連載

ママはロッカー マザー2 東京都 アイ

※この記事は取材した2010年のアーカイブです。最新情報ではありません。

TEXT:岡田真理

この連載の主役は、ママになってもなおライブでステージに立ち続ける”ママロッカー”。ロックにかける情熱から子育ての話まで、熱く語ってもらいます!

今回登場してくれるのは、新橋Go5ガールズでべーシストを務めるアイさん。新橋Go5ガールズは、ビーストでも御馴染みのコラムニスト・ダディ竹千代さんが経営する新橋の『ZZ』を拠点に活動するバンドです。娘さんが大学受験でバタバタの中、ようやくセンター試験が終了した1月下旬にお時間をいただき、お話をお伺いしてきました。

—アイさんは、小さな頃から音楽がお好きだったのですか?

Photoアイ:はい、好きでした。家に親戚が集まったときには、よくみんなの前で歌ったりしていました。テレビやラジオで、ピンキーとキラーズ山口百恵西城秀樹などの歌謡曲を聴きながら、マネして踊ったり歌ったりもしていましたね。もともとロックが好きだったというわけではなく、音楽ならどんなジャンルでも好きでした。

—小さい頃、楽器も何か習っていたとか。

アイ:ピアノをやっていましたね。4歳のときに、「ピアノが欲しい!」と親にねだって買ってもらいました。でも当時は譜面などを持っていなくて、テレビで聴いて覚えたものを弾くだけでしたけど。

—ロックというものを意識して聞くようになったのは?

アイ:小学生から中学生くらいの頃、ベイ・シティ・ローラーズビリー・ジョエルオリビア・ニュートン・ジョンなどが日本に入ってきて、彼らの音楽を聴いたときに、それまでテレビで見ていた歌謡曲とはちょっと違うな、と意識し始めました。

—それがロックに興味を持つきっかけだったということですね。特に好きなバンドはありました?

Photoアイ:中学生の時に、ジューシィ・フルーツという日本のバンドを好きになりました。ライブも見に行きましたよ。でも同時に、野口五郎のコンサートに行ったりもしていました(笑)。この頃も、ロックとか歌謡曲とか、線引きせずどの音楽も好きだったので。だから、ロックバンドの良さに目覚めたからといって歌謡曲が嫌いになることもありませんでした。

—バンド活動を始めたのはその頃ですか。

アイ:「バンドやりたいね」って話もありましたけど、当時は中学生でお金もなく、楽器も買えなかったので、結局「やりたいね」で終わっちゃいました。実際にバンドを始めたのは、高校3年生の時です。文化祭でライブをやることになって。当時演奏したのは、白井貴子沢田研二佐野元春と、ロックも歌謡曲も何でもやりましたね。当時の私のパートは、ベースではなくてピアノとコーラスでした。

—高校卒業後は大学に進学されたとのことですが、その後のバンド活動は?

Photoアイ:大学に行ったら、軽音楽部にでも入って楽しいバンド生活を送ろうって、胸を躍らせていました(笑)。でも、入ったサークルでは同じ学年でバンドを組むのが普通だったのですが、私の学年は私しかいなかったので、先輩のバンドにお邪魔するしかなくて。だからいつも、「これやって」と言われたものをやっていました。正直、つまらなかったですね。自分でやりたいこともたくさんあったし。そこで、思い切ってサークルを辞めて、大学に行きながら音楽の専門学校でボイストレーニングを勉強し始めました。

—そこで知り合った人とバンドを組んだのですね。

アイ:はい。その時は、ボーカルをやることにしました。でも高校では音楽進学クラスに在籍しており、声楽を勉強していたので、クラシックと発声の方法が全く違って結構苦労しました。自分の思う音楽はそこでもなかなか出来ませんでしたね。自分が引っ張るというよりは、すでに結成されたバンドに入れてもらうことが多かったですから。

—大学卒業後はシステムエンジニアとして働かれたそうですが、その後音楽活動は?

Photoアイ:続けました。今度は社会人同士でバンドを組んで、仲間内でやるようなゆるいライブをやっていました。本当は本格的にやりたかったけど、仕事も忙しかったですからね。残業も多かったので、仕事がメインで、バンドのほうは完全に余暇でした。ライブもそんなに頻繁にはできなくて、当時は毎日悶々としていましたね。

—その後、結婚して出産されたわけですね。

アイ:結婚して仕事を辞めて、その1年後に子供が生まれました。私は妊娠中からパソコン通信をやっていたのですが、それを利用して同じような境遇の主婦のみなさんに「主婦バンドやりませんか?」と呼びかけました。そうしたら、同世代の子持ち主婦が5人も集まってくれて。まったく知らない人同士で中には初心者もいたけど、うまくやるというより、とにかく楽しみながらやりましょう、という感じでやっていましたね。そのうち、半年に一回くらいでしたがライブもできるようになりました。

—お子さんが小さい頃は、子育てとバンド活動はどのように両立していましたか?

Photoアイ:2歳の子供がスタジオでお昼寝したり、ミニカー走らせたりしていましたよ。ライブも子供エリアみたいなスペースを作ったり、飽きさせないためにポケモンやNHKのアニメソング、みんなのうたなど、子供が喜ぶ歌をアレンジして演奏したりしました。

—その後、バンド活動は順調に・・・

アイ:いえ。実はやっているうちに、だんだん目指すところが変わってきて、温度差が出て来てしまって。そこで、今度は違う主婦バンドのボーカル募集に、今度は私が応募しました。でもそこにはもう一人ボーカル候補がいて、ギターとドラムはすでにいたので、私がベースをやれば成立するという状況で。そこで、思い切って私がベースをやることにしました。30過ぎの時です。うちの主人がベーシストで家にベースもあったし、やってみてもいいかなと思って。KISSの「Love Gun」を演奏してみたら、それがもう楽しくてしょうがない。快感でしたね。これはいい!って思いました。

—今は、娘さんが高校3年生で、息子さんが高校1年生ですよね。お子さんがライブを見に来ることはありますか?

Photoアイ:はい、以前は来ていました。でもある時から来なくなっちゃいました。そこで娘に、「最近来てくれないね」と言ったら、「実はお母さんのライブが怖かったの」って言われちゃって…。それはそうですよね。ライブハウスって暗いし、タバコの煙はすごいし、そこにいる人たちは、みんな金髪やら鼻ピアスやら、刺青ですからね(笑)。

—子供にとっては怖いでしょうね。ちなみにお子さんたちは、ロックに興味は?

アイ:まだ小さな頃、私がクイーンの曲を聴いたりしていると、一緒に歌ったりしたので、「いずれロックに目覚めてくれるかな?」と期待していました。でも、残念ながら興味を持つことはありませんでしたね。たぶん、ロックはその場の遊びでしかなかったのだと思います。

—音楽には全く、という感じなのでしょうか。

アイ:娘は中学、高校と吹奏楽部です。基準の音を奏でるオーボエをやっているので、昔ライブに来たときに「リズムが狂ってるし、ピッチがズレてるよ」なんて言われたこともありました。大学は普通の学部を受けますが、オーボエは続けたいようです。息子の方は全然音楽に興味がなくて、「iPod欲しくないの?」と聞いても、特にいらないみたい。流行のJポップも聴かないですね。わりと真面目な性格で、部活と勉強に勤しんでいますよ。

—ママロッカーとしては、ぜひ音楽をやってほしかったですよね。

Photoアイ:私も主人も、「ギターやってみたいとか言わないかな」ってワクワクしていたことは事実ですね。娘が吹奏楽部に入ったときも、「オーボエじゃなくて、パーカッションはどう?」なんて勧めてみたりして。前に一度、私がベース、主人がギター、子供たちが木琴、ピアニカのパートで、友達のバースデーイベントでライブをやったことがあって、そこで目覚めるかと思いきや、全然その気配はありませんでした(笑)。でも、子供達にはやりたいことをやってもらいたいです。好きなことをやって楽しいのがいちばんですからね。自分もやりたいことをやらせてもらっているので、子供のやりたいことも反対せずに応援したいです。

—今もバンド活動を精力的に行ってらっしゃいますが、アイさんとしてはやはり家庭が第一ですか。

アイ:もちろんです。そのスタンスを崩してバンド活動はできません。以前、カウントダウンライブで大晦日に家を空けたことがあって、その時は朝帰りして、そのまま寝ないでお雑煮作って、眠い顔しながらもなんとか家族でお正月を過ごしました。それを怠って寝てしまうことはできないんです。結婚して家族がいるということは、自分の好きなように、自分の思い通りにはできない、ということだと思っています。でも、多少のとりこぼしはありますよね。本当はここにもう一品おかずがあるはずだったけど用意できなかったとか、ライブのミーティングが長引いたせいで7時のご飯が8時になっちゃったとか。それを許してくれて、応援してくれる家族にはホントに感謝ですよ。

—それでは最後に、今後の目標を聞かせてください。

アイ:これから子供の受験とか、親の介護とか、母親というのはいろんなことに直面します。だから、常に活動し続けるということはできないかもしれない。夫の転勤とかも、もしかしたらあるかもしれないですしね。でも、もしできなくなっても、その時その時にやるべきことやって、またできるようになったらやればいいと思います。ライブが出来ない状況の時は、曲を作ったりすればいいですし。そんな感じで常に音楽と携わって、酸素ボンベ持って杖ついて90歳記念ライブやれたら、それが最高ですね!

ママロッカーはやはりパワフルです。大晦日のお話は大変興味深かったです。家庭を大切にすることが、バンド活動を続ける秘訣であるというのは、バンドに限らず何か好きなことをするために共通のような気がします。このインタビューで、目が覚めるママさんがいるかも?・・・しれません。

アイさんは、音楽と一緒にこれからも楽しい人生を過ごすこと間違いありません。ぜひ、CDをリリースして定期的に活動をしている新橋Go5ガールズのライブに行って、生のアイさんを感じてください!


CDジャケット
【新橋Go5ガールズ 公式サイト】
http://go5.girly.jp
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【新橋Go5ガールズ mixiコミュニティ】
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【インフォメーション】
2010年3月28日(日)【宇都宮】ビッグアップル


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