特集

COUNTDOWN JAPAN 11/12

TEXT & PHOTO:桂伸也

Part 1に引き続き、2011年12月に行われたCOUNTDOWN JAPAN(以下CDJ)の模様をお送りしよう。まさに2011年のクライマックスとなったこの二日、いろいろな意味で人々に大きな活力を与える場となったこの日の幕張、その状況とはいかがなものだったのか…?
 
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1)2011年12月30日

年末押し迫る時期、この30、31日の入場チケットは前売りの段階でソールドアウト。また、この日オープンの段階で遂に、イベント史上最高の動員数38,500人を記録した。改めてこの年日本を駆け巡った世情と、その中でもここまで大きな注目を浴びているこのイベントの、存在の大きさを感じる。

マキシマム ザ ホルモンを見ていた夫婦と子供2人の家族連れはこう語っていた。
CDJが始まった頃から、夫婦でずっと来てるんです。子供を産んだ直後は少しブランクがあったけど、やっぱり殆ど見てますね。子供を最初連れてきたときは防音対策とか大変だったけど、今じゃすっかり慣れて、ロックが好きになってきてます。実は子供はマキシマム ザ ホルモンはそれ程好きじゃないけど(笑)色んな好みに合わせて子供と一緒にあちこちのライブを見に行ってます。上の子はチャットモンチーなんかのガールズ、下の子は東京スカパラダイスオーケストラなんかが好きなんで、先程一緒に見てました。ライブに飽きたら、テーマパークみたいに色々楽しめる要素もあるからいいですね。家族全員が、お互いを知る意味でも、今後も家族連れで来たいと思っています。」
 

2)2011年12月31日~2012年1月1日

さすがに最後の日を迎えたこの日のイベント。会場内は年越しのタイミングまでたくさんの人が集まり、多くのロックファン達で賑わった。ライブによっては入場規制も掛かったりしたが、ステージの方から流れる音を、自分達なりに楽むファン達もいた。写真はMONOBRIGHTの会場に入るのをあきらめ、会場のそばで踊り狂う、全く他人のファン達同士。
 
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年が明けると、場内は一段落し何となく落ち着いた空気が漂う。その瞬間に「年越し」という具体的なことを考えた者はいなかったかもしれないが、その瞬間を迎えることがこの日最大のイベントだっただけに、思うところがあったのは確かだ。その気持ちを聞いてみた。

 
モーモールルギャバンを見ていました。そのときが年越しという意識は無かったんですけど、あれほど盛り上がったんだから気分は高揚してきますよね。これだけ楽しめたんだもん、いい年が来ると思っています。アーティストの人がそう叫んでくれたんだから、尚更嬉しいですよね!!」

 
「DJイベントを見ていたんです。ちょっと盛り上げ方には戸惑ったけれど(笑)楽しかったです、年が過ぎたのは後から気がついたんですが。僕らまだ三人とも就活中なんで不安も多いんですけど、これの勢いで、いい年になればなあ、と思っています。」

 
「昨日、遅くに入ってきました。Dragon Ashを見ていたんですけど、カウントダウンが終わっても、そんなに実感は無いなぁ、って感じでした。でも、とにかく勢いはついたかな?出だしの一週間ぐらいは頑張るぞ、って感じになるか(笑)でも、新しい日々へのスタートにはなったと思います。」

 


ライブレポート

9mm Parabellum Bullet ◆ 2011/12/30 EARTH STAGE 13:00~
 
この日、EARTH STAGEでトップを飾ったのは、御大、渋谷陽一氏の、「彼らがオープニングなら、盛り上がらないはずは無い!」との劇的な呼び声で招かれた9mm Parabellum Bullet。登場早々から荒々しくギターを掻き鳴らし、叫ぶように歌い続ける彼らに、会場はしょっぱなから大興奮。

FLYING KIDS ◆ 2011/12/30 MOON STAGE 14:00~
 
猛烈なステージを繰り広げるアーティストがほぼ間髪いれずあちこちで激音を鳴り響かせ、それを目当てに来たロックファンが会場を埋め尽くす中、現れたのは、ご存知FLYING KIDS。2007に再結成を果たし、2011年には2年ぶりのアルバムをリリースした彼ら。ゆったりしたビートの中にしっかりと埋め込まれたVo.浜崎貴司のソウルフルなヴォイスからワーミーな空気が会場を包み込む。何かを発散したい、という衝動のときもあれば、心を洗ってもらえるような、安らぎが必要なときもあるだろう。彼らの音はまさに後者そのもの。そして浜崎の一言、「来年がいい年となることを願って、この曲を最後に贈ります。」とともに、彼らの代表ナンバーとも言える「幸せであるように」。単にお馴染みのメロディが流れているだけでなく、そこには真に切なる思いを人々の心に染み込ませる様な感情が込められていた。
 
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avengers in sci-fi ◆ 2011/12/30 ASTRO ARENA 15:10~
 
ASTRO ARENAでは、強烈なデジタル・グルーヴとロックなラフネスを絶妙にミックスした三人組、avengers in sci-fiが、そのうねりを伴う衝撃的なステージで観衆を圧倒した。ギター、ベース、ドラムというオーソドックスな楽器を抱えながらも、更に彼らの周りをぐるりと取り囲む多くの電子機器。まるで彼らの感情の赴くままに動く様に反応するように、そっと触れたエレクトリックから絶妙なタイミングで、狙い通りの不協和音が斬新なハーモニーを奏でる。アクティヴなベースと、絶妙に絡む音の波がアリーナ全体を揺らし、まるで感電したようにその刺激に人々は我を失うが如く踊り続けた。
 
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マキシマム ザ ホルモン ◆ 2011/12/30 EARTH STAGE 18:00~
 
再び、EARTH STAGE、マキシマム ザ ホルモンの登場だ。そのフォロワーの多さは、いかに彼らがこのステージに上がることを絶対用件として認識されていたかを物語っていた。その激しいサウンドでステージからフロアに波状攻撃をかけると、会場が文字通り大きく波を打つ。破天荒なMCも彼らの持ち味、ステージを構成する一つの要素として、大いに会場を盛り上げた。

coldrain ◆ 2011/12/30 MOON STAGE 20:00~
この日、MOON STAGEでラストを迎えたのは、ロックの情熱に溢れたcoldrain。激しくのたまうように全身でビートを感じるメンバーと対照的に、ほぼ直立でその存在感を強力に表すVo.のMasato。「強い心を持って生きてください。ルールがあるので、それだけは守って、自分で責任を持ってください。“飛べ”って言われたら、その場で飛んでください。前に飛び込む必要はありません。でも、全力で飛んでください!!」年末のイベントで語られるであろう、「今日くらい羽目を外して、楽しもう!」というような台詞とはまったく正反対の厳しい言葉にも聞こえたが、だからこそ彼らの真剣さ、ひたむきさがストレートに伝わってくる。真っ向から真剣勝負を挑むようなそのフロアとステージの立ち回りは、生きることに対する壁が存在すること、それに立ち向かう決意、勇気が、自分達にも持てることを真に表しているようにも見えた。
 
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グループ魂 ◆ 2011/12/31 EARTH STAGE 15:15~
 
2011年最後の日、広大なEARTH STAGEでトップを務めたのは、グループ魂。俳優として今年はヒットも飛ばした阿部サダヲ、そして映画監督として名高い宮藤官九郎を中心に、放送禁止ギリギリの破天荒なライブパフォーマンスを展開し観衆を圧倒。中には今年の世情を笑い飛ばすちょっと危ないジョークも見られたが、ステージを見に来たファン達を爽快にする彼らの思いは、この新たな年を迎える「儀式」に、必要不可欠なものだったに違いない。その理由は、ライブ後に満面の笑みを湛えた観衆達の表情が物語っていた。
 
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佐野元春&THE COYOTE BAND ◆ 2011/12/31 GALAXY STAGE 17:20~
 
堅実な佐野元春がステージに現れ、不要なギミック等一切無いシンプルな、しかし訴求力の強いサウンドをホールいっぱいに満たしていく。「年末のこのロックフェスに呼んでくれてありがとう!一緒に歌ってくれる人がいれば嬉しいな。年を越えてもっとよくしていこう!」そんな呼びかけから、フロアとの掛け合いを続け、その思いを更に強めていく。
彼らより激しく、刺々しいサウンドは他のステージにもあったかもしれない。が、佐野のヴォイスには、今を見つめる姿勢のようなものが感じられ、ずっと聴いていたいという余韻を流していた。

 

androp ◆ 2011/12/31 ASTRO ARENA 19:30~
 
その出で立ちには謎が多い反面、絶妙な変拍子やポリリズム等の複雑な曲構成の中でもメロディに歌心を注ぎ込んだ質の高い楽曲で多くの話題を呼んでいるandrop。ヴォーカルの内澤崇仁がそっと語る。「今年は辛いことや悲しいこともあったけれど、それを忘れずに今日を楽しめたらと思います。」
その複雑かつ完成された楽曲からは、色彩感溢れ、かつ幾何学的にも文学的にも見える、多次元の魅力が感じられた。単なる実験的な試みに終わらない彼らの個性は、まだ走り始めたばかり、2012年の躍進も非常に楽しみだ。
 

真空ホロウ ◆ 2011/12/31 MOON STAGE 22:15~
 
いよいよ大詰めに近づいてきた頃にMOON STAGEに登場したのは真空ホロウの三人。登竜門、「RO69JACK 2009」を勝ち抜いてきた、まさにCDJの純正アーティストと言える存在だ。
「地震の後はバンドが出来るか不安だったけど、こうしてライブが出来た。ありがとう!!」泣きながらベースの村田智史が語る。まだ日本を代表するロッカーとしては若い彼らだが、そんな素朴さがステージとフロアとの距離をグッと縮めるように親近感を感じさせる。心からのメッセージを伝えようとガムシャラに自分達をさらけ出す彼らに、多くの観衆が共感の声を上げた。
 
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モーモールルギャバン ◆ 2012/12/31 COSMO STAGE 23:45~
 
いよいよカウントダウンの瞬間へ。COSMO STAGEでは強烈なパフォーマンスで今年旋風を巻き起こしたモーモールルギャバンが登場。まるでフリー・ジャズのようにアバンギャルドな出で立ちで登場、新年を目前にして、ドラムのゲイリー・ビッチェが叫ぶ。「2011年ももうすぐ終わるぞ!モーモールルギャバンでいいのか!?」その叫びが、観衆からの「Yeah!」という答えで、何倍にもなってステージに戻ってくる。楽器と戦うように立ち回り、まるで狂ったように音を叩き出す彼ら。その荒々しいパフォーマンスに反して、流れるグルーヴィーなリズムとハーモニーに、成す術も無く翻弄されるオーディエンス。そして迎えたカウントダウンで感は極まり、最後の一音までハイテンションの演奏をやり切った。
 
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中川翔子 ◆ 2011/12/31 MOON STAGE 24:45~
 
夜12時を過ぎて登場したのは、中川翔子。元々歌唱力、パフォーマンス共に優れた彼女は、まったく他のアーティストに引けを取ることもないロックなパフォーマンスでフロアを沸かせた。思いが極まった彼女は、フロアと共に彼女の得意技「バッカルコーン」を連発、幸先の良い一年を象徴するような、エキサイティングなショーを披露した。
 
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住所不定無職 ◆ 2011/12/31 MOON STAGE 27:45~
 
遂に4日続いたCDJも大詰め、MOON STAGEに現れたのは新鋭、住所不定無職。まったりした朝方のステージで、ドラムセットに座ったユリナが叫ぶ。「CDJで一番下手くそな私達の音を聴きやがれ!」仕舞いにはギターを投げ捨ててしまった彼女らは、そのパンキッシュで荒々しいプレイを逆手に取り、自らを恐れること無くさらけ出すような生々しいプレイを披露、それは何か困難の中の決意を表すような、真剣で前向きな姿勢すら感じさせ、もうヨレヨレのはずである観衆を更に奮い立たせた。
 
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◆COUNTDOWN JAPAN11/12 公式サイト
http://countdownjapan.jp/
 
◆information
COUNTDOWN JAPAN11/12 熱演の模様をWOWOWで独占放送決定!
2012/2/23 PM7:00
DAY-1~2 COSMO STAGE/MOON STAGE
2012/2/23 PM9:00
DAY-1~2 EARTH STAGE/GALAXY STAGE
2012/2/24 PM7:00
DAY-3~4 COSMO STAGE/MOON STAGE
2012/2/24 PM9:30
DAY-3~4 EARTH STAGE/GALAXY STAGE

番組詳細・視聴はWOWOW特設サイトへ
http://www.wowow.co.jp/music/cdj1112/

 

 
4日間で14万人を動員したCDJも遂に終焉。その華々しい入場から各ブース、隅から隅まで賑やかなイメージとは裏腹に、静かな幕引きとも言える退場口。でも、だからこそこの日の、各アーティストが放った強烈なメッセージが鮮烈に印象として心に焼き付けられ、いつまでも消えないものとして人々の中に残る。
 
ここは、新たな挑戦の場に向けての、スタートを切る一歩とも言える。厳しい日々の生活の中で、希望を見出す突破口、勇気を与えてくれる切っ掛けとなるロックが駆け抜けたこの4日間。ここに訪れた人たちは、きっと彼らが与えてくれたものを糧に、この新たな日より、力強く第一歩を踏みしめていく。


【COUNTDOWN JAPAN 11/12】 Part 1 も是非ご覧ください!
Part 1は、COUNTDOWN JAPAN開催12/28、29のレポート!
以下をクリック!
http://www.beeast69.com/feature/6265