特集

COUNTDOWN JAPAN 11/12

TEXT & PHOTO:桂伸也

ロックフェスティバルは今でこそ国内で数あれど、年の切れ目という絶妙なタイミングで行われる大規模なフェスティバルとしては国内最大のイベントである「COUNTDOWN JAPAN(以下CDJ)」。単に旬のアーティストを一望し堪能できるというだけでなく、そこには「一年の総括」という役目をも果たし、今では日本のイベントとして“無くてはならない”ものとなりつつある。2010年に引き続き、更に内容をパワーアップして、ステージの模様だけでなく、会場の様子や、ここに来た人たちの思いをレポートしていきたいと思う。
 
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2011年は大震災が日本の全てを揺るがし、その後に続く見えない恐怖はいつまでも人々に付きまとい不安を与え続けた。そんな中でも、希望を失わず復興に向けて走り続ける人がいた。ロックの世界でも然り、「俺達にはこれしかねえんだ!」そう叫ぶかの如く立ち上がり、歌い続けたアーティストが現れた。時にその叫びは、被災で傷ついた人々に救いの手すら差し伸べ、勇気付け、更に日本の復興に活力を与えてくれた。そして12/28から2012年の年明けまで、ロックで体を満たし、新たな年に向けて気持ちをリフレッシュさせるべく、多くのロック・ファンが幕張の会場に集まった。
 
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1) 2011年12月28日

開場時間近辺には、もうJR海浜幕張駅のホームから人がいっぱいの大盛況だった。ゾロゾロと駅から会場に向かう人々。ロックを通じて繋がる友人や家族、恋人等、その楽しむ姿勢とスタイルは人それぞれだろうが、彼らの胸中にある、共通した気持ちは一つ“ロックを楽しみたい”ということだったに違いない。
 
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今回最初の開演前に、GALAXY STAGEにてプロデューサーの山崎洋一郎氏が、開幕の挨拶に合わせて、今回のイベント実施の思いを語った。「今回は、本当に行ってよいものか、いつまでも悩みました。」その思いは、同じような波紋を広げ、多くの心の中に似たような思いを残していたに違いない。‘ロックなんか聴いていいのか?’‘今日ここに来たことは正しかったのか?’2011年の惨事に対する、この問いに対しての正しい答えを導きだすことは難しい。だが、ロックを愛する者達には、ロック自体が不安に直面してた彼らに大きな力と勇気を与えてくれたことは間違いない。
 


 
オープニングを迎えたCDJ。その興奮で活気を注入したとある観衆は語った。「HIGH-STANDARDが好きなんですけど、今年(2011年)、復活しましたよね?復興の願いがあったから復活したと思うと、みんな音楽で繋がっている部分って凄く強いと思うんです。世界が暗くなってモヤモヤしている中、CDJが明るくしてくれればと思い、今日ここに来ました。」

 
キノコホテルを待つ一人の少女が、そっと語ってくれた。「私は茨城から来たんですけど、今日、ここに来れて良かった。茨城は震災の影響もあって大変なところだけど、『ひたちなか』ではROCK IN JAPANもちゃんとやってもらえたし、茨城を、そして私を(ロックは)見捨ててなかった、って思っています。」彼女は一人でここに来たというが、ロックファッションと、アーティストに対するリスペクトのスタイルで仲間同士は繋がり、引き合う。


 

2) 2011年12月29日

この日は他の日と比べて、ゆったりとした空気も会場に流れているように見えた。お目当てのアーティストに一目散に向かっていく、というよりは、このフェスティバルを、そして会場を楽しむ、という観客のゆったりとした様子から、あたりは少しのんびりとしていたようだ。
 
親子と友達連れで会場に現れた一同。子供は何と生後7ヶ月で「CDJデビュー」したという。「酒と音楽が大好きなので楽しいです。CDJはもう普段通りの生活の一つ、一年の締めの行事として毎年楽しんでいます。」
露天の愉快なアフロの兄ちゃんが優しく、そして楽しく彼らを迎えてくれた。


ライブレポート

NICO Touches the Walls ◆ 2011/12/28 GALAXY STAGE 13:00~
 
この日GALAXY STAGEのトップに現れた、Vo.の光村龍哉から発せられた叫び、「幕張!みんなの声を聞かせてくれ!!」と、その言葉に対する観衆の声にかき消された。多くの観衆は全て彼らの力いっぱいのパフォーマンスに集中し、常にその腕は天井に向かって伸ばされ、その指先はステージの彼らを求めるように向けられる。広大なGALAXY STAGEをものともせず、彼らの精一杯の気持ちが歌になって、会場の人々に向けられた。
 
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キノコホテル ◆ 2011/12/28 ASTRO ARENA 15:10~
 
Photoこの年多く現れたガールズ・ロックバンドの中でも、独特のイメージを持つキノコホテル。クールなヴォーカリスト、マリアンヌ東雲の雰囲気とは裏腹に、気持ちを掻き毟るようなビートに、観衆はその意識を奪われてしまう。何か懐かしくもある、まさに「ノスタルジー」と呼べる雰囲気と、パンキッシュなサウンド、哀愁感のあるマリアンヌ東雲のヴォイスが異様なタイミングで交差し、ずっと彼女らの軌跡を追い続けるオーディエンス達。演奏が終わり、挨拶をするマリアンヌ東雲の、「良いお年を」という一言が終わっても、その不思議な空気で余韻に浸るように、観衆はしばらく立ち竦んでいたようにも見えた。

筋肉少女帯 ◆ 2011/12/28 GALAXY STAGE 16:15~
 
去年登場した筋肉少女帯は今年も健在、その破天荒でワイルドなステージで観衆を、そして人々を元気にしてくれる。「こだまでしょうか...」今年の流行語大賞にもノミネートされた有名な言葉を捩ったギャグをMCで披露、緊張の中に親しみを湧かせる大槻ケンヂの絶妙なパフォーマンスで、“今年もやってくれた”と思える素晴らしいステージを見せてくれた。
 
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MONGOL800 ◆ 2011/12/28 GALAXY STAGE 17:20~
 
筋肉少女帯に引き続いて登場したのは、MONGOL800。一切ノーギミックの直球勝負のステージが、彼らの歌を心から愛する人々の気持ちを掴む。もう知らない人はいないくらいにポピュラーとなり、人の気持ちを打った彼らの代表ナンバー「あなたに」が始まると、人々は総コーラス、広大なホールの中、満員のフロアで響いたこのメロディは、何か明日に繋がる覇気を人々に撒き散らした。
 
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MAN WITH A MISSION ◆ 2011/12/28 MOON STAGE 20:00~
 
この日、MOON STAGEでラストを飾ったのは、異色の狼軍団ことMAN WITH A MISSION。ステージに現れた狼達を見るや否や、フロアは大興奮。彼らのつたない日本語MCによる感謝の意すら、彼らの真意として捉え、フロアは大喜び。飛んだり跳ねたりと、まるで「床が抜けやしないか!?」と心配に成る程の振動が会場の隅から隅まで伝わり、更に会場の皆を興奮させた。
 
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チャットモンチー ◆ 2011/12/29 EARTH STAGE 15:30~
 
Photoステージに現れた二人の女性が左右に分かれ、フロアに一礼、そしてステージ中央で握手をし淡々と演奏を始める。もともとトリオだった彼女らは2011年にメンバーが脱退、現在2名でその活動を続けている。特別なことを語ったり、情感を詰め込み過ぎたようなニュアンスは無くても、その歌の中から伝わってくる切なさ、その哀愁感に立ち向かうような強い気力が伝わってくる。激動の一年を過ごした彼女らの胸にある思いは、フロアに確かに伝わったことが、その大きな歓声で返答された。

音速ライン ◆ 2011/12/29 COSMO STAGE 19:30~
 
何か飾り気の無いルックス、そしてストレートなロック・サウンド、それこそが持ち味ともいえる音速ライン。決して派手なものはないが、言いたいこと、伝えたいことはフロアにダイレクトに伝わり、共感する観衆は大きな歓声でそれに答える。

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TRICERATOPS ◆ 2011/12/29 COSMO STAGE 20:30~
 
この日のCOSMO STAGEでトリを務めたTRICERATOPS。ブルージーなスチール・ギターの響きから、彼らにしか出来ない音の世界を、フロアいっぱいに広げていく。「ここは9年やってきて、初めてのトリなんです。次も出来るように、また皆様のお力添えを。」Vo.和田唱のそんな冗談も、長いキャリアを積み上げた彼らならではの余裕のようにも見えた。まるで勝手知ったるものの如く、そのパフォーマンスと息を合わせていくオーディエンス達。「初めて」のトリで、それを待ち受けていた多くの観衆。この日、このタイミングで彼らがこのステージに立ったのは、いよいよ彼らが“大事な時にいなきゃいけない”という存在に、真に近づいてきた確証なのかもしれない。
 
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【ミニコラム】ロックフェスティバルをより楽しむ
さて、今回はその白熱のステージの模様とは趣向を変えて、このイベントを楽しめるポイントを考えてみた。今年も開催されるであろう数多くのイベント、をより楽しむ為の手引きとなれば幸いだ。


1) 入場ゲート
 

ロックフェスティバル開催では定番ともいえるリストバンド。単なる入場証というほかにファッション面に配慮したスタイルともいえるが、一つ面白いポイントがある。入場の際におけるチェックだが、「リストバンドを、腕を上げて見せてください!」係員が入場者に呼びかける。その入場者が見せるさまは、正しく拳を振り上げ、“ロックだ!”という気合いを見せるような仕草になる。次第に初っ端からファンも、係員も気分が盛り上がるという嬉しいシーンがそこには現れる。

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2) Tシャツを始めとしたファッション
 

ロックという文化、或いは新しい世代のD.I.Y.的文化の中で、Tシャツは重要な役割を持っている。お手ごろな価格で、そのデザインを最大限に活用したイベントに対するコミュニティの形成に一躍買い、友人同士、或いは全くの他人でもその同じTシャツを着るだけで親近感を湧かせ、ステージを一緒に楽しもうとする前向きでアクティヴな気持ちを呼び起こしてくれる。また、近年のロック・ステージはよりアクティヴな方向に向き、殆どのファンはTシャツと、首周りのタオルという合わせ技の着こなしが流行だ。このスタイルは会場の中でも一番多いスタイルだった。
ツワモノとして現れたのは、出演していないアーティストのTシャツ(右写真、左上:Perfume)、アーティストとは全く関係の無いサッカーのゲームシャツ(右写真、左下)によるお揃い。更に今回目立ったのは、着ぐるみ風ファッション。こんな子達が一人でも居るだけで、楽しい時間は益々盛り上がり、仲間でロックを楽しもうとする雰囲気は更にアップする。
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3)オブジェ
 

会場には、様々なオブジェが要所に設置されている。ステージがEARTH、GALAXY、COSMO、MOON、ASTROと、宇宙規模の名前が並ぶだけにスケールも広大だ。そのオブジェも、宙に浮かんだ惑星や地球と、見るだけでも楽しめるものが満載。
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そしてまた変わった楽しみ方としてアングルを変え以下のような撮影を楽しむファンが多く見られた。こんな楽しみも、CDJ程のスケールならではかもしれない。(右は地球を模した空間に浮かぶオブジェだが、下像のようにローアングルで撮影すると、まるで「地球を持ち上げる人」!?)
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まだこの前半二日は、CDJの中でも、その年末のクライマックス感を湧かせるにはちょっと早い感はあったかもしれないが、だからこそゆったりその楽しさを感じ、新年に向けてのリフレッシュを別の角度で感じることが出来る。開演前に山崎洋一郎氏の投げ掛けたようなイシューを考え、色んな物思いに耽りながらロックを楽しむ。そして1年の締め括りとなる最後の2日間を、気合十分で迎えられる、また違った年末の一味違う過ごし方として楽しめる時ではないだろうか。
 
なお、続くPart 2では、後半二日の激動の様子をレポートする。こちらも乞うご期待!!
 

【COUNTDOWN JAPAN 11/12】 引き続きPart 2をご覧ください。COUNTDOWN JAPAN 11/12 怒涛のカウントダウンを迎える12/30、31のレポート!!
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