演奏

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TEXT:八神灰児

Photo街並みはすっかりクリスマスの飾りつけをまとった2013年12月21日のこと。ここ日本武道館には彼らを待ちに待ち続けたファンの熱気と歓声が、場外と言わず館内にと言わずあふれかえっていた。彼らとは、言わずと知れた日本を代表するロックバンドのひとつ、SIAM SHADEだ。『SIAM SHADE LIVE TOUR 2013 HEART OF ROCK 7』と銘打った今回のツアーは、メンバーの一人と言われる彼らの恩人、元チーフマネージャーであった中村新一氏の七回忌をきっかけとして、3度目の再集結を叶えたものだ。七回忌にちなんで、全国各地にて計7本の公演が行われた。
 
その最終日の地に選ばれたのは、かつて彼らが解散ライブを行った、思い入れも深いに違いない日本武道館だ。この取材のために大阪より足を運んだ自分は随分と早めに現場入りしたつもりだったが、すでに日本武道館の周辺はファン達の姿で埋め尽くされていた。そしてその中には関西にて知った顔も多数伺うことができ、なぜだかすごく嬉しい気持ちになった。
 
SIAM SHADEは1995年にメジャーデビューし、数々のヒットを飛ばすも惜しまれつつ2002年に解散。その後2007年に元チーフマネージャー中村新一氏逝去のため、「一夜限りの再結成」として追悼の意味を込めた武道館ライブを決行。2011年には震災復興支援のため、16年前メジャーデビューを果たした日と同日に合わせ、さいたまスーパーアリーナにてチャリティーライブを行った。こうして一時的な再結成をしてきた彼らSIAM SHADEであったが、今回は一夜限りではなく7本のツアーとして、本格的な活動再開を果たした。前述した故人の七回忌というきっかけを軸に、今だからこそ奏でられる新たなる楽曲を引っ提げて。
 
SIAM SHADE メンバー:
栄喜(Vocal)、KAZUMA(Guitar & Vocal)、DAITA(Guitar)、NATCHIN(Bass)、淳士(Drums)
 

開場とともにあふれかえるフロア。オーディエンスは今か今かと会場の温度を高めていく。アリーナがステージを包囲するような日本武道館ならではの客席配置だからこそ、むせ返るほどの熱気を帯びていく様子が顕著に伝わってくる。今か今かと無言のプレッシャーを互いに高めあっているかのようだ。
 
それぞれがSIAM SHADEへの思いを確認しあう最中、いよいよ客電が落ちファンには馴染みのSE「LIGHT FOR CLOSED YOUR EYES」が流れ出す。この曲は1993年に発表したデモCDに収録のインストナンバーだ。SEが流れるとすぐ、武道館ステージ下手側よりKAZUMANATCHIN淳士DAITA栄喜の順にメンバーが登場する。武道館を揺らす程の拍手と歓声があがり、メンバーはその声援に答えるかのように高々と手を上げ、そしてオーディエンスを煽りながら自らのポジションへ。淳士がスタンバイを完了し、ボディランゲージで客席へと煽りをかますとともに、ついに!SIAM SHADEのサウンドとファンの声援との呼応が始まる!
 
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オープニングナンバーは今ツアーにてほぼ不動とも言える「NO CONTROL」。プログレサウンドが会場中に響き渡り、先鋭的なDAITAのギターリフが非常にカッコ良くまさに開幕に相応しいナンバーだ。イントロが鳴り出した時の会場のどよめきと歓声といったら筆舌に尽くしがたい迫力だ!これほどにSIAM SHADEを待ちわびていたのかと、会場にいた誰もがその波動に鳥肌を立てたことだろう。
 
間髪入れずに届けられる続く2曲目はNATCHINによるタイトルコールからの「Imagination」!栄喜の響きある歌声が素晴らしく、DAITAによるギターソロは速弾き全開で申し分ない。まさにSIAM SHADEならではの疾走感に溢れるサウンドが会場いっぱいに届けられる。
 
本日最初のMCにて、栄喜は「一言…言っていいすか」と深刻な面持ち!?かと思えばすかさず「超最高っす!超愛してます!」とオーディエンスへ思いを伝える。「今日は本当の意味であの頃の忘れ物を取りに来たっていうか…あの頃は楽屋もバラバラでギクシャクしてたんだけど(笑)」と彼なりの茶目っけで会場を沸かせてくれる。「今夜はこれぞSIAM SHADEっていうもの見せるから。みんなも6人目のメンバーとして頼むぞ!」と声高に告げると、その真意はサウンドで伝えるとばかりに「Why not?」の演奏へ。さらに「TIME’S」、「CALLING」と珠玉の選曲が続く。
 
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2度目のMCでは「楽しい?それが一番!」と、誰より楽しそうに客席へと自分へと問いかけるかのような栄喜の声色が印象的。興奮状態が続いたまま、SIAM SHADEが誇る華麗なるロックナンバーが、ロックの聖地とも称される日本武道館に次々と響き渡る。レザー光線や、鉄塔の骨組みのようなフレーム型の照明設備といった大舞台ならではの演出も醍醐味だ。固定式ではなく吊り下げ式で用意され曲ごとに可動できる照明により、様々な表情を見せるライティングや舞台効果が実現。耳からだけでなく視界からでさえどっぷりとSIAM SHADEに魅了されていく。
 
ライブ中盤、演奏陣4人だけによる「Instrumental Songs」が繰り広げられる。淳士のドラムソロでは場内の照明が真っ暗に落とされた中、彼の持つ光るスティックでのドラムプレイに合わせてドラムセットが色鮮やかに明滅し、オーディエンスを楽しませる。
 
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この日はファイナルということもあってか様々な特殊効果にも力が注がれている。「Shout out」では、曲冒頭のアクセントに合わせてステージ最前にいくつもの火柱が立ち上る!メンバー達自身も驚くほどの音玉という特効が鳴り響いた「PRAYER」と続き、怒涛のテンションを会場に集う全てのファンと共に巻きあげながら「D.Z.I.」、「GET A LIFE」というこれぞまたSIAM SHADEという巧みな変拍子を存分に活かした客席とのコール&レスポンスがたまらない選曲。
 
その勢いを彼らも大好きなプロレスに例えてみるとするならば、スワンダイブ式のドロップキックを胸元へお見舞いし、宙返りよろしくの着地から間髪いれずにラリアット&フォールというような、勝利へと畳みかける連続技。そんな必勝ハードナンバーの畳みかけで武道館中の頭を大いに振らせ、拳を振り上げさせ、存分に叫ばせる。これぞSIAM SHADEという渾身のライブパフォーマンスは、本編の最後まで緩まることはなかった。
 
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このファイナルにおいて髪をバッサリと切りイメチェンしたNATCHIN栄喜が指差し、両手で大きく丸を作りながら「イケてるでしょ?」と客席にアピールしながらステージを降りていく。全てのメンバーが会場を後にするや否やなり響くアンコールの大合唱。これで最後かも知れないという思いが、否が応にもそのボリュームを上げていく。
 
鳴り止むことのないアンコールに導かれ、それぞれに今回のツアーTシャツに着替えてステージへと再登場するSIAM SHADEメンバー。白銀のテープが打ち出されると、本ツアーに向けて12年ぶりに制作された新曲「Still We Go」から演奏再開!続いて届けられたのは、知る人ぞ知る彼らのキラーチューン「1/3の純情な感情」。アニメ「るろうに剣心」の主題歌として注目を浴び、名実ともに彼らを全国区へと押し上げた名盤だ。さらに「SIAM SHADEは明るく、みんなに希望を与えるバンドでありたい」と語ったMCを体現してみせるかのように「DREAMS」を満杯の武道館に届ける。
 
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続くダブルアンコールではデビュー曲の「RAIN」を演奏。KAZUMAがワンコーラス目を流麗に歌いあげ、会場を沸かせる!ラストナンバーは「DON’T TELL LIES」。客席の全てが拳をかざし幾度となく「DON’T TELL LIES」と連呼し呼応する!NATCHIN淳士が自らのTシャツを脱ぎ客席へと投げ込む。KAZUMADAITAも終演を惜しむかのように何枚も何枚もピックを客席へと投げ込む。
 
幾度となく甦り、命の炎を燃やすフェニックスの如く、完全燃焼を果たした彼ら。最後に「ツアー7本、ありがとうございましたー!(中村新一さんも喜んでいると思います。僕らの想い、みんなの想いが伝わったと思います。本当にありがとうー!」と栄喜がコメントすると、恒例の「1、2、3、蛇ー!」の締めくくりをもって、実に12年ぶりのツアーのファイナルは大団円。12年前から色褪せぬままのSIAM SHADEとファンからの愛情が日本武道館を包み込んだ。
 
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武道館ファイナル終演後から今日に至るまで、未だ今後の活動についての発表はない。しかし、本ステージの取材を経て、直に肌で感じた衝動から、筆者はこう確信している。きっと彼らはまた、SIAM SHADEを愛する全てのオーディエンスを「せつなさよりも遠くへ」連れ去ってくれるに違いない、と。いつの日にか、本ライブで出会うことのできたこの激情に再会できるその日を信じて。
 

◆セットリスト
M01. NO CONTROL
M02. Imagination
M03. Why not?
M04. TIME’S
M05. CALLING
M06. 素顔のままで
M07. Grayish Wing
M08. 今はただ…
M09. Life
M10. Instrumental Songs(Solomon’s seal – Triptych – Virtuoso – 淳士Drum SOLO -Solomon’s seal)
M11. Shout out
M12. LOVESICK ~ You Don’t Know ~
M13. PRIDE
M14. PRAYER
M15. Dear…
M16. D.Z.I
M17. GET A LIFE
-encore 1-
M18. Still We Go
M19. 1/3の純情な感情
M20. DREAMS
-encore 2-
M21. RAIN
M22. DON’T TELL LIES
◆SIAM SHADE 公式サイト
http://siamshade.jp/
 
◆SIAM SHADE 公式facebookページ
https://www.facebook.com/SIAMSHADEOfficial
 
◆インフォメーション
SIAM SHADE – HEART OF ROCK 7 GOODS –
オンラインショップにて販売スタート!
http://www.kurosawagakki.com/siamshade/hor7.html
 
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