連載

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KAGERO『KAGERO IV』
TEXT:桂伸也

「耳に残る音、曲」その条件とはどのようなものだろうか?非常に難しい問いであるが、筆者は「人を引きつけるインパクトがあること」「キャッチーであること」この二つだと考える。この二つの解は、一見矛盾していると思われる人もいるかもしれないが、いかに二つを共存させるか?その技量で音の魅力は倍増する。さらにその魅力的な音の中に、「本人の姿」が見えれば、その音はどんなにすばらしいものだろうか。
 
この3つの意味において、KAGEROが新たにリリースした最新アルバム『KAGERO IV』は、たくさんの「耳に残る音」を実現した、筆者はこのアルバムを聴いたときにそう感じた。今回はこの3つのことをガイドとして、彼らのこの新作の魅力を探ってみたい。
 
いうまでもなくKAGEROのインパクトを司っているのは、フロントマンの佐々木”Ruppa”瑠とピアノの菊池智恵子。まるで狂人の声のように、張りのある音色を激しく吹きまくるRuppa。たとえばオープニングナンバー「OVERDRIVE」やリードトラック「flower」のような爆音ナンバーでも周りに押しつぶされない、強烈な存在感を放ち、KAGEROの中心に立つ。そして彼の発するメロディに呼応し生き物のように変化する菊池のピアノ。特に美しいハーモニーを奏で、ある瞬間に文字通り「狂ったように暴れ始める」。単なるデタラメではない、自己の内なるものをさらけ出したような激しさが、大きなインパクトを発している。
 
二人の繰り出す強烈なメロディ、ハーモニーをしっかりと支えながら、「こんなのあり!?」と思わせる突拍子もないリズムパターンを繰り出す白水悠、萩原朋学のリズムパターンも必見だ。「Pile Bunker」などの楽曲で見られる展開では、おそらく冒頭のリズムを聴いただけなら、たとえば「次に来るのは、グルービーなノリ」などと想像する人も少なくないだろう。そんな期待を彼らはあっさりと裏切り、猛烈な表打ちの超速ビートに切り替えるなど、とにかく「普通だったら・・・」と思われるようなセオリーをあっさりと崩してかかってくる。肩透かしを食らわされた結果、彼らの音は強い印象として聴くものの脳裏に焼き付いてしまうことだろう。その意味で彼らのキャッチフレーズ「霊長類最強」の名は伊達ではない。
 
キャッチーであること。KAGEROのこの部分を支えているのは、実はリズムセクションではないだろうか?もちろんメロディのキャッチーさは、曲の印象を大きく決定づけるものだ。しかしこの自由奔放に駆け回るフロントセクションに、リズム隊がそのまま追従してしまうと、すべてが曖昧になってしまうに違いない。凶悪さを表すかのようにファズをかけた白水の図太いベース音、強烈なアタックを打ち出す荻原のドラム。KAGEROの一番ワイルドな部分を受け持ちながら、曲を曲として成立させることに大きな貢献をしている。
 
たとえば「sister」のように強い進行感を匂わせるAメロから、疾走感を打ち出すBメロへの展開。このリズムの切り替えは、アイデア的にもテクニック的にも相当難しいものと感じられるが、しっかりと決めて聴かせるだけのものを作り上げている。タテ、ヨコのノリに限らず、たくさんのパターンを持つ変拍子で変幻自在のサウンドを作り出しながら、メロディをしっかりと際だたせることを忘れない、いやむしろ、メロディを一番目立たせるパターンを作った結果とも見られる。
 
それは結果的に「本人たちの姿」が見えることにもつながる。一つ一つの要素は非常に難解にも見えるが、すべてを合わせた集合型は、「KAGEROにしかできない音」という終点にたどり着くことだろう。特に過去にリリースされた3枚のアルバムから続けてこのアルバムを聴いてみれば、「KAGEROの音」に近づけるための進化の過程が、きっと多くの人には感じられるに違いない。爆発的な勢いと、脳裏に残るキャッチーな旋律。そこから見える曲の像とは、「KAGEROの音」という表現以外の言葉が見あたらない。それほどまでに斬新なサウンドだ。
 
彼らのサウンドからは、「オリジナリティに際限はない」というメッセージすら感じさせられる。その音からは、自分の音を作り出すことに思い悩むミュージシャンには大きなヒントを与え、新しい音を求めてどん欲に音をむさぼり続けるリスナーには強烈なインパクトを与えてくれるはずだ。『KAGERO IV』、だまされたと思って一度、この彼らの世界観をのぞいてみてもらいたい。
 

 


 
MASAKI-JKAGERO『KAGERO IV』

全12 曲収録
RAGC-007/2,000円(税抜)
収録曲:
M01. OVERDRIVE
M02. flower
M03. Pile Bunker
M04. sister
M05. THE FOREST
M06. HONEY BEE
M07. 13 -Thirteen-
M08. MY SLEEPING BEAUTY
M09. LITTLE GARDEN
M10. ill
M11. The Spring Landscape
M12. CRY BABY



 


 
◆ライブ情報
 
赤丸 2nd e.p 突風release tour FINAL!!
2014年12月22日(月) 【東 京】渋谷CHELSEA HOTEL
 
2014年12月30日(火) 【東 京】渋谷club asia
 
KAGERO IVリリースツアー “THE WINTER LANDSCAPE”
2015年01月10日(土) 【愛 知】名古屋 CLUB ROCK’n’ROLL
2015年01月17日(土) 【静 岡】静岡Freaky Show
 
KAGERO IVリリースツアーFINAL “THE END OF LANDSCAPE”
2015年02月01日(日) 【東 京】新宿LOFT
 
#DSOTM2
2015年03月15日(日) 【大 阪】心斎橋Pangea
 


 
オフィシャルサイト
http://www.kagero.jp/


 
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BEEAST太鼓判シリーズ第12弾アーティスト『KAGERO』
http://www.beeast69.com/feature/43983