特集

WildSide Tokyo presents 『青い春』

TEXT:鈴木亮介  PHOTO:ヨコマキミヨ、鈴木亮介

Photo本誌・BEEASTではこれまで10代~20代の学生が登場する様々なイベントをご紹介してきましたが、その中でライブハウスの「危機感と使命感」に触れることがしばしばありました。それは、手軽に音楽をダウンロードしたり動画視聴したりできるようになった半面、生身の演奏を聴き、パフォーマンスに酔いしれ、リアルな音楽を体感するという、まさに「ライブ」がごく限定的な範囲にとどまっているという…日本の音楽文化の危機とも言うべき状況。心ある全国のライブハウスは、それぞれに危機感を抱き、また自らの使命として、次の世代を育てていこうと熱く奮闘しています。

東京・新宿、御苑の裏に根を下ろし、脈々と明日の音楽を育て続ける「WildSide Tokyo」もまた、その一つ。普段から高校生バンドを積極的に受け入れ、若い世代をサポートし続ける「WildSide Tokyo」がついに、学生中心のライブイベントを初開催!ライブハウスなのでもちろん主役はライブですが、「ただ学生バンドが集まってライブをする」というだけではなく、普段はなかなか入ることのできない楽屋を開放して、出演者同士やお客さんとの交流の場を設けたり、屋台を出したり、さらには場内をメイドさんが回るとのこと!まさに「文化祭」です。

今宵は文化祭!ということで、お堅い話はここまで。我々BEEAST取材陣も気持ちは10代に戻って、高校生ノリで楽しい「青春の一ページ」を全力でリポートしたいと思います!

12月13日、雨の東京。足早に靖国通りを進むと、風船付きの看板が目に飛び込んできました。普段は「男の隠れ家」的な雰囲気を醸し出す「WildSide Tokyo」ですが、この日は入口から既にポップな要素が加わり、期待が高まります!

階段を下り扉を開くと、その向こうには本日の仕掛け人、「WildSide Tokyo」の鈴木健太郎ブッキングマネージャーの姿が。今日は一体どのようなイベントになるのでしょうか。

鈴木健太郎ブッキングマネージャー beforeコメント
Photo事の発端は今から半年ほど前、女子高生バンドのAfter The CalmがうちのHPの「高校生バンド募集!」のバナーを見て応募してくれたのがきっかけです。 彼女たちが外部でライブをやるのは初めてということだったので、せっかくの機会だから何か一緒に楽しいことをしたいと思い企画しました。 このイベントの特長は、「高校生バンドの中に何故かオッサンもまじってる」ということです(笑)。つまり、初々しいバンドから一定のキャリアのあるミュージシャン、DJやお笑いの人まで様々なアーティストが一つの舞台に立つことで、特に若い人たちに新たな刺激を感じ、視野を広げてほしいという思いがあります。 さらに、たこ焼きなどの屋台も用意し、ライブハウスで可能な事を出来る限り全て詰め込みました。今日は「普段ライブハウスにはあまり行かない」「初めてライブハウスに来る」というお客さんも多いと思います。 この機会に是非、こういう楽しい場があるということを知ってもらえたらと思います。

PhotoPhoto

PhotoPhoto

構想半年ということですが、中でも興味深いのは、普段は一般客の立ち入りが許されない楽屋が全てオープンになっているということ!悲喜こもごも、緊張が張り詰めた空間という印象も強いバックステージですが、そこに出演者だけでなくお客さんが気軽に入れることで、アーティストの新たな一面や、ライブの魅力に迫ることができるのではないでしょうか。

楽屋には今宵限りの特設屋台が登場。黙々と仕込中!「WildSide Tokyo」スタッフによる3種のたこ焼きや特製うどんに加えて、前述の女子高生バンド、After The Calmのメンバーによるチョコバナナ!「はい」と渡す笑顔が素敵です。(いやぁ高校の文化祭を思い出しますねぇ~)

PhotoPhoto

PhotoPhoto

そして午後5時を回り、開演!ミュージシャン、ボイストレーナー、作詞・作曲、俳優などマルチに活動するAKINO LEEによるDJパフォーマンスで幕開け!スクリーンにはなぜかウサビッチのアニメが。剛腕のAKINO LEEは軽快なプレイで会場のムードを高めていきます!

PhotoPhoto

AKINO LEE 公式サイト
http://www.akinolee.com/

午後5時半。いよいよ1組目のアーティストの登場。The★想いでというアーティスト名ですが、顔合わせの際に見かけなかった気が…と思っていたら、ステージに登場したのは何と、金髪ロングヘアーに短パン、サングラスのいで立ちで現れた「WildSide Tokyo」の鈴木健太郎ブッキングマネージャー!

PhotoPhoto

あいさつと諸注意を話したのち、Guns N’ Rosesの魅力を若い人達に伝える!と言いつつトークを続け、気づけば「女子高生にいいように貢がされた」という自虐話に!客席から半分爆笑、半分失笑が湧いたところで「Welcome To The Jungle」を熱唱!不可思議な絶叫が「WildSide Tokyo」に響き渡ります!しかしその声量はパワー満点!内に秘めた実力を、客席の高校生たちにまざまざと見せ付けます。

PhotoPhoto


続いて2組目はendrphiaが登場!メンバーは新井昇平(Guitar&Vocal)、山坂雄馬(Bass)、井口佳奈(Keyboard)、佐野文音(Drums)の4名。同じ大学のテニスサークルに通うメンバーらで2ヶ月前に結成。「WildSide Tokyo」のご近所にあるスタジオ「SOUND nil」を普段よく使用している彼ら。「WildSide Tokyo」と同様に若いミュージシャンを応援する「SOUND nil」からの紹介で今日の出演が決まりました。何と、endrphiaは今日が初ライブとのこと!真っ直ぐ一点を見つめて歌う男性ボーカルのストレートに伝わってくる歌唱と、個々のパワーある演奏が魅力。endrphiaとしては初めてのステージでしたが、ピアノソロから入るバラードからロックナンバーまで、幅の広さを感じるステージでした。

PhotoPhoto

Photo
endrphia 公式サイト
http://endrphia.ifdef.jp/

◆セットリスト
M01. over the waves
M02. Potential of Time
M03. X-Backs
M04. 終わり待ち
M05. 上昇思想

◆終演後のコメント
今回は初めてのライブでとにかく緊張しました。でも楽しかったです!これからメンバーは就活で忙しいですが、息抜きがてらでも練習を続けて、もっといいライブにしていきます!(by 新井昇平

転換中は、DJ AKINO LEEが場面場面でグッとくる曲をチョイスし、場を飽きさせません。おそらく、多くの高校生たちにとって、DJのターンテーブルを生で見るのは初めてでしょう。男子高生も女子高生も、遠目からやや遠慮がちに覗いています。

そして、3組目にステージに登場したのはお笑いコンビのゑびすナンバー河野誠也(ボケ)とタケカワユキヒロ(ツッコミ)の2人で2009年に結成。ネタの詳細はここに書けませんが、とにかくひたすら「ゴリラやないかい!」の連呼に、笑いが絶えません!(※どんなネタだったのか…気になった方は是非彼らのライブへ!)

PhotoPhoto

ゑびすナンバー 公式サイト
http://hp41.0zero.jp/715/ebisunumber/

PhotoPhoto

PhotoPhoto

ここで、楽屋も覗いてみましょう。ネギ塩レモン味など3種のたこ焼きはやはり大人気!自ら志願したというAfter The Calmによるチョコバナナ屋台の周りには、同級生の女の子たちが集まります。普段はなかなか入れないライブハウスの楽屋。一瞬ためらいそうになりますが、元気いっぱいのメイドさんや風船ガールが優しく誘導してくれます。その笑顔にも癒されますね。一方、ソファーでは初めて顔を合わせる出演者同士やお客さんらが楽しく談笑しています。対バンのお誘いもあるようですね。ここから新たな友情、そして恋が生まれるのでしょうか?うらやましい限りです!!

PhotoPhoto

PhotoPhoto

PhotoPhoto


続いて4組目の登場は、ホールを盛り上げるためのゲストバンドとして、クラブ系バンドユニット3×6(サードバイシックス)が登場。今宵集まった学生たちにとって、先輩ミュージシャンです。メンバーは、Jessy(AX・Vocal & TrackMaker)とTatsuya(Vocal)。とにかくノリのいい2人!タオルを回しながら、客席を煽ります。Tatsuyaは大きく体を動かし、全身でリズムを刻みます。クールなパフォーマンスに刺激を受けて、後半は観客も全員こぶしを高く挙げ、ノリノリ!彼らも「この景色が大好き」と大満足の様子。

PhotoPhoto

Photo
3×6 公式サイト
http://third-x-six.com/

◆セットリスト
M01. Seahorse
M02. One Day Love
M03. Cry No More
M04. Soul Master
M05. Get Ready!!

PhotoPhoto


5組目の登場は、先ほどまでチョコバナナを売っていたAfter The Calm。同級生で結成された高2ガールズバンドです。メンバーはりり(Guitar & Vocal)、まりなっち(Guitar)、ありさ(Bass & Vocal)、ゆかぴょん(Keyboard)、かなぶん(Drums)の5人。中3の時に結成し、現在3年目。校外のライブは今日が初めてです!客席の女子率がグッと上がり、盛り上がってきました。5人は緊張した様子ながらも、冒頭から手拍子を呼び掛け、このバンドで初めて作ったオリジナルを1曲目に披露。1つ1つの音に安定感があり、心地良い演奏が続きます。

PhotoPhoto

Photo
After The Calm

◆セットリスト
M01. Melodic Wind
M02. SCANDAL BABY/SCANDAL
M03. プルシアンブルー
M04. Hello my youth!

◆終演後のコメント
私たちはライブハウスでするのが初めてだったのですが、スタッフの方々や出演者のみなさんが親切にしてくださって、文化祭という企画も演奏も本当に楽しくできました!! 音楽っていいなって改めて思いました。色んな人に感謝です。そしてこのメンバーでバンドを組む事ができてすごく良かったです!(by ありさ

6組目は、再びゑびすナンバーの登場!今度はF1に絡めた漫才を披露。コンビ結成2年目ながら、声量やテンポに安定感があって、とても若手とは思えません(お世辞抜きです!)。一方その頃、「WildSide Tokyo」の上階にあるバー「カールモール」では、高校生出演者の保護者や、大人のお客さん達がゆっくりと流れる時間を楽しんでいました。今日の「WildSide Tokyo」は “全面禁煙・禁酒!” 高校生出演者が多いことへの配慮です。普段高校生を取材していると、特に女の子からライブハウスはタバコが煙たくて抵抗がある…という声を良く聞きます。これはそうした10代の声に応える、貴重な試みと言えるでしょう。ちなみに、「カールモール」の小倉恒克マスターはこの道40年!こちらのお店でも毎週土曜日にアコースティックなどのライブが開催されています。(※5名~50名での貸し切りパーティーも可能!)

PhotoPhoto

カールモール 公式サイト
http://www.karlmohl.com/

PhotoPhoto


さあイベントも佳境です。7組目の登場はイケメン男子高生バンド、F4。同じ高校の軽音楽部で結成。「F4」というバンド名は先輩から代々受け継がれていて、彼らで4代目だそうです。メンバーは小野沢俊哉(Vocal)、岡部義樹(Guitar)、長田成樹(Drums)、鷲谷草詩(Bass)の4名。冒頭、ボーカルを除く3名が登場しMR.BIGのインストを披露。ハードなギタープレイで魅せて期待感を煽りつつ、現れたボーカルの軽いノリのMCも予想外でgood!2曲目はマキシマム ザ ホルモンをカバーし絶叫。3曲目からは洋楽カバーを怒涛の3連続。とにかく元気で調子良い!

PhotoPhoto

Photo
F4

◆セットリスト
M01. Burn(instrumental)/MR.BIG
M02. F/マキシマム ザ ホルモン
M03. Can’t Stop/Red Hot Chili Peppers
M04. Stone Cold Bush/Red Hot Chili Peppers
M05. God Save The Queen/Sex Pistols

◆終演後のコメント
今回、色んなバンドと一緒に出ることができて、とても楽しくて良い経験になりました!ライブパフォーマンスなどは勉強になりました。そして、雨の月曜日に来てくださったお客さんありがとうございます!(by 鷲谷草詩

PhotoPhoto


そしていよいよ本日のトリ!8組目は男子高生3人組のOP69。メンバーは“おっぱい”こと小川拓摩(Guitar&Vocal)、”ハツ”こと藤井初喜(Bass)、”ひょろのっぽ”こと川北江紀(Drums)。千葉県を中心に活動しています。客席には今日の出演者たちも入り混じって盛況です!さながら後夜祭の打ち上げライブの様相。こちらもハードロックの嵐で、客席も前のめりになって大熱狂!メンバーもステージ上を縦横に飛び跳ね回り、3ピースと思えないほどの存在感を見せつけます。彼らは現在高校3年生。大学受験はせず、専門学校などに通いつつ音楽の道を極めていきます。デモCDをいただきましたが、かなりの出来。今後の活躍に期待です!!

PhotoPhoto

Photo
OP69 公式サイト
http://www.audioleaf.com/op69/
◆セットリスト
M01. RE:START
M02. Gone Away
M03. Pick up oneself
M04. I’m Fuck up!!
M05. lost thing
M06. OP69
◆終演後のコメント
会場の皆さん、対バンさんが1日を通して盛り上げてくれていたので、気持ちのいいライブが出来ました!最近大事なライブが決まって行くにつれて、高校生じゃなくなるってことを凄く感じています。頑張って行きたいと思うので応援よろしくお願いします。(by 小川拓摩

Photoあっという間に午後9時。ステージは照明が落ちましたが、楽屋は相変わらずの盛況!チョコバナナは無事完売したようです。午後10時までには撤収しなければならないため、出演者たちは後片付けや荷物整理を進めています。それでも後ろ髪を引かれるのか、時折手を止めて話し込むメンバーも。初回としては申し分ないほどの盛り上がりを見せた「文化祭」ですが、仕掛け人であり自らも熱唱したこの人は、どう見ているのでしょうか。最後に、今後の展望などもうかがいました。

WildSide Tokyoでは高校生アーティストの出演を常時募集中!その熱いロック魂をぶつけろ! 詳細、問い合わせはWebサイトから!
◆WildSide Tokyo (新宿区新宿1-34-13 貝塚ビルB1) http://ws-tokyo.com/

鈴木健太郎ブッキングマネージャー afterコメント
Photo本日は月曜のド平日という決して良いとは言えない状況にも関わらず素晴らしいイベントになりました。関わっていただいた全ての方達に感謝しております。私の中で日々、営業している中での課題はお客様、バンド、ハコスタッフ、誰もが楽しい思いをして終わること。全てを成り立たせることは実際なかなか大変です。今回のイベントは集客面、顧客満足度諸々非常に良いバランスだったことが主催者としては胸をなでおろしている部分です。イベントというのはやはり「チーム」で盛り上げるものだという再認識をした日でもありました。今回も個人、法人でたくさんの方達の協力がなければ成り立たなかったイベントです。やはり御縁ある人との繋がりを広げていくことが何よりも大切ですね。今回のイベントが会場にいた人々の人生のかたわらに「音楽」や「ライブ」があることのきっかけになればと思います。あとは続けていく事が一番重要。関わってくださった皆様本当にどうもありがとうございました!またやります!