「KING OF GARAGE METAL」と称される、日本を代表するヘヴィメタルバンドの一つ、OUTRAGE。デビューから20年を超える日本のヘヴィメタルバンドもにわかに現れ始めている昨今、彼らもその一つではあるが、彼らのサウンドスタイルは唯一無二のものであり、日本ヘヴィメタル界の歴史の中でも未だに妖しい光を放ち続けている。今回はそんな彼らがリリースした新作『OUTRAGED』を紹介しよう。

バンドのスポークスマンである丹下眞也が「原点回帰」と語る今回の新作であるが、その裏にはOUTRAGEの真に迫る意気込みのようなものがうかがえる。過去の作品では彼ら自身の持ち味を生かしながらも新しい試みを要所で見せていた彼らだが、この作品には、初期の『Black Cloud』や『The FinalDay』などを彷彿（ほうふつ）させるエネルギー感と情熱が感じられる。

作風の変化は、ミュージシャンにとっては重要な課題の一つともいえるが、彼らにいたってはそのスタイルが存在すること自体に意味があり、作風の変化や新しい、古いという感覚はあまり大きな意味を成さないという不思議なイメージを感じる。その意味で、今回の作品自体には彼らの芯が明確に表された、「人々が待ちわびた期待通りの作品」といえるだろう。

一曲目の「LOST」から、その彼ららしさは随所に見られる。曲のスタートから「ここぞ！」というタイミングで打ち鳴らされる丹下のスネアの連打。図太くOUTRAGEサウンドのアウトラインを描く安井のベース、その上でサウンドにカラーを与える阿部のギターは、どちらかというとルーズ気味なミュートによるリフを奏でているが、それが返ってサウンドの厚みと、リフの凶暴さを倍増させている。このバッキングサウンドで既に彼らのサウンドは確立されているが、この上に橋本直樹のボーカルが加わることで、唯一無二といえるサウンドと世界観が決定される。

橋本のボーカルはヘヴィメタルとしては決して音域の広さや声の伸び、表現力やテクニック等で何かに秀でるものがあるわけではないが、その歌に込められた表情はCDの中でサウンドを聴くだけで、まるで歌っている姿が想像できるような、不思議な臨場感すら見えてくる。猛烈なビートを連発する疾走ナンバーの中でもボーカルとしての存在感を失わない、彼ならではの立ち位置が、アルバムからも十分感じ取ることができるだろう。

その詞の内容についても、変に気取った言い回しがあるわけでもなく、かといっておちゃらけた雰囲気が書かれているわけでもない。一人の男の、ありのままの姿をシリアスに描いたような緊張感さえその言葉の中には感じることができる。橋本が歌うからこそ、この内容は強く聴くものにアピールできる。また、純粋なバラード「Far Away」では、決して弱くはならない、かつ彼の歌心を存分に感じられる美しいバラードとして仕上がっている。本格的なストリングスを入れるなど、その曲に込めた思い入れも強く感じられる秀作だ。

先日BEEASTでも報じた総合格闘技団体DEEPとのコラボレーションなど、その活動には全く新しい道を探ろうとする、衰えを知らない活発な意欲が見られる。次はどの手でOUTRAGEが観衆の感性を直撃してくるのか？まずはこの新作を堪能しながら、楽しみに待とうではないか。

PRODUCED, MIXED AND MASTERED BY FREDRIK NORDSTROM
AT STUDIO FREDMAN, GOTHENBURG, SWEDEN
ENGINEERED BY HENRIK UDD

オフィシャルサイト
公式サイト
http://www.outrage-jp.com/
ユニバーサルインターナショナル公式サイト
http://www.universal-music.co.jp/outrage