連載

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蜜『蜜狩り』
TEXT:金井孝介

名曲と謳われた曲が、別のアーティストによってさらなる高みへと持っていかれる。それこそがカヴァーという行為の真髄であると思う。この日本の音楽シーンにまた、新たなる変化球的カヴァーアルバムが投げ込まれてきた。男女2人組ユニット・のカヴァーアルバム『蜜狩り』が、16日リリースされる。もともとYouTubeでの企画として、名曲のカヴァーを行っていた。そのカヴァーは配信限定のアルバムとして2012年に発売されたのだが、今回満を持してのCD発売となる。
 
7月17日に2ndフルアルバム『HeとSheでShow』を発売し、早くも3rdアルバム『キス アンド クライ』のリリースを11月27日に控えている。その間にリリースされる本作ではフジファブリック井上陽水宇多田ヒカルらの名曲を彼ら独自の目線でアレンジした、いわば3時のおやつのような感覚のサウンドが繰り広げられていく。ロックバンドのヴォーカルでもあった木村ウニ(唄と鍵盤ハーモニカ)の、力強く繊細な歌声。橋詰遼(唄とギター)の伸びやかな高音、様々な顔を見せるギターサウンドで奏でられるその世界は、力を入れて聞くもよし、ほっと肩を撫で下ろして聞くもよし。どんなリスナーの耳にも心地よく、すっと胸に刻み込まれていく。
 
L’Arc-en-Ciel「HONEY」、フジファブリック「バウムクーヘン」などのカヴァーでは、アコースティックの色を前面に押し出したサウンドを聞かせ、そうかと思えば井上陽水「心もよう」では、オリジナルをさらに超えた激しさを持って、橋詰遼のギターがうなり、木村ウニの声にも恐ろしいくらいの気迫がこもる。演奏が終わった後の空白にすら、音が残っているような感覚に陥ることができるとは、恐れ入ったとしか言葉が出ない。
 
さらに面白いと感じるのは、カヴァーにあたっての渋い選曲眼である。岩崎宏美のヒット曲「あざやかな場面」、森高千里「私がオバさんになっても」や、鈴木慶一とムーンライダースムーンライダーズ)の名曲「髭と口紅とバルコニー」など、様々な年代、ジャンルに渡っての選曲となっている。というアーティストの存在を知らない年代のリスナーにも、入っていきやすいのではないだろうか。
 
カヴァーすることによって、その曲自体はおろか音楽性にもさらなる深みを与えるということは、そんなに簡単なことではない。このアルバムでの音楽を感じると同時に「ああ、こんな曲もあったな」「この曲を聴いてた頃、自分は……」など、”あの頃”を思い出すいい機会にもなるはずだ。そして初回限定盤にはボーナストラックとしてのオリジナル「箱の中のランデブー」も収録される。本来のの持ち味であるアコースティックサウンドに加え、どこか懐かしい感覚を覚える世界観。是非カヴァー曲と同様にこちらも味わっていただきたい。
 


◆リリース情報
蜜 カヴァーアルバム『蜜狩り』
2013年10月16日発売
TYCT-69001 ¥2,500(tax in)

<収録曲>
M01. HONEY
 作詞・作曲:hyde
M02. バウムクーヘン
 作詞・作曲:志村正彦
M03. 心もよう
 作詞・作曲:井上陽水
M04. traveling
 作詞・作曲:宇多田ヒカル
M05. あざやかな場面
 作詞:阿久悠/作曲:三木たかし
M06. Give me a Shake
 作詞:えびね遊子/作曲:星野靖彦
M07. ひとつだけ
 作詞・作曲:矢野顕子
M08. 私がオバさんになっても
 作詞:森高千里/作曲:斉藤英夫
M09. 髭と口紅とバルコニー
 作詞・作曲:鈴木慶一
M10. トンネルぬけて
 作詞・作曲:BO GUMBOS

☆初回生産分のみボーナストラックとしてオリジナル楽曲収録!
M11. 箱の中のランデブー
 作詞:木村ウニ/作曲:橋詰 遼

 

◆蜜 オフィシャルサイト
http://www.mitsu71.com/