連載

ロック社会科見学 ステージ10★ロックグッズ店オーナー編

ROCK’N ROLL MUSEUM SENDAI 社本オーナーに突撃取材!
TEXT & PHOTO:鈴木亮介

ロックな現場、ロックな世界で働く人々の仕事を紹介する連載「ロック社会科見学」。節目の第10回目は東北・仙台より、2009年2月に仙台壱弐参(いろは)横町にオープンした「ROCK’N ROLL MUSEUM SENDAI(ロックンロールミュージアム仙台)」に注目!オーナーの社本陽彦店長へお話を聞きました。

「ロックンロールミュージアム」という名前を聴いて懐かしい!と思った方も多いのではないでしょうか?かつて東京・原宿に四半世紀にわたって開店していたロックアーティストグッズ専門店、それこそが「ROCK’N ROLL MUSEUM」です。2009年に惜しまれながらも閉店。実は仙台にて、そのネーミングが受け継がれていたのです。そうした開店の経緯も含め、話を聞くことができました。

ROCK’N ROLL MUSEUM SENDAI
オーナー 社本 陽彦 プロフィール

 
1968年8月3日生まれ。仙台出身。2009年1月に転身し、ROCK’N ROLL MUSEUM SENDAIを出店。
穏やかな口調と真摯な接客で、仙台のロックファンから支持を集めている。最近ハマっているのはLady GaGa
私生活では3歳の息子の父親として、子煩悩な一面も。

— こちらはいつオープンしたのですか?

社本:2009年の2月です。今年で4年目になります。かつて原宿に「ROCK’N ROLL MUSEUM」がありましたよね。私も東京を訪れた際にはよく足を運んでいたのですが、2009年1月に惜しまれながら閉店してしまいました。その後、私が名義を譲り受け、仙台で出展したという形です。

— 出店の経緯を詳しく教えてください。

社本:ちょうど新しい仕事をしたい、自分の店を持ちたいと思っていたタイミングで、大好きだったROCK’N ROLL MUSEUMが閉店するというニュースを聞いて、びっくりしました。これは是非残したいと思って、当時の経営者に相談し、「名前を貸します」ということで許可をいただき、仙台に開店する運びとなりました。

— ちなみに前職は何をされていましたか?

社本:パチンコ店の経営者をやっていました。音楽業界とは全く縁遠い世界ですね。

— 社本さんご自身、音楽をやっていたのですか?

社本:いえ、私は観に行く専門です。最初は邦楽から入って、その後THE ROLLING STONESAerosmithが好きになったのですが、お店を始めてからお客さんにどんどん教えてもらって、今やデスメタルが大好物になってしまいましたね(笑)

— 仙台に出店されたのは、やはりご自身の出身地ということが理由なのでしょうか。

社本:そうですね。私は仙台で生まれ育ち、ずっと仙台で仕事をしてきました。今はインターネットが普及していますし、音楽好きという縁で東京のJAM SHOPPINGをはじめ様々な販売店とつながることができます。開店当初はJAM SHOPPINGの1社だけとの付き合いだったのですが、今では約15社から商品を仕入れることができるようになりました。

— 開店までに苦労したことはありますか?

社本:実は全然苦労しませんでした(笑)12月30日にこの物件を見に来て、オープンしたのが2月28日です。付近にESPもありますしライブハウスも数軒あって、音楽ファンが訪れるのには適した立地だと思い、即決しました。

— お客さんはどのような層が多いですか?

社本:中学生から50代まで幅広くいらっしゃいます。中学生にはSlipknot(スリップノット)が人気ですね。仙台に来たこともあって、Slipknotは世代を超えて人気です。

— 社本オーナーの1日のお仕事について、教えてください。

社本:お店は午前11時半から夜7時半まで営業しています。店は今全部一人でやっているので、11時前に出社して棚卸しをし、接客もしています。

— 昨年は東日本大震の影響で大変だったのではないかと思うのですが…

社本:それがですね…カバンが2個落ちただけだったんですよ!幸い大きな被害もなく、震災発生から5日後には営業を再開しました。さすがにハードな音楽はかけられないなと思って、THE BEATLESなどを流して。ただ、こんな時にお客さんなんて来ないかなぁとも思ったのですが、ふたを開けてみたら、お客さんが何人か来て、「あぁ、音楽って、あったんだ」と感激してくれたんですよ。「ラジオは地震情報を伝えるだけだし、この何日間かずっと音楽から離れていた…」と。中には車が津波で流されてしまったと言って、自転車で2時間かけて来店してくれた人もいました。

— 不躾な質問ですみません。その方達は何を買いに、そしてなぜROCK’N ROLL MUSEUMに買いに来たのでしょうか?

社本:ロックTシャツが多く売れました。お客さんの一人は「ロックTは、入れ墨じゃないけど、自分の胸に大きく示すアイデンティティみたいなものだから」と話してくれました。それを聞いて、あぁお店を開けて良かった、開け続けなければいけないな、と思いましたね。お客さんの言葉で私自身もパワーをもらいました。

— なるほど。こうしたお店を経営していく上で大切なことは何でしょうか?

社本:何だろう…普通の日用品を売るような店舗とは違うので、「こういうものがあるんだよ」というのをしっかり伝えるように努力しています。お客さんと話して教え合わないといけないのですが、意外と仙台の人は買い物下手で、ただ店に入ってただ帰っていくということが多いんですよね。東京や関西の人だと、「見つけに行こう」という気持ちがあって、店員と会話して気に入った商品を見つけたり、時に値引き交渉をすることも(笑)。僕らもお客さんとの会話の中で、どういうものを求めているのか知ることができるので、そうしたコミュニケーションを意識しています。

— そもそもバンドTなどのグッズを身につけることはコミュニケーションの起点にもなりますしね。

社本:昨年の大震災の時に、出身地も年齢も違うボランティアの人たち同士が、例えば「KISSのTシャツを着ている」ことがきっかけで話しかけて、仲良くなったということも多々あったそうです。バンドグッズはコミュニケーションツールになりますよね。だから、うちのようなお店に来て、一言も話さずに帰ってしまうお客さんを見ると、「もったいないなぁ」と思います。

— ネットショッピングだけでなく敢えて実店舗を設けている所には、やはりオーナーのこだわりがあるのではないかと思います。

社本:先日、渋谷のBLITZさん(ロックグッズショップ)に遊びに行く機会があったのですが、そこのオーナーからとても勉強させてもらいました。実店舗は在庫というリスクを背負う分、お客さんにその場ですぐ商品を渡せるという利点があるし、コミュニケーションから買い物に発展させることも大事だとおっしゃっていて、確かにその通りだなと思いました。居酒屋感覚で「今日のオススメ何?」みたいに、自分の知らなかった良いものに出会える場としてこのROCK’N ROLL MUSEUMを活用してほしいですね。

— 最後に、今後の展望を教えてください。

社本:たまに残念なのが、お客さんにものすごいSlipknotマニアの方がいて、「絶対にこの人達が持ってないグッズを仕入れてやろう」とドイツ経由で輸入するのですが、「あぁこれ持ってました」と言われるんですよね。ネットだから買えちゃうんです。それはそれで悔しいのですが(笑)逆に、ROCK’N ROLL MUSEUMを通じて今まで知らなかったミュージシャンに関心を持ってもらえたら嬉しいです。今実験的にやっているのが、割合メタル色の強いラインナップの中に、Lady Gagaという全然違うジャンルのグッズを混ぜています。私自身Lady Gagaが大好きなので、メタルファンのお客さんに今Lady Gagaの音楽をオススメしているんですよ。2人~3人くらいハマったかな。メタルしか聴かない!という人にもポップロックを聴かせることができるか、という実験です。「知らなかった、こういうのもかっこいいね」と言われると、内心やったぁと思いますね。また、今度初めて日本のアーティストの商品を取り扱うことになりました。HEAD PHONES PRESIDENTです。全曲英語歌詞という所から、当店でも扱えると…それよりも、バンドとして魅力を感じたからですが。先日仙台のライブを見に行ったときにお話しする機会があり、ツアーTシャツ、グッズを扱う予定です!

「仙台にライブに来るたびに訪れる」という三宅伸治をはじめ、ロックミュージシャンの間でもファンが多いROCK’N ROLL MUSEUM。先日、本誌連載「ロック1年生」でもご紹介したムスリムホットのメンバーもよく足を運ぶということでした。

この日の取材中にも、「友人に誕生日プレゼントとしてTシャツを買いたい」という常連さんが来店。どのTシャツをあげたらよいか店長と相談していました。そのご友人もROCK’N ROLL MUSEUMの常連さんとのことで、「ROCK’N ROLL MUSEUMで見つけたのではなく自分で苦労して探したように見せるため、別の紙袋で渡して驚かせよう」とたくらんでいました。

ROCK’N ROLL MUSEUMは音源販売は行っておらずグッズの専門店ですが、社本オーナーとのやり取りの中で、「どんな音楽なのか」と興味を持って新たに聴き始めたというお客さんも多いことでしょう。東北の皆さんには是非、居酒屋の「今日のオススメは何?」のような気軽な感覚で、ROCK’N ROLL MUSEUMに足を運んでほしいと思います!

ROCK’N ROLL MUSEUM SENDAI
所在地:
宮城県仙台市青葉区一番町2-3-28いろは横丁内
営業時間:月~土 11:30-19:30/
日、祝 11:30-18:00 (火曜定休)
電話:022-263-6960
公式サイト:
http://rocknroll-sendai.com/
http://ameblo.jp/heavymetal-lover2009
宮城県仙台市青葉区一番町2丁目3−27




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