演奏

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TEXT & PHOTO:桜坂秋太郎

カブキロックスのホームグラウンドである渋谷La.mamaにて、『カブキロックス二十五周年ライブ其の弐withPINK SAPPHIRE ~25周年 バンド同士!夢の共演!~』が、2015年3月15日に開催された。カブキロックスは本誌でも何度か取材しているが、メンバーチェンジをしながら、長きに渡り活動を続けているバンドだ。メンバーチェンジをしても、カブキロックスファミリーとして、新旧のメンバーがファンから愛されている。それはバンドがファンを常に愛しているからに他ならない。
 
そんなカブキロックスの25周年記念ライブ第2弾。今回のお相手はPINK SAPPHIRE。「25周年バンド同士!」ということで、活動のスタート時期がほぼ同じな両バンド。PINK SAPPHIREは約20年間活動をしていなかったが、昨年再結成を果たした。リアルタイム世代にはたまらないカップリングだ。そしてオープニングアクトに、若手のシンガーソングライターの柚木美咲が登場する。こうした交流をベテラン勢が計らうことは、素敵なことだと思う。さて、今夜はいったいどんなライブになるのだろうか。

【オープニングアクト】柚木美咲(ゆずき みさき)

柚木美咲(Vocal & Guitar)、スネイキー(Support Guitar)、チェルシー(Support Bass)
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開演時刻になり、「こんばんは~柚木美咲です!」という明るい声から、1曲目「恋のハートビート」が始まる。柚木美咲の今夜のステージは、サポートメンバーに、ギタリストとベーシストを入れた編成のようだ。ポップなメロディが会場を包み込む。可愛い声なのだが、芯のある歌声だ。続いてマイナー調の「my truth」へ。イントロと曲間の哀愁ギターフレーズが、歌を惹きたてている。
 
MCで、カブキロックス青木秀麻呂(Guitar)にプロデュースされている話があり、その経緯でオープニングアクトに抜擢されたようだ。また過去にカブキロックスのステージにも立ち、「お江戸-O・EDO-」と「虹の都」のコーラスをした事があるとの話。23歳だという彼女は、今夜の両バンドの25周年に出ているのが不思議(生まれる前のバンド)だと語る。普段は歌って踊るガールズユニットLONDON BLUEのリーダーMISAKIとして活動しているが、今秋からLONDON BLUEはガールズバンドとしても活動するらしい。
 
3曲目の「Believe in love」は、どこか懐かしい匂いがするナンバーで、思わず手拍子を取ってしまう。彼女の歌は、歌メロが一度聴いたら覚えてしまう親しみやすさで、さすが青木秀麻呂プロデュース。もう一度MCが入り、舞台(芝居)の告知がある。マルチな才能を持つ若きアーティストだ。ラストはキャッチーな「I’m crazy for you」。おそらく初めて聴いたであろうオーディエンスも、サビの“I’m crazy for you”を一緒に歌っている。オープニングアクトとして、会場を一つにできる実力も見せてくれる。彼女の今後がとても楽しみだ。
◆柚木美咲 Official Blog
http://ameblo.jp/u2ku4kusaku/
 
◆LONDON BLUE Official Website
http://londonblue.jp/
 
◆Setlist
M01. 恋のハートビート
M02. my truth
M03. Believe in love
M04. I’m crazy for you
◆柚木美咲 Live Information
2015年05月19日(火)【東 京】渋谷O-WEST
 
◆LONDON BLUE Live Information
2015年05月08日(金)【東 京】大塚Deepa
2015年05月14日(木)【東 京】渋谷RUIDO K2
2015年05月17日(日)【東 京】渋谷O-nest
2015年05月18日(月)【東 京】原宿ASTRO HALL
2015年05月22日(金)【東 京】渋谷RUIDO K2
2015年05月31日(日)【東 京】池袋Black Hole
2015年07月22日(水)【東 京】レコ発ライブ(詳細未定)
2015年09月12日(土)【東 京】ワンマンライブ(詳細未定)
PINK SAPPHIRE

AYA(Vocal)、TAKA(Guitar)、MIKI(Bass)、林利樹(Support Drums)、宮川章彦(Support Guitar)、多東康孝(Support Keyboard)
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二番手は、PINK SAPPHIREの登場。ここから最前列に移動して、しゃがんで取材をする私。同年代のオジサンたちが周りには立っている。PINK SAPPHIREが、青春そのものだったのだろう。そのうちの一人は、出番を待つ間、今にも泣きそうな顔をしている。気持ちはよくわかる。私もPINK SAPPHIREは、アルバムだけでなく、縦長のCDシングルやVHSテープまで、ちゃんと持っているのだから。デビュー前のライブも、デビュー後のライブも、かなり通った想い出がある。個人的には、当時好きだった新宿の会場、日清パワーステーションのライブが一番印象に残っている。
 
今夜はメンバーのHARUMI(Drums)が居ないが、男性のサポートメンバー3名が、彼女たちをバックアップしている。ドラムのカウントから、1曲目「抱きしめたい」がスタート。アップテンポな2ndシングルだ。“I wanna hold you hold you in my arms!”のサビで大きなシンガロング!昔風に言えば、大合唱だ!90年代初頭の、アノ時代が一気に蘇る!昨年、約20年ぶりに再結成ライブをして、とても感触が良かった話などのMCが入り、2曲目の「POWER OF LOVE」へ。“女の子なら みんな持ってるはず そう Power of LOVE”というインパクトある歌詞で、シングルコレクションやベスト盤で人気のナンバー。

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続けて3rdシングル「HELLO GOODBYE」。彼女たちの歌は、いつも身近なテーマが中心だったので、同性からの共感も得ていた。切ない歌詞は、カラオケでも大人気だったが、今聴いてもとても良い歌だと思う。2度目のMCでは、カブキロックスと共演した学園祭の話、NHKのショーの話。そしてサポートメンバーの紹介から、「恋のダイナマイト」へ。3rdアルバム『Today and Tomorrow』の6曲目に収録されたロックンロールナンバーだ。ツインギターのサウンドが気持ち良い。静かになる曲間で、AYAMIKIの歌声だけが会場に響く。サポートの宮川章彦が弾くエンディングギターソロが、とても新鮮だ。
 
3度目のMCで、SHOW-YAプロデュースの『NAONのYAON2015』(※本誌BEEASTで取材済み。後日特集にて記事リリース)への出演が決まった話。そしてPINK SAPPHIRE自身の25周年を祝うワンマンライブを、渋谷で行う話から、ステージ後半に突入。「Keep On Rollin’」だ。『Today and Tomorrow』の10曲目に収録されたノリの良いナンバーで、“Hey Hey Hey!”と会場中が揺れている。AYAMIKIのコール&レスポンスの後ろで、楽しそうなTAKAの笑顔が印象的。そのまま「Mr.G」へ。『Today and Tomorrow』のラストを飾る11曲目のアップテンポナンバー。
 
ドラムがリズムを刻み、セットリスト最後の「P.S. I LOVE YOU」へ。Aメロから会場は、シンガロング大会だ!オジサンたちが歌う「P.S. I LOVE YOU」の歌詞は、冷静に考えるとかなりイタイと思うが、そんなことは今、関係ない!精一杯の声で、AYAと一緒に歌うこの瞬間がたまらない!歳月人を待たず、若い頃は二度と戻らないが、20年近い時間(とき)を超えて、PINK SAPPHIREが戻ってきてくれた!その事実だけで十分だ。ステージをメンバーが去る。メンバーには申し訳ないが、オーディエンスの心は「物足りない!もっともっと聴きたい!」と叫んでいる。ステージが始まる前に泣きそうだったオジサンは、もはや涙だらけだ。

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◆PINK SAPPHIRE Official Blog
http://ameblo.jp/pinksapphire-blog/

◆Setlist
M01. 抱きしめたい
M02. POWER OF LOVE
M03. HELLO GOODBYE
M04. 恋のダイナマイト
M05. Keep On Rollin’
M06. Mr.G
M07. P.S. I LOVE YOU
 
◆Live Information
25th Anniversary ワンマン
2015年09月22日(火)【東 京】渋谷O-WEST

 

カブキロックス

氏神一番(Vocal)、青木秀麻呂(Guitar)、坂川美女丸(Guitar)、胡縞武蔵(Bass)、三柴三蔵(Drums)
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ステージセットが変わり、今夜のメインアクト、カブキロックスがSEに合わせて登場。登場しただけで空気までカブキ色に変えてしまう。ステージ最前列は、気が付けば女性ファンで埋め尽くされている。知らぬ間に、さきほどのオジサンたちと入れ替わったようだ。ファン同士のこうした譲り合いは、とても素晴らしい行動だと思う。ステージは今年の頭にリリースされたアルバム 『NOW&BEST ~今昔詩歌集~』の1曲目、「夢か現か我が想い」でスタート。青木秀麻呂の甘いトーンのフレーズがたまらない、最新のロックンロールナンバーだ。続いて「お夏狂乱」。1stアルバム『KABUKI-ROCKS』の2曲目であり、『NOW&BEST ~今昔詩歌集~』の8曲目にも収録されているお馴染みのナンバー。
 
2020年東京オリンピック非公認応援ソングとの紹介から、「Zipang Cha Cha Cha」へ。『NOW&BEST ~今昔詩歌集~』の3曲目に収録されたスカビートのギターカッティングと、ダブルチョーキングがカッコいいナンバー。“お祭りだ!人生は!”というサビも実にカブキロックスらしい。そしてメンバー紹介コーナー。氏神一番が、三柴三蔵胡縞武蔵坂川美女丸の順に紹介して、メンバーはオーディエンスへ一言。さらに、「27年前から変わっていない(細さ)!」と、カブキロックスのキーマン、青木秀麻呂を紹介する。氏神一番がタイトルコール、「GATTEN!~いざ傾け~」。『NOW&BEST ~今昔詩歌集~』の5曲目に収録された坂川美女丸作品のハードなロックナンバー。
 
MCで、PINK SAPPHIREとの想い出を話した後、「時空を越えたマイトガイ」。胡縞武蔵作品のアップテンポナンバーで、『NOW&BEST ~今昔詩歌集~』の4曲目に収録されている。今夜のセットリストは、このアルバムからの内容を中心にしているようだ。オーディエンスは新しいナンバーでも口ずさみ、手を叩いている。作品をよく聴きこんでいる証拠だ。しかし氏神一番は、ここから昔の曲を続けると言う。ツインギターのイントロから、当時アニメの主題歌にもなった2ndシングル「虹の都」が始まる。『KABUKI-ROCKS』の7曲目、『NOW&BEST ~今昔詩歌集~』の6曲目にも収録されているポップなナンバー。エンディングから音を繋げて「スーサイドゲーム」へ。映画『1990牡丹燈篭』の主題歌となった人気の高いナンバーで、『NOW&BEST ~今昔詩歌集~』の9曲目に収録されている。

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ここで長めのMC。青木秀麻呂による、映画に出演した時のこぼれ話で歓声が沸く。氏神一番が短いセリフで、何度もNGを出したと暴露!その後も懲りずに連続ドラマや舞台に出ている氏神一番を褒める!?氏神一番も負けじと、青木秀麻呂は27年前と同じ(超スリムな)体型を維持しているが、“クリーン”ですから!と笑わせる。そして、2ndアルバム『MASQUERADE』曲目に収録された「ANOTHER LION~炎の獅子~」。ハードなギターリフが身体を熱くする!オーディエンスの拳がステージにむかう!ところが、楽しいステージはここでお開きの時間のようだ。渋谷の小さなスタジオで作った、カブキロックスの最初に出来たオリジナルソング「浮世の夢に」。『KABUKI-ROCKS』の1曲目に収録された名曲だ。浮世の夢に、今はただ歌え!狂え!と、大きなシンガロングで会場はヒートアップ!
 
「カブキ!」「カブキ!」という声援の中、アンコールへ。カブキロックスと一緒に、PINK SAPPHIREもステージに登場。ここでビデオ上映会。24年くらい前のテレビ出演時のVTRが流される。某音楽番組で、カブキロックスPINK SAPPHIREが共演した時の物だ。内容はトークからセッションへ。セッションは、Elvis Presleyの「Jailhouse Rock」。番組内のトークで、青木秀麻呂が「尾藤イサオバージョンにするか、平尾昌晃バージョンにするか、(氏神一番が)英語が歌えないので考えた(笑)」とコメントしていた。デビューから現在まで、青木節は健在だ!AYA氏神一番による“英語”の「Jailhouse Rock」は、思った以上に完成度が高く、今聴いても、十分にカッコいい仕上がりだ。
 
ビデオ上映会が終わると、PINK SAPPHIREのメンバーが「つい最近まで(カブキロックスと)一緒にやっていたような気がする(笑)」との事。「当時も今も、並ぶと(身長が違い過ぎて)大人と子供みたい」と談笑。空白の時間を一気に埋めた両バンド、最後は生のセッションで、「お江戸~21st.Century ver.~」。カブキロックスがシーンへ登場した「お江戸-O・EDO-」の21世紀バージョンだ。『NOW&BEST ~今昔詩歌集~』の2曲目に収録もされている。カブキロックスのステージに、PINK SAPPHIREが居るだけで、これ以上ない華やかさだ。オーディエンスもステージと同じ振りつけで一体となり、今夜のステージはすべて終了へ。あっと言う間の夢の時間。これから浮世の荒波にもまれる生活へと戻らねばならない。

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◆カブキロックス Official Website
http://www.kabukirocks.tv/

◆Setlist
M01. 夢か現か我が想い
M02. お夏狂乱
M03. Zipang Cha Cha Cha
M04. GATTEN!~いざ傾け~
M05. 時空を越えたマイトガイ
M06. 虹の都
M07. スーサイドゲーム
M08. ANOTHER LION~炎の獅子~
M09. 浮世の夢に
M10. お江戸~21st.Century ver.~(encore)

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今夜、多くのナンバーがプレイされた『NOW&BEST ~今昔詩歌集~』は、買って損のないアルバムだと断言できる。浮世の風が身にしみるこの頃、必聴アイテムにしてはいかがだろうか。『カブキロックス二十五周年ライブ其の弐withPINK SAPPHIRE ~25周年 バンド同士!夢の共演!~』の取材を終えて、渋谷駅までの急坂を下る。本当の事を言ってしまうと、今日の両バンドは仕事ではなく、プライベートで楽しみたかったライブだ。PINK SAPPHIREで泣いていたオジサンに自分を重ねてしまうし、ニューバージョンの「お江戸~21st.Century ver.~」で、一緒に手を振りたかった。でも私の使命は、渋谷に来られなかった日本全国、または世界に散っているPINK SAPPHIREカブキロックスのファンへ、記事として今夜の様子を届けること。
 
終演後、関係者へ挨拶をしていると、会場にHARUMIの姿が。PINK SAPPHIREはMCで、秋に行う25周年ワンマンライブ(2015年9月22日@渋谷O-west)は、4人が揃うと話していた。見逃してはいけないライブが年に何度かあるが、この日は今から空けておかねばならない、私にとっても大切な日になりそうだ。そしてもちろん、この4人が揃うライブの様子も、本誌BEEASTで取材をしたいと思っている。その時はワンマンということで、より多くのナンバーが聴けるはずだ。ちょうどシルバーウィークの連休でもあり、来られるファンは全員集合しないと、後悔するのは間違いない!
 
そして進化を続けるカブキロックス。彼らのステージは、観る前から楽しいことがわかっている。それはとても凄いことだと思う。歌い手として、パフォーマーとして絶対的な実力を持つ氏神一番。キーマンとして、楽曲面の統括だけでなく、ステージ上でもメンバーを見守っている青木秀麻呂。また、ポップでエモーショナルな青木秀麻呂のギターに対して、日本刀パフォーマンスなどアグレッシブなアクションや、ハードにロックしたギターサウンドで魅せる坂川美女丸カブキロックスのボトムを支える胡縞武蔵三柴三蔵のリズム隊。この二人は、本誌BEEASTが創刊した2009年からコンビを組んでいる。ちょうど衝撃の演歌シングル!6thシングル「大江戸 恋町 華の町」リリースの頃だ。常にハズレのないステージを展開してくれるカブキロックスだが、頻繁にライブをやっていない。次のライブ情報が発表されたら、ぜひ足を運んで、浮世を忘れて楽しんでほしい。
 

 
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