演奏

ブロードウェイミュージカル ザ・ミュージックマン

TEXT:西川敦子

まだみなさんの記憶にも新しいのでは? 西川貴教が詐欺の被害に遭ったという事件。今度はその西川自身が詐欺師に! といっても、ご安心あれ。これは、ブロードウェイミュージカル『ザ・ミュージックマン』の役柄の話。製作発表では、「騙すほうはまったく経験がないので、どのようにしてそれ(詐欺)が成り立っていくのか、数年前を思い起こしながら役柄に結びつけていきたいと思います」と語っていた西川。いったいどんな詐欺師ぶりを舞台上で見せてくれるのか。それを探るべく(!?)4月23日に行われたゲネプロ(すべて本番と同じに実施する最終リハーサル)にオジャマしてきました。

『ザ・ミュージックマン』で西川が演じるのは、音楽教授のハロルド・ヒル。ただし、これは自称。本当は音楽教授どころか、楽譜すら読めないのです。名前だって、昔の仲間からは「グレッグ」と呼ばれていたり。それだって、本当の名前かどうか怪しいもの。なんせ、ハロルドは町から町を渡り歩き、言葉巧みに人々に取り入ってブラスバンドの楽器や制服、教則本を売りつけては姿を消すという詐欺師サラリーマンなのだから。

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物語のスタートはサラリーマンたちが乗り合わせた汽車の中から。彼らが口ずさむ「俺たちゃ旅のセールスマン」でハロルドがどんな男なのかが語られます。その歌詞に注意して聴いていただきたいのはもちろんながら、驚かされるのは、それが汽車の吐く蒸気、汽車の揺れ、走るリズムに合わせて歌われること。最近では蒸気機関車に出会うこともなかなかないとはいえ、それら日常のなかにごく普通に存在している音が音楽に。これって、素敵なことだと思いませんか?

続く楽曲は一転して、これぞブロードウェイミュージカルソングという感ありありの「ようこそアイオワへ」。ハロルドがたどり着いたリバー・シティの人々が歌い踊ります。そして、リバー・シティで再会した昔の仲間であるマーセラス(植木豪)とハロルドが歌うのが「大問題!」です。これがまた、セリフとも歌ともラップともつかない歌で。ここは、リバー・シティに到着後、早くもハロルドが本領を発揮するシーン。それを確かな歌唱力と演技力で奏でた西川植木、そしてアンサンブルのみなさんなのでした。

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さて、場面は変わって、リバー・シティのとある一軒の家へ。そこに住むのは、ピアノ教師のマリアン(彩乃かなみ)とその母であるミセス・パルー(竹内都子)、年の離れたマリアンの弟・ウィンスロップ(吉井一肇 ※石川新太とのダブルキャスト)。ここでは、レッスンを受けていたアマリリス(根本玲奈 ※蛭薙ありさとのダブルキャスト)の弾くピアノに合わせるように、マリアンとミセス・パルーが歌い始めます。「ピアノレッスン/またそんなこと言い出して」を。

突然歌い出すからミュージカルは苦手とおっしゃる方には、ぜひこの『ザ・ミュージックマン』を観ていただきたい。冒頭の汽車のリズムに合わせての「俺たちゃ旅のセールスマン」や練習中のピアノに合わせての「ピアノレッスン/またそんなこと言い出して」。歌への入りは、ごくごく自然です。移動中や楽器プレイ中に、ふと歌を口ずさんでしまうことってありませんか? ましてやロック好きで、生活とともに音楽がある方ならなおさらでは? それとミュージカル、なかでも『ザ・ミュージックマン』はなんら変わりないのです。

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さて、舞台のレポートに話を戻して。「ピアノレッスン/またそんなこと言い出して」に続いてのナンバーは「おやすみなさい、誰かさん」。この曲が歌われる前の、マリアンとアマリリスのやりとりは必見です。笑えること間違いなし。さすがブロードウェイを代表するコメディミュージカル!

「大問題!」でうまくリバー・シティの人たちを取り込んだハロルドは、いよいよセールスを開始します。再びの「大問題!」から「Seventy−Six Trombones」への流れであっという間にリバー・シティの子供たちを筆頭に大人たちまでもをとりこに。「Seventy−Six Trombones」は、この舞台のテレビCMスポットでも使われている楽曲(オフィシャルサイトで視聴可能)。耳なじみのある曲ということもあってか、リバー・シティの人たち同様、観ているほうもワクワクしてしまう1曲です。その後、一幕のラストで歌われる「荷馬車が町にやってきた」も、町の人たちのウキウキした気持ちがこちらにまで伝わってくるナンバーでした。

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ここまで順調に商売を進めてきたハロルドですが、このままいつものように彼なりの成功をおさめてリバー・シティとはサヨナラになるのでしょうか? そうスムーズにいくはずがありませんよね。市長のシン(佐渡稔)は最初からハロルドを疑っているし、マリアンもそう簡単には彼のことを信じない。市長の妻・ユーラリー(うつみ宮土理)やミセス・パルーはすっかりハロルドに魅せられているのに。そこに、市長の娘・ザニータ(増山加弥乃)と町の不良少年・トミー(矢崎広)の恋愛問題や、ハロルドが詐欺を働いたことによって行く先々で商売がうまくいかず彼に恨みを持っているチャーリー(今井ゆうぞう)も絡んできて…。リバー・シティの人々とハロルドはいったいどうなる!?

二幕で注目すべきは、終盤。詐欺セールスマンと素のハロルドとを短いシーンのなかで演じ分ける西川はさすがのひとことです。また、「おやすみなさい、誰かさん〜Seventy−Six Trombones(ダブル・リプライズ)」をハロルドとマリアンが掛け合いつつ歌うシーンでも、その秀逸な表現力が発揮されています。

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あちこちに笑いの散りばめられた『ザ・ミュージックマン』のなかでも、きっと誰もが一番の笑顔になってしまうだろう瞬間はフィナーレに。ここでもまた「Seventy−Six Trombones」の登場となるのですが…。CMスポットで使われているコピーは「音楽はみんなを幸せにしちゃうんだとさ」。舞台全体を通して、フィナーレを観て。それが本当かどうか、きっとわかるはずです。

【囲み会見レポート】
Photoゲネプロ前に、西川貴教彩乃かなみ竹内都子うつみ宮土理が出席して行われた囲み会見。チームワーク抜群なカンパニーであることがうかがえました。


西川:あっという間の1か月間の稽古で、その勢いがこの会場まで来てる感じですね。緊張感もあるんですけど、(幕が開くのが)本当に楽しみです。

彩乃:わりと早いうちからお稽古は始まってたんですけども、作品も稽古場も和気あいあいと楽しく、あっという間に初日が来たという感じで。ドキドキしてますけど、楽しみにしてます。

竹内:ホントにあっという間に終わってしまいましたね。一昨日くらいに劇場に入ってセットを見て、みんなテンション上がりっぱなしです。ここはこういうセットだったんだとか思うと気分が高揚して。うれしくてウキウキしてます。

うつみ:出演しながら、何から何までこんな最高のものをって感動して。カーテンひとつにしても照明にしても音楽にしても。素晴らしいですね。

西川:竹内さんは(ミュージカルに出演するのは)初めてなんですよね。

竹内:初めてですよ。ホントにミュージカルって大変ね。歌も踊りもあって。でも、病み付きになりそうです。

西川:おっ。素晴らしい! ボクは3度目なんですけど、毎回勉強させていただくことが多くて。特にコメディっていうと、舞台の上だけじゃなくて、楽屋とか普段のカンパニーの結びつきがそのままステージに表れると思うので、雰囲気作りみたいなところもすごく大切かなと思って、この作品に挑ませてもらってるんですけども。どうですか?

うつみ:私、驚いたんですけど、西川さんはまず威張らない。平等。優しい。甘いものがめっちゃ好き。

西川:そこ!?

うつみ:チョコレートを30個ぐらい食べたのを私は見ました。みんなも甘党ですし、そういう気さくなところがみんなを引っ張っていくリーダー格として、すごいカリスマですね。

西川:今のコメントじゃ、甘党だっていうところしか残らないじゃないですか(笑)

うつみ:最後にカリスマって言ったじゃない(笑)

西川:ありがとうございます。

うつみ:パワーもあるし…。この人宇宙人かしらと思うぐらい膨大なセリフと膨大な歌の数と。歌っていっても歌じゃないような歌っていうんですか?

西川:それじゃあ、歌ってないみたいじゃないですか(笑)

うつみ:セリフがほら、いっぱい入るでしょ。音符通りじゃなくて。それをいつの間に覚えたのかって感じ。すごいですよ。それで(彩乃さんは)天使のような歌声で(竹内さんは)あったか〜い…。

西川:どこまでひとりで紹介するんですか(笑)。いやでも、うつみさんもホントに素晴らしいですよ。いてくださるだけで落ち着くっていうか。

竹内:ホントに。

うつみ:逆にいるだけで落ち着かないでしょ。

西川:うん、若干…って違いますよ。そんなことないです(笑)。うつみさんは気さくに話しかけてくださいますし、すごくボクにとって安心材料になってます。竹内さんも初めてのミュージカルだっていうのに、堂々たるものですから。

竹内:よう言うわ。全然です。体は堂々としてますけどね(笑)

西川:舞台稽古中にダイエットが進行してたんですよね。どんどん首が。

うつみ:三重だったのが今、一重になりました。

竹内:何もやってないんですよ。でも、毎日動いたりとかしてると、ちょっとやせた。

西川:これ、完全にミュージカルダイエットですよ。

竹内:いいんじゃないですか? 『ザ・ミュージックマン』ダイエット。

西川:いいですね。ぜひ、みなさんも。彩乃さんは、見た目も中身もボクみたいな人間とは似ても似つかない可憐な。

彩乃:こうやっていつもいじられてるんです(笑)

西川:そんなことないです。宝塚で本当にお育ちのよろしい北関東出身の彩乃さんが、この田舎ヤンキーあがりを見下すような感じで(笑)

うつみ:誉めてんのかな?

西川:もちろんでございます。

うつみ:彩乃さんは)清楚でね。

竹内:でも、気さくで。

うつみ:みんなざっくばらんな人たちで。楽しいです、カンパニーが。

彩乃:みなさん、私が宝塚に入る前からテレビで拝見していた方たちばかりなので、そういう方たちに囲まれてミュージカル作品に出演できるのは光栄です。西川さんも(午後)10時ぐらいにお稽古が終わっても、それから打ち合わせ行ってきますとか言って。このスタミナとパワフルなエネルギーを少しでもいただいて頑張りたいなと思ってるんですよ。それに、すごくお優しいし。

西川:心のこもってないコメントですね(笑)

彩乃:どうしてそんなふうに言うんですか(笑)

うつみ:ホントにパワフル。たいしたもの食べてないのに。

西川:いいじゃないですか(笑)。たしかに粗食ではありますけど。そこはチョコレートで。

彩乃:おだんごとか。

西川:あ、あぁハイ、おだんごとか。

うつみ:昨日、納豆差し入れましたよね?

西川:はい、いただきました。なんですか、このトーク。ボク、どうすればいいんですか。

うつみ:でも、ホントにね、日本でやってるんじゃないみたい。ラスベガス以上。ラスベガスに行ったような雰囲気がある。これがラスベガスなんだ、って。

西川:すみません、うつみさん。この作品、完全にアイオワ州の話です。ネバダじゃないです(笑)

うつみ:似たようなものよ。

西川:了解です(笑)。今回の舞台は、ホントにみなさんといるだけで楽しくなるし、みなさんからいただくパワーで回ってるという。
(ここで、取材陣から役どころについて話を振られると…)
西川:来た(笑)! まぁあの、詐欺を計画中の方とか過去に詐欺をされた方とかが、計画を断念されたり改心していただけるとよろしいかと思いますので、ぜひ劇場に。清らかな気持ちでこの作品を観ていただけると、“もう詐欺なんかやるもんか!”って思っていただけると思います。詐欺師じゃない方も、観ていただくといろんなものを忘れていただける、すごいパワーを持った作品だと思いますので、よろしくお願いします。



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【セットリスト】


第1幕
M1 オーバーチュア
M2 出発進行
M3 俺たちゃ旅のセールスマン
M4 ようこそアイオワへ
M5 大問題!
M6 大問題!(プレイオフ)
M7 ピアノレッスン/またそんなこと言い出して
M8 おやすみなさい、誰かさん
M9 自由の旗のもとへ
M10 大問題!(リプライズ)
M11 Seventy−Six Trombones
M12  Seventy−Six Trombones(バレエ)
M13  Seventy−Six Trombones(プレイオフ)
M14 アイスクリーム
M15 ウォーキング・ミュージック(リプライズ)
M16 わかってる女でなくちゃ
M17 喋り出したら止まらない
M18 どうかマリアン
M19 マリアン・ダンス
M20 白馬の王子様じゃなくて
M21 荷馬車が町にやってきた
M22 第1幕・フィナーレ



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第2幕
M23 ユーラリーのバレエ
M24 そこに君が
M25 イカす女
M26 イカす女ダンス(その1)
M27 イカす女ダンス(その2)
M28 イカす女ダンス(その3)
M29 イカす女ダンス(プレイオフ)
M30 喋り出したら止まらない(リプライズ)
M31 ライダ・ローズ
M32 ギャリー・インディアナ
M33 ライダ・ローズ(リプライズ)
M34 それはあなた(バレエ)
M35 あなたに出会って
M36 おやすみなさい、誰かさん〜Seventy−Six Trombones(ダブル・リプライズ)
M37 チャリティー・フェスティバル
M38 追跡のテーマ
M39 あなたに出会って(リプライズ)
M40 フィナーレ



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[公演情報]
ブロードウェイミュージカル
『ザ・ミュージックマン』


キャスト:西川貴教、彩乃かなみ、植木豪、竹内都子、今井ゆうぞう、佐渡稔、 うつみ宮土理 ほか

原作:メルディス・ウィルソン/フランクリン・レイシー

スタッフ:メルディス・ウィルソン(脚本・作詞・作曲)、鈴木裕美(演出)、鈴木哲也(上演台本)、前田清実(振付) ほか

公演日程
東京公演:
4月23日(金)〜5月5日(水)@東京芸術劇場 中ホール
5月8日(土)〜5月20日(木)@新国立劇場 中劇場
平日・S席10,000円、A席8,000円 初日・土・日・祝・千秋楽・S席11,000円、A席9,000円

名古屋公演:
5月22日(土)@愛知県芸術劇場 大ホール
S席11,000円、A席9,000円、B席5500円

大阪公演:
5月25日(火)〜30日(日)@森ノ宮ピロティホール
平日・S席9,000円、A席7,500円 土・日・祝・千秋楽・S席11,500円、A席10,000円

札幌公演:
6月5日(土)@札幌市民ホール
S席11,000円、A席9,000円、B席6,000円

問い合わせ
TEL 03−5500−3919(東京・24時間テープ案内)
サンデーフォークプロモーション(名古屋)
TEL 052−320−9100(10〜18時)
キョードーチケットセンター(大阪)
TEL 06−7732−8888(10〜19時)
UHB事業部(札幌)
TEL 011−214−5261(平日9時30分〜17時30分)

主催:フジテレビジョン(東京)、東海テレビ放送(名古屋)、関西テレビ/サンライズプロモーション大阪(大阪)、北海道文化放送(札幌)
企画・製作:フジテレビジョン
オフィシャルサイトhttp://the-musicman.jp/