演奏

 
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TEXT:桂伸也

 
ジャパニーズメタルというムーヴメントがロック界を賑わせた80年代。そのサウンドはワイルドでハードなサウンドの中にメロディアスな歌がカラーを印象づけるという、このシーン特有のものだった。しかし80年代後半、名古屋から全く違うスタイルで日本を震撼させた強力なヘヴィメタルバンドが登場した。OUTRAGEだ。
 
ジャパニーズメタルの中ではその独自のサウンドで大きな注目を集めながら、途中ボーカリストの橋本直樹がバンドを一時離脱、しかし現在は復帰し、再びヘヴィメタルの最前線で不動の4人による活動を続けている。
 
今回は、彼らのニューアルバム『OUTRAGED』の発売を記念しておこなわれたライブツアー『OUTRAGE JAPAN TOUR 2013』の、東京公演の模様をレポートする。先日『Editor’s Note…PASSION Mind9(桂伸也)』にも記した、総合格闘技団体DEEPとのコラボレーション『DEEP LOUD IMPACT ~ANNIHILATE! BEYOND~』においても大きな役割を果たしたOUTRAGE。彼らはこの日も、自身のツアーのなかでこのイヴェントの続編ともいうべきスペシャルイヴェントとしてステージを披露した。今回は彼らのステージの模様を、このコラボレーションと合わせてお送りしよう。
 

 
◆メンバーリスト:
橋本直樹(以下、橋本 :Vocal)、阿部洋介(以下、阿部 :Guitar)、安井義博(以下、安井 :Bass)、丹下眞也(以下、丹下 :Drums)

◆ゲスト:
田中詩織(Viola)、井上真那美(Cello)

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この日、ディファ有明のフロアには四角いリングが設置され、ロックのライヴと総合格闘技のファイトという二つの楽しみを味わえるという特別な催しが行われた。オープニングアクトのANOTHER STREAMのステージが終わると、フロアに設置されたリングではファイトが行われ、さらにDEEP MACS HEADBANGERSがプレイし、その後再びファイトと、ステージとファイトを交互に披露。イヴェントは先日行われた『DEEP LOUD IMPACT ~ANNIHILATE! BEYOND~』のプロデューサーであるDEEP T.M.がこの場も取り仕切っていた。さらに勝者へのトロフィー授与は丹下が行うという徹底ぶり。
 
単にエンターテインメントとして共通するものがある、という先日のイヴェントで受けた所感以上に、実際にファイトを目前にすると、選手達の戦う姿から垣間見られるアーティスティックな様子により、リングの上から注意をそらせられなくなってしまう。勝つために燃やす闘志と、反して勝つために巡らせるクールな策略。さらには反則を急所に受けながら、急速に落ちていくモチベーションと必死に戦う様子など、彼らもアーティストの一人であると実感られた。「選手たちに拍手をお願いいたします!」トロフィーの授与を行った丹下が、締めに言葉で観衆に語り掛け、多くの賞賛を浴びさせた。
 
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一通りの対戦カードが終了すると、DEEP T.M.が叫んだ。「さあ、大きな声で呼び込みませんか?King of Garage Metal!」観衆とともにその呼び込みを行うと、フロアは暗転しSEとしてLed Zeppelinの「Immigrant Song(移民の歌)」が流れはじめた。それに続いてOUTRAGEのメンバーがステージに一人、二人と現れ始めた。丹下はステージに現れた段階ですでに上半身裸となっており、やる気十分な様子を見せつけていた。
 
そして阿部のギターと安井のベースがしっとりと絡むイントロでステージはスタートした。ニューアルバムのオープニングナンバー「LOST」だ。丹下の打ち鳴らす激しいスネアの音に追従して阿部が猛烈にリフを刻む。「あの音が今ここに」ともいえる、OUTRAGEならではのサウンドがそこに展開された。ゆるぎない丹下が作り出す激しいリズム、その彼にガッチリと喰らいつき、先陣を切って観衆をあおる安井、どちらかというとルーズで長めの音符を刻むようなギターリフが、かえってサウンドの切れ味を増している、そんなイメージのある阿部のギター。
 
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そしてステージの中央で両足を踏ん張り、全身全霊を傾け一つ一つの言葉を発する橋本。そんな彼のパフォーマンスからは、カッコよく見せようという様子は全く見えない。彼の全てを込めた一声を出すことだけが、ステージでの彼のミッション。不変の4人のメンバーに支えられ、その声がしっかりとフロアに伝えられるのだから、フロアが盛り上がらぬはずがない。オープニングからいきなりモッシュとヘッドバンギングの嵐をフロアに巻き起こした。
 
「みんなどうもありがとう!2時間、笑顔でぶっ飛ばしていこうぜ!!」丹下のあおりで、さらにフロアの観衆は大きな声を上げた。3曲目の「UNDER CONTROL」は観衆の動きにダイヴが加わり、フロアでその「OUTRAGE=憤(いきどお)り、非道」ぶりはさらに激しさを増していった。
 
一心不乱に歌のメロディを吐き出す橋本。その傍(かたわ)らで気合十分の表情をたたえ、観衆を猛烈にあおる阿部安井。観衆をあおるのはボーカリストの必要な要素ともいえるが、その定説的なものが彼には不要なくらい、ステージで懸命に歌っている姿が強烈なインパクトを見るものに与えた。「さっきの試合、すごかったな!?その後のインターバルが俺らって、どういうこと?」一方で観衆を笑わせながら余裕すら見せた彼のMCは、さりげなく次に巻き起こる波動を観衆に予感させていた。
 
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この日のセットは、「JUST BELIEVE IN ME」「VEILED SKY」のような以前から親しまれているナンバーと、「NEW HORIZON」「SIX MILLION LIGHT YEARS」といったニューアルバムの楽曲を降り混ぜた構成。パワー感抜群のフレッシュな後者の楽曲が、完成されたノリを持つ前者の楽曲と合わさることにより何倍も映えて聴こえる。大きな会場に目いっぱい響く丹下のバスドラの音色、そのリズムに追従して強烈なうねりを生み出す安井、阿部。そのノリだけですでにフロアの観衆はバンドの叩き出すグルーヴに従うだけ。時が過ぎる毎に、そのビートに込めた人々の思いはさらに大きくなり、「HOW BAD?」のブレイクで、橋本が叫ぶ強烈な一言により一気に爆発した。「Mother Fucker!」
 
ステージも終盤に向かうところで、彼らの代表曲の一つである「BLIND TO REALITY」をしっかりと決めたあとは、丹下の「今日は有明スペシャルがあります!」というMCとともにゲストが呼び込まれた。Viola奏者の田中詩織と、Cello奏者の井上真那美。ニューアルバムに収録されたバラード「FAR AWAY」のプレイの為の趣向だが、フレンドリーな丹下の呼び込みにフロアからも突然「シ、オ、リ!」「マ、ナ、ミ!」と熱烈なコールが飛び交った。
 
クラッシック奏者の2人は、見慣れないその光景に唖然としながらも、その暖かさすら感じる好意に好感を覚え、OUTRAGEとともに情感豊かなメロディを奏でた。このハーモニーの中でも映えて聴こえる橋本のメロディには、やはり彼のヴォーカリストとしてのただならぬセンスが感じられた。また、常に土台役に徹していた安井がここでは聴かせどころたっぷりのベースソロを披露、熱気が充満した会場に程よいインターバルを与えていた。
 
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ステージもクライマックスに差し掛かった。「次は皆で歌える曲だ!歌わなかったら、永久に(曲を)続けるからな!」という橋本のMCがハッパを掛け、サビのコーラスに強烈な歓声がフロアから押し寄せた「RISE」から「YOU SUCK」へ。先程プレイされた「HOW BAD?」のサビにある「Mother Fucker!」という強烈な言葉しかり、この曲のサビで叫ばれる「You Suck!」という言葉しかり、汚く荒々しい言葉がOUTRAGEにはよく似合う。これぞ、DEEP.T.M.が最初に叫んだ「King of Garage Metal」という称号に相応しいバンドであることの証明だ。
 
そしてエコーの効いた阿部のギターリフがエンディングへの前奏を奏でる。そのクライマックスに相応しいナンバー「MEGALOMANIA」だ。ギリギリのところでメロディをたどる橋本の声が、観衆の暴走心をさらに煽る。橋本は「もう何かにかまっていられない」というぐらいに叫びに没頭している。が、逆に見れば「かまう必要はない」くらいに会場は一つになっていた。「Mania, megalomania!」世の矛盾と不条理に対して憤りをぶつけ、その崩れる様を見て笑う。観衆とフロアがその曲に没頭している様には、そんな光景すら感じられた。そしてエンディング。「Thank You! みんなありがとう!元気でな!」橋本の捨て台詞のような礼と共に、彼らはステージを降りた。
 
OUTRAGE!」「OUTRAGE!」彼らを呼ぶ叫び声が何度も会場に響いた。その叫びに答え、二度に渡りステージに登場した彼ら。二度目には、会場に刃物を研ぐようなSE音が繰り返し響いた。やがてそこにストリングスのようなハーモニーが重なる。その聴き覚えのあるサウンドに観衆はまた大きな声を上げた。彼らの代表曲の一つであり、ここぞというクライマックスで必ずプレイされるナンバー「MY FINAL DAY」だ。
 
冒頭の「My Final Day! My Final Day!」という繰り返しのフレーズに続いて入る「Is Bound To Come My Way!」という叫び。この一声で会場は一つになった。狂ったように暴れる観衆たち。それを導くかのように渾身の力で歌い込んだ橋本。曲はさらに「MADNESS」へ続き、いよいよ彼らはフィニッシュを決めた。「みんな今日はありがとう!またね」そう言って彼は、フロアに飛び込みクラウドサーフィンを観衆とともに楽しんだ。そのひと言と彼のそんな姿は、また次に彼らに会えるのがそう遠い日ではないことを予感させていた。
 



◆【総合格闘技団体DEEP】
スペシャル・コラボレート・ファイト

1回戦:青山祐大VS岡田孔明
2回戦:チャップリン木山VS劉官保
3回戦:久保輝彦VS高橋弘

◆ライヴ情報
ANTHEM 2013~Official Return Tour(ゲスト)
2013年07月21日(日) 【愛 知】名古屋Electric Lady Land

◆公式サイト
アーティストオフィシャルサイト
http://www.outrage-jp.com/
Thunderball667オフィシャルサイト
http://www.thunderball667.jp/
DEEPオフィシャルサイト
http://www.deep2001.com/
ANOTHER STREAMオフィシャルサイト
http://www.anotherstream.info/
田中詩織オフィシャルサイト
http://www.shioritanaka.com/
井上真那美オフィシャルブログ
http://manamivc.exblog.jp/
 
◆セットリスト
 
1)DEEP MACS HEADBANGERS
M01. no ordinary love(Instrumental)
M02. ROKEN
M03. are you talking to me?
M04. HERMIT
 
2)OUTRAGE
M01. LOST
M02. GIRP ON CHAINS
M03. UNDER CONTROL
M04. DEATH TRAP
M05. JUST BELIEVE IN ME
M06. VEILED SKY
M07. NEW HORIZON(I FOUND YOU)
M08. MIDNITE CARNIVAL
M09. SIX MILLION LIGHT YEARS
M10. SUCK IT
M11. UNTIL YOU ARE DEAD
M12. TERRORIZER
M13. HOW BAD?
M14. BLIND TO REALITY
M15. FAR AWAY
M16. RISE
M17. YOU SUCK
M18. MEGALOMANIA
-encore-
EN1. STEP ON IT
-2nd encore-
EN2. MY FINAL DAY
EN3. MADNESS

 
改めて彼らのステージを見たときに感じたのは、「OUTRAGE=憤(いきどお)り」という言葉の意味のとおり、何かに向けた強い感情を爆発させるような光景だった。衝動的な感情の赴(おもむ)くがままに、フロアで暴れる人々。その根源となるのが、彼らの生み出す衝動的なサウンド。飾りなど一切排除した素朴な音だが、橋本のボーカル、阿部のギター、安井のベース、そして丹下のドラムがストレートに聴くものの胸に突き刺さってくる。そこには良し悪しというモノサシなど存在しない。気持ちに強く作用するか否か?それだけだ。
 
さらに今回のイヴェントでは、前回のDEEP MACS HEADBANGERSのイヴェントがさらにパワーアップした内容となり、コラボレーションとしての意味合いがさらに強まった。BGMなどが一切流れない静かな会場の中で、ただ相手を倒すことに集中し、闘志をむき出しにした格闘家たち。その気迫に押され、思わず声を張り上げ、選手たちを鼓舞した観衆。
 
何かに気持ちを引かれ、自分の感情をあらわにするその様には、やはりエンターテインメントとしての共通点が音楽と格闘技にはある。そのことがより明確に表されたイヴェントだった。バンドとしてのスタイルは完成された感のあるベテランへヴィメタルグループOUTRAGEだが、この日行われた新鮮な試みを観衆とともに楽しんだことで、また新しいエネルギーが彼らに注がれたようにも見える。さあ、彼らの次はどのような動きを見せてくれるだろうか?常に日本が世界に誇る秘密兵器、といっても過言ではない彼らだけに、今後の活躍も見逃せない。
 


PhotoOUTRAGE 『OUTRAGED』(-DELUXE EDITION-)
発売中
UICE-1206/3,000円(税込)
収録曲:
CD
M01. LOST
M02. GRIP ON CHAINS
M03. NEW HORIZON(I FOUND YOU)
M04. SUCK IT
M05. SIX MILLION LIGHT YEARS
M06. FREYA
M07. THIS IS WAR
M08. HEY! I’VE GOT A FEELING
M09. IN THE AIR
M10. FAR AWAY
DVD
M01. LOST (MUSIC VIDEO)
M02. YOU SUCK (Live at THE ROCK MAY KAN -KING OF GARAGE METAL RETURNS-)
M03. WORLD SLOW DOWN (Live at THE ROCK MAY KAN -KING OF GARAGE METAL RETURNS-)
M04. STEP ON IT (Live at THE ROCK MAY KAN -KING OF GARAGE METAL RETURNS-)
M05. RISE (Live at LOUD PARK 07)



PhotoOUTRAGE 『OUTRAGED』(通常版)
発売中
UICE-1206/3,000円(税込)
収録曲:
M01. LOST
M02. GRIP ON CHAINS
M03. NEW HORIZON(I FOUND YOU)
M04. SUCK IT
M05. SIX MILLION LIGHT YEARS
M06. FREYA
M07. THIS IS WAR
M08. HEY! I’VE GOT A FEELING
M09. IN THE AIR
M10. FAR AWAY


 

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