演奏

TEXT & PHOTO:鈴木亮介

Photo出演者はほぼ全員が平成生まれ。「青田買い」という言葉では収まりきらないほどの、見ごたえある4組が揃った。日本マドンナ雨先案内人THE★米騒動赤い公園。これからいっそう多くの人に知られ、活躍していくであろう面々の、今しかできない至極の音楽が結集し、ある種「頂上決戦」と言っても大げさではないステージ!2010年代の邦楽ロック史の1ページに間違いなく刻まれるであろう4組の熱演を、本誌BEEASTの独占レポートで以下お届けしたい。
 
『Beat Happening! SHIBUYA R&R PANIC! MAX!』と題して開催されたこの日のライブ。昼間は強烈な雨風が関東地方を襲ったが、連休最終日の5月6日の日曜日で、渋谷駅から徒歩圏内のLUSH、といった様々な好条件も相まってか、開場前から入口には既に長蛇の列。10代女子、20代男子といった層が多く見られ、中にはギターケースを背負ったお客さんもいる。やはりこの4組は 「会いに行けるアイドル」じゃないけれど、彼ら彼女らにとって身近なヒーロー・ヒロインなのだろう。そして午後6時、開演とともにステージに人がなだれ込み、ものの数分で最前列がびっしりと埋まる。

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午後6時半、いよいよ開演。本日1組目としてステージに立ったのは、3ピースの日本マドンナ。2009年3月に、当時高校2年生だったあんな(Vocal & Bass)とまりな(Guitar)、中学3年生だったさとこ(Drums)の3名で結成し、同年にアマチュアバンドコンテスト「RO69JACK 09/10」推薦枠で優勝、「COUNTDOWN JAPAN 09/10」に出演した。現在までにアルバムを自主制作を除き2枚リリース。さとこはこの春高校を卒業した。結成当初は「制服姿の女子高生」をアイコンにステージに立っていた彼女たち。卒業後は、AC/DCなどバンドTシャツにハイヒールといういでたちで、ステージに立ち続けている。

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この日もあんなの「幸せカップルファッキンシット!」の絶叫で幕開け。グイグイえぐるようなベースの重低音、カッと目を見開き、闘志むき出しの演奏。「幸せなやつらは、幸せのための、幸せのバンドごっこやってりゃいい。バンドやめろ!」と畳みかけ、新曲「バンドやめろ」と続く。そのタイトルからも、不退転の覚悟が感じられる。同じく新曲「愛ドル」では、可愛らしいタイトルとは裏腹に、”太鼓の達人”ことさとこの全身全霊、前のめりのドラムパフォーマンスがたまらなく男前!さらに、まりなも踊るようにギターをさばき、そのか細い腕からは想像のつかない程の大迫力で、オーディエンスを魅了する。

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疾走感がたまらない「脳内殺人犯懲役死刑」に、さらには遠藤ミチロウのカバー「オデッセイ」も披露。本家とはまた違った味のある絶叫が、オーディエンスを圧倒する。もはや火山が噴火したかのような、むき出しのステージ。何かが憑依している3人のパフォーマンスは決して場当たり的ではなく、随所にパンクロッカーたちの面影が垣間見える。と言って、「計算してステージ作ってます」という要素は微塵も感じない。いったい彼女たちのエネルギーの源はどこにあるのだろう。
 

◆日本マドンナ 公式サイト
http://nihonmadonna.mh6.mp7.jp/

 
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◆セットリスト
M01. 幸せカップルファッキンシット
M02. バンドやめろ
M03. 愛ドル
M04. メディアダンス
M05. これしかないのに
M06. 村上春樹つまらない
M07. 脳内殺人犯懲役死刑
M08. オデッセイ
M09. 田舎に暮らしたい

◆インフォメーション
・3rdミニアルバム『バンドやめろ』
2012年06月06日(水)リリース

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2組目は雨先案内人。メンバーは雨ノ地晴太郎(Vocal & Drums)、西山小雨(Vocal & Piano)、齋藤ぽんちょ(Bass)。2010年6月に現メンバーとなり、仙台を中心に活動している男女3人組だ。やや高めに設置されたドラムセットに、キーボード、さらには棒のようなエレクトリック・アップライト・ベースと幾つかの小道具。ギターは見当たらない。何やら不思議なステージの真相は、3名の登場によって明らかになった。メインボーカルを務める雨ノ地晴太郎のドラムは、スタンディングプレイなのだ。さらに、齋藤ぽんちょは全身にタンバリンなどを身につけての登場。「雨空の先に広がる晴れた世界」へのワクワク感が、早くも高まる。

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雨ノ地晴太郎の「笑って~!!」の絶叫ボーカルでスタート。その全力スマイルに促されて、オーディエンスも満面の笑みに。西山小雨が奏でるピアノの旋律が朝露のように軽快にステージを飛び跳ねる。カラフルなドロップが箱から飛び出て来たかのような、底抜けの明るさ。サウンドは齋藤ぽんちょの安定感ある重低音に、西山小雨のジャジーな鍵盤がリードして、そこに雨ノ地晴太郎のシンバル音も調和して、大人なサウンドが繰り広げられる。でも、歌声は音楽会で気持ちよさそうに歌う子どものような、元気いっぱいの「男の子」と「女の子」のボーカル。今まで聴いたことがない、不思議な、心地良い音楽だ。「おひさま」では西山小雨の「ぱっぱっぱっぱ らりらっぱっぱら」、「犬」では雨ノ地晴太郎の「君んちの犬になりたい!」…歌詞もポップで可愛らしい。

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ポップな曲が続いたかと思えば、「シンデレラ」では西山小雨の透き通るソロボーカルで、グッと大人モードに。一般的にバンドにおいてはリズム隊として影に隠れがちなベースとドラム、そして控え目に隙間を埋めるようなピアノ。その三者が雨先案内人では皆が皆主役!ギター不在でここまで幅広いバンドサウンドが楽しめるとは…。行く先々で、聴く人全てを笑顔で包み、心を明るく塗り替える雨先案内人の音楽は、これからの梅雨の時季にますます重宝されそうだ。
 

◆雨先案内人 公式サイト
http://www.amesakiannainin.com/

 
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◆セットリスト
M01. 楽しく死のう
M02. おひさま
M03. 犬
M04. シンデレラ
M05. 人間やめたい
M06. 夢はふくらむ
M07. イエーイ!!

◆インフォメーション
・雨先案内人『App for iPhone & Android』リリース
http://www.reverbnation.com/mobile-app/132761/amesakiannainin

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3組目は札幌出身のTHE★米騒動。メンバーは石田愛実(Vocal & Drums)、沖田笙子(Bass)、坂本タイキ(Drums)。同じ高校の軽音楽部で2008年に結成され、高校最後の夏、2010年8月に『閃光ライオット』グランプリを獲得。翌年ミニアルバム『どうでもいい芸術』をリリースした。全員1992年生まれで間もなく20歳になる彼らの持ち味は、底抜けにかっこいいロックサウンドだ。石田愛実のとてつもなくクールなギターリフにかき乱されて、早くも頭を振り出すオーディエンス!

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通常、客席に背を向けるように置かれている返し(フォールドバックスピーカー)を横向きに並べ、フロントのギター&ベース2名が正対するという、珍しい位置取り。沖田笙子石田愛実はオーディエンスに対して横顔を見せつけ演奏に没頭するのだが、かえってそれが客席との一体感を生む。時折熱くなった石田愛実はビールケースに登壇し、客席に向かって吼える!スコールのような2曲目「Hys」から、じわじわ骨の髄まで染み入る3曲目「DOSYAKUZURE」まで、坂本タイキのドラムが屋台骨となり、ロックンロール魂を体現する。

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5曲目「十九歳」も、等身大のどこにでもありそうなリアルが、ロックというフィルターを通して唯一無二の世界観へと昇華している。THE★米騒動という名前は、ダサいネーミングにしようと幾つかの案を出し合って決めたらしい。いやむしろ、彼らのかっこよさを最大限象徴するネーミングになっているのではないかとさえ思えてしまう。己の命の根源となるものを激しく追究していく様は、まさに「騒動」だ。
 

◆THE★米騒動 公式サイト
http://39.xmbs.jp/TheRicePanic/

 
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◆セットリスト
M01. Border
M02. Hys
M03. DOSYAKUZURE
M04. 女の娘
M05. 十九歳
M06. 祝女
M07. 家政婦はなにも見ていない
M08. ブラック・ダンス・ホール

◆インフォメーション
・7曲入りミニアルバム『十九歳でぜんぶ終わる』
2012年07月11日(水)発売
 
・2012年06月23日(土)【下北沢】CLUB Que
THE★米騒動自主企画「出し抜けのツーマン」

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いよいよ最後、4組目はガールズバンド・赤い公園。メンバーは佐藤千明(Vocal & Keyboard)、津野米咲(Guitar)、藤本ひかり(Bass)、歌川菜穂(Drums)の4名。2010年1月に同じ高校の軽音楽部で結成し、学生時代は東京・立川のライブハウスを中心に活動。その人気と実力が瞬く間に注目を集め、2012年にEMIミュージック・ジャパンよりメジャーデビュー。他のメンバー3名に対して先輩にあたる津野米咲が作詞作曲を担当している。

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揃いの真っ白な衣装で登場の4名。冒頭、佐藤千明扮する彼氏「ミノル君」と彼女役の藤本ひかりによる甘酸っぱい(?)ショートコントが披露され、米米CLUBがオープニングSEとして流される。あっけにとられていたのも束の間、即座に自分達の色にステージを塗り替える。どこかノスタルジックな、おもちゃ箱のようなサウンドが広がる。まずは挨拶代わりに、インスト曲「公園」を奏でると、続いて彼女たちの代表曲の一つ「塊」が静かに始まる。冒頭、津野米咲の弾くギターリフは、さめざめと泣く少女のようで、それでいてどこか神秘さがある。

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静かに始まった「塊」はサビに入るにつれ、ヒートアップ!佐藤千明は客席に身を乗り出して絶叫!オーディエンスも全力で叫び、応える。そしてMCでは女優・佐藤千明による、ギャル系になったりオカルト系になったりと幾つものキャラクターが飛び出し、笑いを誘う。さっきまでのかっこよさはどこへやら?と思わず心配してしまう。そこに「「いきますよ~、ランドリー。いっせーのーせ」と脱力系の掛け声。こんなことで大丈夫か?という懸念は、最初の音がアンプから飛び出した瞬間に消え去った。彼女たちが身にまとった白いドレスの透明感そのままに、透き通ったボーカルと、広がりのあるギター&ベース&ドラムの三位一体となったサウンド。ゆらゆらと浮かぶ独特の世界観に、オーディエンスは身を委ねる。

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後半はCD化されていないライブでの定番曲「のぞき穴」と、ニューアルバムに収録された「よなよな」、いずれもアップテンポの曲だ。藤本ひかりが軽やかに、長い髪をかき乱してステージを暴れまわる。そして歌川菜穂は終始爽やかな笑顔でツーバスを踏む。パワフルな演奏をさらっと笑顔でこなせるところも、この4人の魅力の一つだろう。アンコールの「ふやける」まで、熱狂の9曲+脱力系MC+ミニコント2本。赤い公園はあっという間に走り去って行った。
 

◆赤い公園 公式サイト
http://akaiko-en.com/

 
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◆セットリスト
M01. 公園
M02. 塊
M03. 急げ
M04. ランドリー
M05. 血の巡り
M06. 透明
M07. のぞき穴
M08. よなよな
M09. ふやける

◆インフォメーション
・メジャーデビューミニアルバム 下盤
『ランドリーで漂白を』
2012年05月09日(水)発売

 

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【特集】赤い公園単独インタビュー公開!
http://www.beeast69.com/feature/25973