連載

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TEXT & PHOTO:鈴木亮介

photo4月になり、新年度がスタートしました。今年は例年に比べて桜の開花が早く、入学式の頃にはもう散ってしまっていた!という地域も多いのではないでしょうか。しかし路上に咲く花びらのじゅうたんもまた風情がありますね。

さて今回の連載「ロック1年生」は、”軽音楽部、誕生前夜”に迫ります。取材にご協力いただいたのは神奈川県立秦野曽屋高校。丹沢大山を背に立地し、全校生徒800名ほどが通っている高校です。この高校には元々軽音楽部がありませんでしたが、2010年10月に生徒の要望を受けて軽音楽”愛好会”が設立。翌2011年4月に同好会に昇格しました。地域のイベントや県大会などへの出場経験を重ね、2013年度より部活への昇格を目指して日々活動中です。

まずは設立までの経緯について、顧問のM先生に話を伺いました。

M先生:今、神奈川県内の高校ではサッカー部や吹奏楽部を抜いて軽音楽部に所属する生徒が一番多いというデータがあります。それほど高校生の部活の代表とも言える軽音楽部ですが、その中にあって秦野曽屋高校の軽音の歴史は始まったばかりです。昨年度卒業した世代が1年生の時に立ち上げましたが、当初は昔ながらの「バンド=不良の集まり」のようなイメージから来る反対意見も根強くありました。そうした意見を持つ先生方や、近隣住民の方にも理解してもらうために、部員達も率先して挨拶をするなど「軽音楽部の生徒は礼儀正しい」という印象を持ってもらうように努めています。
軽音楽部はバンド単位で入ってくるというケースは少なく、大抵個人で入って来て人間関係を作っていきます。秦野曽屋高校軽音楽同好会の場合は、まずギターを買う所から先輩がついて、指導していきます。パートごとに教則をひと通り先輩が教えて、最後にTHE BEATLESの「HELP」を課題曲とし、演奏できると合格。晴れてバンドを組めます。2~3年生も、下級生を教えることで自分に自信をつけられます。
高校から楽器を始めたという初心者がほとんどですが、そうした部活動としての体系がしっかり出来上がっているので、バンドを組んでライブに出る頃には一通り基礎が定着していて不安もないと思います。今や神奈川県の中では軽音楽部がない学校の方が少ないくらいですが、そういう風にシステマティックに”部活動”としてやっている所はまだ多くないのが現状です。

♪バンド紹介♪
photo◆カメロンパン
おいしいパン作ってます。(おいしい演奏も!)
 
メンバー:
M・K(Bass/2年生)
C・J(Guitar & Vocal/2年生)
A・M(Guitar & Vocal/2年生)
K・R(Drums/2年生)
 
photo◆Estrela
ラルクアンシエルのコピーバンドです!
 
メンバー:
K・A(Guitar/3年生)
E・S(Drums/3年生)
E・E(Vocal & Guitar/2年生)
G・K(Bass/3年生)
 
photo◆ぺろんぴ → Pino
ドラムを加えてPinoになりました。個性豊かなメンバーで
日々楽しく活動しています。

 
メンバー:
O・H(Guitar/2年生)
O・R(Guitar/2年生)
F・T(Bass/2年生)
 
photo◆Celluloid
オモシロイをコンセプトに頑張っています!
 
メンバー:
Y・S(Guitar & Vocal/2年生)
T・T(Bass/3年生)
K・A(Guitar/3年生)
E・S(Drums/3年生)
 
photo◆abnormality
出来たてホヤホヤの2年生バンドです!カッコいい曲を
中心にやっていきたいと思います!

 
メンバー:
F・T(Bass/2年生)
D・A(Guitar/2年生)
E・E(Vocal & Guitar/2年生)
 
photo◆紫苑
俺たち完全感覚Dreamer(笑) 紫苑は3年生と2年生、
コーチで構成されたバンドです!

 
メンバー:
A・A(Vocal/2年生)
D・R(Bass/3年生)
O・R(Guitar/2年生)
A・M(Guitar/3年生)
photo◆Mosa1k
3年生と2年生で構成されたバンドで主に女性ボーカルの
曲をやっています。これからも大会やライブに向けて
練習など頑張っていきます!

 
メンバー:
D・R(Bass/3年生)
K・N(Guitar/2年生)
O・R(Guitar/2年生)

♪部員インタビュー♪
---まずは現3年生の皆さんに伺います。皆さんはなぜ軽音楽同好会に入ろうと思ったのですか?

photoD:元々両親がギターとピアノをやっていて、僕も興味を持ち、一緒に弾くようになりました。その時バンドの話を聞いて、高校に入ったら軽音楽部に入ろうと決めました。

T:小学校の時に担任の先生がアコギを弾いていて、借りて触っているうちに音楽に興味を持ち始めました。高校に入って、ちょうど軽音楽同好会ができたと聞いて、入部を決めました。

K:中学の友人がギターを弾いているのを見てかっこいいなと思い、自分もやりたいと思うようになったのがきっかけです。それで、高校からギターを始めました。

E:中学の時の塾の先生がドラムをやっていて、それに影響を受けました。

K:中学の友人が「高校に入ったら軽音をやる」と言っていたので、俺もやってみようかなと思って…あとはモテそうだったので(笑)

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---ちなみにK君が現在部長(同好会の代表)ということですが…入部当時、先輩は何人くらいいたのですか?

K:1学年上の先輩が6人です。その上の代はいませんでした。

---部員の人数が少ないことは不安ではなかったですか?

K:いや、先輩の演奏しているところを見たらかっこいいなと思ったし、不安はなかったですね。

---なるほど。普段練習はどのくらいやっていますか?

K:週6日、学校がある日は18時20分まで、土曜日は朝8時半から17時までやっています。ちなみに部長は先輩に指名されて去年9月から1年間の任期です。

---では続いて現2年生の皆さんに聞きます。高校に入る前から楽器をやっていた、バンドを組んでいた、という人はいますか?

photoA:私は小3から中3の夏頃までピアノをやっていました。高校で軽音に入ろうと思ったのは、中学の時に聴いたアジカンASIAN KUNG-FU GENERATION)の曲がかっこいいなと一目ぼれ?して、私もやりたい!と思うようになりました。

O:いとこの影響で、中学2年生頃からアコギをやっていました。入学前から高校に入ったら迷わず軽音に入ろうと決めていました。

---では次に、たくさんあるバンドの中から代表して男女1組ずつ、お話を聞きたいと思います。まず「カメロンパン」の皆さんは、どのような経緯でこのメンバーになったのですか?最初にコピーした曲も教えてください。

M:入部した時に先輩から指名されて結成しました。ガールズバンドということで、最初はSCANDALの「DOLL」をコピーしました。曲がかっこいいということで選びました。

---結成当時、大変だったことはありますか?

M:うーん…特にないですね。バンド内でもめることは特になかったですし、練習も…楽譜とか見て分からない所は先輩に教えてもらって練習しました。

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---では続いて「Estrela」の皆さんにお話を聞きます。3年生メンバーの中に一人2年生のE君が入っていますが、これはどういう経緯ですか?

K:俺とEが2人ともL’Arc-en-Cielが好きで、「ラルクのコピーをやりたいね!」と話し、メンバーを集めた感じです。一人だけ2年生ですが、その理由は…Eが歌がうまいからです(笑)

---あと気になったのは、ドラムを担当している人が2人しかいないのですが…バンド練はどうやっているのですか?

K:確かにドラムが少ないので、部活動インストラクター(コーチ)の方がドラムを叩いてくださっています。是非ドラム志望の1年生にたくさん入部してほしいですね。

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---では最後に、今後の目標を教えてください。

K:夏大会に向けてしっかりと練習していきたいです!

E:今よりうまくなって他の高校に「あぁうまいなぁ」と思われるような演奏ができるようになりたいです!

O:日々の練習を大切にして、夏の大会でいい結果を残せるように頑張りたいです!

A:まだオリジナル曲を作ったことがないので、挑戦してみたいです!

M:大会に向けて自分の技術をどんどん磨いて、ちゃんと後輩にも教えられる先輩になりたいです!

♪練習風景♪

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今春卒業した初代部長・Hさんからもコメントが届きました。

H元部長:
同好会を立ち上げた当時は、教える人がいない中自分たちだけで練習をやるのが大変でした。音で近所に迷惑をかけないかと気にしながら毎日コツコツと練習してきました。
 
みんなで県大会や秦野たばこ祭りなどのイベントのステージにださせてもらったり、他校と合同ライブをしたことや、バンドで合わせたりしている時が楽しかったです。
 
卒業ライブはギターを買うところからいろいろ教えた後輩たちと一緒にとても盛り上がって続けてよかったと実感しました。本当にやりがいのある部活でした。
 
今年4月にA大学に入学しました。朝が早くて大変ですが、元気にやっています。

 
冒頭に紹介したM先生のコメントの中に、「システマティックに、”部活動”としてやっている」という話がありました。確かに、私が高校生だった頃は軽音楽部というと「顧問は名ばかり、生徒が好きなように演奏している」というのが当たり前で、以前「連載・ロック社会科見学 ステージ5★高校軽音楽部顧問編!」で尾澤聡先生を紹介した際にも、そうした顧問の先生がいる学校はまだまだ少ないということでした。
 
なぜ「体系化」をしていくのか。その答えを帰りがけにM先生が教えてくれました。「部活として続いていくためにはシステムだと思っています。(顧問である)私がいなくなった後も、うまかった先輩が卒業した後も、ずっと先輩から後輩に技術が伝えられ、強い部活が続いていく。部活動としての軽音楽部では、そうしたことが大切だと思います。」
 
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ちなみに、部員のOさんは、1年生の時に学年で唯一、英検準2級に合格。勉強面でも軽音楽同好会が秦野曽屋高校をリードしています。何事にも全力投球で、是非、誰からも愛される軽音楽部を作っていってほしいと思います。秦野曽屋高校軽音楽部の歴史は今、始まったばかり!

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【取材協力】
神奈川県立秦野曽屋高等学校
http://www.hadanosoya-h.pen-kanagawa.ed.jp/
 

 
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