連載

TEXT & PHOTO:鈴木亮介
第13回 Stand Up And Shout ~脱★無関心~

Photo東日本大震災からまもなく2年。「ロックと生きる…ライフスタイル応援マガジン」というBEEASTのコンセプトに基づき、3.11震災等による現地の声や、被災地関連のロックイベントを紹介していくことを目的にスタートした当連載。今回はその取材の原点であり、「脱・無関心」というワードを引用させていただいている「東京&福島へヴィメタルサミット」にスポットを当てたい。
 
最近は被災地への復興支援活動が報道される機会が減るにつれ、その活動のあり方を見直し、中には活動を中止したり自然消滅してしまっているものも少なくないと聞く。そうした「風化」する現状に直面しているのは「東京&福島へヴィメタルサミット」も例外ではないだろう。開催から1年を迎え、ここまでの成果と浮き彫りになる課題、そして今後の取り組みについて、実行委員長である株式会社ミュージックネットワーク代表取締役で「DiGiRECO/ElectricGuitar」三谷佳之編集長に話を伺った。
 

~~~イベント趣旨(サイトより引用)~~~
東京電力を利用するメタルバンドが大挙して大型バスに乗り込み、東北自動車道をぶっ飛ばし、福島で熱いライブを展開し、終演後に福島のメタル仲間と酒を酌み交わし、腹を割った話をする。翌日は福島市内を視察し、警戒区域を実際に見て、彼らが置かれた現実に関心を持とう…というものです。日本中が徐々に話題にしなくなっている福島の現実に対して、「脱・無関心」を唱えていきませんか。
http://www.heavymetalsummit.jp/
三谷佳之 プロフィール
株式会社ミュージックネットワーク 代表取締役 DiGiRECO / ElectricGuitar 編集長
 
ヘヴィメタルを愛聴する、自他ともに認めるへそ曲がり。音楽ソフトウェアの開発や販売を行いながら、2000年にデジタル・ミュージック関連のコンテンツを掲載した無料雑誌「DIGITAL MUSIC MAGAZINE」を創刊。数回の変遷を経て、2010年よりDiGiRECO / ElectricGuitarの2誌合併体制となる。現在は無料雑誌発行の他にも有料書籍の企画/制作も行っている。趣味が高じて、2006年にBLACK SABBATHの販売促進バンド、BLOOD SABBATHを結成。研究発表と称してライブを行っている。
・facebook http://facebook.com/yoshiyuki.mitani
・twitter @yoshiyukimitani

―――まずは、ここまで6回の開催を重ねてきて感じたことを教えてください。去年ヘヴィメタルサミットを始めた当初に思い描いた通りになっている部分、そうでない部分とあるかと思いますが…
 
三谷:イベントの内容に関しては、思っていた通りと言えば思っていた通りです。思っていなかったのは、福島が全然良くなっていかないね、ということです。町並みは全然変わらないし、インフラも何も来てないからまだ住めないという地域もあるし、復興のスピードがすごく遅いと感じています。一方で東京は何事もなかったようになっているので、そのギャップは感じますね。
 
―――3ヶ月に1回、定期的に訪れている三谷さんの目から見て、福島は全く変わっていないですか?
 
三谷:変わってないですね。ライブをやっている福島市内もそんなに変わってないし、町並みも、空き部屋は多くあるし、亀裂のある建物は未だにそのままだし、変わったことと言えば、福島の人達の中にそういう風景に慣れてしまった方が出始めていることですね。これで良いのかなぁとは感じます。
 
Photo―――1年間続けたことで、予想外の利点、良かったことはありますか?
 
三谷:敢えて挙げるなら、これを自分たちのDiGiRECOなどで報告することで、たくさんの反応をもらえたことですね。特に、西日本では東京以上に被災地の状況が報道されていないので、例えば九州の楽器屋さんが「福島はまだこんな状況なんですね」と写真を見てショックを受けたとか、そうした面では想定外の効果というか、やっていて良かったと思いました。
 
―――イベント内容については、もう全く想定内というか…
 
三谷:そうですね。ただ一つ課題になったのは、このヘヴィメタルサミットのロゴに使っている放射能マークですね。福島の中で活動する時にこのマークは抵抗になるので、やめなければと思っています。結局、(毎回出演者にメッセージを書き込んでもらっている)ドロップサインは1年間の活動の証として会場に進呈し、次回からは新しいデザインを考案します。
 
―――「放射能マーク」に嫌悪感を持つ人も多いのでしょうか。
 
三谷:私たちは福島に関して「脱・無関心」というつもりでこのロゴを作ったのですが、「・」の部分に放射能マークを使っているために、「脱・放射能や脱・原発に関して、無関心だ」という意味に捉えてしまった人もいて、つまり政治的なメッセージを掲げているイベントだと誤解されてしまったのです。以前、現地のスタッフが地元の人たちに「脱原発に反対なんてけしからん」と怒られたことがあるそうです。
 
―――イベント自体はむしろ逆のメッセージを持った内容ですよね。
 
三谷:このマークが邪魔をする…ということですね。「俺たちはロックやってるからそんなもの関係ないんだ」と見えてしまったのは残念です。7回目以降はロゴを変えて、もっとストレートに、誤解されないようなやり方にしなければと思います。
 

Photo―――そんなことがあるとは、意外です…
 
三谷:原発におびえている人達は「嫌だ」って言うし、原発を活用してでも何とかして仕事を作らなければいけないと考える人は「なんで復興の邪魔をするのだ」と言うし、取り扱いが非常に難しいマークです。原発から離れれば離れるほど反対意見は多く、逆に立ち入り禁止区域に近い人達ほどそこで仕事していた人が増えるので、「仕事がないから早く原発を再稼働してほしい」という意見が増えるのが実態のようです。
 
―――なるほど。そして、11月23日には初めて東京で第5回目を開催しました。これはどういう経緯で決まったのですか?
 
三谷:「東京&福島ヘヴィメタルサミット」と言っているのに東京から行くばかりだったので、福島のメタラーたちが東京に来て現状や言いたいことを言う機会があっても良いのではないかということを、第4回目(9月)が終わった後に考えました。福島から来たメンバーは、東京に来てあちこちに電気がついていることに驚いていました。「節電なんかしてないじゃないか」って。福島と東京は全然温度が違うと感じて、それを彼らがステージや色んなところで発言することで、改めて東京の人達も「まだ終わってなかったんだ」と実感することができたようです。その結果、次の第6回(12月)では東京から福島に参加したいというオーディエンスが増えたので、東京で開催して良かったと思います。
 
―――ここまで回を重ねてきて、イベントに出演したいというバンドは増えていますか?
 
三谷:「固定客」が増えてきた、という印象ですね。前に出演したバンドからもう一回出たいと声をかけていただいたり、出演者の一人がやっている他のバンド、プロジェクトなどで出たいという声もあります。嬉しい半面、マンネリになってしまうのではないかという思いも率直にあります。
 
Photo―――なるほど…福島の人達はどう捉えているのでしょう。
 
三谷:費用対効果で考えた場合に、どれほどプラスになっているのか…もちろん、プラスにはなっていると思います。福島のお客さんもどんどん増えているし、関わっている人の意識も変わっている。これを始めた当初、現地の人の中は「思いつきでやってるんじゃないの?」という見方をしている人も少なくなかったようです。しかし1年続いたことで見方が変わったようで、「1年間どうもありがとう」と言っていただけるようになりました。そんな声を聞いてしまうと、これでやめちゃいけないなという思いにさせられます。でもその一方では、いつまでも福島が変わらないのに、こんなことをやっていて良いのだろうか?という気持ちにもなります。
 
―――現地のヘヴィメタルサミットに携わっている人達はどのような意見を持っていますか?
 
三谷:「やめてしまうことを恐れている」というのが本音だと思います。内容自体は大したことじゃないイベントかもしれないけど、「翌日に被災地を見て回る」というのがセットになっていて「脱・無関心」を掲げているイベントである以上、これがなくなってただのブッキングライブになってしまって「福島のふ」の字も出てこなくなることを懸念しているようです。
 
―――逆に東京の参加者からは「こうしたら良いのでは?」と意見は出ていますか?
 
三谷:意見というか、東京からの参加者の反応が第1回目の頃に比べて変わってきているなと思います。
 
―――どのように変わっているのですか?
 
三谷:「初日のライブは楽しいけど、2日目は被災地を見て回ってショックを受ける…」という反応は変わらずで、それは当初のもくろみ通りなのですが、「福島でライブやったらすごい盛り上がるらしい、それなら行きたい」という声が出てきています。第1回目に行った人は当然、福島でどういう反応が起こるか、盛り上がるかなんてわからずに行ったわけですよね。「支援したい」「福島を見たい」が主でした。でもそうじゃなくて(行く場所が福島かどうかということに関係なく)「盛り上がるんだったら行こうかな」となると、それは違うんじゃないかと。主催する側としてはとにかく応援するという気持ちを持ってほしいと思います。
 

ここで、昨年12月15日(土)と16日(日)の2日間にわたって開催された東京&福島ヘヴィメタルサミット第6回の模様を、写真でお伝えしたい。(※画像は東京&福島ヘヴィメタルサミット実行委員会提供)

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―――「東京からの参加者の姿勢が変わってきている」ということですが、他にも感じることはありますか?
 
三谷:先ほど「固定客」が増えてきた、と話したことも関係していると思いますが、バンドのMCで、第1回目は「福島の皆さんどうですか」だったのが、ここ最近は「盛り上がってるか?」と、普通のMCになっているのが、主催者としては少々残念です。あとは終わった後の懇親会も、回を重ねるとだんだんバンドマン同士だけでかたまって、東京でやればいいような会話をしている所もあり、もっと福島の人と喋ればいいのに、と思います。ただ、一方では「そんなにいちいち福島のことを言わなくていい」と思っている人もいます。現状は自分たちが見ているのだし、純粋にライブを楽しみに来ているのだから、「福島どうですか?」なんて言って現実を思い出させないでほしい、という人もいました。
 
―――難しいですね。何が正解か分からないです。むしろ”福島”に触れず「盛り上がってるか?」の方が良いという考え方も…
 
Photo三谷:「明るくなりたくて、現実忘れたくて来てるのに…ことさらそこに触れなくて良い」という意見もあり、じゃあそもそも「ヘヴィメタルサミット」である必要はないのかな?という壁にぶちあたっています。
 
―――そうした中で、でも「続けてほしい」という現地の人の声もあります。今後の展開について伺いたいのですが、まず、東京での開催は予定していますか?
 
三谷:またやりたいですね。ただ福島はどうしてもメタル人口が多くないので、福島から東京に来たいというバンドを集めるのが大変かなとは思います。
 
―――あくまで「ヘヴィメタル」なんですね。
 
三谷:そうですね。そこはヘヴィメタルにこだわりたいと思います。「ロックサミットにしたら?」という声もあったのですが、それは僕が嫌なので(笑)「ロック」や「ミュージック○○」にしちゃうと、他のイベントと同じになってしまいますし、あくまでマイノリティのヘヴィメタルに意味があるというか、ヘヴィメタルの音楽性があってこそのこのイベントだと思うのです。
 

―――そうすると、この「ヘヴィメタルサミット」は今後どうなっていくのでしょうか。
 
三谷:「ヘヴィメタル」という部分が曖昧になってしまって、例えば「志は高いけど、音楽性は普通のロック」というバンドを連れていくかどうか、あるいは先ほど話した「”福島”より盛り上がりたいから行く」というバンドをどうするか、という問題があります。また、現地の人たちに盛り上がってもらうという側面で考えて、「ヘヴィメタル」という軸をしっかり保つためにも、ギャラを払ってでもプロを呼んで行った方が良いのか…など、色々模索しています。実行委員会の中でも答えが出ていないので、3月はいったん「ヘヴィメタルサミット」という看板を掲げての開催は休止することにしました。
 
Photo―――ということは、「中止」ではないのですね。
 
三谷:王様と僕らのバンドBlood Sabbathがアルバムを出すので、そのレコ発ライブとして、3月16日(土)は僕らだけの単独ライブとして実施します。これを、これまでのアマチュアバンドではなくプロのミュージシャンを連れていってどうなるのか、という試金石にしたいと思っています。それでも盛り上がるのなら、7回目は「趣旨に賛同してくれるプロミュージシャンを連れていく」ということにして、スポンサーを探していく、という方向になるかもしれません。その辺りを模索しています。
 
―――実際のところ、経費面はどういう状況なのですか?
 
三谷:僕らはこれを営利目的でやっているわけではないので、例えばこれで儲かっているというのなら、難しく考えず「前回と同じでいいや」という発想になるでしょうね。もしくは、普通に(会場となる福島のライブハウス)C-moonが東京のバンドからノルマ代を取って開催するブッキングライブだったら、もっと気楽に考えられるのですが…そうではなく、経費の部分は毎回持ち出しになっています。ホテル代やバス代などの経費がかかるので、「毎回同じようにやっていればいいや」という考え方にはならないですね。それは、出演する側にとっても無視できないことだと思います。ヘヴィメタルをやっている若いバンドで、これに出たいと思っても宿泊費交通費が高くて出演できない、というバンドも実際にいます。
 
―――改めて「脱・無関心」というテーマの難しさを感じますね。
 
Photo三谷:もっと広げたいと思ってもなかなか難しいし…元々僕らはこの取り組みを「寄付をしましょう」「ボランティアしましょう」というつもりで始めたわけではなく、3ヶ月に1回、ライブで盛り上がって、その瞬間福島の人には震災の苦しみを忘れてほしい、そして東京の人は福島のことを忘れないでいてほしい、という趣旨で始めました(第1回目のインタビュー記事参照)。原子力云々、放射能云々ではなく、「福島はまだ元に戻っていないことを忘れていないんだよ」という意味では続けていく必要があると思っていますし、待っている人たちがいるのでやるべきだと思いますが、内容はいま一度考えていかないとマンネリになってしまうという懸念があるし、「何も変わらないまま、同じことを続けていてもどうなんだろう」という気持ちが自分の中で芽生えているというのが正直なところです。非常に難しいです。

東京のメンバー、福島のメンバー、それぞれに互いの日々の生活と、そして音楽と真剣に向かい合っているからこそ、苦悩し答えが見出せないでいるようだ。それは、こうして記事を作っている私たちBEEAST編集部も同様だ。「続けていかなければ」という思いと「続けていって、果たしてどうなるのか」という思い、そして「忘れたい、考えたくない」という被災地の声とどう向き合うかという問題…今回、この記事は敢えて「まとめ」を書かずにいたい。そして是非、ここまで読んでくださった読者の皆様の声を、編集部にお寄せいただきたい。まもなく、3.11から2年。こうしている今も、確実に時は刻まれてゆく。

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◆王様 & Blood Sabbath『黒い安息日伝説』レコ発ライブ
・2013年03月15日(金)【吉祥寺】CRESCENDO
・2013年03月16日(土)【福 島】C-moon
・2013年03月17日(日)【いわき】Bar QUEEN

◆東京&福島へヴィメタルサミット 公式ページ
http://www.heavymetalsummit.jp/

※本記事中、第6回公演の画像はオフィシャル提供によるものです

◆Blood Sabbath 公式ホームページ
http://www.musicnetwork.co.jp/work/blood-sabbath/


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【連載】脱・無関心 バックナンバーはこちら
http://www.beeast69.com/category/serial/mukanshin


 
 
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