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TEXT:桂伸也 PHOTO:N-yukano

【密着レポート第5弾:UNITED】 Part 1 ライブ密着レポート
国内では、結成10周年選手のバンドが俄に見られ始めている。2次産業、3次産業として、音楽という活動で一つのコミュニティを形成するに当たり、そこまでの活動を続けることは困難であり、この壁を突破したことは、讃えるべきと言ってもいいだろう。だが、ここにそんな壁すら笑い飛ばしてしまうほどに驚愕の活動を続けているバンドが存在する。

彼らこそ日本のヘヴィ・メタル創世記からその名を轟かせた古豪、UNITEDだ。1981年の結成より、現在はオリジナルのメンバーは残っていないが、その名実ともに日本のヘヴィ・メタル・シーンを牽引してきた立て役者達。近年は更なる進展を図るべく迎え入れた大型ヴォーカリストKEN-SHINと共にニューアルバムの発表、そしてLOUD PARKへの出演と、精力的な活動を続け、更なる躍進に大きな闘志を燃やしている。

2011年に、30周年という大きな節目を迎えた彼ら。通常では実現できない、過去のメンバーを集結させた盛大なこの宴の席、そこから見えてくる歴史の深さと、これから目指していく彼らの行方を、密着取材にて追った。


1.リハーサル(13:00~)

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この日ちょうど午後に差し掛かったころ、UNITEDの面々は現れた。長きに渡りUNITEDを支えている大黒柱、横山を中心に2枚看板のギター大谷吉田、そして、強力なリズムの屋台骨を司るドラマー、Akira。変に緊張しているわけでもないが、すっかり力を抜いてリラックスしているわけでもない、皆一様に真剣な眼差しだ。

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セッティングが終わり、サウンドチェックに入る。それぞれの音のバランスを確認したあと、何曲か軽く慣らし演奏に入るが、特に問題も見られないようだ。横山がPAに声を掛ける。「いいね!もう充分だ!!逆に何やって欲しい?そのままリハーサルを始めちゃおうか?」Vo.のKEN-SHINはまだ来ていなかったが、スケジュールは前倒しで進むことになった。

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やがて、旧メンバーである湯浅古井が会場に現れる。そして結成当時のメンバーであるNAO中里(以下、マンタス)が現れると、みな口々に“懐かしい!”という言葉を発する。最初は真剣で言葉数も少ない会場だったが、その瞬間に和やかな空気が舞い込んだように会場が明るくなった。

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そして、順番にメンバーが入れ替わりリハーサルは進行していく。リフを弾くのに戸惑っていたに、横山が「こうだよ!!」と笑いながらフレーズを教えている。“いやぁ、参った”と苦笑いする、その様子を見ながら笑顔を見せたフロアの面々。リハーサルの場面だったが、“あの時はこんな風にやってたよな”などと懐かしんでいたのかもしれない。

ただ一つの心配事は…KEN-SHINがまだ現れていない。時間は既にオープン前1時間を切っていた。


2.ライブ(19:00~)


開始約30分前、ようやくKEN-SHINは現れた。息も荒く飛び込むように楽屋に飛び込んできたKEN-SHIN。だが、その表情にはリハーサルなしで本番に向かうという重圧のようなものは微塵も感じられなかった。その答えは、正しくライブの際に現れた。フロアには大勢のUNITEDファンが処狭しと会場を占拠している。かくして、ステージの幕は開かれた。

1)Present Menbers:
KEN-SHIN - Vocals
横山明裕 - Bass
吉田”Hally”良文 - Guitars
大谷慎吾 - Guitars
Akira - Drums

 
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会場に目一杯流れていたJUDAS PRIESTのBGMはやがてフェードアウトし、ステージ後方にUNITEDのロゴが映し出されると、フロアからは大きな怒号が随所に溢れ返る。そしてドラムのAkiraから一人、また一人とメンバーが登場するたびにその声は大きさを増していく。

均衡を破るドラムとギターが鳴り響いた瞬間、その怒号はフロアから振り上げられた腕の波と共に一つの大きな塊となり、会場の空気を一気に加熱する。程なくしてKEN-SHINが登場、更に観衆を大きく煽る。フロアに向かって両腕を広げるKEN-SHIN。大柄な彼がその両腕を広げると、十分な広さを持ったステージすら狭く感じられ、更に観衆を威圧していく。いつも正確無比な超絶ドラミングを見せるAkiraも心なしか上気した様子を見せ、時にその様子に気づいたKEN-SHINと顔を合わせてはニヤリと微笑みながら更にグルーヴと激しさを会場の中に注ぎ込む。

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「楽しんでるか、渋谷!?30周年ありがとう!!メッチャ楽しい!もっと子供の自分を見せてくれよ!暴れていこうぜ!!」KEN-SHINの、挑発とも親しみともとれるMCに、フロアからは大きな返答が叫ばれる。

まるでひっくり返りそうになるくらいに反り返り、マイクと格闘する彼を、黙々と微動だにせず支える、横山、大谷、吉田。修羅場を潜り抜けて鍛え抜かれた強靭かつブルータルなディストーション・サウンドが繰り出される中、KEN-SHINを中心に、この閉じられた空間の時間が回る。そのことを示すかのようにKEN-SHINが人差し指をぐっと上に突き上げ、ぐるりと回す。するとフロアではまるでその動きに同期するように激しいモッシュ・ピットとダイブが出来上がる。

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彼のMCでの語りと、激しいシャウトに合わせて会場が揺れる。そこにはまるで、暗黙の了解のような信頼関係が見える。リハーサルは無くても、彼の一言、一動に全く迷いは見られない。ここまで積み上げられたUNITEDという存在の強さこそが、彼自身の個性とともにその頂点に立つ現在のスタンスを支えていると言っても良いだろう。「サイコーだよ、お前らサイコーだ!!」

フロア全体への賛辞を叫び、今度はジャンプし始めると、会場の床を抜け落とすくらいの勢いで、観衆は彼に合わせジャンプを始める。トドメの「United」で第一ステージは幕を閉じた。

一度落ち着きを取り戻した会場。一転、猛烈なSEとともに、ステージ後方のスクリーンではUNITEDの、歴史の一端を映し始めた。つい先日のLOUD PARKでの模様から、最古は1981年の、結成時の写真へ。オーディエンス達はその様子の変化を一枚一枚凝視しながら、時に笑い、時にその歴史の深さを噛み締めていた。

2)1984’s Menbers:
NAO - Vocals
原正樹 - Guitars
中里武(マンタス) - Guitars
滝沢哲夫 - Drums
横山明裕 - Bass

 
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そして、この日最古メンバーでのステージへと移った。「We are Original UNITED!!」最古メンバーの一人、NAOが叫ぶ。UNITEDの、原点のサウンドがここに甦っていた。少し緊張した趣を見せる原と中里、そしてその様子を嬉しそうに、にこやかな表情で支える横山。先程の殺気すら見えた一味違った雰囲気だが、それでもこの貴重な、楽しいライブに熱狂する観衆達を、更に煽り立てるNAO。そのサウンドには時代の遍歴すら感じさせたが、その奥にある変わらないものすら見えてくる。

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その過去を懐かしむように、NAO横山がふざけ合い、語り合う。その和やかな空気を振り払うかのように、トドメの名曲「SNIPER」を叩き込んで、NAOはステージを降りた。

3)1986’s Menbers:
古井義明 - Vocals
原正樹 - Guitars
中里武(マンタス) - Guitars
滝沢哲夫 - Drums
横山明裕 - Bass

 
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“所沢でマーちゃん(原)がナンパした男”という触れ込みで、今度はヴォーカルの古井が現れた。彼の登場に合わせ、UNITED自体もその大きくサウンドの志向を変えた歴史を辿るように、ヘヴィなサウンドを鳴り響かせる。

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それでも、久々のUNITEDでのステージということで、原、中里、滝沢の和やかなプレイが、また会場を沸かせる。長くこの場を離れていた彼らだが、その歴史の大きな原動力となった彼らの存在は、改めてこの場でその意を見せた。

4)1990’s Menbers:
古井義明 - Vocals
吉田”Hally”良文 - Guitars
大谷慎吾 - Guitars
Akira - Drums
横山明裕 - Bass

 
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更に歴史は現在に近づく。原、マンタス、滝沢は掃け、現存の2枚看板ギタリスト、大谷、吉田が登場。更にこの日、参加出来なかった当時のドラマー内野のかわりにドラ マーとしてAkiraが現れる。感極まった古井が叫ぶ。

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「楽しんだ?俺は本当に幸せだ!こんな機会をもらえて、本当に幸せだ!!」
その喜びを目いっぱいに表現するかの如く、懸命のシャウトを続ける古井。その叫びに答えるかのように、エンディングとともにフロアからは林のように立ち並ぶ拳が上がった。

5)2001’s Menbers:
湯浅正俊 - Vocals
吉田”Hally”良文 - Guitars
大谷慎吾 - Guitars
Akira - Drums
横山明裕 - Bass

 
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そして、過去メンバーとのセッションも最後、2001年のメンバー湯浅が登場した。ちょっと緊張もしていたのかテレを見せながらも、気合いを入れるための“ワッショイ”という掛け合いをフロアとともに楽しむ。

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だがその第一声に、ファン達は感じたに違いない、“帰ってきた”と。その強靭なヴォイスと絶妙なアピールは、現存のKENN-SHINに勝らぬとも劣らない魅力を放ち、観衆達を圧倒した。更に気持ちを乗せた彼は、後ろに束ねた髪を解き、思いの全てをぶつける様に最後の一声まで全力のシャウトを叩きつけていった。

いよいよイベントも大詰め、再び現存メンバーによるフィニッシュを決める時が近づいていた。

会場には最新アルバム「Tear of Illusions」のイントロが流れ始めると、“待ってました!!”とばかりに観衆がステージに向けて詰め寄る。そして、エンディングに向けての火蓋が切られた。

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オーディエンス達は、“どこにそんな元気が?”と思えるほどに、尚も猛攻を続ける。鳴り響く「Tear of Illusions」の、白玉のギターリフに合わせて高らかなコーラスを響かせたと思うと、突然均衡を破った激しいリフに合わせて暴動の嵐を形作る。絶え間なく疾走するAkiraのリズムに全く遅れを見せずグイグイとリズムを引っ張る横山、そして大谷、吉田の図太いギターリフが、その厚みを更に倍増させる。KEN-SHINの叫びが、更にその強靭で暴虐なリズムを疾走させる。

「ありがとう渋谷!30年ありがとう!俺達まだまだ若いから、もっと暴れようぜ!!」先程の先輩方への敬意とも取れるその言葉で、更に会場の熱を上げていく。彼の横に立った横山の存在。その“動かざること山の如し”を体現するようにそびえ立つ彼の存在が、KEN-SHINとはまた異なった存在の大きさを見せていた。それは、UNITEDで最も長くその活動を支え続けてた者という証でもある。

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「Yeah!チョー楽しいとしか言えないよ、オレ!!」そのKEN-SHINの言葉に、また大きな喜びの声を上げるオーディエンス。このステージは、また彼にとって新たなステップを迎える一つの試練でもあったかもしれない。だが、こうしてこの瞬間を迎えたのは、その壁を乗り越え真にUNITEDの未来に向けた進化の波を受け継ぐことを皆が認めた結果でもある。横山のデス・ヴォイスが、更にオーディエンスを狂わせる。その様子を嘲り笑うかのようにKEN-SHINが横で戯ける。ブレイクで“シーッ!”とばかりに観衆の叫びを遮り、次の瞬間にはまた音の洪水へ皆を叩き込む。

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ステージはいよいよクライマックスを迎える。ニュー・アルバムの中で、最も重要なコンセプトを持つナンバー「Hollow」へ。サビの掛け合いが、観衆との一体感を強めていく。
「We are UNITED!」
「We are UNITE as one!!」

更にリズムは激しく、速さを増していく最中、KEN-SHINは会場に向けて分かれる仕草を向けていく。そしてそのサウンドが最高潮に達した瞬間、KEN-SHINがカウントから“GO!”のサインを出すと、フロアにぽっかり明いた空間の中へ猛烈なモッシャー達が次々と飛び込んでいく。先日のLOUD PARKで見せた、“埼玉の伝説”がここに現れたのだ。そしてイベントのフィニッシュへ。フロアには大きなモッシュ・ピット、更にその中に飛び込もうとするダイバーが何人もステージに上がる。中にはメンバーに絡み、そのステージを更に盛り上げる。ラスト・ナンバーは「Revenger」。

UNITEDの代表曲の一つでもあったが、それは不遇の時代を駆け抜け、新たな歴史に向けて進化する意向を表す彼らのスピリッツの現われでもあったかのように見えた。最後にフロアになだれ込んだKEN-SHIN。フロアから賞賛の声を受けたその表情には、何かを確信した思いすら溢れている。そして終焉へ。

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会場に流れるJudas Priestの「UNITED」のメロディが、この日の“快挙”を讃えるように、いつまでも人々の胸の中に鳴り響いた。

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◆公式サイト
http://www.united-official.com/
◆セットリスト:
M1.Don’t Let Peace Break Out
M2.(It’s So)Hard To Breathe
M3.Combat!
M4.Unavoidable Riot
M5.Burst Dying Mind
M6.Hell Breaks Loose
M7.Cross Over The Line
M8.United
M9.U.N.I.T.E.D
M10.SNIPER
M11.S.R.S
M12.Do you wanna die?
M13.Don’t Trust
M14.Jungle Land
M15.Violence Jack
M16.Hate Yourself.hate Your Own Kind
M17. Sonic Sublime
M18Tear of Illusions
M19.My Inner Revenge
M20.Fight Fear Kill
M21.Kill Your Sense
M22.Deathtrap
M23.Mosh Crew
M24.Voice Of Sanity
M25.Distorted Vision
M26.The Awakening
M27.Hollow
M28.Fate
M29.Revenger

 

3.中打ち、搬出(21:40~)

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ファン達が掃けると、ステージは搬出に向けまた慌ただしい雰囲気に包まれた。が、一つの大事を終えたことで、緊張は解きほぐされたことは明らかだ。楽屋のメンバー達にも、安堵の表情が見えた。その中で関係者の子供達と戯れていたKEN-SHINは、先程の壮絶なステージを決めた同一人物とは思えない程に柔和な表情を見せる。そして、この日の成功を讃える中打ちへ。ステージ前には見られないリラックスした表情で談笑する一連のメンバー達。

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まるでUNITED自体がこの瞬間を迎えるがために、この日この歴史を重ねてきたようにも見えた。この瞬間を喜び、互いを讃えあう人々。UNITEDという一つの存在が、多くの繋がりを作り、その言葉どおりに、この30年を多くの人と結び付き、連結しあう(United)ことで大きな存在となった縮図が、ここに現れる。そこに過去が残した功績等、なんとちっぽけに見えてしまうかと思えてしまうくらいに、その繋がりは大きな存在となって見えてくる。

その広がりは止まらない。更なる繋がりの拡大を続けながら、彼らの猛威は突き進んでいく。この日の一幕は、それを告げるほんの序章に過ぎない。

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【密着レポート第5弾:UNITED】 Part 2 をそのままご覧ください!
Part 2は、新旧メンバーのインタビュー!以下をクリック!

http://www.beeast69.com/feature/4338