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TEXT:西川敦子
今回の公演で再びジーザスに扮する山本は、演出にも初挑戦しています。「BEEAST」でもレポートをお届けした『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』やロックミュージカルの代表的作品『RENT』(1998年および1999年の日本版プロダクション)をはじめ、多くのミュージカルで主演を務めてきた山本の演出手腕に注目が集まる『GODSPELL ゴッドスペル』。初日前日に行われたゲネプロにオジャマして、その様子をうかがってきました。
マタイによる福音書のエピソードとは、例えば、ある父親と兄弟の話。父から平等に財産を与えられた兄と弟。弟は家を出て、あっというまに手にした財産を使い果たし、食べるものにも困ってしまう。そこで、再び家に戻り、下働きをさせてくれと頼む弟。しかし、父は弟が戻ってきたことを喜び、宴を開いて迎えます。いっぽう、もらった財産に頼ることなく父のもとでこつこつと働き続けていた兄は、戻ってきた弟の待遇に憤慨。父に抗議するのですが…といったエピソードを、出演者がそれぞれ父や兄弟などに扮して演じるのです。
さて、舞台の始まりは、静かにステージ上に現れたひとりの女性によるアカペラから。まだ客電も落ちていない状態です。そこから徐々に出演者が歌に加わり、客電が落ち…。さらに、ピアノに合わせた『Tower of Babble』では、10人のキャストがソロで同性同士の、または異性とのコンビで、信念を歌い、神を敬う心を歌い上げます。そして、ラストは全員での歌の掛け合い。これぞブロードウェイミュージカル! といった圧巻の掛け合いを早くも聴かせてくれたのでした。
そして、寓話を語るジーザスのもとにひとり、またひとりと集まる若者たち。ここで注目すべきは、『Day By Day』とピタッとハマッた役者陣の動きです。ミュージカルにはダンスがつきものですが、ここでの動きはそれとはまた別のもの。歩く、手を差し伸べる、背中に手を添えるといった芝居上の動きが音と合致していて、それがまた気持ちともリンクし、場を盛り上げていくのです。 客電が落ちる前から始まるステージ、動きの音へのはめ込み方。それに加えて、これはほかとは違うぞと思わせたのは、一幕と二幕の間の休憩時間。常時3〜8人の出演者が舞台上にとどまり、自由に過ごしています。出演者がちょっとしたお遊びをしたり、オーディエンスに話しかけたりと、これまで見たことのないスタイルの休憩時間がそこにありました。
一連のストーリーとエピソードが次から次へとさまざまなタイプの楽曲とともに綴られて、休憩時間を含む2時間の上演時間はあっという間。ムーディな雰囲気から一気にダンサブルに盛り上がる曲あり、手足を使ったボディパーカッション・Hands&Feetあり…。その楽曲の配置もまた妙。特に、ジーザスが十字架にはりつけられるシーンでハードなロックというのは、非常に巧み。そして、ここでは歌声の調子の変化も必聴。若者たちが混乱するさまがとてもよく伝わるだけでなく、そのなかでひとり凛と立っている女性(原田夏希)を際立たせます。ここから次曲への流れは秀逸です。 2時間とコンパクトながら、舞台作品を楽しむための要素があらゆるところに盛り込まれ、自然と生き方までも考えさせられる『GODSPELL』。二度三度観ても、間違いなく濃密な時間を過ごせる作品です。
■セットリスト
~公演情報~
Team YAMAMOTO presents ロックミュージカル 『GODSPELL ゴッドスペル』 キャスト:山本耕史、内田朝陽、原田夏希、福田転球、明星真由美、中山眞美、上口耕平、桜井美紀、MY A FLOW(Song Riders)、松之木天辺、飛鳥井みや、長谷川富也 公演日程: 問い合わせ: オフィシャルサイト:http://www.sunrisetokyo.com/schedule/details.php?id=521 |