特集

TEXT & PHOTO:鈴木亮介

 
東日本大震災から4年半。着実に訪れる”風化”と、新たな課題。「震災からの復興を願う」というスタンスは今、過渡期に入っている。
 
東日本大震災の復興祈願を目的とした野外チャリティフェス『Place2015』が2015年9月22日(火・祝)に茨城県日立市の河原子北浜スポーツ広場にて開催された。
 
主催のTHE SALAをはじめ、多数のロックバンド、アイドル、ソロ弾き語りなどのミュージシャンが出演。ゲストには土屋アンナSoulJa/中村舞子四星球が登場した。
 
以前、主催のTHE SALAメンバーのインタビューを掲載した(参照:第20回 Stand Up And Shout ~脱★無関心~)本フェスの模様と”その後”を、本誌では特集記事としてご紹介したい。
 
フェス内では、先般台風17号などが影響する大雨の被害を受けた茨城県常総市地域への寄付も呼びかけられた。自然災害の脅威に怯える人々に寄り添うTHE SALAと、その思いを共有するミュージシャンたちの熱い思いを、記事から読み取っていただければ幸いである。
 

THE SALA PRESENTS
東日本大震災復興祈願野外フェス-Place2015-
Supported by Naturally.K

areamap 
音楽フェス×夏祭り×打ち上げ花火
http://sala-web.com/place2015/
日付:2015年09月22日(火・祝)
 
会場:【茨城】河原子北浜スポーツ広場
(茨城県日立市河原子町1丁目5−15)
 
時間:開場 9:00 / 開演 10:00
料金:入場無料(募金あり)
 
出演者:
THE SALA(茨城)、土屋アンナ(ゲスト)、SoulJa/中村舞子(ゲスト)、四星球(バンドゲスト)
ココロ、ハレル(茨城)、Anny(神戸)、SECONDWALL(東京)、sylph emew(滋賀)、HEAD LAMP(大阪)、THE SNEEZE(東京)、nainaiboys(東京)、虎の子ラミー(東京)、RATTLEKIDZ(名古屋)、Complex Numbers(福岡)、東京ネイルキャッツ(東京)、Tha Fu’ze(神戸)、あいう(大阪)、EYES MEAN NOTHING(名古屋)、元気堂(東京)、助っ人集団石井ジャイアンツ(東京)、GREEN EYED MONSTER(厚木)、NANAIRO(東京)、NUMMERNAL9(茨城)、JIJIE(東京)、27-HATANANA-(東京)、RABBIT WHICH BURNS(東京)、スマトラブラックタイガー(茨城)、Cicada of eighth day(茨城)、Corn start’s(茨城)、Bean Sprout(東京)、ブロチオ(茨城)、空ノ音(東京)、PICKLES(大阪)、Rubato(大阪)、海月(東京)、+りょう。(茨城)、藤井ケイイチ、柴田和貴(茨城)、金谷好益(大阪)、Infinity∞Throat(茨城)、 colors orchestra(茨城)、guide谷井大介(茨城)、つばさFly(東京)、 VERYS(東京)、HEAD SPEAKER(東京)、Qam(東京)、madmantails(東京)、SOUNDBAG(茨城)、THE SECOND GARDEN(茨城)、Rojo’s(茨城)、川嶋志乃舞(茨城)、Dishnored Children(東京)、藤良多(茨城)、ドラマティックパンティーライン(茨城)、由圭(茨城)、無限大(茨城)、BLACK BILLY(東京)、Blite Sevens(神戸)、スズキエリ(東京)、B×A×G(茨城)、marigold(茨城)、THE ROMANCE JOE(東京)、minasoko(東京)、KONITZ(東京)、All Time My Action(福岡)、助川ダンスカンパニー楽舞(茨城)、多賀中学校吹奏楽部(茨城)、W-Hi(東京)、Mrs.Halloween(大阪)、のこのこ。(茨城)、Ryouhei Suzuki(茨城)、日立市郷土戦士サンライザーK(茨城)、うかるくん、もうかるくん(茨城)、DJ 工藤マサヤ(東京)、DJ Kanemits(福岡)、DJ U☆Z(名古屋)、DJ KAZU(福岡)

 

朝のスケッチ

 




 

 

 

会場となる河原子北浜スポーツ広場は、JR常磐線・常陸多賀駅より徒歩15分ほど。地元の運輸各社の協力で無料のシャトルバスも運行されたが、徒歩でも一般的な大型フェスに比べるとむしろ近いくらいの徒歩感覚で、あっという間に海岸が見えてきた。
 
受付には地元のガールスカウトに所属する小学生たちの姿が。リストバンドを手渡すとともに、募金の呼びかけを行っていた。そういえばこのフェスは入場無料なのだ。「震災復興チャリティ」ということ以上に、普段ロックバンドの演奏に触れる機会がない地元の人たち、特に子どもたちに一人でも多く足を運んでほしいという主催者の強い願いが込められているように感じるが、入場料という感覚で、募金箱に自然と手が伸びた人も多いだろう。
 
朝10時のスタートに向けて、続々とお客さんが集まっている。家族連れや学生の姿が多く、中には(会場奥にドッグランがあることもあってか、)犬を連れて入場する人も見られる。日差しを浴びて汗がにじみ出るほどだが、海風が常時吹いているので、心地よい暑さだ。
 
 

 

 

 


【希望ステージ】

朝10時を回り、いよいよ演奏スタート!「Place2015」の先陣を切るのは、Infinity∞Throat元気堂Cicada of eighth dayの3組。そのうち、小高い丘に設営された「希望ステージ」には、このか(Vocal)、りお(Piano)によるガールズ2ピース、Infinity∞Throatが登場。地元・茨城を拠点に全国で活動中の彼女たち。エモーショナルなボーカルに落ち着いたピアノの音が乗る。懐かしさに温かさもあるスローな楽曲から、キュートでお洒落な曲まで披露した。
 
続いてステージ前には30名以上の小学生が集結。助川ダンスカンパニー楽舞に所属するキッズダンサーたちによるダンス!EXILEなどのヒット曲に載せての一生懸命、元気いっぱいの踊りが披露された。この後、希望ステージにはBLACK BILLY、B×A×G、nainaiboys、Soulja,中村舞子、多賀中学校吹奏楽部、助っ人集団石井ジャイアンツ、Anny、HEAD LAMP、TEAM VERYS、四星球、土屋アンナ、 ココロ、ハレル 、THE SALAが出演した。
 
 

 

 

 

【海ステージ】

午前11時。入り口から一番近い海ステージには、グリモンことGREEN EYED MONSTERの姿があった。いつものライブハウスのクセでか、「こんばんはー!」と絶叫。そのポップでパンクな音楽はしかし、夜の地下室だけでなく朝の海辺にもぴったりだ。
 
観る者全員を笑顔にするアップテンポナンバーに、スキップしたくなるような低音が加わる。直前に出番を終えたばかりのアイドルグループ、Qamのメンバーも加わり、サークルも出現!盛り上がれる音楽は、場所も時間も選ばない。
 
海ステージにはこのほか、27-HATAHATA-、NANAIRO、Complex Numbers、スマトラブラックタイガー、東京ネイルキャッツ、RABBIT WHICH BURNS、HEAD SPEAKER、sylph emew、JIJIE、SECONDWALL、つばさFly、THE SNEEZEが出演した。
 
 

 

 

 

【風ステージ】

海ステージの奥に設けられた風ステージは、観客側が階段になっており、座ってのんびりと演奏を楽しみたい人にも優しいステージだ。このステージに昼12時に姿を現したのは、虎の子ラミーだ。躍動感あふれるベースとドラムのリズム隊に、クールなギター。そこにユニークな曲の世界観が広がる。
 
風ステージにはこのほか、元気堂、EYES MEAN NOTHING、Dishnored Children、All Time My Action、RATTLEKIDZ、Blite Sevens、The Fu’ze、KONITZ、marigold、あいう、THE ROMANCE JOE、madmantails、NUMMERNAL9が出演した。
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

【木ステージ】

会場の奥にはライブをより身近に楽しむことができるステージが2つ設けられた。そのうち木ステージでは、大阪を拠点に全国で活動するガールズバンド、PICKLESのステージが繰り広げられていた。ステージの規格をはるかに超えたパワフルな演奏と突き抜けるボーカル。爽快なステージでドッグランに向かう人の足も止めていた。
 
木ステージにはこのほか、Cicada of eights day、ブロチオ、空ノ音、Rubato、THE SECOND GARDEN、Corn start’s、Rojo’s、G.O.A.T.、Mrs.Halloween、無限大、minasoko、ドラマティックパンティーライン、Bean Sprout、SOUNDBAGが出演した。
 
 

 

 

【花ステージ】

会場の奥にもう一つ設けられた花ステージ。こちらは座席が設けられ、ゆったりと屋外での音楽を楽しめるようになっている。夕方、ステージに登場したのは地元・茨城出身の現役芸大生にして津軽三味線奏者の川嶋志乃舞(かわしましのぶ)だ。3歳より佐々木光儀師に弟子入り、津軽三味線全国大会の各部門で通算4度の優勝を誇り、東京藝術大学音楽学部の長唄三味線専攻で学びながら、地元・笠間市の特別観光大使や水戸市の「みとの魅力宣伝部長」を務め、さらに全国を舞台にライブ出演を続けるなどアクティブに活動中だ。
 
そんな川嶋志乃舞の持ち味はジャパニーズ”カワイイ”カルチャーと伝統芸能の見事なまでの融合。ポップでキュートな歌声に、三味線の音色が軽快に乗る。オケを使った曲や、ダンスに合わせて三味線が歌っているような曲も披露。最後は津軽じょんがら節で大きな拍手を集めた。
 
花ステージにはこのほか、Any colors orchestra、藤井ケンイチ、柴田和貴、のこのこ。、スズキエリ、海月、由圭、藤良多、W-Hi、金谷好益、朝日駿、Ryohey Suzuki、谷井大介、+りょう。が出演した。
 
 

 

 

 

 

【大トリ THE SALAのステージ】

四星球土屋アンナらのゲスト出演もあり、多数のミュージシャンが代わる代わる盛り上げた「希望ステージ」。その最後の出演者にして、全出演者のトリを務めるのが本フェスを主催する茨城・日立市が誇るロックバンド、THE SALAだ。午後7時半を回り、気温が下がってきたが、ステージ前の観客の熱気は全く冷めることがない。
 
 

 

 

 

 

Emiko(Vocal)がソウルフルな歌声を後ろの方まで轟かせる。8月にリリースした新曲「FRIENDS」で会場のボルテージは最高潮!「みんなで楽しむために、一年間この世界を作ってきました!」中盤は全ての出演者を壇上に招いて大合唱。観客と出演者、大人から子供まで、皆が一つにつながる。
 
nakamu(Bass)が叫ぶ。「死んじまいそうな俺たちを守ってくれたこの街を、今度は守ってやろうと思ったんだ!」「みんなのふるさとになろうと思った。精一杯の愛を込めてみんなのふるさとを作ろうと思った。ずっとずっと、あなたの光に…」大きな愛に包まれた「Place 2015」、最後は大輪の花火が日立の上空に打ち上げられ、歓喜の中幕を閉じた。「この街で、生きていきましょう!」
 
 

 

 

 

主催者発表で約7000人の来場を記録した「Place2015」。収支報告の仮計算書が後日ブログにて発表された。今回のフェス開催により地元・日立市に56万3千円、また豪雨の被害を受けた常総市に50万円が寄付される予定だ。
 
そのうち、花火募金やグッズ売上金の目標額に到達しなかった部分については今後、グッズ通販などを行い補填していくという。また、「Place2015」の記録DVDも制作されるほか、今回のフェス開催を経てTHE SALAはニューアルバムをリリース。その売上金は全て「Place2015」の事業費にするという。
 
本記事の制作にあたり、”ふるさと”という言葉の重みを、改めてかみしめている。「ふるさとは遠きにありて思ふもの」――なんて強がることができるのも、帰る場所があるからこそだ。そのふるさとを失ってしまう、もしくは今目の前で失われつつある人、地域のことを思うと、胸が締め付けられる。でも「Place」を一日取材していて、THE SALAをはじめとする運営スタッフの動きを見ていて、なんだか勇気付けられたように思う。失ったのなら、また作ればいい。失いそうなら、その手で、守り続ければいい。決して簡単なことではない。でも、あきらめなければ、きっと実現できる。そんな気がした。
 

◆「Place2015」収支報告(仮計算書)
収支合計 93.6万円
募金振り分け:
日立市 56.3万円/常総市 50万円

 
ステージ設営、設備費用 216万
音響、照明費用 88万
部材、備品費用 26万
警備員費用 14万
広告宣伝費 78万
グッズ製作費 90万
花火 100万
バス、レンタカー、運転手、各種費用 106万
DVD製作費 36万
写真集製作費 36万
ゲストアーティスト出演費用各種 300万
各種雑費 13万
 
支出合計 1103万
 

入場募金 81万
ドリンク売上 87万
各企業&バンド協賛金 257万
THE SALA協賛金 85万
(CD¥1500×300枚+パーカー¥4000×100枚)
代表協賛金 65万
花火募金57.6万
各種募金 48万
出店料16万
グッズ売り上げ 500万(12/1現在179.5万円)
[内訳]
Tシャツ500枚=100万(残り247枚)-49.4万円
タオル350枚=35万(残り184枚)-18.4万円
ラバーバンド4500個=225万(残り2245個)-112.7万円
DVD300枚=90万(残り300枚)-90万円
写真集200冊=50万(残り200冊)-50万円
 
収入合計1196.6万 [常総市募金 12.7万]

 

◆Place公式チャリティーグッズ 販売サイト
http://sala-web.shop-pro.jp/
 
◆「Place 2015」 公式サイト
http://the.sala-web.com/place2015pc/top.html
◆THE SALA 公式サイト
http://sala-web.com/
◆THE SALA インフォメーション
ワンマンライブ開催!
・2015年12月27日(日)【茨城】日立市シビックセンタースタジオホール
 ※無料ワンマン。満席のため予約受付終了
 
その他ライブ情報
・2015年12月19日(土)【東京】新宿Marble
・2015年12月20日(日)【京都】京都MOJO
・2016年01月07日(木)【東京】渋谷CLUB QUATTRO
 
リリース情報
「FRIENDS / 窓際の夜」

・2015年08月19日(水)発売

◆関連記事
【連載】ACTION 20 脱・無関心(THE SALAインタビュー)
http://www.beeast69.com/serial/mukanshin/123440
【連載】新譜るLIFEダイアリー THE SALA「FRIENDS / 窓際の夜」
http://www.beeast69.com/serial/simple/136657