連載

lead_simple

Fanfarlo 『Let’s Go Extinct』
TEXT:児玉圭一

2009年の『Reservoir』、2012年の『Rooms Filled with Light』とアルバムリリースを経る毎に世界的な知名度と人気度を高めている、ロンドンを拠点に活動中の男女混成5人組インディー/オルタナティヴ・バンド、Fanfarlo。透明感に満ちたサウンドと珠玉のメロディをカラフルに彩るチェロ、マンドリン、クラリネット、メロディカ等のクラシカルな楽器演奏が魅力的な彼らのサウンドは「美しきシンフォニック・ロック」と謳われている。
 
そしてこれが満を持して世界に向けてドロップされる『Let’s Go Extinct』。「暗闇に宿る魂は弾を込めた銃のように何かが起こるのを待っている」というフレーズが印象的なオープニング「Life in the sky」から「さあ、消滅してしまおうよ」と歌われるラストナンバー「Let’s Go Extinct」に至る全10曲が凛とした光を放つこのサードアルバムは、フランスの詩人ボードレールを愛好するフロントマンSimon Balthazarが抱く世界観の最良のエッセンスを結晶化したような傑作に仕上がっている。
 
「僕らが書いた曲は、進化の理論が『僕らは一体全体どこにいるんだろう?そして何処に向かおうとしているんだろう?』という問いに答えようとしている事象を間接的に、もしくは遠まわしに扱っているように思えたんだ」
 
作品全体を貫いている哲学的な心象風景と幻視的な世界にリスナーを連れ去ってしまうこのアルバムの特異なサウンド・プロダクションも離れ業的な成果をあげている。ネオ・クラシカルなムードをもたらす一貫して美しい音色を聴かせるピアノ・プレイ。あくまでもタイトなリズム・セクション。そして彼らの定番楽器であるチェロ、バイオリン、マンドリン、グロッケン、メロディカ等の演奏も決して装飾過多にならない効果的な使い方で配置されている。特に数曲において絶妙な間合いで登場するマリアッチ風のホーンセクションの活躍が素晴らしい。彼らは自分達のサウンドを「スペース・オペラとスパゲティ・ウェスタンとの融合」と呼んでいるが、実に言い得て妙な表現だ。今作における著しい音楽的な飛躍はメンバー全員と共にプロデュースを手掛けたウェールズの鬼才シンガーDavid Wrenchの手腕によるものが大きいのかもしれない。
 
しかしながら、このアルバムの中核を成しているのは、何と言っても才気溢れるSimonの圧倒的な演唱とCathy Lucusのサイド・ヴォーカルの素晴らしさではないだろうか?Simonの声はFanfarloの詩的モチーフである情熱、悲劇、愛憎、異端を表現するのには無くてはならない存在に違いない。曲毎に表情を変えて行く彼の歌声は、時にはBryan Ferryのようであり、時にはPrefab SproutPaddy Mcaloonのようでもある。そんなSimonと寄り添うように歌うバンドの第二の声、紅一点Cathyの力強くもデリケートな美しさを湛えたサイド・ヴォーカルは、黙示録的なヴィジョンが支配するアルバムにおける希望の光として重要な役割を担っている。
 
Fanfarloの真価を世に問う『Let’s Go Extinct』のリリースは2月12日。その音楽性からArcade FireBroken Social Scene等のポスト・ロック・バンドと比較される事が多い彼等だが、Roxy Musicの『Avalon』、Prefab Sproutの『Steve Mcqueen』と比肩し得る傑作を生み出したFanfarloが図抜けた存在になる日も近いに違いない。この素晴らしいアルバムによって、より多くのリスナーが彼らの虜になる事を願うばかりだ。
 

 


 
NEW002CD_cover◆Fanfarlo 『Let’s Go Extinct』
2014年2月12日発売
品番:NEW002CDJ[国内流通仕様] 価格:2,100円(税込)
※国内流通仕様は帯付で解説他は付きません。
<収録曲目>
M01. Life in the Sky
M02. Cell Song
M03. Myth of Myself
M04. A Distance
M05. We’re the Future
M06. Landlocked
M07. Painting with Life
M08. Grey and Gold
M09. The Beginning and the End
M10. Let’s Go Extinct


◆Fanfarlo JPNオフィシャル・サイト
http://bignothing.net/fanfarlo.html