連載

TEXT:鈴木亮介
第1回 Stand Up And Shout ~脱★無関心~

Photo東日本大震災から10カ月。いつの間にか街頭にはいつも通りのイルミネーションが灯り、コンビニの募金箱はどこにあるか分からない国の救済へと名目が変わった。昨年と違うことと言えば、「このイルミネーションは節電しています」というクレーム回避の付け足し、そして泥仕合の様相さえ呈してきた福島原発にまつわる責任のなすりつけ合い、罵り合い。何か大切なものを置き去りにしてきている。

BEEASTでは既存のメディアと一線を画し、「ロックと生きる…ライフスタイル応援マガジン」というコンセプトに基づき、当連載を通じて3.11震災等による現地の生声や、被災地関連のロックイベントを紹介していきたい。

被災エリアの未来が明るくなるよう、BEEAST視点での支援を行う。「私たちにできること」というこの言葉を、逃げ口上ではなく真正面から捉えて探求していかねば…そう模索する中、今回一人の男性と出会うことができた。株式会社ミュージックネットワーク代表取締役で「DiGiRECO/ElectricGuitar」編集長の三谷佳之氏だ。

このほど、三谷氏が中心となって「東京&福島へヴィメタルサミット」を立ち上げ、その第1回目が12月17日に開催されることとなった。三谷氏率いるBLOOD SABBATHを筆頭に東京から7組のメタルバンドが参戦。大型バスを貸し切って福島まで弾丸バスツアー。その日の夜に福島C-moonにてギグを行った後、現地のメタルファンと大打ち上げパーティー。さらに翌日は出演バンド全員で福島第一原発の警戒区域周辺を視察。メディアでは取り上げられない福島のリアルな姿をその目に焼き付け、各々の思いを東京に持ち帰ろうというものだ。

~~~イベント趣旨(サイトより引用)~~~
東京電力を利用するメタルバンドが大挙して大型バスに乗り込み、東北自動車道をぶっ飛ばし、福島で熱いライブを展開し、終演後に福島のメタル仲間と酒を酌み交わし、腹を割った話をする。翌日は福島市内を視察し、警戒区域を実際に見て、彼らが置かれた現実に関心を持とう…というものです。日本中が徐々に話題にしなくなっている福島の現実に対して、「脱・無関心」を唱えていきませんか。
http://www.heavymetalsummit.jp/

BEEASTの新連載「Stand Up And Shout!脱★無関心」では、まずこの「TOKYO×FUKUSHIMA HEAVY METAL SUMMIT」に注目してみようと思う。三谷氏の掲げる「脱・無関心」をテーマに拝借し、その取り組みについて報道・探究していきたい。 連載初回は、イベント発起人である三谷氏の単独インタビューをお届けする。インタビューはヘヴィメタルサミット第1回開催を1か月後に控えた11月に収録した。


三谷佳之 プロフィール
株式会社ミュージックネットワーク 代表取締役 DiGiRECO / ElectricGuitar 編集長
ヘヴィメタルを愛聴する、自他ともに認めるへそ曲がり。音楽ソフトウェアの開発や販売を行いながら、2000年にデジタル・ミュージック関連のコンテンツを掲載した無料雑誌「DIGITAL MUSIC MAGAZINE」を創刊。数回の変遷を経て、2010年よりDiGiRECO / ElectricGuitarの2誌合併体制となる。現在は無料雑誌発行の他にも有料書籍の企画/制作も行っている。趣味が高じて、2006年にBLACK SABBATHの販売促進バンド、BLOOD SABBATHを結成。研究発表と称して毎月、ライブを行っている。
・facebook http://facebook.com/yoshiyuki.mitani
・twitter @yoshiyukimitani

―――まずは三谷さんが今回のイベントを主催することになったきっかけを教えてください。

三谷:私自身、福島に親戚がいるわけでも、復興イベントをやりたいと思っていたわけでもありませんでした。元々福島と関わるきっかけとなったのは、去年から福島のC-moonというライブハウスに声をかけてもらっていたことでした。3月19日にライブする予定でしたが、その1週間前にあの3.11が起きて…直前に連絡は取れたものの、とても行ける状況じゃないと判断して8月に延期することになったんです。その後、原発の問題が報じられるようになったので、怖いなぁと思いながら現地に向かいました。

Photo―――なるほど。その時の状況はどうでしたか?

三谷:今だから言いますが、正直言って放射能がバンバン飛んでいるし、嫌だなぁという気持ちが先行していました。放射線量を気にしながら、福島に入る2つ手前のパーキングからローディーはマスクを付け始めたんですよ。でも、いざ福島市内に入ってみると街の人は誰もマスクをしていなくて、何だか申し訳ない気持ちになったみたいで、ローディーはマスクを外していました。で、ライブをしたらもうみんなが半狂乱なんですよ。その光景にびっくりしちゃって。とにかくギャーギャー始まる前から凄い声を出すし、終わってからも「どんだけウケてんの俺達?」と思うほど盛り上がりました。

―――避難所ではワイワイ騒げないですしね。
三谷:ストレスが溜まっていたんでしょうね。それで終演後、東京からわざわざ来たんで打ち上げをしましょうってことで、出演者やお客さんとそこで食事したんですよ。その中に3.11当日は東電のあの施設の中で働いていたという人や原発のすぐ近くの飯舘村から来てるという人がいたので、思いきって「何で逃げないの?」と聞いてみたんです。そうしたら、彼らは「横のスクラムが地域ごとにがっちりあって、友達も親子も親戚もみんないて、仕事も辞められないから動けない」って言うんですよ。「起きちゃったこと(原発事故)については、覚悟しています」と。中には、避難所では生活できないので、今も避難区域の中に住んでいるという人もいました。「電気がついていると警官が来るので、夜中は電気を消して窓に目張りをして生活してます」って。戦時中かよ?と思ってしまいました。ペットに餌をやりに毎日自宅に帰っているという人もいて、どうも報道とかなり違うねという話になって。

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―――新聞やテレビでは報道されない内容ですね。
三谷:僕らはボランティアってガラじゃないし、はっきり言ってボランティアは嫌いだって言ったんですよ。たった数日だけ手伝って、あとは頑張ってねっていうのはすごい無責任だと思うんです。まして「自分達は大丈夫だけど、手伝いに来てあげました」みたいなのは善意の押し売りみたいな気持ちがして、かえって失礼じゃないかと。だから、僕はボランティアなんか絶対やらないぞっていう主義なんですよ。あともう1つは、募金もやらないと。いくらかのお金を払っていいことをやった気になるというのは自己満足みたいで嫌なんです。

※三谷氏は8月のライブを終えた翌週に再び福島を訪れる。現地の実行委員になったメンバーの案内で、警戒区域ギリギリまで足を運び、テレビや新聞では報じられない福島の実態をまざまざと見せつけられる。その際に撮影したという写真をお借りすることができたので、以下紹介したい。

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―――ボランティアも募金も嫌い。そうお話しになる三谷さんが、なぜこうしたイベントの開催を決意したのですか。三谷さんの心を動かしたのは何だったのでしょうか。

三谷:ボランティアも嫌いだし、募金も嫌いだから福島のことなんか気にしたくないって正直に話したんですよ。でも、打ち上げの席でそんなリアルな声を聞いて、俺達に何かできるのかなと考えずにはいられなかったので、「こうやって盛り上がってくれるのは嬉しいんだけど、こんなことしかできないよ」と、思いきって心のうちを打ち明けました。そうしたら、皆が何ヶ月も前からBLOOD SABBATH(=三谷さんのバンド)が来るということでとても楽しみにしてくれていたんだ、と話してくれたんです。「1週間前からウキウキして、当日頭振りまくって、たぶん2、3日は首が痛くてしょうがなくて(笑)。この間は良かったねーっていう話が1週間くらい続いて…それが一番ありがたいことなんだ」と。ライブの前後を合わせて2週間、震災とか原発のことを忘れられるなら、そんなことでいいなら、それが復興支援になるんだったら、じゃあ僕たち来ますよって言って。その場で、僕をはじめ、被災地以外のみんながフクシマのことを気にしなくても良いくらいになるまで行きますと宣言して、このプロジェクトを旗揚げしました。それ以来、テレビで「福島が震度○」なんて出ると、気になるようになりましたね。遠い親戚がいるような。今はもう、無関心ではいられないです。

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―――巷に溢れる「頑張ろう○○」とは全く違う視点ですよね。イベントのタイトルである「脱・無関心」にはどのような思いが込められているのでしょうか。
三谷:僕らは脱原発でも反原発でもどちらでも良いと。ただ、無関心でいるのは良くない。今回実行委員になっているメンバーの中に東電の元作業員がいるのですが、彼は「僕らが一番恐れているのは忘れ去られること」と話していました。「僕らは毎日ここで生活している。放射線を浴びながら生きている。それを忘れないで欲しい」と。それを聞いて、「脱・無関心」というタイトルにしました。一方的な「復興支援」だけが目的ではないし、世の中を変えるほどの力が僕らにあるとも思えない。ただ、今回ひょんなことから僕が福島に縁ができて関心を持ったように、東京から参加するメタラーやそのファンたちがみんなでバスを貸し切って福島ツアーを敢行して、そこで福島の人達と話をして仲良くなって、見聞きしたことをブログやTwitterに書き込んだり友達に話せば、そこからまた福島への関心が少しずつ広がっていく。そうした半径1メートルくらいの広がりで、福島へ関心を持つ人が増えていけば良いなと思います。

「1万円を募金するより、1万円を払って福島に行ってライブをやって盛り上がって、仲良くなって、忘れない…そんなお金の使い方をしましょう」。取材後、三谷氏のこの言葉が脳裏で何度もリフレインした。特に「忘れない」という言葉が、強く刻まれた。「支援をする」のでも「考える」のでもない。どう生きるか。生き方を問われているのだ。
行きたいというより、行かなければならない。そんな思いが、自分の中に生まれ始めた。

≫次回、記念すべき第1回サミット2日間の模様をリポート!!

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TOKYO ×FUKUSHIMA HEAVY METAL SUMMIT 公式ページ

http://www.heavymetalsummit.jp/

東京&福島ヘヴィメタル・サミット第2回が3月17日(土)開催決定!
参加バンド募集!詳細は公式HPへ

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ライブハウス C-moon(福島市)
http://c-moon.net/


 
 
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