連載

ロック社会科見学 ステージ5★高校軽音楽部顧問編!

都立小川高校軽音楽部顧問 尾澤聡先生に突撃取材!
TEXT & PHOTO:鈴木亮介

『ロック社会科見学』第5弾は、BEEASTのTEENAGER担当ことスズキがお送りします。今回は高校の軽音楽部顧問のお仕事をご紹介!読者の皆さんの中には「自分の学生時代は顧問なんて名前だけで、練習は生徒たちで勝手にやってたよ」という方も多いでしょう。

今回取材にご協力いただいたのは、東京都立小川高校軽音楽部の尾澤聡先生です。「小川高校」と言ったら首都圏の高校生ロッカーは誰もが耳にしたことがあるはず。ここ数年は軽音楽連盟主催の大会や音楽甲子園などの大会入賞の常連で、現3年生のガールズバンド褒め殺し。は今年5月にPTA主催K音グランプリで見事優勝し、8月には日本武道館での演奏を果たしました。

小川高校の軽音楽部はなぜ活発なのか。ロック1年生世代も気になる実力の秘密に迫ります。2学期も始まって間もない平日の午後3時、授業を終えたばかりの尾澤先生を直撃し、職員室でインタビュー開始。

Photo都立小川高校軽音楽部顧問
尾澤聡先生 プロフィール

1967年神奈川・橋本生まれ。10歳でギターに触れ、中高大と数々のバンドを組み、ギター&ボーカルを務める。25歳で憧れの教職に就き、日本史の先生として教鞭をとる傍ら、放課後は軽音楽部の指導をし、また生徒とともにギターを弾き、バンドの楽しさを教える日々。現任の小川高校では赴任時の学年集会で自ら参加者を募り、軽音楽部を立ち上げた。3児の父でもある。

— まず、教職に就いたきっかけと軽音楽部の顧問になろうと思った理由を教えてください。

Photo尾澤:学校の先生は子どもの頃からいい仕事だなと憧れていました。当時の教員採用試験は超難関で、一度は一般企業に就職しましたが、諦めきれず挑戦を続け、何とかつかみ取りました。私自身、学生時代にずっとバンドを組んでいたので、ギターに関して教えられることもあるし、バンドの楽しさを伝えたいと思って最初の赴任校から軽音楽部の顧問を志願しました。私が学生だった当時は、親や先生など周りの大人の理解が薄かったですからね。ギターを持っているだけで不良という(笑)

— 現在お勤めの小川高校では赴任当初軽音楽部がなかったということですが…先生が立ち上げたのですか?

Photo尾澤:そうですね。放課後に音楽に触れられないのはさびしいと思い、学年集会で「俺はこういうのがやりたいから一緒にやらないか」と誘ったところ、15人ほど集まりました。そこで同好会から始めて、一年後に部活に昇格。今は部員が約45名おり、3年生2バンド、2年生3バンド、1年生5バンド、そして大会に向けた特別ユニットが2バンドいます。最近は志望者が増えすぎてしまったので、入部前に弾き語りの試験を全員課して、きちんと弾けて歌える生徒だけを入れています。

— 「顧問は名ばかりで練習は放任」という学校もまだまだ多いようですが、尾澤先生は生徒たちの指導に心血を注いでいらっしゃると聞きました。顧問の仕事にはどのようなものがありますか?

尾澤:まず、部の立ち上げまでが大変でした。練習場所と時間の確保ですね。我々にとっては心地よいと思っているベースやドラムの重低音も、一般の人にとっては「うるさい」と感じてしまう人もいるので…。また、バンドによって力量の差が出てしまうので、結果の出せないバンドに対してモチベーションを下げないよう努めています。付きっきりで見て指導したり…部活があると自分の仕事は後回しになりますが、完成した時の彼らをみると疲れが飛びますね。あとは一曲目のオリジナルが出来た時は喜ばしい瞬間ですね。生徒と一緒に喜びを感じることができます!また褒め殺し。の日本武道館は、自分が高校生の時にあこがれのアーティストを見た場所で教え子が演奏をしている!ということで、あの時は大きな玉ねぎの下で夢心地でした!アトラクションでは自分も演奏させて頂いて最高でした!

— それにしても武道館で演奏できるなんて、生徒たちにとっては一生の思い出ですね!

尾澤:実は、武道館のステージを見ていた人たちから反響があって、岩手など各地から小川高校宛てに手紙が届きました。生徒たち、特に褒め殺し。には「固定の世代だけをターゲットに、似たり寄ったりの曲だけでなく、どの世代にも受け入れられる曲を作り、多くの人を感動させなさい」ということを常々話しています。ライブハウスで、目の前にいる内輪の人たちだけでなく、ホール全体を巻き込んで感動させられるものを作れれば、その感動は必ず自分に返ってきます!

 

Photoインタビュー中、職員室にはJYOJI-ROCK決勝進出の2年生男子リスとバンドや、小川高校の看板褒め殺し。など、部員が続々とやってきます。そしてこの日は前述の特別ユニット2組の練習日ということで、3階の視聴覚室に移動し、練習風景を取材させていただくことにしました。

午後4時半。練習は視聴覚室の一部屋と、クーラーのない狭い機材置場の計二部屋で、二バンドが練習。互いの部屋の音も漏れ、決して恵まれた環境とは言えませんが、生徒たちは皆真剣に、かつ楽しそうに練習に打ち込んでいます。尾澤先生もマイクを握って個々にアドバイスをしたり、欠席した生徒に代わって自らドラムを叩いたり、常に生徒目線で指導していました。

そんな尾澤先生について、付き合いも長い2、3年生の部員の皆さんはどのような印象を持っているのでしょうか?

褒め殺し。でベースを務める稲田春香さん(3年)

最初の印象は「なんだあの怖いおじさんは」という感じでした(笑) 実際指導を受けてみると、厳しくもあり温かくもあり。時々衝突することもありますが、じっくり話し合い、涙したことも。一人ひとりに違うアドバイスをくれるので、ちゃんと生徒個々人を見てくれているなと感じます。先生、いつもありがとうございます!!

◆部長の松野晃知君(2年)

第一印象はめっちゃ怖かったですね。でも話してくれるうちに、だんだん会話にジョークが混じってきて…まぁ空気は固まりますが、個人的にはおやじギャグ?嫌いじゃないです(笑)。先生は歌もうまいしギターやベースも弾けるし…安心できる存在です。先生、これからもよろしくお願いします!

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Photo午後6時。1階の書道室では1年生部員総勢20名が、ヘッドホンアンプを使ってバンドごとに地道に練習をしていました。大部屋での音を出せない練習は、野球部で言うところの「1年生の球拾い」のよう。こちらも尾澤先生が各バンドを回って構えやリズムなどをレクチャーしています。

尾澤先生によると、ヘッドホンアンプで連結してバンド練習をする前に、メトロノームとチューナーを必ず使用して個人練習させるそうです。リズム感とチューニングという基礎部分を1年生のうちにしっかり鍛えることで、2年生からの本格的な演奏が実現できるのです。1年生たちはそんな尾澤先生の指導をどう受け止めているのでしょうか。男女一人ずつに1年生を代表して話をうかがいました。

◆佐藤拓未君(1年・Drums)
僕は中学の同級生に誘われて軽音楽部を志望しました。弾き語り試験があると知って、1日2時間必死で練習しましたね。先生の第一印象は、やはり怖そうだなぁと…実際は、もちろん厳しい所もありますが、音楽のことをすごく知っていて、色んなことを親身に教えてくれます。先生、これからもお世話になります。でもギャグはリアクションに困るので控えめにしてください。

◆内田玲花さん(1年・Keyboard)
私は中学からドラムやギターをやっていて、小川高校の軽音は有名だったので、軽音に入るために小川高校を受験しました。入部後は尾澤先生の勧めでキーボード&ボーカルに転向しましたが、最近はメンバーと音も合うようになり、やっていてすっごい楽しいです!先生の印象は…第一印象は怖ぇ~と(笑)でも、話を聞くと音楽に真剣に取り組んでいて、生徒に本気で向き合ってくれて、いい意味で手加減しない。先生に言われた「褒め殺し。を目指せ、そして越えろ!」という言葉を胸に、3年間頑張ります!

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Photoそしてほとんどの生徒が帰った後…ついに尾澤先生のバンドが始動!文化祭プロジェクトとして、1年生から3年生までのセレクトメンバーに加え、尾澤先生自らギターボーカルとして出演し、Eric Claptonをカバー。先ほどインタビューに答えてくれた佐藤君もドラムを叩いています。…午後7時、尾澤先生の「レイラ~~」が視聴覚室に響き渡ります。

— 指導に際して心がけていることはありますか?

尾澤:生徒達には「ならず者」でなく認められる活動をしてほしいと思います。短い期間にしっかり形にさせたいので、基礎トレーニングやバンドとしてどう時間を使うかといったことを重視しています。また、大会用の特別ユニットでは私が組んでいますが、学年をバラバラにして、下級生が上級生から曲作りや練習姿勢などを学べるようにしていますし、「選抜」によって運動部のように競争させて、個々の演奏技術を高めたいと考えています。

— 顧問として、小川高校軽音楽部の今後の目標を教えてください。

Photo尾澤:どのバンドも同じレベルになるよう、底上げをして行きたいですね。そのためには1年生の時の指導がとても大事になってくると思います。そして、オリジナルとコピーを織り交ぜること。オリジナルだけだとどうしても自分たちの演奏レベルにとどまってしまうので、コピー曲も織り交ぜて違う要素を取り入れ、技術を高めていきたいと考えています。さまざまなジャンルを取り入れて幅広いミュージシャンになってほしいですね。

— 最後に、BEEAST読者へメッセージをお願いします!

尾澤:どんな動機でも、「音楽をやりたい」「音楽に携わりたい」と思ったら、ためらわずにギターを持ち、ドラムを叩き、まずはやってみましょう。諦めずにしっかりと努力して、また仲間を大事にしながら自分の可能性を信じてやっていけば、必ずいい思いができます!

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【取材協力】
東京都立小川高等学校
http://www.ogawa-h.metro.tokyo.jp/


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http://www.beeast69.com/category/serial/sociology


 
 
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