演奏

ROCK'N JAM MUSICAL I 2009

TEXT:西川敦子 PHOTO:桜坂秋太郎
『ROCK’N JAM MUSICAL』が誕生したのは、‘04年10月。以来、再演を重ね、パワーアップしつづけた舞台が、今年は新国立劇場小劇場で『ROCK’N JAM MUSICAL I 2009』として上演されることに。

『ROCK’N JAM MUSICAL』とは、プロデューサー・川﨑登氏の言葉を借りれば「長引く不況、世界各地に広がる戦争や紛争、格差社会、若者の就職難、そんな混沌とした時代だからこそ、“生きるパワー”“夢”そんな、昔だったら誰でも持つことができたものをもう一度考えてみたい。それもできれば面白く。そんなテーマで取り組み始めた作品です」。進化しつづけるなか、『ROCK’N JAM MUSICAL I』『ROCK’N JAM MUSICAL II』とふたつのストーリーが生まれ、『〜I』では時代設定を’70年前後に。現在とよく似ていた当時のメッセージ“愛”“反戦”“友情”…を伝えるべく、’70〜’80年代の名曲を散りばめたミュージカルが幕を開けたのでした。

「あの素晴らしい日よ」と歌う「ジ・エンド」(ドアーズ)、「自由な国」と歌う「ザ・ムービー・イン・マイ・マインド」(ミス・サイゴンより)。これから舞台上で展開されるストーリーを予感させる2曲にいざなわれて、物語はスタート。とあるライブハウスに、父が自分と同年代だった頃・’70年代を振り返る青年(永山たかし)の姿が。そこに現れたのは、まさしく父と同じ年頃の男性ふたり。ライブハウスのステージ上では、「アー・ユー・ゴナ・ビー・マイ・ガール」(ジェット)が演奏されていて…。ボーカル(Kimeru)を見て、昔を思い出すふたりの男性。彼は昔のライバルに酷似していたから。そして、ひょんなことから’70年代にトリップすると…。

‘70年代。人間たちが各地で戦争や民族紛争を繰り広げていた時代。日本でもベトナム戦争反戦デモが激化するなか、バンドの練習をする4人の若者(岸祐二永山たかし渡辺大輔田村雄一)。バンドコンテストに向けて稽古を重ね、ツアーに思いを馳せ…。「涙の乗車券」(ビートルズ)が、4人の弾む気持ちをじつに見事にオーディエンスに伝えてくれていました。

「ビーナス」(ショッキング・ブルー)とともに登場したのは、下川みくに池田祐見子。彼女たちはいったい誰? 「大好きな彼はバンドのギタリスト」であり、次曲「ブルー・バーユー」(リンダ・ロンシュタット)中に出てくる「夢見るあなたとの幸せ」であり。そう、答えは歌の中に。彼ら、彼女らの恋愛模様もちょっぴり絡めつつ、ストーリーは進んでいきます。

転機は「ザ・ウォール」(ピンク・フロイド)から。コンテストを目の前に、バンドメンバーのひとりがデモに参加してしまうのです。そんなメンバーの心情を表現したのが「長い夜」(シカゴ)。寺田恵子の歌声が、その思いをより強く訴えるのでした。デモに参加し、大変な事態に巻き込まれるメンバー。果たして、コンテストはどうなる!? 強力なボーカル(Kimeru)率いるライバルバンドと4人のバンド、優勝はどちらの手に!?

登場人物の心境や状況を伝えるほか、バンドの稽古中だったり、ライブだったり…。さまざまなシーンに歌われた’70〜’80年代の名曲たち。どの曲を欠いても、このストーリーは成立しないのではないでしょうか。そんな舞台の最後を締めたのは、「ユーブ・ガッタ・フレンド」(キャロル・キング)。ライティングが、歌が、出演者の表情が、なつかしさに似た気持ちを呼び起こします。’70年代を知っている人にも、知らない人にも…。

さて、ストーリーのあるミュージカルが幕を降ろすと、第2幕のスタートです。2幕は、’70年代のデパートを設定に据えて、トークと「フェーム」(フェームより)「アクエリアス」(ヘアーより)などミュージカル名曲とロックやポップスの名曲とを織り交ぜ、繰り広げられるライブショー。サラリーマンからロックスターになる人あり、妊婦からダンサーになる人あり。夢を叶えてくれるデパートで、変身を遂げる出演者たち。なかでも、パッと見その人であることがわからないくらいの寺田恵子の変わりっぷりは必見。ぜひぜひ劇場に足を運んで、ご覧あれ!

岸祐二Kimeru永山たかし渡辺大輔田村雄一寺田恵子下川みくに池田祐見子が顔を揃えてのトーク部分では、「’70〜’80年代といえば?」がテーマに。ひとりずつ話していく間に、ほかの出演者からツッコミが入ったり、通訳(!?)が入ったり。それぞれの素もチラリとのぞけたトークとなりました。最後は、1幕のミュージカルを振り返りつつ、「今も世界のどこかで争いが絶えないわけで…。世界の平和を願って」と「ノーウーマン・ノークライ」(ボブ・マーリー)へ。「ヘイ・ジュード」(ビートルズ)とミックスされた「ノーウーマン・〜」は、強く強くメッセージを放ち、耳を傾けていたオーディエンスの心にもきっと同様の願いが生まれたことでしょう。

拍手に応えてのステージでは、男性陣の「ダンシング・イン・ザ・ストリート」(デビッド・ボウイ)と女性陣の「ダンシング・クイーン」(アバ)を。更なる拍手には「ロックンロール・オールナイト」(キッス)! これには、オーディエンスも立ち上がります!! ノッてます!!! 出演者ともども跳んでます!!!! 劇場が揺れてます!!!!! Kimeru渡辺大輔田村雄一下川みくにが客席に降りて歌うひと幕もあり、盛り上がりに盛り上がったのでした。

ミュージカルを観て、ショーを観て、最後はライブさながらに盛り上がって。上演時間2時間のなかに、これでもかといわんばかりに楽しいこと、そしてアツいメッセージをギュギュッと詰め込んだエンターテインメント。そんな『ROCK’N JAM MUSICAL I 2009』でした。

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[SET LIST]
第1幕
M1 「ジ・エンド」(ドアーズ
M2 「ザ・ムービー・イン・マイ・マインド」(ミス・サイゴンより)
M3 「アー・ユー・ゴナ・ビー・マイ・ガール」(ジェット
M4 「サティスファクション」(ローリング・ストーンズ
M5 「涙の乗車券」(ビートルズ
M6 「ビーナス」(ショッキング・ブルー
M7 「ブルー・バーユー」(リンダ・ロンシュタット
M8 「マイ・シャローナ」(ザ・ナック
M9 「ザ・ウォール」(ピンク・フロイド
M10 「テレフォン・ライン」(ELO
M11 「長い夜」(シカゴ
M12 「スペース・オディティー」(デビッド・ボウイ
M13 「アイ・ワズ・ボーン・トゥー・ラブ・ユー」(クイーン
M14 「ユーブ・ガッタ・フレンド」(キャロル・キング
 
第2幕
M15 「少年時代」(井上陽水
M16 「アイ・ラブ・ロックンロール」(ジョアン・ジェット
M17 「ワォーキング・デイ・アンド・ナイト」(M・ジャクソン
M18 「タイム・ワープ」(ロッキー・ホラー・ショウより)
M19 「ステップ・イントゥー・ザ・バッドサイド」(ドリームガールズより)
M20 「ラムタムタガー」(キャッツより)
M21 「オン・マイ・オウン」〜「フェーム」(フェームより)
M22 「コーナー・オブ・ザ・スカイ」(ピピンより)
M23 「アクエリアス」(ヘアーより)
M24 「ドリームガールズ」(ドリームガールズより)
M25 「K−JEE」「オープン・セサミ」(サタデーナイトフィーバーより)
M26 「アイ・シュッド・テル・ユー」〜「ウィザウト・ユー」(レントより)
M27 「ノーウーマン・ノークライ」(ボブ・マーリー)〜「ヘイ・ジュード」(ビートルズ
M28 「ダンシング・イン・ザ・ストリート」(デビッド・ボウイ
M29 「ダンシング・クイーン」(アバ
M30 「ロックンロール・オールナイト」(キッス

Photo Gallery(写真をクリックすると拡大します)
岸祐二、永山たかし、田村雄一、下川みくに、池田祐見子

[公演情報]
『ROCK’N JAM MUSICAL I 2009』

キャスト岸祐二Kimeru永山たかし渡辺大輔田村雄一寺田恵子下川みくに池田祐見子 ほか

スタッフ上島雪夫(演出・振付)

公演場所:新国立劇場小劇場

公演日程
2009年9月5日(土)〜13日(日) 全12公演
土・日 13:00/17:30(最終日は13:00のみ)
月・火・木・金 19:00
水 14:00

チケット:全席指定 7,500円(税込み)
チケット発売場所:CNプレイガイド、ローソンチケット、チケットぴあ

主催・企画・制作・問い合わせ
株式会社ライズ・プロデュース
TEL 03−3589−5115(月〜金 10:00〜18:00)
URL http://www.rise-produce.com/