連載

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ネギドラム 根木浩太郎 氏に突撃取材!
TEXT & PHOTO:株本和美

連載「ロック社会科見学」第18回は、国産ハンドメイドドラムブランド・ネギドラムをご紹介しましょう。現社長の根木浩太郎さんにお話をうかがうとともに、工房を案内していただきました。
 
楽器の町、静岡県浜松市にある「株式会社ネギドラム」は、店舗と工房が一体となっており、ドラムレッスンも可能なスタジオも完備されている会社です。近隣の学生が学校帰りに立ち寄ることもあり、親しみやすい場所となっています。
 
今回の取材は、若手ロックンロールバンドmyeahns(マヤーンズ)のドラマーあり、仲野茂バンド・LTDII仲野茂中村獅童がボーカルを務める高樹町ミサイルズでも活躍中の茂木左(もぎひだり)が、愛用しているドラムメーカーの社長に、アーティスト目線でのインタビューをおこないました。

A根木浩太郎(右:ネギドラム社長)
 
1969年7月生まれ。静岡県出身。1962年創業のドラムメーカー二代目社長。幼少の頃からドラム作りに携わってきたプロフェッショナル。
 
茂木左(左:myeahnsドラマー)
 
1989年8月生まれ。千葉県出身。2011年よりmyeahns(旧テクマクマヤーンズ)のドラマーで、現在は、仲野茂バンド・LTDII、・仲野茂と中村獅童がボーカルを務める高樹町ミサイルズでも活躍中。独特のドラミングには定評がある。https://myeahns.jimdo.com
 
B
 

C— まず、株式会社ネギドラム創業の経緯を教えてください。

根木:「ネギドラム」の創業は昭和37年(1962年)。楽器メーカーで輸入や仲介、調律の仕事をしていた先代社長が、ドラム作りに興味を持ち、製造を始めたのがきっかけです。先代にとって自分好みのドラムがなかったため、自分で作ってしまおうと考えたことにより、ネギドラムはスタートしました。創業当初は、東京のメッキ工場を借りてスネアドラムを製造していたましたが、その後、浜松市に移り、子どもが使うマーチングドラムやお祭り用の太鼓、教育楽器なども手がけるようになっていきました。

— 浜松を拠点にされたのは、楽器の街だからですか?

根木:いえ、まったくの偶然なんです。先代の実家がたまたま浜松だったことで、この地に(笑)。でも、YAMAHAやKAWAIなどのメーカーさんがあり“音楽”という面では先駆けの街ですから、結果的には運が良かったと思います。ドラムに関して言うと、YAMAHAより先に製造を始めたんですよ。

D— 今では、地域で使われる太鼓まで手掛けられていると聞きました。

根木:お祭り用の太鼓に関しては、本格的な皮張りの祭り太鼓を作るというわけではないんです。浜松は雨が比較的多い町で、雨が降ると本革の太鼓が傷んでしまうため、それに代わるものができないか?という相談をうけて、作り始めたモノなんです。

— そんな経緯から太鼓を…雨が多い地域には、ありがたい商品ですね!

根木:そうですね。浜松エリアの地域では知られていますが、こういう商品があることを知っていただいている方の方が少ないかもしれませんね。あまり宣伝をしていないからでしょうか?(笑)

— ええ、社長、宣伝しましょう(笑)。でも、そもそもネギドラムさんの商品って、楽器屋にあまり置いてなくないですか? 僕は偶然、アクリル素材のスネアを某中古楽器屋の店頭で見つけてめちゃくちゃテンションあがって(笑)。これを逃したらいつ買えるかわからなかったので、すぐ購入しました。

根木:簡単に言いますと、普通はお店に並んでいる商品の中から自分の欲しいものを探す方が多いと思いますが、そこに欲しいものが無かった方たちが、うちの商品を見に来る……。だから、店頭にもあまり並んでいなくて、お店の方が、お客様を紹介して下さるという流れが多いですね。そういうお客様たちの“こういう音が欲しい”という声を元に楽器を作っていくので、それなりに時間もかかりますし、費用もかかります。店頭で出来上がっているものの中から選ぶのではなく、何もないところから作っていく、という逆の仕事をしているわけです。

E— それって、究極のオーダーメイドですよね。

根木:そんな大げさなものではないですよ(笑)。まあ、お店からの紹介で、オーダーを受けている感じですかね。そこは、普通の流通と変わっているところかな。

— 僕なんか、単純に“国産のドラム”と聞いて「すごいなー、使ってみたい」って思って、手に入れたんですよ。音が良いのはもちろんだけど、見た目もカッコイイですし。

根木:うーん、厳密に言いますと、全てのパーツが日本で作られたものではなくて、一部、海外の部品を使っている箇所もあります。ただ、今本当に国産のパーツだけで作ると、とても高価なものになりますし、現実問題難しいでしょうね。

— 創業から現在にいたるまで、ドラムにも流行のスタイルのようなものがあったんですか?

根木:創業当時、ちょうど日本はジャズブームが起こるタイミングだったんです。当時、シンバル一枚の値段が普通の会社員のお給料3倍くらいした時代でした。外国のメーカーの商品に憧れるけど、高くて買えなかったので、国内生産のドラムを購入する方がいたわけです。今では外国メーカーの方が安いですけどね。こうして、ジャスが流行した時代にネギドラムはスタートしました。その後、ロックが流行りロック全盛期になったら、ハズれだしたので、変えていかなければならない部分もありました。

— それはなぜ?

根木:“楽器”ってイメージの産物という要素が強いからです。もちろん、ジャズ向き、ロック向きなどは多少あると思いますが、それよりも“イメージが先行してしまう”というのも事実です。例えば、ビンテージドラムが好きな方は多いですが、“ビンテージの音”が好きな方よりも、“ルックスや時代感”が好きな方のほうが多い。実は、現代の材料で、ビンテージの音を作るのは簡単です。でも、理屈上同じものを作っても、そういう方たちにとっては意味がないことで、その時代の楽器を所有する、というところに意味があり……。本当に、目隠しをして音だけを聞いたら、さほど違わない音を出すことができるんですよ(笑)。

F— え~本当ですか?でも、ブランドによって「あそこのメーカーはロックっぽい」とか、イメージってありますよね。

根木:はい。ネギドラムのエンブレム(ドラムについているメーカーロゴ)は、真鍮で作っているのですが、昔は“ジャズっぽい”フォントでしたが、途中から“ロックっぽい”フォントに変えたりして、時代とともに変化は遂げています。ただ、最近は昔のフォントを好む若い方が多いのでとても不思議です(笑)。

— 旧ロゴ、お洒落ですね。

根木:少しずつモデルチェンジすることで、違うイメージにしてきたネギドラムですが、なぜか今の若い人には、旧ロゴのほうが、人気なんですよね……それも面白いことです。

— ドラムの音選びについて聞きたいんですが、ぶっちゃけ何を重視すべきかイマイチ分からなくて(笑)。そういう時はどうしたらいいんでしょうか?

根木:ドラムを始めたばかりの人は、最初は初心者用の「ワーン!って大きな音がでるものを使うと思いますが、これから音の周波数を狭めていくと、スッキリとした良い音になる、と感じるはずです。CDで聞くようなクリアな音ですね。綺麗な音でしっかり好きな音がなっていればいいじゃないか?という時代があり、それは間違いじゃないんですけど、CDというのは音域幅とレンジ幅があるので、CDと自分の理想が同じようになり、そっちの方向にどんどん進んでいくと、今度は逆に「音楽的におかしいな? なんか表現しにくいな?」という疑問が生まれ出します。綺麗に叩けているけど、いざライブでやってみると、お客さんがイマイチ盛りあがらない。なぜだろう、ってなるのです。

G— 綺麗に叩けているのにイマイチなんですか?

根木:はい。そうすると、「自分の音作りって何だろう?」という疑問が生まれてきて、自分が求めるものが何なのかを考え出す。そこを早く掴んでいくのが、ドラマ―の皆さんが「何を求めるのか」表現者としての方向性を見つけていくきっかけになるんじゃないでしょうか。綺麗な音を追求するばかりじゃない、その手数、チョイスとして、色々知った上で“こんな音を作りたい”といった時に手お伝いができればと思っています。でも“好きな音”というのはどんどん変わってきますからね。茂木さんは、どんな音が出したいとかありますか?

— う~ん…「ロックっぽい音が好き」というのはあるけれど、そもそも何を悩んでいいかがわからない(笑)

根木:ヘッドひとつとっても色々種類があるじゃないですか。それを、変えた時の違いはわかっていらっしゃると思いますけど、なぜ“プワン”という音が出るのか、“パシッ”という音が出るのか、自分はどっちの音を出したいかを考えてみると目的が見えてくるかもですね。

H— そうですね。今は“叩けている”ということの方に重きを置いていて、この曲はこういう音の方が良い、という楽器への追及にまで至っていませんでした。

根木:茂木さんのドラムスタイルを拝見しますと“表現家”だなって思いました。例えば“暴れたような音”を出すため、“気持ち”と“アクション”をリンクさせているというかな? ドラムの観点からみると、音がうるさすぎるというのは、=音がつぶれているということなので、あまり良いことではないと思ってます。音楽の中で一番音量が出ているジャンルって、何だと思いますか? 私は、クラシックだと思います。でも、うるさくはない。一瞬音をあげて、すぐ落とす。ジャズも瞬間的にはかなり大きな音量が出ています。ただ、大きな音でずっと音楽が流れていると、3曲目には眠くなる(笑)。一定が続くと人間は眠くなるんです。ということは、どこでどんなメリハリをつけるかが大事だと考えています。そして、シンバルの音選びこそ難しいです。メーカーによって全然違うので、1ブランドだけに最初から決めないで、色々試してみるといいかもですね(笑)。ちょっとうちのスタジオに入ってみますか?

— いいんですか~~~?

根木:自由に叩いてみてください。<♪~しばらく茂木のドラムタイム~♪>トントン(タム)バリバリ(フロア)ドンドン(バスドラ)というイメージで音がなりますよね。音階があるけど音色は同じではない。フロアは迫力を司る音、バスドラムは綺麗な音で短め、そういう考えで音を作っていくとわかりやすいと思います。ドラムの役割って、何でしょう?

— 何だろう?リズムですか?

根木:ドラムの一番の仕事はボリュームです。最も変化しないといけないのがドラムじゃないでしょうか?ドラムの音量は、自分の音量と思わずに、バンド全体のボリュームを自分が握っている、と感じていれば、変わってきますよ。ボーカルはどのタイミングで前に出たい? ベースはいつ?って聞きながら、バンド全体のボリュームを握る感じかな。あと、ハイハットの使い方は研究すると面白いですよ。ストッパーを上手く使えないと音楽にゆらぎが出ない。だから、ハイハットは勉強のやりがいがあると思います。加速度で全然ちがうからね。

工房見学
併設された工房から、木の香りがほんのり漂ってくる……。ちょうど、熟練の職人さんがマーチングドラムのシェル(胴体のとなる筒)を削っているところを見学させていただきました。目の粗いヤスリから細かいヤスリへと何段階に分けて削る工程。手の感覚を頼りに、絶妙な角度をつけていらっしゃる姿が印象的でした。長年の経験がものをいう繊細な作業を経て、丁寧に仕上げられて行きます。ほかにも、マーチングドラムを手作業で組み立てている様子や、カラフルなシェルが並んでいる塗装部屋などを見学させていただきました。オーダーを受ける前に、まずは依頼者がどんな音を求めているのかをより知るために、たっぷり時間をかけて話をされるという根木社長。そんな心意気とこだわりがたっぷり詰まったステキな工房でした。
 
工房見学を終えての感想
とにかく、根木社長はドラムへの愛がすごい!ドラムがバンドの音量をコントロールしているという話は、特に印象的で、スタジオレッスンも楽しかったです。やっぱり「ネギドラム」は、日本が世界に誇るハンドメイドブランドで間違いなかった。はやくライブやりたい!(茂木左)
 
I
 

株式会社ネギドラム
静岡県浜松市南区米津町979
公式サイト:
http://www.ndsg.co.jp/
 Y

 


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