今や日本のHeavy Rockシーンでは欠かすことのできない存在となったHEAD PHONES PRESIDENT(以下:HPP)の前作から約1年ぶりとなる新作は、15周年記念のアニバーサリーアルバムで、新曲を含む16曲が収録されている。
新曲の「Failed」は『Disillusion』の流れを汲むヘヴィでアッパーな曲で、強烈なインパクトを与えるサウンドとなっている。昔の曲に関しても新たなアレンジがされており、4人編成となって以降のダークなだけではない喜怒哀楽を内包した多彩な感情表現がなされていて、新しい曲と並んでいても全く違和感がない。ただし、『alteration』のタイトル通り大幅な変更、改造が施されており、一聴しただけでは新しい曲と間違うほどの変貌を遂げている曲もある。新しい曲と昔の曲とを聴き比べると同時に、昔の曲の昔のアレンジと新しいアレンジを聴き比べるという楽しみ方も出来るだろう。
11曲目以降の6曲はさらに大胆なリミックスが施されている。バンド内外の手によって生まれ変わった音は、ミクスチャーやエレクトロを好むリスナーにもアピールできそうなほどである。
ANZAによれば、このアルバムは過去と現在とをつなぎ合わせて、次のステップに進むために必要不可欠な作業だったようである。16年目以降のさらなる飛躍を期待せずにはいられない。
15周年記念アルバムの発売に当たって、ANZAの直撃インタビューを行った。活動15年間の思い出、15周年記念アルバム、さらに15周年記念ライブについて熱く語ってもらおう。
—15周年ということですが、結成は?
ANZA:結成は1999年です。最初は違う名前でキーボードも入ったポップロックなスタイルのバンドをやっていましたが、もっとヘヴィでダークなものがやりたいということでHPPに発展し、HPP名義でドラムレスで1999年にライブを行ったのが最初です。そして、2000年12月に1st single「escapism」をリリースしました。
—15周年を迎えてどうですか?
ANZA:いろんな人に聞かれますけど、長いと言えば長いし短いと言えば短い、自分たちは「15年も経ったっけ?5、6年しか経ってないんじゃないの?」というのが正直な感想です。メンバーチェンジも含めてこのバンドは山あり谷ありが激しいので、一日一日の時間が足りないくらい。常に何かしらあって、いつも時間に追われているって感じです。
—15年の間には活動のターニングポイントになったことがいろいろあったと思いますが?
ANZA:最初の音源をリリースした後すぐにベースが辞めて、その後何年かサポートでやって、NARUMIが入るまでベースがずっと決まらなくて…その後2004年にオリジナルメンバーだったドラムが抜けて、それに大きく左右されてどうしていこうかとバンドの存続も考えたのが5年目です。その後BATCHが入ってくれて、正式メンバーになるまでにサポートの期間が2〜3年あるんですが、2008年のLoud Parkの出演をきっかけにBATCHが決意してくれて2009年2月に正式メンバーになりました。やっと安定したなと思ったら、オリジナルメンバーだったMARが辞めちゃって…私の中ではMARがいなくなっての持続は無理かなと思ったんですが、他のメンバーが「やれるでしょ?」と(笑)。私だけが動揺してたんですが、4人になってもう4年経ったのかな?メンバーチェンジは他に比べれば少ない方だよと言われますけど、自分たちにとってはその時にメインで曲を書いていた人たちが辞めていったりしたので、アルバムを出す頻度がすごく遅くて…毎年目標として何かしらのリリースをしよう考えていたけれど、『Stand In The World』が3枚目って少ないですよね?だから今4人で落ち着いてからの間隔の狭さにすごく困っていて、1年に1つは何らかのリリースをしているのですごくキツいな〜って(笑)。
—やはり一番大きなターニングポイントだったのは4人編成になった時じゃないかと思うんですが、サウンド的なものとかバンド内での役割分担とかいろいろ変化があったんじゃないかと思いますが?
ANZA:そうですね、ありすぎました(笑)。まず、一番心配していたのはツインギターからギターがHIROだけになってどうするかと。新しく作った曲は問題なかかったんですが、あの時は確かすぐにCLUB QUATTROでのワンマンが決まっている状況で、あの時点では同期を使ってという選択肢がなかったので、生演奏でどう乗り切るか…ただ、それがきっかけで気が付けたこともありました。リズム隊がツインギターに消されてなかなか前に出てこなかったのが前に出てくるようになって、BATCHのドラムは重めに後ろ気味で叩く、NARUMIのベースは突っ込み気味で荒さもあるんだけど、それが組み合わさるとすごく面白いという。同じ曲でも4人で演奏した時になんでこんなにグルーヴが気持ちいいんだろうって、そこが大きな発見でした。もちろんマイナスなこともあって、HIROがすごく大変だった。昔の曲は一からギターアレンジをやり直さなければならなかったし、アレンジできなくてやれなくなったという曲が実は当時多くて、今、2〜3年経ってようやくどうすればいいかということがわかってきて今回のアルバムに収録しています。4人になった時点でゼロに戻して、どうせ同じことができないならこれからHPPを持続させていくために何を大事にするかということを考えました。核となる世界観というものは大事にするけど、そればかりに囚われすぎると先に進めなくなるから一旦フリーにしようということでできた曲が「Stand In The World」でした。今までのHPPからすれば考えられない曲で、でもそれができてくれたおかげでずいぶん可能性が広がりました。
—『Stand In The World』では、これまでなかったギターソロができたり、曲の構成がオーセンティックな形になったりと今までの殻を破れたように感じましたが?
ANZA:あのアルバムでバンドの第2章が開けたというか、苦労したアルバムではあるけど楽しんだアルバムでもありました。自分たちの中ではもちろん自信はあったんだけれども、意見は別れるだろうなという覚悟はありました。今までHPPの名前は知っているけど曲は聴いたことがなかったメタル好きの新しいファンはすごく増えました。その分、昔のダークな世界観に浸かっていたかったファンは離れて行ったのも事実で、プラマイゼロというわけではなくプラスになったものもあればマイナスになったものもあるけれど、自分たちの核というものは捨てきれないので…ライブをやればあまり変わった感じというのはなくて、ライブでは同じ曲なのに同じ演奏にならないというのが自分たち掟のようになっているので(笑)。
—そういうのはバンドが生きている感じがして私はすごく好きですけど(笑)。
ANZA:今でこそ曲の広がりを出すために同期を使ったりしていますが、生のリアル感にはすごくこだわっています。アルバムにおいて一つのメロディラインの提示はしているけれども、ライブでは歌っているとその場その場で想いって変わっていくので自然と変わってしまう。一つの答えがない分、「生きている」ってことにこだわりたいです。「なんで変えたんですか?」ってライブの後とかにファンの方に聞かれるけれど、空気感、その空気を吸って変えたくなっちゃうんだよねっていう…それが自分たちの強みかな?毎回同じライブをしないっていうことかな?それってあんまりできることじゃないと思うんですが、カッチり決められた素敵なショウの素晴らしさというものはもちろんあるんですが、自分たちにはそれが向いていなくて。セットリストもほぼその場その場で考えていて、もちろんロングになるとそうはいかないけど、セットリストが決まるのは前日だったりとか。それにあんまりリハに入りませんからね。自分たちは常に緊張感が欲しいんですよ。やっぱり落ち着いてしまうとお客さんに伝わっちゃうし。毎回同じところで同じことをするっていうのが好きじゃなくて、メンバーみんながそうなんです。
—11月18日に15周年記念アルバムがリリースとなりますが?
ANZA:新しい曲は今回だからできた曲という感じの曲です。古い曲もメロディの構成さえ変えている曲もあります。「え?」と戸惑う部分もあると思います。次はBメロのはずなのにいきなりサビになっちゃているとかそういう手術はしています。ギターのアレンジは当然変わっていますし、ドラムパターンも違う。同じ曲のようで全然違う。新曲の雰囲気に合わせた訳ではないけれど、自然とそうなりました。フルの新譜では作らないであろうアレンジになっています。今回だけの特別で、次に出すアルバムでは絶対にやらないと思います。
—それが今回のアルバムタイトルの『alteration』の意味ですか?
ANZA:そう改造!改造しましたって感じです(笑)。
—タイトルは後付けですか?
ANZA:後付けです。私たちタイトルを決められないんですよ(笑)。新曲も決められなかったし。昔の曲を今のアレンジでチョキチョキしました、遊んでみましたって感じです。
—昔の曲は各時代のアルバムからまんべんなく選択されていますが?
ANZA:曲を選ぶ時に一度各メンバーでリストアップしてみたんですが全くバラバラで(笑)。2、3曲かぶっていた曲は丸をつけて、さて残りはどうしたものかと(笑)。聞き直してみて、自分だったらもっとこうしたかったという思い入れが強かった曲を選びました。いつもボーカルは最後にレコーディングでしょ?いつも時間がないんです。可哀想なんです私。一人だからガンガン言うけど(笑)。みんながゆっくりレコーディングしちゃうんで、最後の2〜3日で全曲レコーディングだったりとか、まあ大変なんですよ…毎回オーディション気分(笑)。今回、昔の曲に答えを出した訳じゃないけど、15年間の成長分を含めて自分のやりたかったことができたかなと思います。シンプルさ。詰め込みすぎてた部分を取って、あえてコーラスを外して歌一本にしてみたりとか。これでやっと一区切りがついて、ここからまた新しいスタートができるかなという気がします。
—そういう意味では生み出さなければならなかった大事なアルバムですね?
ANZA:どうして15周年でアルバムを残そうとしたかというとそういう理由もありました。4人編成になってから『Stand In The World』以降の曲がメインになっていく中で、昔の曲を聴きたいというファンもいるし、最近HPPを知ってくれた人が昔の曲を聴こうとしても廃盤になっているものもあって、そういう声を多くもらっていて、それならば昔からのファン最近ファンになった方どちらも楽しめるように再録しようと。それから、かつてないダンスサウンド!「HPPは暗いだけのバンドと思わんといて!」って感じで(笑)。GARIのYOW-ROWにリミックスをお願いしたんですが、人に丸投げしたのも初めてだし、自分たちではこうはできないだろうというものになりました。YOW-ROWは今では数少ない同期というか、HPPが生まれたきっかけも彼で、当時GARIのドラムの圭(日下部圭)がANZAのバックバンドのドラムをやってくれていたのもあっていろんなアドバイスをもらっていて、そんな彼にリミックスをやってもらったってことはHPPにとってすごく意味のあることになりました。「俺しかできないよね?」って二つ返事で引き受けてくれて、すごくかっこいいアレンジにしてくれました。それにメンバーもリミックスを手掛けて、そんな引き出し持ってたの?って感じで(笑)。やれば新しいことができるんだなって。区切りでできて本当に良かった。みんなの反応が楽しみです。
—11月28日の15周年記念ライブはどんな感じになりそうですか?
ANZA:ただ普通のロックイベントにはならなくて、「Fuse The Soul」じゃないけれど、DJもいるし、物販にはネイルもあったりとかお祭り感覚で、ロックに携わるけど他の表現をする人たちを転換中に出てもらったりとかを考えています。ただ内容的にはHPPのワンマンみたいな感じで、たっぷり曲を演奏します。15周年で関係のあるバンドや今年から来年にかけてタッグを組もうと思っているバンドにはゲストで出てもらう予定です。それから、11月28日からスタートで来年1年間15周年記念企画のツアーになります。詳細は11月28日に発表します。HPPでしかできないことをやります。ただのロックイベントにはなりませんよ(笑)。
—最後に意気込みをお願いします。
ANZA:年齢って関係ないとは言いつつも、体力が有り余っている勢いだけのライブというのはだんだん難しくなってきています。けれど、上を見ればまだまだ活躍している先輩バンドもいれば、下を見るとたくさんの後輩バンドが出てきています。昔に比べればライブの数が減っていて、それには一つ一つのライブを大事にしたいという思いもあるんですが、ただ今回は15周年ということで久しぶりに色々な場所に行く大きいツアーになります。15年間やってきた区切りとして、空間作りや世界観作りにこだわったライブを考えています。昔は静と動だけだったものを喜怒哀楽を表現できるようになって、昔と今をひっくるめて大きい円で表現できるようにしようと。昔からのファンには変わってないと思ってもらえる部分と進化したなと思う部分と感じてもらって、新しいファンにも昔の曲を聴いてもらえるきっかけとなるようなライブにしたといと思います。それから、私のコスチュームもドレッシーな感じだったのを変えようと思ってます。ライブによってはジーパンだったり女の子っぽくしたりして、私の中でドレッシーだけのイメージに引っかかる部分が出てきたのでこだわりたくない。タンクトップと短パンだけとか、脱ぐってことはしないと思うけど(笑)、毎回変えていきたいと思っています。自分たちの見せ方として、曲によってはドレスが邪魔になってしまう部分があることがあって、ANZAがいきなりジーパンとタンクトップのイカついネーちゃんになってるよってこともあると思います。台湾とかではたまにやってるんですけどジーパンとか。意外にリアルになるかもしれない。乞うご期待です。そんなこと言ってめんどくさいから変わんないってこともあるかもしれないけど(笑)。
HEAD PHONES PRESIDENTのメンバーとの記念写真撮影にご招待!!
11月28日の15周年記念ライブに参加されるBEEAST読者の皆様の中から抽選で3名様をHEAD PHONES PRESIDENTのメンバー全員との記念撮影にご招待いたします。ご希望の方は、11月23日(月)23:59までにrock@beeast69.comへお名前、当日連絡の取れるお電話番号、メールアドレスを明記の上、「新宿で僕らと握手」の件名でメールをお願いいたします。抽選で3名様を記念撮影にご招待させていただきます。(当日ライブに参加される方に限ります。詳細は後日当選者の方にメールにてお知らせいたします。)
◆リリース情報
HEAD PHONES PRESIDENT / alteration
1. Failed
2. Too Scared
3. All You Need
4. Snares
5. Reality
6. Hang Veil
7. Live With
8. Light to Die
9. Folie a Deux
10. Instinct
11. The One To Break (Yow-Row Remix)
12. Wait (Hiro Remix)
13. Inside (Hiro Remix)
14. Rainy Stars (RN Remix)
15. Snares (Hiro Remix)
16. Stand In The World (Yow-Row Remix)
全16曲収録 歌詞付 ライナーノート:増田勇一
2015年11月18日発売 RADC-088 ¥2,500(税抜)
◆ライブ情報
2015年11月28日(土) 新宿 ReNY
HEAD PHONES PRESIDENT 15th Anniversary LIVE
●チケット料金 : 4,500円(税込み)+1drink
●開場 / 開演 : OPEN 16:30 / START 17:00
●出演アーティスト : HEAD PHONES PRESIDENT
ゲスト : AGGRESSIVE DOGS a.k.a UZI-ONE / exist†trace / Angers / MUM
DJ : 増田勇一 / 狂犬
●チケット先行発売 : 9月26日(土)
Official HP http://headphonespresident.com/
●プレイガイド : http://eplus.jp/
イープラス http://l-tike.com/ Lコード 0570-084-003
ローソンチケット http://t.pia.jp/ Pコード 0570-02-9999
チケットぴあ
Official HP
http://headphonespresident.com/
Official FACEBOOK
https://www.facebook.com/headphonespresident/
Official Twitter
@HPPofficial
◆関連記事
【レポート】RHYTHM OF FEAR
http://www.beeast69.com/report/127138
【連載】新譜るLIFEダイアリー HEAD PHONES PRESIDENT『Disillusion』
http://www.beeast69.com/serial/simple/110906
【特集】Editor’s Note…PASSION Mind16(桂伸也)女性達の輝く場所 Part III ~ロックから人生を切り開いてきた女性たち~
http://www.beeast69.com/feature/96335