演奏

KING OF THE BLUE

TEXT:西川敦子

世は戦国。倭の国を舞台に繰り広げられた鬼と人間の戦いを描いた『KING OF THE BLUE』。公演のスタートを翌日に控えた1月22日に公開ゲネプロが行われました。

物語は「鬼開眼」「OVERTURE〜THEME of the Blue〜」を経て、皇帝(Ryohei)と鬼族の玄武(加藤和樹)が奏でる「NEVER END」から始まります。ともに理想とする世界をつくるための決意を込めて。皇帝と玄武の理想とは…? 戦のない世の中を作る。それが皇帝の願い。そして、玄武は海・山・川・大地をあるべき元の姿に戻すために。それを現実のものとするには、鬼と人間が戦わなければならなかった。

はるか昔、共生していた鬼と人間。自然を操る力を持つ鬼を人間たちは敬い、鬼は希望して差し出される人間の魂を喰らい…。しかし、いつしか人間はその行為を厭い、結束して鬼族を滅ぼすことに。それから400年。鬼族は復活を遂げ、皇帝は世界をひとつにするために鬼族の王・蒼龍(鈴木亜美)の討伐を部下である白虎(泉見洋平)と攻(貴水博之)に命じるのでした。じつは白虎と攻は、皇帝の考えに共感し、人間と生きることを選んだ鬼。今は憎み合う間柄の人間と鬼である3人か歌った「我らは一つ」「明日は交わそう勝利の美酒を!」では、志を同じくしてともに歩む3人の姿を表していました。

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いっぽうの鬼族。蒼龍の目覚めを待つのは玄武と人間を激しく憎む朱雀(大河元気)。その蒼龍は、自らの正体を知らないまま阿国という名で人間の踊り子として生きていました。そんな阿国と一座が訪れた京の都にも鬼の襲撃が。そこで鬼に襲われそうになった阿国を助けた白虎。またたくまに恋に落ちたふたりの気持ちが「君に逢いたくて」「貴方に逢いたくて」で歌われます。しかし、やがて阿国は蒼龍として覚醒し…。

人の魂を喰らって生きる鬼としての自分が受け入れられない蒼龍。しかも愛する白虎とは敵対する立場。そんな蒼龍を愛する者は白虎以外にもいて。「遠く離れてても」で「お前の心だけでも癒せぬだろうか」と歌う玄武と、「空と海の尽きる場所で」で「傍にいられるのなら」と歌う弁天丸(東山光明)です。蒼龍を見守る玄武と弁天丸の歌声は包容力に溢れ、優しく温かく、そして切なく…。鬼と人間のさまざまな思いを巻き込みながら、ストーリーは進んでいきます。愛し合うふたりに訪れる結末は? そして、鬼と人間の戦いはどうなるのか?

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ロックミュージカルとして上演される『KING OF THE BLUE』。劇中で歌われる曲はもちろんのことながら、鬼族と皇帝軍との戦いのシーンで流れる「皇帝軍vs鬼族」「狂鬼乱舞」もロックミュージックです。ステージ上で繰り広げられる殺陣と早いリズムで刻まれるギターやドラム。その音が殺陣にスピード感を加え、よりスリリングにショーアップしていました。また、舞台が倭の国ということで和太鼓が使われることも。ロックミュージックも和太鼓も、ステージを効果的に盛り上げ、それぞれのシーンのイメージ作りにひと役買っていたことは間違いありません。

歌詞の乗せられた楽曲のなかで特筆すべきは、1幕最後の「宿命」と「鎮魂歌〜THEME of the Blue〜」の前に歌われる歌。主演の泉見洋平は、『RENT』や『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』など名だたるミュージカルにメインキャストとしての出演歴を持つ実力者。数々の舞台・映画・ドラマなどに出演し、俳優としての印象が強い加藤和樹大河元気はミュージシャンとしても活躍しています。そして、鈴木亜美東山光明Ryohei貴水博之はいわずと知れたボーカリスト。「宿命」では、男性陣6人が魂の叫びともいえる歌声を聞かせてくれました。それはまさに圧巻のひとこと。「鎮魂歌〜THEME of the Blue〜」前は、白虎と蒼龍が「愛したかった」の1フレーズをアカペラで。かすかな声で歌われるフレーズが悲しく響いたのでした。

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『KING OF THE BLUE』は、鬼と人間の戦いの物語。でも、途中でふと考えさせられるのです。鬼とはじつは人間ではないのか。歪んでしまった人間の姿なのでは、と。物語のなかでは、ひとりでは何もできない人間が集団となれば狂気に走る恐ろしいさま、つけてしまった知恵をうまく使うことのできない人間の姿も描かれています。そして、全編を観終わって思うことは…。ただ「おもしろいミュージカルだった」とか「楽しい作品だった」「悲しい舞台だった」というだけではないことは確か。

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ミュージカルにしろ映画にしろドラマにしろ、観て感じることは人それぞれ。でも、必ず何かを感じられる。それは『KING OF THE BLUE』も例外ではありません。今作の音楽を担当したKYOHEIは、本公演パンフレットのなかでこう言います。「物語を通じてこの“青”の世界を感じてもらえたらのなら、あなたは最高にRockです」と。

■SET LIST

第1幕
M0 鬼開眼
M0’OVERTURE〜THEME of the Blue〜
M1 NEVER END
M2 未来に怯え
M3 阿国一座のお通りだ!
M4 因縁永却
M5 貴方に逢いたくて
M6 えっちら おっちら 祭りの支度
M7 君に逢いたくて
M8 天神祭
M9 運命の刃
M10 皇帝軍vs鬼軍
M11 我らは一つ
M12 鬼神崇拝
M13 遠く離れてても
M14 闇〜THEME of the Blue〜
M15 宿命

 
 
第2幕
M16 CHAOS TO SURVIVE
M17 明日は交わそう勝利の美酒を!
M18 このままずっと
M19 海と空の尽きる場所で
M20 愛したかった
M21 Silent Sorrow
M22 身柄交換の儀
M23 HOWL
M24 蒼龍覚醒
M25 友よ
M26 狂鬼乱舞
M27 鎮魂歌〜THEME of the Blue〜



[公演情報]
『KING OF THE BLUE』

キャスト泉見洋平鈴木亜美加藤和樹大河元気東山光明(Honey L Days)、黒木マリナ柿弘美穴吹一朗石井匡人/Ryohei貴水博之 ほか

スタッフ上島雪夫(演出・振付)、木村元子(原案)、半澤律子(原案・脚本・作詞)、岡本貴也(脚本・作詞)、KYOHEI(音楽・作詞)、MITSUAKI(作詞)、ヒロイズム(作詞) ほか


公演場所:ル テアトル銀座
公演日程:2010年1月23日(土)〜1月31日(日)
チケット:全席指定 6,300円(税込み)
企画・製作・問い合わせ:DHE@stage TEL 03−5457−8883

公式ブログhttp://kingofblue.exblog.jp/