連載

ロック1年生 エントリーNo.19 After The Calm

TEXT & PHOTO:鈴木亮介

※東日本大震災等の影響により、記事の公開が遅れたことをお詫びいたします。(編集部)
Photo東日本大震災後の社会情勢のためリリースを自粛していたBEEASTですが、不定期更新にて復帰いたします。小生の周辺でも、様々な「決行」「中止」がありましたが、こと「娯楽」と呼ばれるものに関しては、その対応が難しいところだと認識しています。「謹慎」と一言でくくってしまうのは簡単ですが、そもそも「娯楽」が何のためにあるのかというと、疲れを癒すものであったり、心をパッと明るくするものであったり、本当はこういう時期だからこそ社会的意義があるのではないかという思いも一方であったり…

さて、少し間が空いてしまいましたが、19回目を迎えるBEEAST的長寿連載、ロック1年生。1年生なのに長寿…。それはさておき、今回ご紹介するのは渋谷を中心に活動するAfter The Calmです。

メンバーはりり(Vocal&Guitar)、まりなっち(Guitar)、ありさ(Vocal &Bass)、ゆかぴょん(Keyboard)、かなぶん(Drums)の5名で、同じ高校に通う17歳。以前、WildSideTokyoのイベント『青い春』に登場してくれた、元気いっぱいのガールズバンドです。その際が彼女たちにとって外部での初ライブだったのですが、それを感じさせない1つ1つの音の安定感と心地良い演奏、そしてとても親近感のあるやり取りにすっかり心奪われてしまった記者。是非BEEASTで紹介したいとラブコールを送り、交渉成立!年明けすぐ、まだ吐く息白い日曜の朝、サウンドスタジオノア渋谷2号店で練習中のところにお邪魔しました。

— まずはバンド結成のきっかけを教えてください。

Photoありさ:バンドを結成したのは中3の6月です。りりが誕生日にアコギを買ってもらったのを機に、いつも一緒にお弁当を食べていた私とゆかぴょんと3人で、「じゃあバンドやろう」という話になりました。最初は軽いノリで「誰がどのパートがいいかな」と想像する程度だったのですが、そうして話しているうちにやりたい気持ちが強まり、実際に私はベースを買い、本格的に動き始めました。同じクラスだったまりなっちを誘い、さらにドラムができるかなぶんを誘って、バンドを結成しました。

りり:バンド名は思考錯誤しました。最初みんなで出し合ったら、ゆかぴょんが「順風満帆」とか四字熟語やたらと言ってきて、だんだんみんな本気でイライラし始めて。あと「アーミーナイフ」とか言ってたよね…ひどい。変なのばっかり(笑)

かなぶん:それで、たまたまこれどう?って出した「サンクチュアリ」がバンド名に決定。まさか通ると思わないで言っちゃったんですよ。これは?って言ったら多数決で決まってしまいました。

ゆかぴょん:その後、動物の保護区域って意味だったということに気づいて、なんか嫌だなぁと…

ゆかぴょん:その名前でライブに出たくない!となって、ひとまずカタカナから脱出しようということで「After The Calm」になりました。それは去年の11月頃です。いつも一緒にお弁当を食べていたグループがバンドの発端です。5人とも、特にその前にバンドを組んでいたということはなく、これを機にギターやベースをやり始めました。

— 皆さんが音楽を始めたきっかけを教えてください。

Photoありさ:私は中1から学校のオーケストラ部でヴァイオリンを始めて、今も弾いています。小学生の時は合唱隊に入っていて、ヴァイオリンはずっと憧れでした。その前にピアノも習っていましたが、あまり好きになれませんでした。小さいときから音楽を聴くのも好きです。小さい頃は邦楽はあまり聴かず、合唱の曲とか洋楽を聴いてましたね。姉(22)がRadiohead好きで、影響を受けました。

りり:母(53)も姉(25)もピアノを習っていたので、その流れで私も幼稚園の頃からピアノを習い始めて、今も続けています。また、小学校の時は器楽クラブに入っていて、合奏が好きでした。中学で合奏を続けることができず、何か趣味を見つけようと思った時に、ふと「ギターやってみようかな」と思い立ちました。最初は買ってもらったアコギをずっと弾いていましたが、ケースが大きすぎて持ち運びが辛かったのと、バンドならエレキギターをやってみたいと思ったので、お年玉を貯めて、中3の冬に自分で買いました。バンドでボーカルをやることになったのは、このメンバーの中でボーカル志望者が誰もいなくて、楽器を弾きながら歌うのが私が一番余裕があったため引き受けたのです。本当はボーカルよりギターの方が好きです!

まりなっち:私は小3の頃からフルートを習い始めました。母が私に色々習い事をさせたかったようです。中1までやっていましたが、同世代で習っている人はほとんどいなくて、周りは大学生やおばさんばかり。あまり好きになれず、練習もしていなかったので先生にも母にも怒られてばかりでした。
 ギターはこのバンドに誘われたのを機に始めることになりました。最初は、バンドは派手な人がやるというイメージがあったので、入るのを渋っていました。自分がやるとは思っていなかったのでまさかという感じです。

ゆかぴょん:私は幼稚園の頃から小6までピアノをやっていました。中学受験のため一旦休止して、中3で再開。弟が小6で受験でやめることになり、私と同じ先生だったので、「弟がやめるなら私がやる」と言って。でも塾との両立が難しくなり、高1の終わりに辞めてしまいました。バンドも自分はピアノしかできないからということで新たに楽器を買わず、キーボードを志望しました。鍵盤一筋です!

Photoかなぶん:私は小学校6年間何もやっていませんでした。中学受験が終わって本をたくさん読む機会が出来て、毎日本の虫になっていたのですが、その中でたまたま読んだ本に『ビート・キッズ』(風野潮)というバンドものの小説に出会いました。そこでバンドに興味を持ち、やってみたいと思うようになりました。良心にやりたいと言ったら受験祝いとして電子ドラムを買ってくれて、中1の4月頃からやるようになりました。ドラムを選んだのは、みんながやっているようなパートをやりたくなかったからです。少ない方がやりがいがあるかなと子ども心に思ったので…。一番かっこいいと思ったのがドラムだったというのもあります。最初は教本を買って、一通り終わらせたらそれで終わってしまって…2年ほどやっていない時期もあったのですが、このバンドを組んでから本格的に練習するようになりました。

— どのご家庭も、音楽をやることに対して親御さんの理解があったようですね。

まりなっち:私の場合、父(49)がギターをやっていたので、すんなり認めてくれたのだと思います。ギターの弦の張り替えは父に教えてもらいました。

かなぶん:うちは両親がイタリアンレストラン店をやっているのですが、そこで音楽好きの父(48)がミュージシャンを呼んでライブハウスのようにして演奏していたので、その影響で音楽が好きになったというのもあります。父が小さい頃から見せてくれたミュージックビデオはMichael JacksonChicで、Chicはライブに一度行きました。父親自身、学生の時にバンドを組んでベースボーカルをやっていたそうです。

— 普段はどんな曲を聴きますか?憧れのアーティストも教えてください。

Photoありさ:邦楽はフジファブリック東京事変をよく聴きます。尊敬するベーシストは、東京事変亀田誠治です。また、Marcus Millerはやっぱりすごいなと思います。

りり:邦楽ロックをよく聴きます。最近だとストレイテナーとか、the HIATUSとかNothing’s Carved In Stoneとかを聴きますね。ライブはみんな趣味が違って誘える人がいないので、基本一人で行くことが多いです。

まりなっち:私はaikoが好きです。aikoばっかり聴いていて、ファンクラブに入るほど好きです。aikoの魅力は…声もいいし歌詞もいいし、全部自分で考えてるっていうのがすごいし、小さくて可愛いし、歳を感じないところ…

ゆかぴょん:挙げていったらキリがないね!私はJ-POPがすきで、最近はいきものがかりが好きです。この前武道館ライブのチケットが当たったのですが、一緒に行く人がいなくて…行きませんでした。

一同:え~もったいない!!

かなぶん:邦楽だと最近はACIDMANを聴きますね。あと、Perfumeが好きです!かわいくて。かわいい、だけなんですけどね(笑)洋楽は結構色々聴くんですけど、小さい頃からずっと好きだったのがMichael Jacksonですね。バンドだとRed Hot Chili Peppersも聴くし、Sex Pistolsや、New Found Gloryも最近聴きます。本当に何でも好きで、一番最近行ったのは、津軽三味線の吉田兄弟を見に行きました!さすがに一人では行けなくて父と一緒に行ったのですが、周りのお客さんとの世代の違いに戸惑いました。

— 皆さんは軽音楽部に入っているというわけではないようですが、部活は何をしているのですか?

Photoありさ:私はオーケストラ部でヴァイオリンをやっています。ヴァイオリンは習っていないので、学校や家で自主練をします。平日は学校に持って行って朝練と昼練をやって、家では日曜に2時間ほどやっています。はじめはヴァイオリンとか、主旋律をやりたいと思っていたのですが、バンドでベースをやるようになって、最近はコンバスとか低音が好きになりました。

りり:私はお菓子を作ったりする家庭部です。運動が苦手だったのと、あまり学校に時間を拘束されたくないなと思って、美味しいお菓子が食べられて活動日数も多くない家庭部にしました。ちなみに副部長です!

まりなっち:私はテニス部に所属しています。うちの学校は強豪校というわけでもなく、大会も出たい人だけが出るという感じです。

ゆかぴょん:私は華道部に所属しています。活動はゆるくて、週1回学校でお花を生けているだけです(笑)でも、1年やると免状が取れるんです。私は今2級を持っています。免状は試験があるというわけではなく、毎週先生に見てもらう度にハンコを押してもらって、それが1年分溜まると…お金払えば誰でも取れるんですけどね(笑)

かなぶん:私は生物部です。年に1回解剖をするのですが、それ以外には、論文を書いて大会に応募し、賞を取る…というのが活動です。それで部費を賄っています。みんなやってみたら分かると思うんですが、解剖は楽しいですよ!

— みんなバラバラですね!勉強や部活、そしてバンドと、掛け持ちが大変そうです。

Photoりり:みんな部活も違って、塾があったりもするので、発表するイベントがない時は他のことに専念するという感じで、イベントがあると毎週日曜に集まって練習しています。私自身、ギターは勉強の合間などにやっています。冬休み中は宿題を溜めてしまって、ほとんどギターに触れませんでした…

ありさ:オーケストラ部とバンドとの掛け持ちは大変ですねー。イベントのない時は個々の自主練…さえも危うい感じです。久々に集まると、明らかに練習してないのがわかっちゃって(笑)でも息の合う5人なので、「ちょっと早くない?」と言いながら調節して、すぐに合わせられます。

まりなっち:バンド結成当初はみんなでやりたい曲を出し合って、何でもやってみたのですが、なかなか自分達に合う曲が見つからず。難しかったり、特に洋楽だと英語もそんなにできなくて(笑)それで、高2の始め頃からオリジナル曲を作るようになりました。最近はSCANDALなどのカバーも弾いています。何かと意見がぶつかることもありますが、全部丸く収まって。ノリで始まったバンドにしてはみんな頑張ったよね。

りり:大きな困難もなく…困ったことといったら、みんなが練習しないくらいですかね(笑)

— このバンドの魅力は何でしょうか?

かなぶん:敢えて言えば地味さじゃないですかね。

りり:自分達を一言で表すなら、地味!学校でも普通の、特に目立ちもしなく。バンドやってるって言うと結構驚かれますね。

ゆかぴょん:ライブに来た友人や家族は、みんな一様に「予想以上」「もっとグダグダだと思った」と言ってました。この前(12月の『青い春』)のライブも外でやるのが初めてで。表立って活動するというよりは、自分達で楽しくやれたらというのが私たちの理想です!

— もうすぐ高3になりますが、どんな進路を考えていますか?

Photoまりなっち:私は商学部、経営学部に行きたいと考えています。父からそうした学部についての話もよく聞いていたので、興味を持つようになりました。

ゆかぴょん:私も大学は経済系を考えています。将来は…キャリアウーマンになるのが夢です!何より、まずはしっかり自立したいですね。

かなぶん:私は一応文系なのですが、関心があるのは理系なので、環境系や心理学など、理系っぽいことをやりたいですね。その先はまだ決まっていません。ドラムはこれまでずっと独学でやってきたので、無事大学進学できたらしっかり習いに行きたいと思います。

ありさ:私は映画が好きで、映画や音楽の評論などを学べる学部があり、そこに行きたいと思っています。音楽はずっとやってきたので、やめずに続けていきたいです。

りり:大学はまだ行きたい所が全く決まっていません。今まで趣味が音楽だったので、大学で学びたいというよりは、自分で好きにやっていきたいので、大学で音楽を学ぶというのは考えていません。ただそうすると興味のある分野がなくなってしまうので、どうしようかなと悩み中です。大学生になって、またバンドを組んでやっていきたいと思います。できたらこのメンバーでまた組めたら…

ゆかぴょん:出来たらいいけどね…

かなぶん:多分やらないんじゃないの?

まりなっち:見に行く方がいいかな、私(笑)

りり:このメンバーのことだから、また練習しないで初心者レベルに戻ってるかもね(笑)

春からは高3になり受験生になるので、一部のメンバーは受験勉強に専念。やはりライブなど表立った活動はせず、「時々集まって息抜きにやりたい」ということでした。今回ご紹介したAfter The Calmは、バンド一筋!将来は音楽で食っていく!といった気概のあるバンドとはまた違ったテイストですが、だからと言って中途半端な演奏をするというわけではなく、「やる時はやるぞ!」という感じで5人とても息の合った、完成度の高い演奏を披露してくれました。バンド以外に「テニス」「華道」「解剖」など5者5様に個性的なフィールドがあることで、バンドの奥行きを広げているのかなとも思います。

ともあれ、そんな魅力あふれる5人の音楽は、こうして言葉に表すより実際に聞いてもらえれば良いのですが…やっぱり、外でライブをやってほしいなぁと一ファンとしては思ってしまいます。どうでしょう、もう1回ライブやりませんか?

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After The Calm

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【取材協力】
サウンドスタジオノア 渋谷2号店
http://shibuya2.studionoah.jp/