特集

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TEXT & PHOTO:桂伸也
格闘技と音楽の融合、その一幕

「ロックと生きる」BEEAST編集部員による全力特集「Editor’s Note…PASSION」。前回に引き続き、第9回は桂がお届けする。様々なエンターテインメントがあふれかえり、さらに他分野との融合が頻繁に行われる今日。第8回『Editor’s Note…PASSION Mind8(桂伸也)』では音楽というくくりの中で、異なるジャンルとの融合や斬新なシステムへのアプローチという点でロックの新たな道を探る一幕を追ったが、今回は音楽と格闘技という、エンターテインメントとしてまったく異なるカテゴライズの融合への、試みの一幕を探ってみた。
 
ロックと格闘技、その接点とは?読者の方はどう考えられるだろうか?意外にもこの二つを細かく見ると、様々な点で共通する部分があることが分かる。格闘技といえばプロレス、かつてレスラーのBruiser Brodyがリングに登場する際に使用した曲がLed Zeppelinの「移民の歌」であることは余りにも有名で、同じように例えばリングへの登場でロックの名曲が使用される例は多い。そんな例を始め、様々なシーンで格闘技の世界でもロックに多くの接点は存在する。また、特にハードロックやヘヴィメタル等のアーティストには格闘技ファンが多いことも、相互に何らかの接点が存在を裏付ける要因と見ることができるだろう。
 
その視点から今回注目したのは、『DEEP LOUD IMPACT ~ANNIHILATE! BEYOND~』というイベントだ。これは総合格闘技団体DEEPとともにロックの一流ベテランプレイヤーが集い、格闘技との融合を目指して計画された催事だ。このイベントに先立って行われた記者会見ではイベントの経緯と、イベントや今後に向けた意気込み等が語られた。今回はこの内容からロックと格闘技という二つのものが接近したきっかけと、その接近がもたらす可能性、そこに掛けた人々の思い等を探ってみた。
 

 
hana
 
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1.記者会見レポート(2013年2月22日 @新宿・DEEP道場)

 
以前、『【ピックアップ!】「DEEP LOUD IMPACT」 発表記者会見 速報』でも報じたが、イベントに先立ち、都内にあるDEEP道場において、『DEEP LOUD IMPACT,OUTRAGE New Album&JAPAN TOUR2013 記者会見』が開かれた。この日記者会見に出席したのは以下の通り。
 
◆出席者:(画像左より)
小崎滋之(株式会社 ライブパワー(OUTRAGEマネジメント)代表取締役社長 :以下、小崎)、佐伯 繁(DEEP事務局代表:以下、佐伯)、長谷川匡紀(株式会社 公武堂 代表:以下、長谷川

DEEP MACS HEADBANGERS:
DEEP T.M.(DEEP 公式ブログ『The wild side of the DEEP』プロデューサー :Side Guitar)、今成正和(DEEP所属 :以下、今成 :Vocal)、鈴木慎一PULLING TEETH :以下、鈴木 :Guitar)、TAKE-SHITCOCOBAT :Bass)、丹下眞也OUTRAGE :以下、丹下 :Drums)

 
最初に、今回のイベントの概要が、イベント主催である佐伯、小崎より説明された。

「2年前、『ANNIHILATE!』という、格闘技と音楽のコラボレーション企画をSHIBUYA-AXにて行う予定としておりましたが、震災の影響により中止ということで非常に残念な結果となりました。しかし、2年の沈黙を破り再びコラボイベントが立ち上がりました。本イベントの担当プロデューサーとしてDEEPの公式ブログを担当しているDEEP T.M.がこのイベントを取り仕切ります。
 
イベントの概要としては、格闘技家とロックバンドのプレイヤー、そしてDEEP T.M.がバンドDEEP MACS HEADBANGERSを結成、コラボレーションとして書き下ろし曲をプレイするというもの。コラボの目玉としてヴォーカルを格闘家の今成が担当します。この時点でまだ想像がつかないイベントであり、それがブログ5周年を記念したイベントでもあるということで、非常に楽しみな企画となっております。
 
ちなみに今回のイベント『DEEP LOUD IMPACT ~ANNIHILATE! BEYOND~』というタイトルは、DEEPの試合イベントでタイトルに必ず付けられている「DEEP IMPACT」というキーワードが語源となっております。『ANNIHILATE! BEYOND』に関しては、前回実施される予定であったイベントの続編的な意味合いでつけられました。」

 

DEEP T.M
 
今年で5周年を迎えたDEEP公式ブログ『The Wild Side of The DEEP』の著者。特にDEEP代表の佐伯との名物企画『DEEP大会総括』で軽快に語られる今後の対戦カードや展望の説明は、ファンや格闘技関係者だけでなく選手からも非常に注目されている。
 
DEEPに参戦する日本人選手のみならず、海外選手や海外スポンサーのマネジメント業から佐伯の健康管理までも担う、佐伯の右腕的存在。アメリカ女子総合格闘技大会『INVICTA FC』唯一の日本人スタッフとしても活躍している。
 
DEEPとロックのコラボレーションの発起人、今回のバンド企画の発案者であり、メンバーの今成、鈴木、TAKE-SHIT、丹下を集めた張本人でもある。ロンドン留学時に格闘技アパレルメーカーのHELMET GRINDRE&HEADBANGERSのオーナーであるダニー氏とハードコアバンドを組んでいた。

 
今成正和
 
ブラジリアン柔術黒帯。元DEEPフェザー級・バンタム級王者。元CAGE RAGE世界フェザー縁王者。今年でDEEPに参戦して10周年となる。足関節技、特にヒールホールドを得意とし「足関十段」の異名を持つ。
 
その独特の風貌とトリッキーなファイトスタイル、極めの強さと常識外れの足関節技で人気を得ている。現在ロンドンの格闘技アバレルメーカーであるHELMET GRINDRE&HEADBANGERSからサポートを受けているが、オーナーのダニー氏はイギリスの格闘技イベントCAGE RAGEでの今成の奇妙かつスリリングな試合を会場で目の当たりにしたのがきっかけで格闘技アバレルを始めたといわれているほどに、今成とのつながりが強い。
 
ロックが好きで意気投合したDEEP T.M.とバンドを組もうと約束していたのがきっかけで今回のバンド結成に到る。
DEEP MACS HEADBANGERSの面々が、このプロジェクトに参加した経緯は以下の通り:
 
鈴木慎一(PULLING TEETH)
2008年に行われた様々なジャンルのバンドとのガチンコ対決企画「抜歯十番勝負」でDEEPと初のコラボレーションを行い、開演前の会場大画面にてDEEPの歴代ベストバウト(名勝負の一幕)を放送した。今回DEEP MACS HEADBANGERSでは、作曲を担当した。
 
TAKE-SHIT(COCOBAT)
自身も選手として総合格闘技やグラップリングの大会に多数参戦しており、DEEPファイターとも試合経験を持つ。必ず毎大会の会場に足を運ぶ熱狂的なDEEPサポーターでもある。ステージ衣装でHELMET GRINDRE&HEADBANGERSのコンバットパンツを愛用している。今回DEEP MACS HEADBANGERSでは、作詞を担当した。
 
丹下眞也(OUTRAGE)
2010年10月24日にJCBホールにて開催されたDEEPの50回大会記念イベント「DEEP 50 IMPACT ~10年目の奇跡~」にて、OUTRAGEとDEEPのチャンピオンによるコラポレーション楽曲「DIAL ’A’ ANNIHILATE (DEEP FIGHTERS VS OUTRAGE)」を初披露、リリースをした。2011年DEEPとOUTRAGEの合同企画 総合格闘技とヘヴィ・ロックの融合イベントとして注目を集めた『ANNIHILATE!』を企画するも、震災の影響でやむを得ず中止。その後試合のみが『ANNIHILATE杯』として行われ、その勝者へのトロフィー授与を丹下が務めた。

 
続いて今回のイベント開催の経緯とこのイベントに込めた思いを、DEEP T.M.は以下のように語った。

「今から5年前に佐伯さんより依頼を受け、ブログを始めました。ブログのタイトル『The Wild Side of The DEEP』は、LOU REEDのナンバー「Walk On the Wildside」が語源でした。それは、ブログを日々更新していく中でいろんな人に格闘技に興味を持ってもらいたいという願いが発端。その中では格闘技の本筋だけではなく、「公武道の新商品紹介」「佐伯さんのダイエット日記」「ラウンドガール紹介」等(笑)。
 
そんなユニークな内容を色々書いていましたが、その中でも私はロックがとても好きでロックバンドのこともよく盛り込んでいました。小さな頃にKISSに影響を受け、中学、高校には日本のバンドにも興味を持ちました。自分の憧れだったCOCOBATOUTRAGEなどのバンドもそのころ活発に活躍しておられました。そういう内容を日々綴ったことがロックとDEEPの一番強いつながりだったと思います。
 
月日は流れてDEEPのブログを担当しながら思ったことがあるのですが、格闘技とロックはとてもリンクしているものではないでしょうか?両方ともアンダーグラウンドな雰囲気があり、みんな知っているわけではないけどとても熱狂的なファンがいて、真剣勝負という点でもリンクしています。そんなことをブログで紹介していく中で丹下さんや鈴木さん、TAKE-SHITとも知り合うようになりました。
 
そして2年前に『ANNIHILATE!』が中止になりましたが、そのときの思いと共にブログの5周年となり何かやりたいと考えていました。そんな中、今成くんがとてもロックが好きだということを知っていたので「今成、一緒にバンドをやろうよ!」と声を掛けていたこともありました。
 
そんな中、知り合いのアパレルメーカーであるHELMETの社長のダニー氏とその話をしていたら「お前、折角そういう日本のトップミュージシャンとつながりがあるんだから、何か面白いことをやれよ!」と言われました。今回のイベントは、その一言がきっかけでした。すぐにOUTRAGEのマネジメントの小崎さんに相談するとトントン拍子に話が進んで、ようやく今回イベント開催となった次第です。」

質疑応答
 
—このバンドの中で、1人は格闘家、3人はミュージシャンというバランスを思いついたきっかけは何だったのでしょう?

 
DEEP T.M.:まあ正直なところはノリでそうなっただけなんですが(笑)。今成くんとこれをやるという話の流れになったきっかけは、ちょうどOUTRAGEのPV「Dial ‘A’ Annihilate(Deep-Fighters VS OUTRAGE)」を撮影している合間に、今成くんから「昔ベースをやっていたんですよ」という話を聞いたことが発端でした。ただ、今成くんは愛妻家で子供が3人いて、なかなか時間が取れない(笑)、家で練習もできないので「叫ぶことならできるんじゃないか?」ということで、彼がヴォーカルということになりました。
 

 
こうして今日見ていただいた雰囲気からして彼は寡黙ですが、普段からこんな感じ。格闘技界でも特に喋らない存在なんです(笑)。でも私が彼に対して強くイメージとして持っていたのは、試合に勝って一本決めたときの爆発的にウォッ!と喜ぶ姿。彼のその姿は本当にカッコイイと思っていました。普段は静かだけど、ステージ上で力を入れてがなったイメージが、今回の企画と頭の中でリンクして、この企画には彼以外を考えられなかった。彼には今年が飛躍の年になって欲しいと私は思っているし、ますます世界に羽ばたいてもらいたいと思っているんです。
 
佐伯:運がよければ音楽でもメジャーに、歌で(笑)
 
 

—既にこの時点で楽曲はそろっていると思いますが、どのようなタイプの楽曲なのでしょうか?

 
DEEP T.M.:メンバーを決めさせていただいたときに、鈴木さんにやってもらいたいと思っていました。実はPULLING TEETHの6枚目のアルバム『THRASH CATS CRISIS』というアルバムのオープニングナンバーである「REPEAT」というナンバーのPVを、DEEPの会場で流させてもらっているんですけど、その楽曲から鈴木さんに対して結構コンパクトでワッ!と来るイメージを作る方だという印象が私の頭の中にあって、今回もそのイメージで作ってもらいたいてもらいたいという頭があったので、是非お願いしたいと思い鈴木さんに作っていただきました。
 

 
鈴木:DEEP T.M.さんから依頼を受けてから、彼と今成さんと3人で吉祥寺に飲みに行ったのですが、そこで今成さんのイメージを自分の中で膨らませて「遠めに見ると体格のいい人」という印象があったので、「ヘヴィ級の人なのかな?」とイメージを感じたので、その印象から重めの曲にしてみたんです。
 
丹下:今回こうして招集を掛けられる恰好で集まってはいるものの、実はみんなもう20年来の知り合いですからね。曲を聴いたらこの鈴木くんが作った曲がまたカッコイイ。歌詞がこう沸々と湧き上がってくるようなサウンドというか。純粋にカッコイイのでまたこれを録音するのも楽しみなんです。
 
DEEP T.M.:今成、歌はどうなの?
 
今成:自分は、歌は歌ったことがないんです、カラオケも含めて(笑)
 
佐伯:そういうタイプだよね?(笑)
 
 

—今回のイベントや楽曲に関して、バンドのパフォーマンスに何か格闘技的な要素を加えるような趣向は考えられているのでしょうか?

 
DEEP T.M.:歌詞については、今成くんをイメージするようなキーワードをいくつか鈴木さんやTAKE-SHITに伝えて、その中でイメージを膨らませて作ってもらいました。だからこの中で格闘技というイメージを大きく曲作りに反映できていればと思います。TAKE-SHITについては彼自身が格闘家でもあり、DEEPの会場にも欠かさず来てもらっていて非常に詳しいし、格闘技談義もよくするんです。
 
小崎:話はそれますが、OUTRAGEにも安井義博というベーシストがおり、彼は体を鍛えるのが好きなのですが、言葉は悪いけど「何の為にそんなに鍛えているんだ!?」という感じ(笑)。そうですよね、丹下さん?
 
丹下:まあ、そうですね(笑)。でもそうは言いながらも、やっぱりロックな人って強いものに憧れる傾向ってありますよね。格闘家の方の背中を見ると「カッコイイ!」と思いますし。
 

—例えば今成さんからしてみると、格闘家としては1名のみの参加となりますが、アウェイ感などの不安要素はありますか?

 
今成:いや、そんなアウェイ感、というのは特にはないですし、楽しんでやれればと思います。緊張はするかもしれませんが、まあなんとかなるんじゃないかと(笑)
 
 

—アーティスト側の立場として、今回のイベントに参加できることについて思いや意気込みを教えていただければと思います。

 
鈴木:私は20数年前にPANTERAが初来日し、川崎のCLUB CITTA’でプレイした際に見に行ったことがあったのですが、実はそのときのオープニングアクトがOUTRAGEでして、さらにその会場には今成さんやDEEP T.M.さんもいたということがつい最近分かりまして(笑)。そんなところからも、今回はとても運命を感じています。本当に楽しみです。
 
TAKE-SHIT:自分もすごく楽しみにしております。
 
丹下:私もDEEPの試合や今成さんの試合を何回も見ていますが、例えば試合に向けてプレイヤーが減量等の準備で見せるようなストイックな姿勢は、リングに立つ姿の華やかさの一方で、とてもロックな人間からすると共通するものを感じるし、美学を感じるんです。もちろん格闘家は勝つことが大前提ですが、同時にお客さんが喜ぶことも考えているし、そういう「人前で見せる」という美学という点で格闘技とロックは似ていると思っています。
 
そういう意味で今回のイベントは実際「やってみるとどうなるだろうな」という楽しみ、ワクワク感があります。また鈴木さんも言っていたけど、今このメンツでやれるということには、強く感じることがあります。若い頃ではなく、この歳になってこのメンツが集まったということに対し感じる、「何が起こるんだろう?」というワクワク感。そんな気持ちとともに、今回このイベントに望もうとしています。
 

—現時点でリリース以降のイベントはありませんが、今回はあくまでブログの5周年記念ということでのテンポラリなものなんでしょうか?それとも継続していろんなことを続けていかれる意向があるのでしょうか?

 
DEEP T.M.:当然、企画は続けていきたいと思っています。今回は記念に合わせて希望のメンバーのスケジュールを合わせていただいたこともありますし、今後はメンバーが替わったり、今成から他の格闘家に替わったりすることもあるかもしれませんが、DEEPとロックの一つの形として、続けていきたいと思っています。
 
今回は、まずは格闘家である今成がヴォーカルであることがイベントの大きな目玉ですし、まずは曲のレコーディング、リリースまでというところ。でもロックが好きな方に格闘技のことをちょっとでも知っていただけるような趣向が何かできないかと考えています。
 
佐伯:今後何か音楽が流れている中で実演や予行なんかを行うことを考えても面白いかもしれませんね。
 
長谷川:現在格闘技が冬の時代と言われていますが、音楽と融合することで新しい切り口や新たなファンに格闘技のよさを知ってもらうという意味でこの機会は重要な意味があるものだと思います。このコラボは「格闘技」という内側ではなく、外を向くという意味でドンドンやっていかないといけないと考えていますし。そういう意味で、今回のイベントがその切り込み隊長になっていくことを願っています。

 
hana
 
hana

2.『DEEP LOUD IMPACT ~ANNIHILATE! BEYOND~』(2013/4/6 @渋谷CYCLONE)

 
春の兆しが見え始めながらも、まだ若干肌寒さが残っていた4月6日。この日はあいにくの大雨に見舞われた。それでもこの日会場のフロアには、オープン前よりTシャツ1枚で気持ちを奮い立たせている猛者たちが集まっていた。ロック、ヘヴィメタル、ハードコア、そして格闘技。様々なファンの集まりではあれど、そこに特に壁が見られないまったく普通のライブハウスの模様だが、これこそがまさにこのイベントの目標、それが達成された一幕を垣間見ることができた。
 
オープン前にはステージに降ろされたスクリーンに、総合格闘技のベストバウト映像が流れると、開場には緊張した空気が漂いいよいよとばかりに観衆は皆身構えた。満を持して登場したのは、DEEP T.M.。「みなさん、こんにちは!!」その掛け声に、大きな歓声で反応する観衆。彼のオープニング宣言から、「1st fight!」のコールで告げられた1st ステージのPULLING TEETHの呼び込みにて、いよいよイベントは幕を開けた。
 

2.1 PULLING TEETH

 
◆メンバーリスト:
鈴木慎一(以下、鈴木 :Voice &Guitar)、泰治(Voice &Bass)、TERUI.JIN(Drums)
 
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登場直前のSEで、会場の荒々しい雰囲気からは不釣り合いなくらいのジャジーなビートが鳴り響いた。そして大きな歓声に迎えられ、PULLING TEETHのメンバーがステージに現れる。ステージ上で強い印象を放っていたのは、泰治が抱えた大きなウッドベース。「ハードコアなサウンドにウッドベース?」と疑問に思われる人もいるかもしれないが、スラップベース(弦を引っ張ってはじく奏法。ロカビリーでよく用いられる。)のアタックの強い音が程よい疾走感をバンドサウンドに与え、彼らの作り上げるグルーヴを形成する。そんな泰司のベースを基盤として、鈴木はステージを動き回りながら激しいパフォーマンスを繰り出し、ギターをかき鳴らした。そしてTERUI.JINはビートの重たさの部分を司り、インパクトに負けない絶対的主張を繰り出した。
 
バリエーション豊かな要素こそがPULLING TEETHの魅力。激しさのイメージが先行しそうなハードコアの中でも、その魅力は際立っている。彼らが作り出す抑揚感に踊らされフロアの観衆も徐々に体が温まり、終盤にはモッシュまで発生する始末。外の肌寒さなど感じさせない熱気を会場中に撒き散らし、このイベントの一番手として十分すぎるほどの活躍を見せた。
 

2.2 COCOBAT

 
◆メンバーリスト:
HIDEKI(Vocal)、SEIKI(Guitar)、TAKE-SHIT(Bass)、KIM(Drums)
 
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DEEP T.M.の「2nd Fight!」という掛け声と共に登場したのは、COCOBAT。ハードコア界ではすっかりベテランの域に達したバンドだけに、登場だけでフロアから大きな歓声が上がった。MCも無しに進んでいくステージ。HIDEKIの激情ヴォイスを中心とし、淡々と激しいパフォーマンスを展開しステージを進めた彼ら。小難しい理屈は不要とばかりに鳴り響くサウンドの中で、フロアの観衆も興奮の一途を辿(たど)るほかない状況だ。
 
そしてステージ後半では、彼らのステージ中では盛り上がり必至の定番である「COCOBAT CRUNCH」から「GRASSHOPPER」へ流れるセットを披露。TAKE-SHITが打ち鳴らすスラッピングのビートを中心に、怒涛のリズムが観衆に猛烈に襲い掛かり、フロアではモッシュ、ダイブの嵐が巻き起こった。格闘技に振興心の強いTAKE-SHITが中心となったバンドだけに、そのパフォーマンスにも闘争心あふれるクールさと、対照的に激情感が満載。そんな彼らのステージは、彼らがハードコアシーンの中でも群を抜いた存在であることをまざまざと見せ付けた。
 

2.3 OUTRAGE

 
◆メンバーリスト:
橋本直樹(以下、橋本 :Vocal)、安井義博(以下、安井 :Bass)、阿部洋介(以下、阿部 :Guitar)、丹下眞也(以下、丹下 :Drums)
 
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3番手は、このイベントの中でも大きな目玉の一つとして注目されたOUTRAGELed Zeppelinの「Imigrant Song」のSEで登場した彼らは、何かステージの演出を作るでもない、とてもリラックスした表情でステージに登場した。しかしその登場の様はかえって彼らの後ろに見えるすごみのようなものを強調して見せた。フロントマン橋本は髪を短くそろえイメージチェンジをはかったと語ったが、左足と左肩をしっかりと入れて歌う彼独自のステージングは健在。マイクに向かって突進するようにパフォーマンスを繰り広げた。
 
「今日は楽しんでいってくださいね!」MCで丹下が叫んだが、このときこの会場の中で、そう言った丹下の表情が一番楽しそうに見えた。DEEP T.M.が彼らの登場直前に叫んだ「King of Garage Metal」という言葉は、「ローファイで生々しい、激しいサウンドの魅力」とともに、「演者自らがサウンドを楽しめる手作りの音楽の魅力」という両方の意味を示していたのかもしれない。そんなOUTRAGEは、この日のイベントの主旨を最もしっかりと捕らえて、表現していたようにも見えた。そのサウンドには有無を言わせない説得力があり、一段とフロアの観衆を興奮させた。ラストは彼らの代表曲でもある「MY FINAL DAY」。イントロ後のブレイクの「IS BOUND TO COME MY WAY!」という詞は、ファンがここぞとばかりにバンドと共に叫び、一体となった。
 

2.4 DEEP MACS HEADBANGERS

 
◆メンバーリスト:
今成正和(以下、今成 :Vocal)、DEEP T.M.(Side Guitar)、TAKE-SHIT(Bass)、鈴木(Guitar)、TAKE-SHIT(Bass)、丹下(Drums)
 
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いよいよこの日のメインディッシュとなるDEEP MACS HEADBANGERS登場。先程までそれぞれのバンドで強力なステージを繰り広げた鈴木TAKE-SHIT丹下が、DEEP T.M.の呼び込みにより再びステージに現れた。そして最後にはこの日の主賓ともいうべき格闘家、今成が登場。少し照れくさそうな笑顔を見せていた彼の表情は、プレイ前の緊張した空気を払拭しリラックスした雰囲気をフロアにもたらしたが、プレイが始まるとその表情は格闘家の真剣な目に変わった。
 
鈴木、DEEP T.M.がユニゾンで刻むリフの中で、徐々にDEEP T.M.がフィルのフレーズを入れる。その緊張感が最大となったところでナンバー「ROKEN」をいよいよ披露。今成のヴォーカルは最初に若干固さも見られたが、フロアの観衆が興奮しモッシュやダイブを繰る返したことに対し彼も大満足し嬉しそうな表情を見せた。そして仕舞いには彼自身が自らダイブしてしまう有様。「ROKEN」に続いて「HERMIT」と、この日は2曲を披露したが、観衆は満足せずアンコールまでせがみ、バンドは2度目の「ROKEN」を披露。とどろくような感性の中で今成は不適な笑顔とガッツポーズをフロアの中心で見せこのイベントを見事に締めくくった。その様は、ライブとファイトのクライマックスの、それぞれのイメージをダブらせたようにも見えた。
 

 

◆公式サイト
DEEP 公式ブログ『The wild side of the DEEP』
http://www.deep2001.com/blog2/
OUTRAGE 公式サイト
http://www.outrage-jp.com/
PULLING TEETH 公式サイト
http://www.smd-web.com/pt/
COCOBAT 公式サイト
なし
 
DEEP 公式サイト
http://www.deep2001.com/
LIVE POWER 公式サイト
http://www.livepower.co.jp/
公武道 公式サイト
http://www.koubudo.co.jp/
HELMET 公式サイト
http://www.helmet-jp.com/
◆ライブ情報
OUTRAGE
“JAPAN TOUR 2013”
2013年06月22日(土) 【新 潟】 GOLDEN PIGS RED STAGE
2013年06月23日(日) 【仙 台】 MACANA
2013年07月05日(金) 【大 阪】 AKASO
2013年07月06日(土) 【東 京】 ディファ有明
2013年07月13日(土) 【愛 知】 名古屋E.L.L

 
hana
 
一見余りにもかけ離れ、相容れることのないものだと思われることでも、実はその内面につながりが存在する場合はある。今回のこのイベントも発端はそんな些細な部分から大きく発展してきた。そういう意味で見れば、世につながりのないものなど何もないのかもしれない。個の存在は小さいが、つながりにより大きな存在になる可能性は十分あるのだ。今回のイベントはまだ小規模であったが、その中で互いを尊敬しあう意志が強く感じられた。
 
一方の格闘技では戦い相手を倒すことに集中し、一方の音楽では求める音をプレイすることに集中する。見る側の所感も、見え方もまったく異なる表現であり、極論として接点が見当たらないと思われるかもしれない。今回のイベントは以前からのつながり、互いが互いを尊敬し好きであるという気持ち、思いだけがきっかけだった。しかしこのつながりは直接的なものではないが、二つを融合の道に進めたことで新たなものが生まれる可能性を導き出した。その意ではこのつながりは大きな意味を持ったものだといえる。
 
丹下、鈴木、TAKE-SHITが、格闘家をカッコイイと思う気持ち、DEEP T.M.今成がロックを素敵なものと感じる気持ちが共感しこのプロジェクトは「ROKEN ROLL (ロケン・ロール)」という作品を生み出した。このイベントで踏み出した格闘技と音楽の融合というステップはまだその一歩を踏み出したばかりだが、きっと格闘技とロックの大きな未来につながる序章となることを願いたい。
 

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DEEP MACS HEADBANGERS
『ROKEN ROLL (ロケン・ロール)』

 
発売日:2013年4月24日
LPCD-1001/1,000円(税込)
 
CD収録曲:
M01. ROKEN (Lyrics by TAKE-SHIT / Music by 鈴木慎一)
M02. HERMIT (Lyrics by TAKE-SHIT / Music by 鈴木慎一)
M03. ROKEN (inst)
M04. HERMIT (inst)

 

◆トピックス


 
DEEP MACS HEADBANGERS、再びステージに登場!
興奮冷めやらぬ彼らのステージ。しかしそのステージは渋谷だけでは終わらない。OUTRAGEの『Japan Tour 2013』東京公演に、DEEP MACS HEADBANGERSがゲストとして登場することが決定した。
OUTRAGE 公式サイト:
http://www.outrage-jp.com/
★読者プレゼント★
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ご応募方法は“BEEASTファンクラブ”の方にお届けする「週刊ビースト瓦版(無料メルマガ)」にて記載いたします。
 
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