連載

APP-ER!!! 鈴木健太郎 代表取締役に突撃取材!
TEXT & PHOTO:鈴木亮介

連載「ロック社会科見学」第15回は、「アプリ」の制作提供サービスに注目します。スマートフォンの普及で急速に需要が拡大しているという「アプリ」。音楽業界にも無縁な話ではありません。バンドの公式アプリを作るミュージシャンが今、増えているのです。…とは言え、「アプリ」でいったいどのようなことができるのか?ホームページとは何が違うのか?といった疑問もあります。そこで今回は、バンドの公式アプリを制作提供する会社を去年立ち上げたという株式会社ローズクリエイトの鈴木健太郎代表取締役に、アプリの知られざる魅力、メリットなどを聞きました。

アプリ制作という仕事はここ数年で隆盛した業界。ということは、それまでは全く異なる仕事をしていたはずです。副編・スズキと同じ28歳の鈴木健太郎代表取締役のここまでの経歴、そしてどのようなきっかけでアプリと出会ったのか、といったことも伺いました。

鈴木健太郎 代表取締役 プロフィール
愛知県出身。6歳から18歳まで静岡県で育ち、ミュージシャンになるべく上京。その後数々のバイトを経て、新宿HEAD POWER、Wildside Tokyoでブッキングマネージャーなどを歴任。2011年8月に独立。株式会社ローズクリエイト代表取締役としてアプリ開発「APP-ER!!!」のほか、HP制作、イベント製作、さらにはNEW BREED大仁田厚withKIxxANDCRYなどのアーティスト事務も担当。自身もthe★想いでのボーカルとしてGuns N’ Rosesのカバーを中心に活動中。

— 現在の会社を立ち上げたのはいつ頃ですか?

鈴木:去年の8月末に起業しました。元々はソーシャルゲームの販売のために立ちあげた会社です。

— 立ち上げたきっかけを教えてください。

鈴木:これというきっかけは特にないのですが(笑)自分は元々新宿のHEAD POWERというライブハウスに務めていて、その後WildsideTokyoに移り、ライブハウスで働き続けてきましたが、その間にも何かしたいという思いがずっとあり、去年の夏に思い立って、自分自身の会社を立ち上げることにしました。

— なぜソーシャルゲームに目をつけたのでしょう?

鈴木:これも、特段の理由はないのですが(笑)やっぱり、何かしたいという思いをずっと持ったまま、ただじっと待っていても時間ばかりが過ぎていくので、実際に動き出そうと自分を追い込んだわけです。その時ちょうど、Wildsideで着うた事業をやっていたのですが、その技術を担当してくれた会社が「ゲームを一緒に作らない?」と誘われて、面白そうだなぁと思って、ノリで始めた…という感じですね。ネット関係は初期費用がほとんどかからないということも、背中を後押ししてくれました。

— それまではずっと音楽業界にいたのですか?

鈴木:Wildsideに約2年、その前のHEAD POWERには1年半くらいいました。その前は、白浜の海の家でバイトしてました。バイトはもう数え始めたらきりがないくらいですね。

— その中でも特に印象に残っているバイトがあれば、教えてください。

鈴木:30種類くらい経験しました。長くやったのは植木屋さんと、キャバクラのボーイですね。印象的だった思い出というと…ハチに刺されたとかですかね(笑)あと、チャドクガという植木屋業界では有名な蛾がいて、死骸に触っただけでも手がかぶれるのですが、それにやられて、1ヶ月ぐらいまともに生活できなかったとか…キャバクラの方は公共の場で口に出すのもはばかられるようなことがいっぱいありましたので、それは控えますね(笑)

— なるほど(笑)壮絶な経験を様々されているわけですが、原点に立ち返ると、上京のきっかけはミュージシャンを目指したということでした。その辺りも詳しく教えてください。

鈴木:学生時代はとにかく「俺はロックスターになれる」と信じて疑わなかったですね(笑)高校生の頃も絶対BON JOVIになれる!と思っていて。そして18歳の時に上京して5年ほど活動しました。

— どういう音楽をやっていたのですか?

鈴木:ハードコアです。3ピースでやっていました。

— 静岡から、このバンドで天下を獲るぞ!と上京するわけですね。

鈴木:ところが、いざバンドメンバーに「上京するぞ!」と言ったら、一人は「家業を継ぐからだめだ」と言って、もう一人は「大学進学する」と言って。結局自分一人で上京したんですよ。そこから既に間違ってます(笑)だから、ずっとオリジナルメンバーでやってるGLAYとかJanne Da Arcが当時うらやましかったですね。

— 一人での状況は不安も多かったと思います。

鈴木:何もない田舎から上京するのは結構勇気がいりますね。何のあても身寄りもなかったですが、唯一決まっていたのは、フリーでやっている素晴らしいボイストレーナーの先生が見つかって、自分はボーカリストとしてやっていきたかったので、その先生のもとに通いながらバイトしながらやっていこう、ということは決めました。学校に入る感覚に近かったですね。2年通って、Axl Roseの歌を体得しました(笑)

— 東京でもバンドは組んでいたのですか?

鈴木:そうですね。幾つか組みました。最初はハードコア、その次はハードコアパンク、その次はハードロック。昔懐かし、雑誌のメンバー募集ページやスタジオの張り紙を見て、探して組んでいました。今は様々なネット媒体がありますが、僕が上京した当時はギリギリアナログの時代でした。

— その中で「行けそうだな」っていうバンドは…

鈴木:(即答)なかったです!全然だめでした。1回でも「行けそうだな」って思う瞬間があればもう少し続けていたのですが。「こういう風にやればうまくいく」というのは、その後ライブハウスで働くようになって多少は分かったのですが、その当時は全く分からず、それに人間としてもまだ未熟だったので、メンバーとケンカすることもありましたし、結局どれもうまくいかずにやめてしまいました。

— それが上京して5年目、ということですね。そこから波乱のバイト生活が始まる、と…

鈴木:それまで、22~23歳までの自分の人生で音楽がものすごく大きなウェイトを占めていたので、それがなくなってしまったら他にやりたいことが何も見つからなくて、生活できるのならどんな仕事でもいい、という考え方になりました。今もそれはあまり変わりません。比較的どんな仕事でも楽しめるんですよ。それが自分の長所だと思っています。これがやりたいっていうよりは、その時やっていることを一生懸命やる、ということが多いですね。

— 音楽をやめるということに未練はなかったですか?

鈴木:それが、完全にスパッとやめたというわけでも、何かきっかけがあったわけでもないんですよね。最初の1年半くらいは音楽と縁遠い仕事をしていましたが、やっぱり音楽に携わりたいと思ってライブハウスで働くようになり、「まぁまたいつか音楽をやる時が来るだろう」と漠然と思いながら日々働いていたら、どんどん裏方が楽しくなって…それで今に至っています。もちろん、今でも「仕事が落ち着いたらまた本格的にやろう」と思っていますよ。

— なるほど。そんな人生観や様々な人生経験が、今の事業形態に結びついているのかもしれませんね。というわけで改めて現在の会社について伺います。立ち上げが昨年8月ということでした。

鈴木:そうですね。その後アプリサービス「APP-ER!!!」の事業を始めました。

— 「アプリ」には起業当初から着目していたのでしょうか?

鈴木:当初から関心は持っていました。初めはソーシャルゲームの開発ということでスタートしたのですが、スマホがこれだけ普及する中で、何かその市場で面白いことができないか、と話していました。そこで、自分が今までやってきたことで活かせるのは音楽やバンドだと思って、今回の「バンド向けアプリ」という発想が思いつきました。

— 「バンドのアプリ」というと、最近始めているバンドも見られるようになりましたが、まだまだ一般的でないように思います。単刀直入に、ホームページとは何が違うのでしょうか?

鈴木:端末にインストールできるので、検索の手間が省けて最短距離でアクセスできる、という点が最大のメリットだと思います。例えばアマチュアバンドだと、バンド名によっては検索してもすぐに出て来なかったり、バンド側として先に見せたいホームページよりもブログやTwitter、ともすれば匿名掲示板なんかが検索上位に出てしまうこともありますよね。でも、アプリならバンド側が見せたい「ホーム」を確実に、最短距離で見せられるというのが一番の魅力だと思います。そして、端末の中にアプリが入っていれば、時々チェックしてもらえて、バンドとの親近感も生まれると思います。

— なるほど。内容自体も、ホームページと異なる部分はありますか?

鈴木:やはりバンドとお客さんとの親近感という点が一番ですね。アプリではバンドのプロフィールや写真はもちろんのこと、ライブスケジュールの掲載、Twitterとの連動、メルマガ配信機能、さらには試聴機能など、コンテンツ一つ一つを見るとホームページとほとんど変わりありません。しかし、例えば学生バンドで自分たちのHPを作ったことのある人は分かると思いますが、「ブログは外部サイトだからパスワードが異なる」「音源はこのサービスを使って」「メルマガはまた別のパスワード」…と複数のサービスを自分で集約しなければいけないので、時間も手間もかかって、その割にサイトの統一感がなくなってしまいます。アプリなら一つに全て集約できるので、楽に管理ができるし、伝えたい情報を最短距離でしっかりと伝えることができます。

— 中身の更新は自分たちでできるのですか?

鈴木:もちろんです!まず最初にバンドから音源や写真やプロフィール情報などをいただいてアプリを制作しますが、その後は各バンドにはそれぞれのIDを発行し、各自が自由に更新してもらえるようになっています。その点はホームページの更新と変わりません。

— ターゲットはどの辺りになるでしょうか?

鈴木:インディーズで活躍しているバンドには特に使っていただきたいですね。現在設定している金額(初期費用:税込み29,800円)はこの業界ではとても安い値段設定だと思っています。メジャーアーティストが何十万円という金額をかけてホームページやアプリの制作をしているのに対して、インディーズバンドがバンドのプロモーションを考えた時に、いかにお金をかけずにいいものを作るか、という所がカギになります。お金をかけずにホームページを手作りするのは誰でもできると思うのですが、そのもう一歩上のものを目指した時に、うちが力になれると思います。

— スマホがどんどん普及する中で、「アプリを使うこと」はこれからのスタンダードになりそうですね。

鈴木:そうですね。これからどんどんシェアが拡大し、アプリが主流になると思います。あと実用的なのは、例えばバンドが自分たちの情報を発信したい場合、ライブハウスでアンケートを配って連絡先を書いてもらったり、あるいはお客さん側にメルマガ登録をしてもらったりしますよね。そうすると、どうしても二度手間三度手間が生じ、「面倒だからやめよう」と、つながりが断たれてしまいます。けれどもアプリなら「これをインストールして!」で一発で済むので、手軽に情報発信ができるようになります。

— 実際にアプリを作ったバンドや利用したユーザーからはどのような反応がありましたか?

鈴木:一番多かったのは「試聴がしやすくなった」という声ですね。スムーズにできるので色んな人に聴かせやすい、とか、いつでも曲が聴けて嬉しい、という声もありました。バンドのPRと言ってもただ名前やキャラクターを売ればいいというものではなく、一番はやはり曲を聴いてもらうことだと思うので、これはサービスを提供する側としては嬉しい反応でした。あとは単純に「自分たちのバンドのスマホアプリを持ってるなんて、かっこいい」という反応もありました。チラシでTwitterアカウントやホームページのURLを宣伝するよりも気軽にインストールしてもらえて見てもらえるということで、今のところアプリを作ったバンドからは良い反応ばかりがかえってきますね。悪い反応は今のところゼロです。

— アプリ自体のツールとしての魅力に加え、「APP-ER!!!」として独自に考えている展開はありますか?

鈴木:自分自身が音楽に携わっている立場から、ただ開発する、提供するというだけでない何かができればと思っています。元々は頑張っているバンドのプロモーションを支援したいという思いで始めたので、例えば「APP-ER!!!」を利用しているバンドのうちインストールの多いバンドランキングを作って紹介したり、「APP-ER!!!」を利用しているバンドを集めてブッキングライブを開催したり、といったことを検討しています。

— 最後に、今後の展望を教えてください。

鈴木:まだまだ利用してくれているバンドが少ないのが実態です。利用するバンド数が増えれば、アプリをインストールするという習慣も広がって、いっそうバンドのPRにつながると思います。イベントでの周知や今回のような取材を通じて、もっともっとアプリが知られるように、積極的な広報活動を進めていきたいと思います。そもそも「アプリって何ができるの?」という所もしっかり伝えたいです。日本の全てのインディーズバンドに「アプリを作るならAPP-ER!!!」と認知してもらうこと、そしてAPP-ER!!!をポータルサイト化してミュージシャンの情報発信ツールとして強力な媒体を作り上げる、というのが大きな野望です。

10月末までキャンペーン中!開発費無料!

これから、スマホユーザーが増えていく一方の世相の中、スマホでのバンドプロモーションはかなりの情報発信力を発揮してくれると考えております。

10月末までキャンペーン中なので開発費は無料でやらせていただいております。 この機会にスマホアプリでのプロモーションを是非御一考ください。

http://www.apper-web.com/01

「APP-ER!!!」のアプリ制作提供以外にも、大仁田厚がボーカルを務めるパンクバンド・大仁田厚withKIxxANDCRYのマネジメントも担当している鈴木健太郎代表取締役。その接点を聞くと、HEAD POWERで務めていた頃、たまたまチラシを見て「あの大仁田がバンド?」と興味を持って電話をかけたのがきっかけで、付き合いが始まったそうです。

どんな仕事でも楽しめるのが自身の長所、と語る鈴木健太郎代表取締役。いい意味で「こだわらない」ことで、その時その状況に合った道具の使い方や、新しい知恵が生まれるのでしょう。これからますます注目を集めるであろうアプリ業界で、次にどのような仕掛けが生まれるのか、注目し続けたいと思います!

バンド公式アプリ制作サービス APP-ER!!!
公式サイト:
http://www.apper-web.com/01

株式会社ローズクリエイト
http://www.rose-create.com/


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