連載

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fringe tritone 『Songscape』
TEXT:桂伸也

fringe_tritone001PERSONZのメンバーとしてシーンに台頭。唯一無二のギタースタイルを確立しているギタリスト、本田毅。これまでPERSONZ以外にも数々の著名なアーティストのサポート、プロデュースを行うなど、その実力、信頼度は絶対的である。そんな彼が、自身の描く音世界、そして世界観を作るべく結成したのが、ロックバンドfringe tritoneだ。
 
fringe(フリンジ)とはショールなどの房飾りの意味だが、音楽的には「装飾音」を指す。また、tritone(トライトーン)とは音楽用語で「三全音」。ホールトーンと呼ばれるスケールの中の1st、3rd、b5thといった、強くコード感を表す音のことを指す。少し難しい話になるが、この音列は「どこにも落ち着かない、不安定で不協和な音」となる。そんな音を「なぜ鳴らすのか?」と考える人もいるかもしれないが、実はこの音に続く音が、重要なポイントとなる。「落ち着かない不安定、不協和な音」が響くからこそ、その次に鳴る音は強い着地感、安定感を得ることになるのである。
 
fringe tritoneは、まさしくこの言葉の意味するコンセプトをバンドサウンドで表現している。例えばJazzでは、不安定から安定に落ち着くコード進行もメロディを強く意識し、「不安定」とはいいつつもメロディとの調和を考慮し、整然としたハーモニーを形成する。しかし本田毅の描くその世界では、時にガッと響かせるトライトーンに、聴くものの緊張感を強くあおる、彼ならではのロックを突き詰めた世界観を表現している。
 
2013年で一度活動休止を宣言。そして2016年に再開を宣言した彼らの今回発表するアルバムは、その休止期間の鬱憤を一気に晴らすような、アクティブな音で埋め尽くされている。アルバムは「サーチライト」で幕を開ける。どんどんと前に出てくるような本田聡(Bass)と斉藤篤生(Drums)のリズムに、エコーの利いた本田毅のギターが、果てしなく広がっていく地平線を表していくようにも感じられる。そんな広大な地に立つリスナーを、斉藤洋(Vocal)の声が強く導いていくように、アルバムの世界観へ引き込んでいく。
 
さらにメジャーセブンスコードを主体としたクールなサウンドを演出する「sunrise」、80年代の風味、そしてファンキーなビートも感じられる「my sleazy candy」、ロックならではのけだるさが見える「moonshine」、対照的に鋭角的で攻撃的でもある「Stifling Speed」、そして黄昏時を感じるようなバラード「トライアングル」と、どの曲もそれぞれが際立って聴こえ、様々な風景を演出している。
 
ストレートにロックを感じさせ、対照的に要所で何かを打ち砕くような要素が、「よくある」ロック感を打ち壊す。そうやって作り上げられたこのアルバムは、本田毅をはじめベテランといえるメンバーの作品であるにもかかわらず、バンドのサウンドには何かフレッシュな空気も感じられる。決して安全牌を握った音ではない、隙あらば破壊してやろうといった、新しい音へ積極的に挑戦する意思がそこにはある。
 


 
fringe_tritone002◆リリース情報
fringe tritone『Songscape』
製品番号:BITH-015
形態:6曲入りMini Album
価格:2,200円(税込)
発売日:2016.12.17
JANコード:4589741090014
 
<収録曲>
M01. サーチライト
M02. sunrise
M03. my sleazy candy
M04. moonshine
M05. Stifling Speed
M06. トライアングル
 
 


 
◆ライブ情報
★ fringe tritone アルバムリリース記念フリーライブ ~ Stand Loud GROUND ~
場所:表参道 GROUND(http://www.omotesando-ground.jp
日程:2016年12月17日(土)
時間:Open 12:00 / Start 13:00
問:GROUND 03ー5772ー8566
 
<ご注意事項>
当日のライブご観覧はフリー(無料)になりますが、ご入場時にお一人様ずつドリンク代(1drink ¥500-)が必要となります。当日のご来場人数により入場規制をさせていただく場合がございます、予めご了承ください。
 


 
◆fringe tritone official website
http://www.fringetritone.com