演奏

音楽人

TEXT:桜坂秋太郎

果たされなかった幼いころの約束が
今、ふたりの新たな誓いに変わる


携帯でアクセスの方はこちらからご覧ください。



ビースト初の映画レポートは、『音楽人』という音楽直球勝負を紹介しましょう。この映画は、今月中旬から上映がスタートするため、各情報サイトでインフォメーションを目にしている読者も多いと思います。ストーリーは、そちらをチェックしてもらうとして、ビースト視点のレポートをどうぞ!

まず物語の舞台となっているのが、専門学校ESPミュージカルアカデミー 。これはまさにストライク。ESPといえば言わずもがなのギターメーカーですが、日本が誇る音楽総合学校も有名です。この学校の全面協力によりこの映画は成り立っていますが、ビーストの読者層的には、この学校を卒業して社会現場で活躍している人もいるかもしれません。もしくは子供が入学するという話があるかも。

主人公の蒼(佐野和真)は、シンガーソングライター科に通いながら、ボーカル&ギターでバンドデビューを目指す青年。同じく主人公のヒロイン詩音(桐谷美玲)は、ギタークラフト科という絶妙な設定です。幼なじみであり、音楽学校で再会するというシチュエーションも、音楽を夢見る若者の視点として面白いですね。

Photo実は私のバンド仲間の息子も、このESPギタークラフト科の卒業生。ギター職人として、すでに社会デビューしています。背景的には音楽好きの二世という物語は、実際にある話です。むしろ今後は増えるだろうと想像できますので、その先駆けといえる映画です。

昔は、親の反対を押し切ってロックな道へ進むような風潮がありました。今となっては時代遅れな文化かもしれません。考えてみれば、チャックベリービートルズにハマった世代が、今やお爺ちゃんになろうという現代。ロックな二世や三世の活躍が当たり前になってくることでしょう。

高橋ジョージ演じる蒼の父親(詩夫)の設定、これは中年以降の観客に安心感を与えるキャスティング。“音楽好き二世の青春ドラマ”だからといって、必ずしも20歳前後の若者がターゲットではないと感じます。私としては、この世代の子供を持つ、音楽好きな親にぜひ観てもらいたい、そう感じました。

音楽のスタイルは親子で違っていても、一緒に観ることで、何かを得られるかもしれません。専門学校や大学へ行く前の、中高生の子供と観るのも良い効果があると思います。主人公のキャスティングは、『矢島美容室 THE MOVIE~夢をつかまネバダ~』や『オトメン(乙男)』に出演している佐野和真と、『女帝 薫』などに出演している集英社「Seventeen」のトップモデル桐谷美玲

PhotoERINA(第2回日本ケータイ小説大賞/JOYSOUND賞受賞)の「大切なきみへ―音楽人2008」と、森綾の「音楽人1988」を原作にして、脚本は映画の主人公と同世代(20歳)の清水智枝子が書き下ろしたとのこと。同世代の視点がうまく織り込まれていて好印象です。監督は映像や舞台で活躍している伊藤秀隆。初の長編映画とは思えない安定感のある仕上がり。

私はこの映画を観て、自分がまだ若く音楽に純粋で熱かった時代を思い出しました。時代背景は違うものの、音楽を志す物のマインドは、今も昔も同じだと思います。音楽だけでなく、アートな世界であれば、何にでも共通していることかもしれません。

私もかつて音楽に青春を捧げ、音楽に生きることができました。“音楽人”だったと思います。そしてそれは私の人生において大きな意味を持っています。こうして本誌ビーストをやっていることも、その一つの成果物。

映画『音楽人』が音楽を通じて伝えたいこと、それは青春物語を越えた部分のような気がします。もちろん楽器やステージ演奏など、単純に音楽の要素を楽しみながら観ることもできますが、アーティストとそれを支える楽器やパートナーの関係は、何かに置き換えてみると・・・思い当たることがあるかもしれません。


【音楽人 公式サイト】
http://www.ongakubito.net/

■上映館
【東 京】
お台場シネマメディアージュ 2010.5.15(土)~1W
渋谷シアターTSUTAYA 2010.5.15(土)~1W
TOHOシネマズ六本木ヒルズ 2010.5.16(日)
【大 阪】
TOHOシネマズなんば 2010.5.29(土)~1W
【名古屋】
TOHOシネマズ名古屋ベイシティ 2010.5.29(土)~1W
※その他の上映会場につきましては、随時公式ブログにて情報公開します。
http://ameblo.jp/ongakubito515/