と現れた5人。しかし、初っ端から飛び出したゴリゴリのハードコアメタル・ビートダウンサウンドは、「頭を鉄鎚(かなづち)で殴られた」そんな形容がまさにピッタリの、パワー全開の激しいパフォーマンスを繰り広げた。彼らのステージはパワー感、重量感などという表現すら陳腐に感じてしまうほど、それはまさに大きな衝撃という他にない。
彼らだけに沸き上がるパッションを込めたアグレッシブなサウンド。音の一音一音まで、そして必死にステージを駆け回る彼らのその腕の一振りまでに、彼ら自身の生き様のような物語が見えてくる。終盤には、彼らと親交の深いRIKIJI (OBLIVION DUST/MEGA8BALL)、NEMO (SURVIVE)という二人のゲストギタリストを交えてのパフォーマンスとなった。「今日はイイ感じにやれている」UZI-ONEがぶっきらぼうに吐いたその言葉には、単にミスのないのステージができたなどという簡単なことだけでは済まされない、すさまじいパワーが溢れたライブとなったことが示されていた。
◆AGGRESSIVE DOGS a.k.a.UZI-ONE
UZI-ONE (Vocal) Chris Drapeau (Guitar) Maa (Guitar) Kei (Bass) Danie Luttick (Drums) ◆公式サイト http://aggressive-dogs.com/ ◆セットリスト
Opening SE. 大xx心 M01. 撃xx流 M02. Rxxx Dxxx M03. 威xx明 SE. TAP OUT M04. 不xx音 M05. 獅子奮迅 M06. Dxx SE. TAP OUT feat. RIKIJI (OBLIVION DUST/MEGA8BALL) M07. 撃x M08. 獅子吼 M09. 天xx狼 SE. Cxxxter AGNO ver. feat. RIKIJI (OBLIVION DUST/MEGA8BALL) & NEMO (SURVIVE) M10. Cxxxter br>
幻想的なSEの中、白と黒のベールに包まれた4人の女たちが現れる。女たちはポールを使い巧みなダンスを披露し、幻想的な空間に妖艶な世界を加えていく。まさにこれから始まるHPPの世界へと誘わんとしているようである。そこにバンドの演奏が加わり、曲は「Escapism」へと繋がっていく。Anzaは激しい感情をぶつけるように歌う。Hiroによるキーボードのイントロから「Life Is Not Fair」が始まる。静かなイントロとは一転、引きずるような重いリズムでグイグイと観客を引き込んでいく。続いては、Narumiのハーモニクスから始まり、Batchのトライバルなドラムに続いていく「What’s」。ヘヴィなサウンドだけでなく、グルーヴィーな演奏も彼らの持ち味であったことを思い出させる。『alteration』にも収録された「Too Scared」、激しく重い「Star」、Anzaが機械仕掛けの人形のようなパフォーマンスを見せた「I’ll-treat」、スペーシーなキーボードが印象的な「I Will Stay」と続いた。 ライブの前半は、古い曲が時代を追うようにして演奏されており、まるで丁寧に時代を紡いでいるかのようであった。
Hiroのブルージーなギターによるインターバルの間、Anzaが衣装チェンジして現れ、続けて「A~La~Z」が演奏された。静から動へのシフトチェンジが、なんとも言えない高揚感を生み出す。『alteration』にも収録されている「Snares」、「Hang Vail」と続く。ライブでは定番の「Chain」、Hiroのテクニカルなタッピングのソロから始まる「Labyrinth」、オリジナルよりファストなアレンジとなった「Light To Die」、ヘヴィでグルーヴィーな「Nowhere」、切ないメロディが印象的な「Folie a Deux」と古くからのファンにはおなじみの曲が続き、観客は熱狂的な声援で答えていた。
Narumiが座りながらベースを弾き、Batchと共にリズム隊によるセッションが始まる。2度目の衣装チェンジを行ったAnzaが現れ、「用意はいいか?」と煽る。始まったのは、「One To Break」。ライブの後半は、『Stand In The World』以降の最近のライブではおなじみの曲が演奏された。曲は「Just a Human」へと続き、メンバーたちも何か解き放たれたかのように躍動する。感動的なメロディが心を打つ「Rainy Star」では、「爆弾じゃなくて恵みの雨を」と語ったAnzaの言葉がとても印象に残る。「Miss You」でもAnzaは観客に何かを語りかけるように歌う。『alteration』とはまた違ったアレンジとなった「All You Need」、Narumiのグルーヴィーなベースが印象的な「Live With」と続き、最後は新曲の「Failed」で締めくくられ、会場は最高潮の盛り上がりを見せた。アンコールで再びメンバーが現れ、15周年のライブに集まってくれた観客に感謝の言葉を述べつつ「A New World」とHPPのエポックメイキングとなった「Stand In The World」を演奏し、さらなる盛り上がりの中ライブの幕を閉じた。
◆HEAD PHONES PRESIDENT
Anza (Vocal) Hiro (Guitar) Narumi (Bass) Batch (Drums) Pole Dancer rabbi / shiworu Performer ZOMI ◆公式サイト http://headphonespresident.com/ ![]() ◆セットリスト
M01. SE M02. Escapism M03. Life Is Not Fair M04. What’s M05. Too Scared M06. Star M07. I’ll-treat M08. I Will Stay M09. A~La~Z M10. Snares M11. Hang Veil M12. Chain M13. Labyrinth M14. Light to Die M15. Nowhere M16. Folie a Deux M17. The One To Break M18. Just a Human M19. Rainy Star M20. Miss You M21. All You Need M22. Live With M23. Failed encore M24. A New World M25. Stand In The World br>
15周年記念アルバムとなった『alteration』は、過去と現在をつなぎ合わせる重要な作業だったとメンバーたちは語っていたが、今回のライブもファンたちと一緒に再確認できた重要なライブだったに違いない。デビューとなった「Escapism」から、新曲の「Failed」まで2時間以上たっぷりと演奏された今回のライブは、まさに見逃せない充実した内容のライブとなった。時代を遡るかのように1曲ずつ丁寧に演奏された昔の曲たちがそれを如実に物語っていたように思う。次のアルバムは今でとは全く違うアルバムになるとAnzaは語っていたが、どのようなものになるかとても楽しみである。今までの流れを踏まえた上で着々と進化を続ける彼らの音楽には注目せずにはいられない。
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