演奏

イカれた主婦

TEXT:西川敦子

遡ること二十数年前。オフ・ブロードウェイで誕生したミュージカル『ANGRY WIVES』が日本でも上演されることに。タイトルを『イカれた主婦』とし、設定もアメリカから日本に置き換えて。3年連続で上演され、全国ツアーも行われた『イカれた主婦』は、テレビドラマ化もされるなど大好評を博します。その『イカれた主婦』の再演が決定! しかも今度は、オリジナル版で!!
 
客電の落ちた劇場に響いたのは、ドラムスティックでとるカウント。ステージにはギターを抱え、現状に不満をぶつける歌詞で綴られる「地獄のハイスクール」を歌うティム(山崎育三郎)の姿が。そこに登場したのは、ティムの母親であるベヴ(木の実ナナ)。ティムが夢中になっているパンクロックに、「うるさい!」と思いっきり拒否反応を示します。そんなベヴ自身がまさかプレイヤーになってしまうとは…。でも、それはまだ少し先のお話。
 
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夫を亡くして以来、ティムとふたりで暮らすベヴには貯金もなければ、仕事もない。息子との生活を守るために頑張ってはいるのだけれど、日々生活は苦しくなるいっぽう。そんななか、ベヴの友人・ウェンディ(キムラ緑子)がある儲け話をベヴ、音楽教師のキャロル(浦嶋りんこ)、弁護士の妻であるジェッタ(彩輝なお)にもちかけます。それは、ルード(ROLLY)が経営するパンクロッククラブ“ルード・フィンガーズ”で行われるバンドコンテストに出場すること。予選を通過するともらえる賞金を目当てに。
 
最初は難色を示すベヴ、キャロル、ジェッタ。なぜなら、彼女たちにはそれぞれの事情があったから。ベヴはもともと内気な性格で臆病なうえ、ティムが同じコンテストに出場することを知っていたし、キャロルは音楽教師がパンクロックを演奏することに抵抗を感じていて。ジェッタもバンドを組んだり、コンテストに出たりするなんて、夫・ラリー(陰山泰)にばれたら大変と…。「きっとうまくゆくわ」「外見(ルックス)だけで決めないで」「誰にも言えない−私を見つめて」で歌われたのが彼女たちの持つ苦悩や憂鬱でした。
 
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そんな3人にウェンディは「主婦にもパンクを」で訴えます。「新しいドアを開けたら、人生は素敵よ」と。かくして4人はイカれる主婦=アングリー・ハウスワイヴスを結成。が、ウェンディ自身もバンド結成とコンテスト出場がもとで恋人のウォレス(川﨑麻世)とケンカしてしまうのでした。
 
ここで、舞台は“ルード・フィンガーズ”へ。コンテストのエントリーに訪れたキャロルは、離婚したばかりの身。寂しさを感じていた彼女はルードと出会い、素敵な恋の予感が…。そんなキャロルに続いて“ルード・フィンガーズ”を訪れたのは、ウォレス。じつは、ルードとウォレスは大学の同級生で。ふたりが奏でる「俺たちのベッツィ・モバリー」はキュートな1曲。ROLLYが「最高に苦労した」と言うダンスも楽しめます。
 
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さて、大人の女性のセクシーパンクロックバンドを自称するアングリー・ハウスワイヴス。コンテストの結果はどうなったのでしょうか? 見事に予選を通過! 賞金を手にし、決勝に駒を進めるのですが…。コンテストに出場したことで、バンド結成がティムにバレてしまったベヴ。「僕のママはパンク・ママ」でティムは、「パンク・ママなんてイヤだよ」と訴えます。ジェッタもラリーに猛反対されることに。でも、パンクバンドを始め、ベヴやジェッタには生まれていました。今までになかった強さが。
 
ベヴやジェッタとはちょっぴり違う、甘い時間を過ごしていたのはキャロルとルード。「君は、あなたはNo.1」は、そんなふたりのデュエット曲です。お互いの心に芽生えた恋を浦嶋りんこROLLYがパワフルヴォイスでハッピーに歌い上げます。いっぽう、コンテスト出場のきっかけとなったウェンディ。ケンカした恋人・ウォレスはアングリー・ハウスワイヴスの演奏に感動してくれたのに、なんとバンドを抜けると言い出して…。
 
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バンドを続けるという3人とウェンディとの溝が埋まらないまま迎えたコンテスト決勝当日。アングリー・ハウスワイヴスに代わって“ルード・フィンガーズ”に現れたのは意外な人物たちでした。そこで歌われる「時間稼ぎはでまかせで」は、レゲエからラップへと変化する、じつに楽しい楽曲。コール&レスポンスで会場を盛り上げるひと幕も。そして、いよいよ物語はクライマックスへ。「時間稼ぎはでまかせで」を歌ったコヨーテ・アグリーと名付けられた意外な人物たちって、いったい誰? アングリー・ハウスワイヴスは決勝に姿を現すのか!? それはぜひ劇場で確かめて! さらに劇場に行かれたなら、ぜひぜひパンフレットの購入を。ROLLYによるパンクロック解説と『イカれた主婦』使用楽曲解説は必読です。
 
客席から自然に手拍子と歓声がわき起こった本編のラストナンバー「あの日には戻らない」はオールキャストが贈るロックンロール。新しい世界に一歩を踏み出した女性たちの勇気は自身だけでなく、親子や夫婦、恋人の関係性をも変えてしまったようです。4組のカップルの最高にキラキラした姿を見て、歌を聴いて。きっと勇気と元気をもらえるはず!
 
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鳴り止まない手拍子に誘われるように、ギターを手に現れたのはROLLY。彼のギターソロにひときわ大きな歓声が重なると、ほかの出演者たちも登場してカーテンコールへ。オールキャストがパワフルに、息もぴったりに歌い上げたのは「ハウンドドッグ」。ここは劇場ではなくライブハウスなのでは? そんな盛り上がりを見せたカーテンコールでした。

【囲み会見レポート】
Photo公演初日を目前に控えた5月13日に行われた演奏シーンおよびカーテンコールのフォトコールと囲み会見。この日初めて衣装を着てステージで演奏をした出演者がその感想などを語ってくれました。
 
木の実:やっぱりこういう格好をすると、なんかすごくドスが効いて。パンクしてるなっていう、いつもの木の実ナナとは違ういいパワーが出て気持ちよかったですね。バンドの練習も最初は個人稽古でしたけど、4人で一緒に音を出したら、おぉバンドだ! っていう手応えがありましたよ。つらい思いもいっぱいしてきたんだけども、それを克服して楽しんで。ROLLYさんにも、うちのバンドがうんとよくなるように見守ってもらってました。出演者のみなさんとは初めてお会いしたときからコミュニケーションとれちゃったっていう感じで。みんなで同じ列車に乗って目的地に向かっていけたいいメンバーです。(親子役の)山崎さんもとってもかわいくて。(4組のカップルのなかで)私たちだけが親子なんですよね。山崎さんの母親を楽しんで、こんな親子がいたらいいだろうなっていう感じでやってます。みなさん、(劇場に)いらしてください。一緒に燃えましょう!
 
キムラ:この格好でステージで演奏するのは、興奮しましたね。死ぬまでにこういう格好をまたすることがあるのかどうかわからないですけど、うれしいですね(笑)。
 
彩輝:演奏は緊張しましたけど、とても楽しかったです。
 
浦嶋:すごく緊張しましたね。でも、このパワーで本番も乗り切りたいと思います。
 
ROLLY:僕はわりとこういう格好がもともと好きなもので(笑)。お金をいただいてこんな格好ができるのは、一挙両得でうれしいですね。メイク時間ですか? 僕はオッサンなんでヒゲが濃くてね。昨夜のパックから24時間(笑)。初めて4人の演奏を聴いたときは、まさにこれは作品のなかに登場するアングリー・ハウスワイヴスの演奏そのものだと思いました。それ以上でもなく、それ以下でもなく。これがアングリー・ハウスワイヴスだというリアルな演奏でしたね。
 
山崎:僕はふだんこういう格好をするとはないんですけど…。ちょっとハマりそうです(笑)。(母親役の)木の実さんは何をやってもちゃんと受け止めてくれて、そこに愛があって…。稽古の合間もずっと一緒にいてくださって、常にコミュニケーションをとってくださっていたので、4組のなかで一番ラブラブなんじゃないかなと思ってます。
 
川﨑:僕の名前は川﨑麻世なんですが、なんか川﨑オカ麻世(オカマよ)みたいな感じ(笑)。またなんか違った自分になれてすごくうれしいですね。でも、僕はけっこう女装をする役が多いんですよ。それでけっこう小道具も揃ってるんで、(メイクは)10分くらいでてきちゃいました。
 
陰山:僕のこの格好はけっこう簡単なんですよ。だから、10分くらいでできましたね。こんな格好をするのはほぼ初めてですけど、みなさんすごく格好いいなぁと思って。ふだんよりもいっそうパワーアップしていて、僕もうれしかったですね。僕、ベースを弾くのは初めてなんですけど、上手に弾けました(笑)。 


【セットリスト】

第1幕
M01 地獄のハイスクール
M02 きっとうまくゆくわ
M03 ベディ・ジーン讃歌
M04 主婦にもパンクをへ
M05 外見(ルックス)だけで決めないで
M06 誰にも言えない−私を見つめて
M07 俺たちのベッツィ・モバリー
M08 真実は闇の中

第2幕
M09 僕のママはパンク・ママ
M10 君は、あなたはNo.1
M11 It’s Saturday Night
M12 彼女なしで僕は
M13 時間稼ぎはでまかせで
M14 イカれた主婦になっちまえ!
M15 あの日には戻らない
カーテンコール ハウンドドッグ


[公演情報]
ブロードウェイミュージカル 『イカれた主婦』

キャスト木の実ナナキムラ緑子彩輝なお浦嶋りんこ山崎育三郎川﨑麻世陰山泰ROLLY
スタッフA.M. COLLINS(脚本・作詞)、CHAD HENRY(作曲・作詞)、板垣恭一(演出)、常田景子(翻訳)、竜真知子(訳詞)、長谷川雅大(音楽監督)、前田清実(振付) ほか

公演日程
・東京公演:
5月15日(土)〜5月23日(日)@ル テアトル銀座 by PARCO/8,500円
・名古屋公演:
5月26日(水)@中日劇場/A席9,000円、B席6000円
・金沢公演:
5月29日(土)@本多の森ホール/S席7,800円、A席5,000円 B席(自由席)3,500円
※当日券は各500円増
・仙台公演:
6月03日(木)@イズミティ21/S席7,500円、A席6,000円
・岡山公演:
6月10日(木)@岡山市民会館/S席7,500円、A席6,000円
・北九州公演:
6月14日(月)@北九州芸術劇場 大ホール/S席7,800円、A席5,000円 B席3,000円
・大阪公演:
6月16日(水)@森ノ宮ピロティホール/7,500円
問い合わせ
東京音協(東京):TEL03−3201−8116
中日劇場(名古屋):TEL052−263−7171
北國新聞社事業局:TEL076−260−3581
ニュース・プロモーション:TEL022−266−7555(平日11時〜18時)
グッドラックプロモーション(岡山公演)TEL086−903−2001
北九州芸術劇場(北九州):TEL093−562−2655(10時〜20時)
キョードーチケットセンター(大阪):TEL06−7732−8888(10時〜19時)

主催:テレビ東京、イープラス、中日劇場(名古屋)、北國新聞社(金沢)、TBC東北放送(仙台)、RNC西日本放送(岡山)、北九州市芸術文化振興財団(北九州)、キョードー大阪(大阪)
企画・製作:アトリエ・ダンカン
オフィシャルサイトhttp://www.duncan.co.jp/web/stage/angry2010/