演奏

アウェーインザライフ

TEXT:西川敦子

ストレートプレイでもなければ、ミュージカルでもなく。舞台作品であることに間違いはないのだけれど…。水野美紀楠野一郎による演劇ユニット・プロペラ犬がライブハウスである赤坂BLITZで芝居をするという。でも、ただの芝居ではないのだ。今回の作品は、プロペラ犬筋肉少女帯とのコラボレーションによるもの。その名もエンゲキロック!

2月に行われた制作発表には、水野をはじめとしたキャストのほか、筋肉少女帯のメンバーも出席。水野いわく「ライブハウスで公演するのであれば、音楽の力も借りたいということで筋肉少女帯のみなさまに楽曲を提供していただけるようにお願いしまして。演劇とロックを融合させた新しいエンターテインメントを提供できれば」というのがコラボに至った理由なのだとか。ではなぜ、そのパートナーに筋肉少女帯が…? 「楠野さんとは以前『オールナイトニッポン』を、水野美紀さんとはテレビ番組を一緒にやっていまして。そういうきっかけから」と言うのは大槻ケンヂ。さらに「音楽を提供できるというのは、単純な言葉ではありますが、非常に楽しみですね。筋肉少女帯の楽曲がいったいどのように演劇のなかに取り込まれて演奏されるのか。ワクワクして待っております」と期待の言葉を寄せていたのでした。

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公演に先立ち、6月2日には本作品のテーマ曲「アウェーインザライフ」を収録したアルバム『蔦からまるQの惑星』も発売されるとのことで、制作発表ではメンバーからこんなコメントも。「楠野さんといろいろ打ち合せしてたら、筋肉少女帯筋肉少女帯のままでとおっしゃってたんですが、舞台のタイトルが『アウェーインザライフ』に決まりまして。あ、オレたちやっぱりアウェイなんだな、と(笑)。どうせなら筋肉少女帯のアウェイ感満載なエキスを抽出して色濃い筋肉少女帯を…。今までのアルバムのなかでも、一番濃いんじゃないかというアルバムになっています」(橘高文彦)「ぜひ楽しんでいただければと思います」(本城聡章)「人とは違うことをやっていこうと思っていたら、一般的でないアウェイなバンドになってしまって早22年。今回もアウェイなアルバムです」(内田雄一郎)。

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さて、制作発表から3か月強。いよいよ幕が上がるその日、本公演に先だってゲネプロが行われました。演劇ファン、ロックファンから、キャスト・スタッフ、筋肉少女帯まで、仕上がりが楽しみだと言っていた『アウェーインザライフ』。どんな舞台になっているのでしょうか。

ステージにかかっているのは、「AKASAKA PROPELLER ROCKFES」と書かれた紗幕。そう、ここはロックフェスの会場なのです。そのロックフェスのオープニングアクトは、’80年代に結成されて以来、2度の解散と再結成を経たガールズバンド・シスターロメロ。全盛期と同様のスタイルでデビュー曲「踊るダメ人間」や新曲など演奏をするのですが…。すでに旬を過ぎた感のあるガールズバンドにオーディエンスは冷たかった。

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楽屋に引き上げたメンバーは、これまでも繰り返してきた仲たがいによってバラバラに。翌日も行われるロックフェスでは、トリを飾ることになっているのに。彼女たちは再びひとつになれるのか!? シスターロメロのこれまでの歩みを絡めつつ、ストーリーは進んでいきます。

そもそも人見知りで変わり者と言われても仕方ない感のある学生だったボーカルのレナ(水野美紀)とクラスメイトだったベースのアンリ(村上知子)が仲よくなったのは、ある悲劇的な事件から。ただし、悲劇的というのは、世間一般の見方。事件の当事者であるアンリはケロッとしたもの。それがレナのハートにヒットしたのでした。学生時代のレナ、事件が起きたときのアンリの心境…。それらを表現するのは、もちろん筋肉少女帯の楽曲。どんな曲が使われているのかは、観てからのお楽しみです。

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レナの妹でドラム&影マイク担当のナナ(ソニン)の提案により、バンドを組むことになったレナとアンリ。さらにメンバーには、同じくある事件をきっかけにしてロックに新しい生き方を求めたギターのオユキ(小林顕作)、自称・17歳で特殊効果担当のティアラ(木野花)を加えて。メンバーに共通していたのは、人生に居心地の悪さを感じていること。アウェイ感をいつも感じていた彼女たちにとって、バンドだけがホームだったのです。

シスターロメロが演奏したり、登場人物の心境や状況を表したり。さまざまな場面で使われる筋肉少女帯の楽曲。ほぼ原曲のまま使われることもあれば、歌詞がアレンジされていることも。心境や状況を表すものとして用いられる場合は、ダンスが加えられたりもしていて、いわゆるミュージカル風。でも、やっぱりちょっとミュージカルとは何かが違う。それは、筋肉少女帯の楽曲だからなのか、振り付けのせいなのか、登場人物もそれを演じるキャストもキャラが濃すぎるからなのか…。それとも、豊富なロック知識を持ち、ロックを愛する河原雅彦が演出しているから? その答えは、ぜひ会場で見つけてください。自身の目と耳で。実際に観てみるときっとわかる。そして、思うはず。ライブハウスでの上演でよかった、と。

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プロペラ犬はコメディ色の強い作品を作ってきたユニット。それだけに、今作も笑いどころが満載です。えっ!?  JUDAS PRIESTって…某劇団!? で、クスッだったり、お? 『WEST SIDE STORY』! でニヤリだったり。もちろんゲラゲラもあります。音楽も芝居も楽しめて、さらに笑える。ときにはファンキー末吉率いるバンドメンバーまでもがキャストになっちゃう型破りな展開や、飛び道具的に日替わりゲストが登場してそれぞれに合わせた演出で盛り上げたりも(6月16日14時公演には森若香織も登場!)。とにかくいろいろな要素が詰め込まれた『アウェーインザライフ』。観る価値ありです!

【囲み会見レポート】
ゲネプロ前に行われた囲み会見には、くノ一をイメージしたシスターロメロの衣装を身につけた水野美紀村上知子ソニンが出席。見どころなどを聞かせてくれました。

水野:ノンストップで歌あり、踊りあり、芝居あり…。ハイテンションでとってもおもしろい舞台になっているので、たくさんの方に観ていただきたいなと思います。

村上:みなさん、キャラが強くて。個性的な方ばかりなんで、私もがんばっていかないと、と。

ソニン:大丈夫ですよ! 村上さんも個性的なキャラの一員です。

村上:ホントに危ないんですよ。女優陣たちがまたすごいことをやるんです。私の立場が危ういぐらいおもしろいことを。私、こういう舞台をやるのは初めてなんでかなり緊張してるんですよ。しかも、歌もあって、ダンスもあって。

水野:笑いどころも満載ですよね。

ソニン:そうですよね。でも、私はお客さんの反応がまったく予想できなくて。

村上:たしかに。

ソニン:どんな顔をして観るんだろうっていうぐらい。アウェイ感プンプンなというか、この芝居はこの会場に受け入れられるんだろうかっていうとんでもないことをします。でも、盛りだくさんすぎて見どころもたくさんあるので、たぶん1回観ただけではダメですね(笑)

村上:笑ってたら、何か見落としちゃうみたいな。

水野:観る人も忙しい舞台ですね。

村上:見どころがたくさんあるなかでも、生でみんなが楽器に挑戦してるシーンもあるし。

水野:私なんて歌えないし、楽器もできないしっていうところから始まってて。それをいかにエンターテインメントに見せるかっていう工夫もあります。

ソニン:ライブと演劇と半々みたいな…。ミックスされてるところがあるので、ちょっとなつかしいですね。

村上:みんな忘れてるかもしれないですけど、(ソニンは)ミュージシャンですから。

ソニン:忘れてる!? 忘れてますか? 一応、歌も歌ってたんですよ。今も止めたわけじゃないんですけど。

水野:(ソニンは)マイクスタンドの前に立つだけで、やってきた歴史がにじみ出てるんですよ。やっぱり違いますね。

村上:音楽の面ではプロなんで、みんなを引っ張っていってくれて。おかげでみんな格好よくなって。

ソニン:村上さんも初舞台とは思えないくらいパフォーマンスとか堂々としてて。

水野:村上さんのかわいさとかおもしろさとか、いろんな魅力が見られますね。見たことがない表情も。あと、みんなかなり動き回ってますね、今回。私のなかで何か所か、ここは失神しそうになるってポイントがあるんですよ。動いて歌って、ホントにハードなので。

ソニン:でも、なんだかんだいっても歌はみんなうまいですよ。

水野:いいんです。うまい歌はソニンが聴かせてくれるんで。歌はホームじゃないから、勢いとパフォーマンスで歌ってますね。でも、とにかくロックな舞台ですので、楽しみに。

ソニン:ライブハウスで演劇をするっていうのはすごくぶっとんだ企画なので、ぜひ足をお運びください。待ってま〜す。

村上:女優陣が体をはったシーンもありますので、観に来てください。

[公演情報]
エンゲキロック プロペラ犬×筋肉少女帯『アウェーインザライフ』

キャスト水野美紀村上知子森三中)、ソニン小林顕作伊藤明賢市川しんぺー木野花
スタッフ河原雅彦(演出)、筋肉少女帯(音楽)、ファンキー末吉(音楽監督)、楠野一郎(原案)、プロペラ犬(企画)、大槻ケンヂ(協力) ほか
BANDファンキー末吉(Drums)、屍忌蛇(Guitar)、仮谷克之(Bass)、張張(Keyboard)

公演日程
・東京公演:
2010年6月04日(金)〜6月18日(金)@赤坂BLITZ/指定席8,500円、2階立見3,000円
・大阪公演:
2010年6月23日(水)〜6月25日(金)@サンケイホールブリーゼ/S席8,500円、A席7,500円、ブリーゼシート5,000円
問い合わせ
キョードー東京(東京公演):TEL03−3498−9999(10時〜18時)
ブリーゼチケットセンター(大阪公演):TEL06−6341−8888(11時〜18時)

主催:アウェーインザライフ製作委員会(東京)、ブリーゼアーツ/毎日放送(大阪公演)
オフィシャルサイトhttp://www.engekirock.com/