連載

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TEXT & PHOTO:鈴木亮介

Photo待ちに待った夏休みがまもなくスタート。全国高校野球選手権大会、通称甲子園に向けて、各地ではその予選となる都道府県大会が始まっていますね。BEEAST読者の高校生の皆さんはご存じのことと思いますが、軽音の世界でも今年から全国大会が始まりますね。いわばロックの甲子園。大きな目標に向けて努力することで、よりいっそう部活動としての軽音が発展することを願います。

さて連載「ロック1年生」今回は宮城県大崎市の県立古川黎明高校で活動する高校3年生のガールズバンド、かぽあちあテルテル帝国が登場します。メンバーは写真左からずみ(Bass)、かなえさん(Drums)、ぽん(Vocal & Keyboard & Guitar)、ねーちゃん(Guitar)、もいもい(Guitar)の5名。同じ軽音楽部の同級生で結成しました。実は彼女たちを知ったのはTEENS ROCK IN HITACHINAKA 2013のホームページ。以前当欄でご紹介した北海道のRu:kissがファイナル進出を決めたということで、何気なくHPを眺めていたところ…明らかに異彩を放つバンド名に、そして一度聴いたら忘れられない独自の楽曲に目がクギヅケ!ということで、宮城北部まで出向いてインタビューを敢行しました。

---まずバンド名が強烈なインパクトですね!

ぽん:「かぽあちあ」はメンバーの名前の最初の一文字(「なえ」「ん?」「やな」「か」「やね」)で、テルテルは「テルテル坊主」から来ています。雨が降った時に晴れるように…という思いをバンド名に託しました。

---そしてステージネームもそれぞれユニークですね。由来を教えてください。

Photoぽん:「ぽん」は、自分の本名があまり好きじゃなくてニックネームをつけてもらったんですけど…由来はたぶん、ぽんジュースかな?

ねーちゃん:本名が「あやね」で、「あやねーちゃん」から、「ねーちゃん」になりました(笑)

---「もいもい」というのは…
※インタビュー冒頭、もいもいは面談のため不在

ぽん:本名が「もんまちか」なので、「もんま」が「もいもい」に…

---で、「かぽあちあ」の「ち」は「ちか」さんの「ち」ということで…ややこしい(笑)

ずみ:私は「いしはらあやな」って言うんですけど…石原良純から来ました。

かなえさん:私だけみんながあだ名を考えてくれなくて…本名です。

ねーちゃん:「かなえ”さん”」がニックネームです。「な」にアクセントをつけます。

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---皆さん同級生ということですが、バンドを結成したきっかけを教えてください。

ぽん:私たちは5人とも同じ軽音楽部で、部では何度かメンバー替えをするのですが、1年生の冬頃に私がやりたいなと思った人を集めてこの5人で組みました。

---皆さんはいつ頃、どんなきっかけで音楽を始めましたか?

ねーちゃん:ギターを始めたのは小6の頃にYUIのギターに憧れて、「CHE.R.RY」とかを弾いてみたいなぁと思ったのがきっかけです。父や兄が趣味程度で弾いていたアコギが元々家にあったので、それをまず触って、エレキは高校で軽音楽部に入ってから買ってもらいました。中学の時は弦楽部という部活に入っていて、クラシックギターをやっていました。

ずみ:私もねーちゃんと同じ中学の弦楽部に所属したのがきっかけです。それまでは特に楽器に興味はなかったのですが、最初の部活動紹介の時にすごいなぁと思ったんです。手がすごい速い!それに魅かれて入部を決めました。高校でも軽音楽部楽しそうだなぁと思って入りました。

Photoぽん:私は小学校2年生からピアノを習い始めて、それからクラシックですが音楽がずっと好きで、中学3年生になってバンドに目覚めて、文化祭でバンドを組みました。その勢いで高校でも軽音楽部でバンドしたいなぁと思って入りました。中学の時は曲によってギターボーカルをやったりキーボードボーカルをしていました。

---ギターを選んだのは何か理由があったのでしょうか?

ぽん:ギターは父の影響もあると思います。父もバンドをやっていて、そのバンドメンバーから頂いたギターが家にあって、弾き始めました。

かなえさん:私は中学の時に吹奏楽部でパーカスをやっていて、高校でもドラムを叩きたいなぁと思って軽音楽部に入りました。吹奏楽部に入ったのは、運動が苦手だったのと、他に入りたい部活がなくて…吹奏楽部はテレビでもやっているのを見てかっこいいなと思って、入りました。

もいもい:4歳上の姉が音楽をやっていたのがきっかけで、私もバンドを組みたいと思うようになりました。姉はベースをやっていましたが、私自身はこの楽器というこだわりはなくて、高校で軽音楽部に入ったのを機にギターを始めました。

---家族が楽器経験者という方が多いですね。楽器を始めるにあたって、何か教えてもらったりアドバイスを受けたことはありましたか?

Photoねーちゃん:最初は父にコードを教えてもらいました。Fが一番大変で…泣きながらやっていたのを覚えています。

かなえさん:3歳上のお姉ちゃんが軽音楽部でベースをやっていて、ライブを観に行ったこともあります。私自身中学の時にベースをやったこともあるのですが、弾きにくくて…ドラムの方が楽しくて、続いています。

---続いてバンドの活動について教えてください。まず結成した時にバンドの方向性などはどうやって決めたのですか?

ぽん:最初からこうしようというのはあまりなかったのですが、曲を作っていくにあたって雰囲気などが徐々に出来上がってきたかなと思います。

---最初からオリジナルをやっていたのですか?

ぽん:一番初めはコピーを少しやりました。初めてやったのはGO!GO!7188がカバーした「君だけに愛を」(原曲はザ・タイガース)をカバーしました。

Photoかなえさん:コピーする曲は、ぽんの聴いていた曲をみんなで聴いて「これいいね!」って決めました。

ずみ:その年の3月くらいに、閃光ライオットに出すためにオリジナル曲を作ってレコーディングしました。

ぽん:(1年生の時の)卒業ライブでやったかな?

---結成から2ヶ月と考えると結構早いですね。曲は誰が作ったのですか?

ぽん:作詞も作曲も私です。このバンドの曲は全部私が作っています。

---YouTubeに上がっている「マリファナ畑で捕まえて。」が凄まじいインパクトがあるのですが…

Photoぽん:あれが一番最初に作った曲です。

---そうなのですね!この曲はどのような経緯で完成したのですか?

ぽん:コード進行を先に考えて、その後に歌詞を書きました。

---コードを作っていく時は何かイメージを浮かべたりしたのですか?

ぽん:いや、イメージとかはなくて、その時の気分だったんですよね。暗かったんですよ、多分(笑)

---なるほど…それで、なぜあの歌詞になったのかが気になります。

ぽん:歌詞は…まぁその頃色々あって。書いたままに。色々上手くいかないこともありましたが、いい曲を作ってそれで見てほしいなと思って、それで曲を作ろうという気持ちになって…その時に書きたかったことがあの曲です。だから、制作にはそれほど時間がかかりませんでした。あの時の私の本音です。

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---普段はどのような音楽を聴きますか?

ぽん:日本マドンナは好きですし、ボーカルとして尊敬しているのはaikoです!

---なるほど。それで、オリジナル曲が完成して、大会にエントリーして、ということで…

ねーちゃん:そうですね。一番最初は…閃光ライオットだっけ?

ぽん:閃光。閃光は2次で落ちて…その次に出たのがMusic Revolutionで、それで仙台の店舗予選のグランプリを取って、(東北地区の)セミファイナルまで行って…あとはネットの大会などにも応募しました。

---色々応募したのですね。そしてこの春のTEENS ROCK IN HITACHINAKA 2013ではファイナル進出ということで、快挙です!ライブを見た人、審査員からはどんな評価がありましたか?

Photoずみ:「個性的」と言ってもらえることが多かったです。動きがあるライブなので、インパクトは強いかなと…応援してくれる友達もいっぱいいて嬉しかったです。

ぽん:審査員の方からは、エントリーした2曲(「マリファナ畑でつかまえて」と「不思議ちゃんコンプレックス」)が正反対な曲なので、「バンドの色があった方が良い」というアドバイスをいただきました。

---「個性的」というのはメンバー間でも互いに感じますか?バンド内でそれぞれのキャラクター、役割などあったら教えてください。

ぽん:ねーちゃんは…面白い役。バラエティ!盛り上げる役とかではないけど…なんだろうな。変わり者なんですよ。人と違う考えを持っていて、それが面白い!

かなえさん:何が違うんだろう…なんか、人と違うんだよね!ずみはなんだろうね…ない!普通だから何もない(笑)

Photoねーちゃん:面倒見がいいね。一言に一言返してくれる…みたいな。相づちがうまい!

かなえさん:あと、頼まれたら断れないタイプ?

ずみ:意外と断るよ!

かなえさん:でもこの前「機材持って」って言って一度は断られたけど、最後は持ってくれたよ!一番大人だね!

---お母さん役みたいな…バンドのリーダーって決めてますか?

ずみ:いえ、リーダーは誰と決めてなくて…主にぽんが前に立つ感じ。

---そんなぽんさんの印象は他のメンバーから見てどうですか?

ぽん:印象悪いよー絶対!全部出してるから(笑)

Photoもいもい:できないことがない!って感じ。スポーツもできて勉強もできて、かわいいし…

ぽん:片付けができないんだ(笑)

ずみ:ちょっと抜けてる所もあるよね。ここぞという時に忘れ物をする!

ねーちゃん:かなえさんは…まさにズバッと言う人だよね!

もいもい:偏食!

ぽん:不健康!

かなえさん:偏食は関係ない!…確かに嫌いなものはたくさんあるね。白い米が嫌い!

ずみ:ラーメンも嫌いだしね。いっつもパンばっかりなんです。

Photoぽん:かなえさんはお菓子作り専門!この前も作ってもらったしね。

かなえさん:もいもいはなんだろう、ふわーってしてるのに、めっちゃ冷めてる!

ぽん:かわいいからライブの時は物販に立ってもらうけど、実際はクールで、アニメオタクで、引きこもりで…

ねーちゃん:怒ると早口になる!

ぽん:あんまり怒らせることはできないね(笑)

---それにしても本当に仲が良い様子が伝わってきます。

ねーちゃん:クラスが同じメンバーもいますし、バンド結成以来常に一緒なので…

ぽん:私の誕生日の時にサプライズパーティーをしてくれて、みんながうちに泊まりに来て花火をやったり…夏が一番楽しかったですね。ジャズフェスにも出たし、色んなライブに出たね!

Photoねーちゃん:いいライブよりもちょっとアレなライブの方がね、印象に残るね。

ずみ:何、アレなライブって?(笑)

ねーちゃん:反省点が多いライブの方が…

ぽん:あぁ、大失敗したライブね!

---バンドのこれからの活動について教えてください。

ぽん:5月のTEENS ROCKの後は、いったんは受験勉強のためバンドの活動はお休みしようと思っています。卒業後は、音楽は続けていきたいです。私たちのバンドの持ち味は”田舎のダサいJK”だと思います。ライブのパフォーマンスにもこだわっていて、”かっこいい”を求めず”田舎のダサさ”を追求したいと思います!

「かっこよさではなくダサさを追求」というスタンスで、「これやっておいたら盛り上がるだろう」「こうしたら良く見られる」という守りの姿勢を捨てた攻めのライブパフォーマンスは必見!動画等だけでなく是非生で一度拝見したいと思わせてくれる5人ですが、その素顔はタマゴボーロにハマる純朴な高校生。そしてインタビュー後には部室でライブパフォーマンスを想定した通し練習を見させていただきました。彼女たちの意に反するかもしれませんがやはり「かっこいい!」と思わずにはいられません。

そんなかぽあちあテルテル帝国のミニアルバム『ねぇ、のりたん・・・』が、9月11日より全国流通することが決定しました!”ダサさを追求する大真面目な変人”の作る世界を是非堪能してみてください。

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◆かぽあちあテルテル帝国 ホームページ
http://55.xmbs.jp/kapoachia/
 
◆インフォメーション
ミニアルバム『ねぇ、のりたん・・・』
2013/9/11発売予定

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【取材協力】
宮城県古川黎明高等学校
http://www.freimei-h.myswan.ne.jp/

 
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