特集

TEXT & PHOTO:鈴木亮介

Photo国内のロックシーンの最先端を駆け抜け、輝き続けるフロンティアたちの横顔に迫る特集「ROCK ATTENTION」。通算14回目は、わが国のロックの創世記を築き、35年にわたってトップランナーであり続けた伝説のバンド、ムーンライダーズを特集!

メンバーは鈴木慶一(Vocal&Guitar)、岡田徹(Keyboards)、
かしぶち哲郎(Vocal&Drums)、武川雅寛(Vocal,Violin&Trumpet)、白井良明(Vocal&Guitar)、鈴木博文(Vocal,Bass&Guitar)の6名。昨年12月31日をもって、惜しまれながらも無期限の活動休止となったムーンライダーズ。まずはその偉大なる歴史を、主要なアルバムのジャケットとともにおさらいしてみたい。
 

 

ムーンライダーズの足跡(1975~2011)

1975年結成。当初はアグネス・チャンのバックバンドを務めるなどしたのち、1976年1月『火の玉ボーイ』をリリースしデビュー。当時は「鈴木慶一とムーンライダース」であった。翌1977年2月に「ムーンライダーズ」としてアルバム『ムーンライダーズ』をリリースする。
 
 

活動当初はアメリカン・ロックを土台としたサウンドが特長であったが、徐々にその音楽には多様性が見られるようになり、1978年12月リリースの『ヌーベル・バーグ』ではシンセサイザーを積極的に取り入れ、国内におけるニューウェーブミュージックの先駆者として高い支持を集めるようになる。
 
 

ニューウェイブサウンドを取り入れた彼らが次に目指したのは、当時は画期的な試みであるコンピューターの導入であった。楽器をパーツごとに別々に録音するといった実験的なレコーディングの末誕生したのが『マニア・マニエラ』だ。だが「難解すぎて売れない」との判断から発売中止。のちにCDとして1982年12月にリリースされる。
 

飛ぶ鳥を落とす勢いで楽曲を制作し、1986年にはデビュー10周年を記念し精力的なツアーを敢行した彼らだが、1986年11月リリースの『DON’T TRUST OVER THIRTY』を最後に、一時活動を停止する。その間、6人の「ライダーズ」達はソロ活動やプロデュースを各々行う。白井良明は1988年6月にソロアルバム『City Of Love』を発売。
 

メンバー6人のソロ活動の中でも、鈴木慶一が音楽制作を手がけた任天堂のゲーム『MOTHER』はとりわけ各界から注目を集めた。このほか、かしぶち哲郎岡田徹らも多くのCMソングの制作を手がけており、ムーンライダーズが「音楽職人集団」と呼ばれる原点がこの時期にあるとも言えよう。
 
 

1991年4月に『最後の晩餐』をリリースし、5年ぶりに活動再開。先進的なサウンドに加え、当時の混迷する社会問題に真正面から向き合った歌詞が、バブル崩壊で光を失った人々の高い共感と支持を集める。翌1992年9月には「アダルト・オンリー・ロックンロール」というテーマをタイトルにした『A.O.R』が発売された。
 
 

90年代後半は様々なミュージシャンとの共演で都度ファンを楽しませた。1996年12月発売の『Bizarre Music For You』には矢野顕子細野晴臣らが参加。1998年7月発売の『月面讃歌』には斉藤和義原田知世らが参加。さらに、同年11月にはボーカルに奥田民生を迎え「Sweet Bitter Candy」をシングルカットしている。
 
 

2000年代に入ると6人の個性が一層際立つようになる。2000年12月にはメンバー6人がそれぞれ個々に宅録したものを収めた『Six Musician on Their Way to the Last Exit』がリリース。2001年12月には16曲・68分の超大作『Dire Morons TRIBUNE』がリリースされた。
 
 

ムーンライダーズの功績の一つとして見逃せないのが、CMソングだ。「きいてアロエリーナ」(鈴木慶一)、「ラララプレイステーション」「ドコモダケ」(いずれも岡田徹)、など、全国民が一度は聴いたことのあるポップでキャッチーなCM曲は、いずれも「ライダーズ」達が手がけている。2006年12月には『MOONRIDERS CM WORKS 1977-2006』と題したCMソングだけのベストアルバムが発売された。
 

そして2011年11月11日、満月の夜、通算21枚目のオリジナルアルバム『Ciao!』のリリースとともに「2011年12月31日をもって無期限の活動停止」という衝撃的なニュースがファンを動揺させた。12月13日には大阪なんばHatchで、12月17日には中野サンプラザで公演が行われ、鈴木慶一は「進化したらまた会いましょう」という言葉を残しステージを下りた。

 

 
本誌・BEEASTでは12月30日にタワーレコード新宿店にて開催された限定ライブの模様をレポート。「ライダーズ」達6人の表情、言葉、そしてファンの心境に迫った。
「The Moonriders Rooftop Gig 30 Dec. 2011」と題して行われたこの日のライブは、ニューアルバム『Ciao!』の購入者を対象に抽選で350名が招待された。午後1時半に屋上の扉が開かれると、整理番号順にファンがステージ前に続々と押し寄せ、真冬の屋上にも関わらずステージ前はおしくらまんじゅう状態で熱を帯び始めている。

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午後2時、鈴木慶一岡田徹武川雅寛かしぶち哲郎鈴木博文白井良明の6名が入場。ステージに立つと、温かい歓声が上がる。さぁいったい何を最初に弾いてくれるのか。手短なセッティングで、奏でられたのはTHE BEATLESの「Get Back」?と一瞬思わせるようなアレンジで、『最後の晩餐』収録の「Who’s gonna die first?」だ。

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前身のはちみつぱいというバンド名の由来がTHE BEATLESの「Honey Pie」から来ているように、ムーンライダーズの音楽的ルーツにTHE BEATLESの存在は大きく君臨しているのだろう。思えば、40年以上前にTHE BEATLESが解散する際、ロンドン・アップル社の屋上で「Rooftop Concert」を行っている。やはり、ムーンライダーズの歴史はここでピリオドが打たれてしまうのか。

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MCを一切挟むことなしに演奏は続く。2曲目「エレファント」は1981年にシングルリリース。凶弾に倒れたJohn Lennonを思い作られた曲だ。白井良明の力強いギターリフ、かしぶち哲郎のパワフルなドラムスで、グッと盛り上がってくる。3曲目「水の中のナイフ」は1980年のアルバム『CAMERA EGAL STYLO / カメラ=万年筆』収録、4曲目「果実味を残せ! Vieilles Vignesってどうよ!」は2011年1月の配信限定リリース曲。こうして書いていても歴史の長さを感じる。

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「空がきれいだ…正月みたいな空だ」大きな独り言のような口調で、鈴木慶一がつぶやく。5曲目「9月の海はクラゲの海」のイントロが流れると、ワッと会場がどよめく。1986年11月リリース『DON’T TRUST OVER THIRTY』に収録され、1995年9月にシングルカットされた、ムーンライダーズの看板曲の一つだ。「Everything is nothing~」…哀愁を帯びた歌詞とメロディに、武川雅寛の奏でるノスタルジックな旋律が胸を打つ。

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6曲目「無垢なままで」、7曲目「Mt.,Kx」と、ここでようやくニューアルバム『Ciao!』からの選曲。そして鈴木博文のベースがうなり、岡田徹のシンセサイザーがはじける「無防備都市」、さらに「スカーレットの誓い」ではイントロから「ヤーヤーヤヤーヤーヤー」の大合唱!最後はBeethovenの第九を鈴木慶一流にアレンジした「No.9」で、全10曲の演奏が終了。大歓声の中、メンバーはステージを下りる。

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熱烈なアンコールに応えて、6人の「ライダーズ」達が再び登場。この日の東京は、ピーカンの快晴。そんな空にちなんで急遽セットリストを変更し、最後に披露されたのは、白井良明の名曲「トンピクレンっ子」!「ワッホッホッワッホッホ」と観客も拳を挙げて大合唱!
「これでオーディション受かったかな?来年からはタワーレコードのレジだ!」鈴木慶一が言う。あくまでもTHE BEATLESへのオマージュを貫きながら、「ルーフトップ・ギグ」は幕を閉じた。

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◆セットリスト

M01. Who’s gonna die first?
M02. エレファント
M03. 水の中のナイフ
M04. 果実味を残せ! Vieilles Vignesってどうよ!
M05. 9月の海はクラゲの海
M06. 無垢なままで
M07. Mt.,KX
M08. 無防備都市
M09. スカーレットの誓い
M10. No.9
 
-encore-
M01. トンピクレンッ子
 

 

 
結局、ムーンライダーズ無期限活動停止の真相は何だったのか。またこのメンバーで活動を再開する日は来るのか。そんな思いを抱きつつ、年が明けた2012年のメンバー個々の動きに注目した。鈴木慶一は1月19日に曽我部恵一の主催するライブにゲスト出演。岡田徹olymoogイマイケンタロウと組んだCTO LAB.(シーティーオー・ラボ)で1月19日と3月19日にライブ出演するなど精力的に活動している。そして、無期限活動停止を発表して以降、初めて複数のメンバーが揃ったのが、1月28日に高円寺Showboatにて開催された「月朧なれど…」だ。かねてより「ガカンとリョウメイ」としてユニットを組んで活動していた白井良明武川雅寛によるワンマンライブが敢行。このライブで冒頭、白井良明は「こんばんは。まだムーンライダーズです」とあいさつし、観客を沸かせた。しかし、今後の活動について彼らの口から語られることはなかった。

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35年にわたり、幾つものレコード会社を渡り歩き、25枚のオリジナルアルバムをリリースしてきたムーンライダーズ。その音楽は常に時代の幾歩も先を行き、爆発的なヒットこそなかったものの、長年にわたり多くの人々から愛され続けてきたことは紛れもない事実だ。そして、我々はこれからも、時にテレビを通じて、時に誰かのボーカルを通じて、どこかで彼らの楽曲に触れ続けることだろう。「あれ、このCMソングもムーンライダーズだったの?」というように。そして、またいつか、どこかで、ひょこっと現れる日がきっと来るだろう。その時までしばし…Ciao!
 

◆ムーンライダーズ 公式サイト
http://www.moonriders.net/
 
◆鈴木慶一 公式サイト
http://www.keiichisuzuki.com/
◆岡田徹 公式サイト
http://www.valb.info/
◆武川雅寛 公式サイト
http://moonriders.net/takekawa.html
◆かしぶち哲郎 公式サイト
http://kashibuchi.com/
◆鈴木博文 公式サイト
http://metrotron-records.com/
◆白井良明 公式サイト
http://www.tonpi.net/top.html
 
◆取材協力:タワーレコード新宿店
http://tower.jp/store/Shinjuku
◆インフォメーション
≪武川雅寛≫ソロ・ライヴ決定!
”30年前の私と今の僕。”

2012/04/30(祝)【京 都】cafeザンパノ
http://www.p-hour.com/

 
≪白井良明≫
あがた森魚デビュー40周年記念アルバムのサウンドプロデューサー&40周年記念コンサート全公演に参加決定!

2012/04/21(土)【北海道】道新ホール
2012/04/25(水)【大 阪】サンケイホールブリーゼ
2012/04/27(金)【福 岡】市立少年科学文化会館
2012/04/28(土)【名古屋】愛知芸術劇場小ホール
2012/05/12(土)【東 京】日比谷公会堂

※全公演に白井良明武川雅寛鈴木博文が出演するほか、東京公演はゲストとして鈴木慶一かしぶち哲郎岡田徹が出演予定。

 


 
 
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