関取花『黄金の海であの子に逢えたなら』

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関取花『黄金の海であの子に逢えたなら』

TEXT：鈴木亮介

「オーガニック」という言葉を聞いて、どのような連想をするだろうか。自然派、優しい、薄味、物足りない…そんなところだろうか。関取花というシンガー・ソングライターは、オーガニックな歌い手、そして作り手だと思う。でも、「自然」とか「優しい」とか、そんなもんじゃない。グレートマザーを思わせる力強さ、包容力、雄大ささえあって、なおかつ素朴な自然さ、皆をも共感させるユーモアさえ表現する。本当に”organic”という言葉通りの、本質的なミュージシャンだと思う。

9月2日（水）にリリースされる1stフルアルバム『黄金の海であの子に逢えたなら』には、そんな彼女の魅力がギュッと詰まった8曲が収録されている。1曲目「dawn （album version）」では冒頭、シンプルなアコギのフレーズにどこか懐かしさを覚える関取花の歌声が乗る。スローなテンポでしっかりとその個性あふれる歌声を聴かせると、「いざさらばひとりよがり」「老いぼれの花に水をとりあえずは注ぎましょう　がんじがらめの花束よりも美しくなるの」…と、あれもこれも引用したくなるほど秀逸なフレーズが並ぶ2曲目「すずらん行進曲」。ベース＆ドラムにオルガンを加えたバンド編成でそよ風のごとく疾走する3曲目「変身」と、ふたを開けば続々と飛び出す、バラエティに富んだラインナップ。関取花入門編としても推奨したい1枚だ。

今作はレコーディングにあたってファンファン（Trumpet／くるり）、MC.sirafu（Steelpan／ザ・なつやすみバンド、cero、片想い etc.)、田中佑司（Drums／bonobos、古川麦トリオ、ex：くるり）、谷口雄（Organ／森は生きている etc.）、おかもとえみ（Bass／科学特奏隊 etc.、ex：ザ・ラブ人間）、そしてNHK朝ドラ「マッサン」のサウンドトラックを手がけたtricolorの中村大史を擁するjohn john festivalら、数多くのミュージシャンをゲストに招き、関取花の音楽をよりゴージャスに、より本質的に表現していることも特長だ。

3曲目「変身」のバンド編成に加えて象徴的だなと感じたのは、5曲目「愛しのローレンス」のannieによるアコーディオン、6曲目「流れ星」の谷口雄によるピアノ、この対照的な装飾だ。どちらもアプローチが全く異なるものの、関取花のボーカルとアコギと見事なまでの一体感を見せ、ドレスアップさせている。

そうして、これらの曲を経て8曲目「北極星」を聴くと、関取花というミュージシャンの逞しさを改めて実感する。この最終トラックは自身の声とアコギのみで、今作の中で唯一、他の楽器を加えていない。でありながら、音の厚み…というか温かみが、他の楽曲に全く引けを取らない。激しく、けたたましく、隙間を音で埋めるように…という運動会とは一線を画す、”行間”によって存在感を増す音楽。崇高な気持ちで、アルバムを聴き終えることができた。

関取花は1990年12月18日生まれの24歳。プロフィールによると「幼少期をドイツで過ごし、のびのびと育つ。歌・ギター・作詞・作曲はすべて独学」という。2009年には『閃光ライオット2009』でファイナルまで勝ち進み、The SALOVERS、GLIM SPANKY、挫・人間、ズットズレテルズ（後のOKAMOTO’Sメンバーを含む）、CHEESE CAKE（現・MOSHIMO）らと共演。審査員特別賞を受賞した。

その後も「RO69JACK 11/12」入賞、神戸女子大学のテレビCMへの楽曲起用、FM横浜などでレギュラー番組を持つなど着実にキャリアを重ね、ここまで3枚のミニアルバムをリリースしているが、今回満を持しての1stフルアルバムの発売。和製Joni Mitchellと称されることもあるという関取花、ライブでの軽妙なトークと併せて、その魅力を堪能すべし。

◆リリース情報
関取花『黄金の海であの子に逢えたなら』
・2015年09月02日（水）発売
1851円（＋税）　DQC-1499
＜収録曲＞
M01. dawn （album version）
M02. すずらん行進曲
M03. 変身
M04. 彩光
M05. 愛しのローレンス
M06. 流れ星
M07. さらばコットンガール
M08. 北極星

◆ライブ情報
「黄金の海であの子に逢えたなら」リリースワンマンツアー～秋の大収穫祭～
・2015年09月04日（金）【大　阪】café Martha　※SOLD OUT
・2015年09月05日（土）【京　都】アバンギルド
・2015年09月06日（日）【金　沢】もっきりや
・2015年09月12日（土）【仙　台】sendai koffee
・2015年09月16日（水）【名古屋】K.D ハポン
・2015年09月18日（金）【岡　山】CAFÉ QINEMA
・2015年09月19日（土）【広　島】ふらんす座（ヲルガン座3F）
・2015年09月27日（土）【東　京】新宿プーク人形劇場
　昼の回（弾き語り）開演14：00
　夜の回（フルバンドセット）開演17：30
・2015年10月07日（水）【大　阪】梅田シャングリラ　※追加公演
・2015年11月02日（月）【東　京】吉祥寺スターパインズカフェ　※追加公演