YUKI 「さよならバイスタンダー」

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YUKI「さよならバイスタンダー」

TEXT：鈴木亮介

ストイックに、可憐。――その一見矛盾するかのようなギリギリの境界線、表面張力のふわりと浮き出たコップの淵で、YUKIという歌手は闘い続けてきた。

2001年にJUDY AND MARYを解散後、翌2002年にソロ活動を開始。21世紀初頭にデビューした女性ソロシンガーを大別すると「ピュアでフレッシュでキュートで」「敏腕プロデューサーとタッグ」といったタイプか、「圧倒的声量を持つディーバ」「独自の強烈な世界観を持つ、パワフルな」といったタイプに二分するように思う。しかしYUKIはそのどちらにも属せず、と言って「両要素を取り入れたハイブリッド」みたいな半端なものでもなく、完全に独自の道を切り拓いた。だからこそ、同世代、同性の支持をここまで集めてきたし、男性からも常に支持されてきた。

いつまでもキュートで、瑞々しく可憐。それでいて、キャリアを重ねるとともに母性とも言うべき圧倒的な存在感、サビでのズシンと来る言葉の重み、楽曲の持つ説得力は凄まじい。女性ボーカリストとして史上初のバンド＆ソロ公演を果たした東京ドームライブ、日本武道館2days公演、第63回NHK紅白歌合戦出場など、2010年代に入ってからの活躍は誰もが知るところである。

YUKI当人は今回のシングルリリースにあたって「“他力”が働くと、良くも悪くも人は思わぬ方向へいくものです。私はずっとそうしてきたように思います」とコメントしている。その圧倒的な存在感から、「ソロで、一人で闘ってきた」というイメージが強いが、一流のバイプレイヤーたちを牽引し、YUKIプロジェクトの舵を取ってきたのだろう。そして、こう続けている。「でもここで、自分の中の傍観者とは距離を置きたくなりました。もう時は来たのです。」

そうした強い決意を、YUKIは本作「さよならバイスタンダー」で歌い上げる。何と言っても聞きどころはサビの”跳躍”で、これはYUKI15年の集大成とも言うべき秀逸さだ。「さよなら」…軽くスタッカート、「ぼくらは歩いて行く」「天国か　そこらじゃあないとしても」…じわじわと声量が増していき、「ただの君と」…先ほどの「さよなら」と同じメロディでありながら重みがある。そして「願いとか　希望とか」…ピークに達する。

「涙なら冷蔵庫に置いてきたはずだ」――自らのうちに潜むバイスタンダー（＝傍観者）と決別し、目の前のものを「守るよ　守るよ」と力強く決意する。アウトロがスパッと潔く終幕するのも、YUKIの楽曲の魅力だ。

バンドサウンドにストリングスも加わり、YUKIのポップな世界観を壊すことなくロックな要素が加わった。作曲は2010年9月リリース「2人のストーリー」以来タッグを組み続ける飛内将大。中島美嘉、SCANDAL、Aimerなど数々の女性ミュージシャンのアレンジを手がけるヒットメーカーの手により、YUKIの強かで儚い世界観が彩られている。アコギから弦楽器、ピコピコサウンドに至るまで、一人の女性の持つカラフルで気まぐれな多面性が表現されている。

それはさながら、カレイドスコープを覗き見るように。16年目も17年目も18年目も…ガールポップのパイオニア・YUKIの紡ぐ音楽にいつまでも魅了され続けたい。

◆リリース情報
YUKI「さよならバイスタンダー」
・2017年02月01日（水）発売
初回生産限定盤（CD＋DVD）　ESCL 4821-2　￥1,429+税
通常盤　ESCL 4823　￥971+税
＜収録曲＞
M01. さよならバイスタンダー
M02. You can stay right here
初回特典：TVアニメ「3月のライオン」ノンクレジットオープニングムービー収録DVD

◆ライブ情報
YUKI concert tour“Blink Blink”2017
・2017年04月29日（祝）【広　島】広島グリーンアリーナ
・2017年05月13日（土）【福　岡】マリンメッセ福岡
・2017年05月14日（日）【福　岡】マリンメッセ福岡
・2017年05月20日（土）【宮　城】セキスイハイムスーパーアリーナ（グランディ・21）
・2017年06月07日（水）【愛　知】日本ガイシホール
・2017年06月08日（木）【愛　知】日本ガイシホール
・2017年06月24日（土）【新　潟】朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
・2017年07月01日（土）【神奈川】横浜アリーナ
・2017年07月02日（日）【神奈川】横浜アリーナ
・2017年07月08日（土）【大　阪】大阪城ホール
・2017年07月09日（日）【大　阪】大阪城ホール
・2017年07月22日（土）【北海道】函館アリーナ
・2017年07月23日（日）【北海道】函館アリーナ