連載

ロック1年生 エントリーNo.16 Gunslingers

TEXT & PHOTO:鈴木亮介

Photo突然ですが読者のみなさんは「初めて買ったレコード」「初めて買ったCD」を覚えていますか?ちなみに小生は恥ずかしながら猿岩石のデビューシングル「白い雲のように」でした。いや、恥ずかしいと言っちゃいけないですね。確か小学校高学年だったと思います。当時は、毎週水曜に発表されるオリコンランキングを楽しみにしていたのを覚えています。

今回ロック1年生に登場するのは、全員10代の現役高校生ながら、一番いい時代のロックに魅せられ、その魂を受け継いでいこうという熱い漢たちが登場します。吉祥寺など中央線沿線を拠点に活動中のGunslingersです。メンバーはTaro君(Guitar)・LaBlynne君(Vocal)・友人君(Guitar)・SINN君(Bass)、・GONZO君(Drums)の5名。バンド名に覚えのある読者の方も多いことと思います。それもそのはず、彼らはJYOJI-ROCK2010年春大会で準グランプリを獲得しています!

5人に共通するのは「古き良き時代のロックを愛してやまないこと」。しかし10代の彼らがいったいなぜ?そしていったいどのようにして出会い、バンドを結成したのか?そして、ボーカル・LaBlynne君のポリ帽(※ポリスハット)をはじめとした、メンバーのインパクトのある衣装についても…謎多きGunslingersの素顔に迫ります。

— まずはバンド結成のきっかけを教えてください。

PhotoTaro:一番初めにさかのぼると、2008年の年末、僕がインターネットでメンバー募集を呼びかけて、友人と出会いました。2人とも、周りに洋楽のロックをやっている人間はいないので息が合って、その後友人GONZOを連れてきて、3人でやるようになりました。そして2009年の夏、普段使っているスタジオPENTAが主催する大会があるので、それに出ようと思ってボーカルとベースを探すことにしました。ベースはHANOI ROCKSのライブで知り合ったSINNに声をかけて、ボーカルは1歳上の人にやってもらったのですが、受験のためその大会限りで脱退しました。

SINN:それまでバンドを組んだ経験もなかったし、自信がなかったので最初は断ったのですが、再び声をかけてくれたので、一念発起して挑戦することにしました。その後僕が、幼馴染みのLaBlynneをボーカルとして連れてきて、今の5人が揃いました。それが去年の9月です。この5人は全員同い年で、現在高校3年生です。

— では、皆さんが音楽を始めた年齢ときっかけを教えてください。

PhotoGONZO:小6の時にQueenのライブ映像を見たのが音楽を始めたきっかけです。Queenは元々家族がファンで、家でDVDが流れていました。メンバー一人ひとりにスポットを当てた視点で見られるという機能がついていて、ロジャー・テイラーを選んで見ていたらかっこいいなぁと。その後、すぐに始めました。最初はゲームのスティックで見よう見まねでやっていたのですが満足できず、とうとう父親に「ドラムをやらせてください!」と頭を下げて、ヤマハの教室に通わせてもらいました。今でも同じ先生に教わっていて、もう7年になります。その後、バンドは中1の時に一度組みました。BUMP OF CHICKENからTOTOまで様々やりましたが、ほとんど俺がやりたいと言った曲ばかりで、そのたびにメンバーを困らせていました。「こんな難しい曲できるわけない」と…

LaBlynne:僕は中1の頃に、Metallicaの「Enter Sandman」を聴いたのがきっかけです。この曲は大リーグ・ヤンキースのマリアノ・リベラ投手が登場曲に使っていたのですが、かっこいいなぁと思って、それからMetallicaにハマるようになりました。中学卒業後、高校入学前の春休みにはギターを買いましたが、本格的にやり始めたのは同級生のSINNに誘われてこのバンドに入ってからです。ただ、バンドでは今のところボーカル一本でやっています。ボーカルを志望したのは、歌っていて楽しいからやってみようかなと、最初は軽い気持ちでした。

PhotoSINN:僕はMARILYN MANSONが好きでした。最初は洋楽つながりでLaBlynneと話すようになって、それからMetallicaを紹介されて、これかっこいいじゃんと思い、自分も実際に音楽をやってみたくなりました。ベースをやろうと思ったのは兄(21)の影響です。兄が弾いているのを聴いて、音がかっこいいなと思い、中学を卒業した後の春休みにLaBlynneがギターを買うというので、「じゃあ俺はベース」と思って買いました。その後あまり触っていなかったのですが、去年の5月頃、このバンドに入ったのを機に本格的に練習するようになりました。

Taro:音楽との出会いは生まれる前からですね。両親がともにロックが好きで、俺がお腹にいる時にGUNS N’ ROSESを胎教で聴かされていました。幼少期はGUNS N’ ROSESAerosmithを好んで聴いていました。中でもAerosmithのアルバム「Get A Grip」は特にお気に入りでした。初ライブは5歳の頃に行ったAerosmithで、今でも何となく覚えています。そんなわけでずっと洋楽を聴くのが好きでしたが、小6になって、もう一回Aerosmithのライブに行った時に、やっぱりギターをやりたいという思いが湧き出てきて、家にあった親父のギターを手に取り、弾き始めました。中学の時はバンドを組みたいと思っていても周りに音楽をやる人がいなかったのでできず、高校に入っても自分のやりたい音楽はできず、ネットに書き込んで同志を探していたらこのメンバーと出会えました。

Photo友人:ギターを始めたきっかけは…父親が元々ギタリストだったのですが、僕が中2の時に他界しました。親父はプロとして「Mステ」や「イカ天」に出ていて、僕も赤ん坊の頃から父の主催する野外コンサートに行って聴いてはいましたが、自分もギターを弾くまでには至りませんでした。葬式の時、父がギターで作った曲が流れて、列席した様々な人から親父についてのエピソードを聞いているうちに、「こんなに親父ってすごかったんだな」と気付きました。そこから形見のギターを何となく触りはじめ、いつしか父親を超えてやろうという気持ちが芽生え、本気で弾くようになりました。ちなみに、僕もやはり古い洋楽が好きで、普段はLynyrd Skynyrdなどをよく聴きます。

—なるほど。「親父の影響で洋楽に傾倒していった…」という方が多いようですね。お父さんとロック談義になることも多いのでは?

Taro:ありますね。この間も一緒にGUNS N’ ROSESのライブに行ったり…さらには、俺の親父とバンドメンバーが一緒にライブに行くこともあります!

GONZO:僕はTaroの親父さんからLed ZeppelinのCDをいただきました。

PhotoLaBlynne:ライブにも来てくれます。

— アドバイスしてくれることもありますか?

Taro:あんまり聞かないですけど(笑)一応言ってくれてます。でもやっぱり、そういうバックがあるのは助かりますね。

— では、皆さんの活動について教えてください。

Taro:今は受験期なので活動は抑え目ですが、夏ごろまでは週1回ペースでスタジオに入っていました。ライブは今年に入ってから本格的にやり始めて、今年だけで既に7~8本やっていますね。ライブはオリジナルを中心に、洋楽のカバーもやります。

span class=”interview_name”>SINN:みんな学校がバラバラなので、決まった時間に集まるのが難しく、苦労しています。以前、夜中の1時から朝の5時までスタジオで練習したこともありました。さすがにスタジオを出た後は疲れ果てていて、みんな無言でした…でも、夜中だとスタジオの店員さんと語り合ったりできるので、楽しいですよ。

— 曲はどのようにして作っているのですか?

Taro:曲は友人が作っています。まずギターとドラムのパートを作り、その後に詞を僕が乗せていきます。それからセッション形式でだんだん合わせて完成させます。たいてい、「次のライブに間に合わせるように」と仕上げていきます。

PhotoGunslingersの演奏力の高さと人気は、彼らのライブに裏打ちされます。高校生バンドのライブというと、同じ学校の友達を集めて仲間内で…というのが一般的ですが、彼らの場合はリピーターが多いのが特長。全く知らない学校の人から声をかけられたり、対バンの誘いがかかることもしばしば。

リーダーのTaroも「同世代のお客さんも、同じ高校生バンドとしてでなく、Gunslingersという一つのアーティストとして見てくれているので、それが自信になる」と語ってくれました。

そして、古きよき時代の洋楽をやっていることもあり、同世代にとどまらずライブハウスの店員さんなど30~50代の大人たちからも熱い支持を得ているのだとか。さらには、こんな人たちからのエールも……

SINN:JYOJI-ROCKの本選でMISSILESに出会い、特にTakaichi(Vocal & Guitar)さんにはお世話になりました。実はこの革ジャンもTakaichiさんからいただきました。

Taro:やはりあの時に僕らがこういう格好でこういう音楽をやっていたのが気に入っていただけたのだと思います。Takaichiさんは僕らを高校生としてでなく一つのバンドとして見てくれるので嬉しいですし、とても励みになります。

LaBlynne:また、JYOJI-ROCKでは川久保秀一さんとも知り合って、お世話になっています。僕は今、川久保さんのボーカルレッスンに通っているのですが、ボーカリストは全員川久保さんのレッスンを受けるべきだと思います。指導がとても分かりやすく、的確です。声の幅とか、腹式呼吸の理屈とか、基本的な事を教えてくれます!

— 世代を超えて愛されるGunslingersですが、その魅力はどこにあると思いますか?

PhotoTaro:バンドの魅力ですか…自分たちで言うのも恐縮ですが(笑)一番は、5人がみんな個性的ということですね。そして、一番かっこいい時代のロックを知っていること。知っているからこそ、その良さを俺らが出したいし、もう一回この時代に体現出来ればと思います。みんな同じ音楽を聴いていたということもあって、結果的に集まった時に一つの音になりやすい。事前の打ち合わせなくスッと合うし。個々に挙げていくとキリがないですけど、例えばボーカルは目立つし高い声もしっかり出るし、ドラムは音の粒がそろってるし、同世代では群を抜いてますよ。

GONZO:いやいや…前は経験年数を言うのが自慢だったのですが、最近年数と腕が合ってないなぁと自覚して…だから、今は経験年数を言いたくないですね。それが悩みです。それより、ライブをやると大体友人のギターが凄すぎて、同世代のミュージシャンは心が折れる。あと、SINNがモテすぎるんだな(笑)

SINN:友人が作る曲で「これがだめ」っていうのは全くないですからね。演奏力で圧倒できる。メンバーそれぞれが学校の文化祭などで違うバンドを組んだりもするのですが、やっぱこれ(Gunslingers)だな、と思います。このメンツだからできる音楽があるし、いい音楽をしてる。お互いの良さを分かってる。

— 友人さんはお父さんがプロだったわけですが、そのつながりで誰かに教わったりしていたのですか?

Photo友人:いえ、ずっと独学でした。

Taro:それが不思議な所だよな。今まで誰かに習ったわけではないのに…ある程度、元から持ってる力があるのかな。自分では言わないけど。

SINN:俺らが見てると、スタジオで休憩中も音を消してずっと弾いてるんですよ。謙虚だけど、やっぱりひと一倍努力してる。だから、音に説得力があるんだよね。

—そして、Gunslingersといえばビジュアルもインパクトがありますね。

友人:メンバーの服装は、やはり音楽が影響しています。だんだん派手になってきましたね。髪も伸びてきたり…変わらないのはGONZOだけです(笑)。まぁでもこれがある意味良さだったり。

GONZO:JYOJI-ROCKの時に「君だけフツーだね」って言われました(笑)。そしてLaBlynneはこういうキャラなので、ライブではいい意味で目を引く。

—確かに、JYOJI-ROCKに出たGunslingersと聞いた瞬間に、あのポリ帽が頭に浮かびました(笑)いつ頃からこのスタイルなんですか?

PhotoLaBlynne:このポリ帽は去年の3月くらいからかぶってますね。HANOI ROCKSのライブに行った時、Michael Monroeがかぶっていて、「これはかっこいいな」と。

Taro:カッコいいと思っても普通マネしないよなー。でも、いつもこの格好かと思いきや、普段は野球のユニフォームなことが多いんですよ。

LaBlynne:小さい頃から野球をやってました。実は音楽より野球の方が好きなくらいです。テキサスレンジャーズを応援していて、そこで先ほど話したMetallicaの「Enter Sandman」に出会いました。

—ちなみにその帽子はおいくら?

LaBlynne:9000円です。原宿の竹下通りで買いました。

SINN:実は俺と一緒に服を買いに行ったのですが、ステージ衣装を売っている店があって、そこで「これほしい!」と。

PhotoTaro:初顔合わせの時にいきなりこの帽子で現れましたからね。ビックリだよ、こっちは(笑)

—今は高3で受験期ですが、受験が終わったらまた活動再開ですか?

Taro:もちろんです!受験が終わったらバリバリやっていきますよ。まずはレコーディングがしたいですね。「こういうのだ」という俺らとしての一つの音を固めて、ものとして人に渡せるようにできればと思います。しっかり聴きたい人に届くように。それから、バンドコンテストにも機会があればどんどん挑戦していきたいです。

—では最後に、皆さんの今後の目標、野望を教えてください!

GONZO:高校卒業後は専門学校に進みます。このバンドはもちろん、色んなリズムに挑戦したり、色んなミュージシャンとも共演してみたいですね。将来はスタジオミュージシャンとして自立するのが夢です。

LaBlynne:みんなが「お前は高い声が出るし素質がある」と言ってくれているので、行ける所まで行ってみようと思います。一方で野球に携わる仕事にも関心があります。セイバーメトリクスという、統計学としてデータを分析し選手の戦略を考えていく仕事があるのですが、その専門家になってどこかの球団に雇われたいという野望もありますね。

SINN:俺は今、Mötley CrüeのベーシストであるNikki Sixxをリスペクトしています。彼はものすごいスター性を持っているので、自分もそのくらいのロックスターになれたらと思います。そこが最終目標です。高校卒業後は大学に進学しますが、あくまで中心は音楽です。そこで学ぶ経営、市場戦略といった勉強も、バンドに活かせればと思います。

PhotoTaro:Gunslingersでワールドツアーですね!各国を回って。今はCDが売れない時代と言いますが、そうは言ってもみんな音楽は好きなので、スケールは大きく…夢というよりは、そうなると思い込んでいるので。俺らの持っているエネルギーだったら、広いステージでも問題ありません。演奏力とパフォーマンスについてはいいものを持っているという自負はあるし、そこが強みなので、大きなスケールでやりたいですね。

友人:僕もこのバンドで最終的には売れたいという思いがあります。また、父親を超えるギタリストになりたいです。高校卒業後は独学でギターを極めていきます。
Taro:聴いてスゲーというのと、見て楽しめるというのを両立させたいですね。お客さんが次のライブにまた来てくれるのは嬉しいし、そうして着実に人の輪を広げていけば、その先に大きなチャンスが待っていると思います。

メンバー個々が尊敬するミュージシャンがいずれもビッグネームばかりなので、それに近づこうとすれば、自ずとクオリティも上がっていくということでしょうか。次代のロックをさらに極めていってほしいと思います!

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Gunslingers HP
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Gunslingers myspace
http://www.myspace.com/gunslingers001

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【取材協力】
吉祥寺スタジオ武蔵
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